Home Creators Posts Import Register Favorites Logout

Content

ハマり始めた熱の余韻

マンションのドアを開けると、いつもの甘い香りが鼻をくすぐった。

できれば花音とは顔を合わせたくない。


だけど、いつもならもう寝ている時間なのに、今日に限ってリビングの明かりがついている。


「おかえり、お姉ちゃん。遅かったね?」


花音が顔を出す。いつもの笑顔。

でも、目が少しだけ細い。


「う、うん……キャストが一人休んじゃって。だから僕が代わりにレジ締め作業とかして……」


靴を脱ぎながら目を逸らす。

花音が近づいてくる。ふわりと首筋に顔を寄せ、くんくんと匂いを嗅ぐ。


「どこ行ってたの?何してたの?」


「……だから、バイトが長引いて……」


「ふーん。お姉ちゃん、シャワー浴びた?うちのボディーソープと全然違う匂いがするよ?」


心臓が跳ね上がる。あの古びたマンションに置いてあったボディーソープの匂いが、まだ肌に染みついている。


花音の視線が、僕の首筋から胸元、腰へとゆっくり滑る。


「え……そ、そんなことないよ。誰かの香水が移っただけかも……」


しどろもどろになる。指先が震える。


花音はにこっと笑って、僕の目を見つめる。


「ま、いっか。お姉ちゃん、最近本当に頑張ってるみたいだし、無理しないでね?」


……良かった。これ以上追及されたら、絶対にボロが出ていた。


僕は逃げるようにシャワーを浴び、自室へ戻った。


ベッドに座り、財布から手に入れた10万円を眺める。

今日のことを思い出す。男のものを咥えられ、奥まで入れられた。嫌だったはずなのに、体が疼いてしまう。


(もう、これっきりにしよう……)


その時、男に言われた言葉が頭に蘇る。


『フェラの練習、家でもちゃんとしておくんだよ』


(いや、もうしないから……)


心とは裏腹に、僕は机の引き出しからマジックペンを取り出した。太めの黒いマーカー。男性器に見立てて、震える手で握る。


唇を近づける。もちろん、あのむせかえるような匂いや、塩辛いような味はしない。

でも、熱を想像しながら、先端を軽く包む。舌を這わせて円を描くように舐める。


『もっと唾液を絡めて……舌を平らにして、裏筋を……』


男の声が耳に響く。僕は言われた通りに舌を動かす。ぬるぬるした感触を自分で作りながら、根元までゆっくり咥える。喉に当たる違和感にえずきそうになるのに、必死に喉を締めて上下に動かす。


(こんなこと……僕、何やってるんだ……)


恥ずかしさと興奮が混じり、腰が勝手に揺れる。アソコがパンツの中で硬くなっている。

マーカーを深く咥え、喉で締め付けるたび、さっきの感覚がフラッシュバックする。

涙目になりながら、練習を続けている。


……その時、僕は気づいていなかった。


部屋のドアがわずかに開いていて、花音が静かにそこから見つめていることを。


◆


翌朝、今日もコンカフェのバイトへと向かう。

昨夜の余韻が、まだ体に残っている。


カウンターの奥に、拓海くんの姿が見えた。

いつもの柔らかい笑顔。僕は深呼吸して近づく。


「拓海くん、おはようございます」


「あっ、翔さん、おはようございます。昨日はどうでしたか?」


その一言で、胸がざわつく。

僕は目を泳がせながら、声を小さくする。


「いや……あんなところって、聞いてなかったので……」


拓海くんはくすっと笑った。


「先に聞いていると行かなくなっちゃうかなって思って。でも、その感じだと、すぐに帰ったんですね?」


「え……あ……いや……、お金も頂きました」


顔が一瞬で熱くなる。

拓海くんの目が少し大きくなった。


「あれっ?って事は、男の人と……?」


僕は真っ赤になって、こくりと小さく頷くしかなかった。

拓海くんは優しく微笑む。


「でも良かったですね!お金も貰えたし、もう行かなくても大丈夫ですよね?」


その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が疼いた。


(もう……行かなくても大丈夫……)


そう思ったはずなのに、口が勝手に動いていた。


「あっ……できれば、また……行きたくて……」


声が震える。

拓海くんは一瞬驚いた顔をしたあと、にこっと笑った。


「わかりました。じゃあまた連絡しておきますね」


僕は頷きながら、自分の言葉に愕然とする。

お金のためだったはずなのに……昨夜の熱が、体に染みついて離れない。


男に抱かれ、奥を満たされた感覚……。


◆


お仕事の休憩中、私は花音ちゃんにメッセージを送った。


『翔さん、やっぱりハマっちゃったみたいだよ!』


すぐに既読がつき、花音ちゃんからの返信が来た。


『やっぱりね!昨日も少し揺さぶってあげたら、しどろもどろになってたよ!』

『それにね、一人でフェラの練習してたんだよ。すっごく可愛かったよ♡』


私は小さく笑って、指を動かす。


『そうなんだ。でも私も嬉しいな!男の人とエッチする悦び、翔さんに知ってもらえて』


私はスマホを握ったまま、休憩室で小さく息を吐いた。


(やっぱり……翔さん、すぐに堕ちちゃった)


私は花音ちゃんにさらにメッセージを送る。


『さっき、「また行きたい」って言ってたよ。顔を真っ赤にして』


『本当?お姉ちゃん、意外と積極的だね!じゃあ今夜もよろしくね、拓海くん』

『お姉ちゃんがもっと気持ちよくなれるように、いい人を選んであげて』


私は、猫のキャラが親指を立てているスタンプと共に、『了解♡』と返信して、スマホをカバンにしまった。


【第18章へつづく…】

Files

Comments

No comments found for this post.