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初めての外出、女の子として

私とあかりはいつもより1時間も早く目を覚ました。


今日は特別な日だ。

この施設に入学してから、外の世界に出る初めての機会。


私たちは入念に準備に取り掛かる。


ファンデーションを丁寧に伸ばし、ピンクのチークをいつもよりほんの少しだけ多めにのせ、頰をふんわりと染めた。


レッスンでは習ったけど、普段はなかなかつける機会が無かったつけまつ毛も、今日は特別につけてみる。


リップはみお先輩とお揃いのコーラルピンクを選んだ。

綺麗に縁取り、唇を軽く押し合わせて艶をなじませる。


化粧品の扱い方も、初めはどうしていいのか分からなかったのに、今はすっかり慣れた。

鏡に映る自分の顔が、普段よりもさらに華やかで女の子らしくなっていった。


次に学園から今回の為に支給されたアイテムを身に着ける。

腰回りを丸く女性らしいシルエットにするカバーパンツと、くびれを強調するためのコルセットだ。


コルセットを締め上げると、息が少し苦しくなる。


「ふぅ……コルセット、結構苦しいね……」


あかりが苦笑いしながらこちらを見た。


「でも、可愛く制服を着こなせるなら……多少のことは我慢しちゃうよね」


私はブレザーを着て、胸に青色のリボンをつけた。

ブラジャーのおかげで、胸部もなだらかな丸みのあるラインになっている。


鏡の前に立ち、お互いの姿を見比べた。


「私たち、どこからどう見ても女の子だよね……!」


あかりが目を輝かせて私の手を握る。

私もあかりの清楚なセーラー服姿を見て、自然と笑みがこぼれた。


◆


今日はヨガレッスンが無い分、朝食の時間もいつもより早い。

早々に食事を済ませた私たちは、多目的室へと移動した。


教師が生徒たちを2人一組のペアに振り分けた。

同室のものはペアにならないよう配慮されているらしい。


ミルクティーの様なやさしい茶髪にツインテールが特徴の綺麗な子だ。

明るい茶髪に

セーラー服に黒いタイツを合わせた、大人っぽい制服コーデをしている。


「よろしくね、ゆきちゃん。一緒に楽しもう」

私は軽く微笑んで頷いた。


バスで1時間ほど走り、駅に到着した。

そこから都心へと向かう。


電車の車内では、他の乗客の視線を強く感じた。

私は窓ガラスに映る自分の姿を見た。

ブレザーの胸元、膝上丈のスカート、ブラジャー持ち上げられた胸にコルセットとカバーパンツによって作られた、メリハリのあるシルエット……。


今までは女の子の姿になったとはいえ、学園の中だけだった。

こうして公共の場で女の子として過ごしている事に、大きな胸の高鳴りを感じた。


原宿に着くと、きょうかが私の手を優しく引いた。


「まずは竹下通りを歩こうか。ゆきちゃん、服とか見てみたい?ラフォーレ行く?」


竹下通りは人で溢れ、カラフルな服や可愛い雑貨が並ぶ店が連なっていた。

きょうかと並んで歩いているだけで、なんだか胸が弾む。


最初に入った店で、ピンクのリボンを、きょうかが手に取った。


「このリボン、ゆきちゃんに絶対似合うよ!試してみて?」


私は照れながらも鏡の前でリボンクリップを頭につける。

きょうかが後ろから優しく髪を整えてくれる。


鏡に映る自分が、ますます女の子らしく見える。

外見だけではない。行動そのものが女の子していることが嬉しいのだ。


その後も、きょうかと一緒にたくさんの店を回った。

フリルのついた可愛いブラウスを試着したり、コスメショップでマスカラやアイシャドウを試したりした。

新しい化粧水と乳液も購入した。


◆


「少し歩き疲れちゃったね。どこかで休憩しようか?」


きょうかに提案され、私たちはたまたま目に入ったオシャレなカフェに入った。

シンプルで白を基調とした洗練された店内は、柔らかい照明と落ち着いたBGMが流れていて、とても居心地が良かった。


私はロイヤルミルクティーとショートケーキのセットを頼んだ。

きょうかはチャイと季節のフルーツタルトを注文した。


きょうかの注文が先に運ばれてきた。「お先に頂くね」とチャイを一口すすり、タルトを口にする。


「久しぶりにこんなに美味しいスイーツを食べたよ!学園に出てくるスイーツも美味しいんだけど、甘さ控えめだからね……」


私は後から運ばれてきたケーキを一口運びながら、同じことを思っていた。

普段の食事でも甘いものが出ることはあるけど、ボディメイキングを意識して砂糖は控えめに調整されている。

だからこそ、外の世界で食べていることも相まって、甘さは特別に感じられた。

カップを口に運びながら、きょうかが優しく話しかけてきた。


「ゆきちゃん、学園は楽しい?更生していくことに、不安とか……まだ残ってる?」


私は少し迷ってから、ゆっくりと答えた。


「ううん……最初は本当に戸惑ったり、怖かったりしてたんだけど……今は自分がどんどん女の子になれることが、なんだか嬉しくって……」


「だよね。私も一緒だよ」


きょうかが柔らかく微笑む。

私は小さく頷いた。


「ゆきちゃん、ここ、クリームついてるよ」


きょうかが私の口元に付いたクリームを、指先で優しく拭ってくれる。

その行動が自然で、なんだか心地よかった。


(……私は、こんな日常を望んでいたのかもしれない……。この施設に来る前から……)


カフェの窓から賑やかな通りが見える。

きょうかが私の目をまっすぐと見つめ、おもむろに言った。


「この野外学習が終わったら、いよいよだね……」


「えっ?何が?」


「あれ?聞いてないの?私たちもいよいよ睾丸摘出手術が始まるんだよ。男性ホルモンが作られる器官なんて全く必要ないからね。早く取っちゃいたいよね」


私はフォークを持つ手を止めた。

ケーキの甘さが、ほんの少しだけ口の中で薄れた気がした。


きょうかは本当に嬉しそうに微笑んでいる。

その瞳は期待で輝き、誕生日が近づいてプレゼントを楽しみに待つ子供のようだった。


以前の私なら、この言葉を聞いた瞬間、全身が冷え切っていただろう。

男としての最後の証を失うという事実に抵抗し、吐き気すら覚えていたはずだ。


だけど今は……

胸の奥で、ふつふつと不思議な期待が湧き上がってくる。

もちろん怖さもあるが、睾丸がなくなれば、もっと完全に女の子になれる。

その事実に、私は静かに息を飲んだ。



【11章へつづく……】

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