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康介

家に帰ると、愛が優しく声を掛けてくれた。


「瑠香ちゃん。今日は頑張ったね」


その言葉に、さっきまでの張りつめた緊張が、少しだけ解けていく。

俺はそのままシャワーを浴びるよう促され、バスルームに入った。


ブレザー、チェックのスカート、白いブラとTバックを足元に落とす。

ウィッグを外した短い髪、平らな胸、男の象徴である股間。


さっきまで街を歩いていた女子高生の姿は、幻のように消えていた。

鏡に映るのはいつもの男の姿だ。


(……これじゃあ愛に喜んでもらえない……のかな?)


熱いシャワーを頭から浴びる。

お湯が肌を叩く音が、頭の中の考えを整理してくれる。


俺はさっきまで自分に起きていたことを振り返った。


見知らぬ男に声を掛けられ、ズボンのファスナーが下ろされ、男の太く硬くなったアソコが目の前に突き出される。


とうとうアソコを触らなければと、右手をゆっくり伸ばした瞬間に、愛に助けられた時の安堵感。


だけど……そこで感じたほんの少しの物足りなさ。


(怖かったはずなのに……なんで……)


シャワーを浴び終え、フリルたっぷりのパジャマに着替える。


愛がシャワーを浴びている間、俺は一人でソファに座り、ぼんやりと天井を見つめていた。


最初は、ただの趣味だった。

家に誰もいない時だけ、こっそり女装を楽しむ。


鏡の前に立ち、セーラー服を着て、自分が別の人間になったような気がする——それだけで満足だった。


それが愛に見つかり、すべてが変わった。

名前を「瑠香」と名付けられ、会社にまで女の子の下着を着けるルールが課された。

駅のトイレでセーラー服に着替えて街を歩くことさえ、受け入れてしまっている。

18歳の女の子として……。


(俺は……どこまで堕ちていくんだろう……)


社会人として、夫として、普通に生きていたはずの俺が、今は妻の命令一つで女子高生の制服を着て、夜の街を歩き、見知らぬ男に声をかけられる立場に立たされている。


怖い。

惨めだ。

逃げ出したい。


なのに、愛に褒められ、女の子として扱われる日常を求めてしまっている自分がいる。


◆


シャワーの音がいつの間にか、ドライヤーの音に変わっていた。

ほどなくして、愛がバスルームから出てきた。


頰が火照り、ほんのり赤く染まっている。

パジャマの隙間から覗く白い肌が、湯気でしっとりと輝いていた。


愛は俺の目を見て、優しく微笑んだ。


「お待たせ。ところで……康介はこれからどうしたい?」


久しぶりに“康介”と呼ばれた。


その響きが、懐かしくもあり、どこか違和感と物足りなさを感じさせる。

まるで、遠い昔の自分を思い出すような、奇妙な感覚だった。


愛はソファに腰を下ろし、俺の隣に寄り添ってくる。

シャンプーの甘い香りが漂う。


「正直に言って?もう、こそこそ家で着るだけじゃ満足できないでしょ?」


俺は視線を落としたまま、小さく頷いた。


「……うん……」


愛の指が、俺の太ももを優しく撫でる。

その感触に肌が敏感に反応する。


「ブラジャーをつけて会社に行くのも、制服女装して街を歩くのも、男の人に声をかけられるのも……最初は怖かったのに、今は楽しんでいるんでしょ?」


その言葉は、自分の胸の内でくすぶっていた思いを、的確に答え合わせする感覚だった。


胸の奥が、じんわりと熱く疼き始める。

愛は俺の耳元に唇を寄せ、誘うように囁いた。


「だったら……もっと本格的に、“康介”を“瑠香ちゃん”として育ててあげようか。女性ホルモンを摂取したり、睾丸摘出や豊胸手術をしたり……」


(女性ホルモン……?手術……?)


想像しただけで、背筋がぞくりとする。


正直にそんな事までは考えていなかった。

さすがに拒否したいのに、言葉が出てこない。

頭の中では拒絶の声が響いているのに、体は愛の言葉に吸い寄せられるように震えていた。


愛は俺の反応を楽しむように、指をさらに上へ滑らせる。


「康介がどうしたいか、ちゃんと教えて?」


俺は口の中に溜まった唾液の飲み込んだ。


「女性ホルモンとか……手術とか……そこまでやると、元に戻れないけれど……やってみたいかも」


自分の口から出た言葉に、思わず驚いた。

俺の心の声に反して、口から言葉が出る。


「愛が喜んでくれるなら……俺は……いや、私はもっと女の子になりたい」


愛の微笑みが、深くなる。


「いい子だね。じゃあ、来週から身体も育てていこうね。“瑠香ちゃん”がどれだけ女の子になれるか……楽しみだよ」


その言葉が、俺の未来をさらにきつく締めあげていく。

胸の奥で羞恥と期待が激しく絡み合い、静かに膨らみ続けていた。


【第12章につづく……】

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