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◀西暦2130年5月


遊上ユウトは校舎裏でひっそりと地べたに寝そべっていた。

別に昼寝をしているわけでも、蟻を観察しているわけでもない。ただ立ち上がる気力がないだけだ。

クラスメイトAは言った。お前のせいでバスケの賭けに負けた、と。

「知らんがな。」と思う。

体育のバスケットボールをする際にユウトの所属するクラスでは各リーダーがじゃんけんをしてその勝敗で交互に欲しい人材を選び合う方式が取られる。


「(毎回最後に残るのは僕とデブの佐藤くんだけど)」


今日の試合、いつものように賭け事が行われ、そして遊上ユウトのせいで負けた。今日は偏頭痛がするので休みたいとユウトが自己申告したにもかかわらず体育を受け持つ教員は却下した。

結果すべての責任を押し付けられユウトは勝手に行われてた賭け事の負債を強制的に支払わされる事になったのだ。


「立ち上がる気力...…ない感じ?」


少し弾みのある女性の声が聞こえる。

ユウトは声の主が誰かわかっていたので振り向きもしない。制服にじんわりと校舎の陰で湿った地面の冷たさが伝わってくる。

ユウトに声をかけた少女、沢尻ナナは顔に広がったそばかすを除けばほぼほぼ完璧な美少女だ。ユウトは個人的にソバカス姫と呼んでからかっている。


「ソバカス姫は今日もお暇なようで。」

「まぁ君ほど忙しくはないよ、借金王。」


ユウトが賭け事で負った今回の負債は2000円。ただの2000円程度ならユウトだって払うことができるがそれが週3ある体育の授業でどんどん加算されていく。すでに5桁に達する負債は流石に中学生には厳しかった。


「で、何しに来たの。」

「君が心配でね?」

「ハッ、皇女は下々の民にもお優しいこって。」

「良きに計らえ♪ってね」

「………。」


沢尻ナナはクラス委員長でありながら遊上ユウトのようなパッとしないキャラクターにも別け隔てなく話しかけるほどには優しい。一度ユウトが勘違いして告白し丁寧に振られているほどだ。

それ以来何かとユウトが困っていると影で助けてくれるようになったがユウトは振られた手前なかなか素直になれない所があった。

そんな態度でも変わらず話しかけてくるのでユウトは現状を甘んじて受け入れている。

少し無言になった後おもむろに立ち上がる。急所を蹴り上げられてヒリヒリと股間が痛む。が、下腹部の鈍痛は収まった。地面で冷やしたかいがあったというものだ。


「ちんちん大丈夫だった?」

「……見てたのかよ。」

「男の子は痛いって聞くし、大変だね。」


多少女の子、しかも身近な相手から「ちんちん」と言われると気恥ずかしさ3・エロさ7を感じるユウトだったが目をそらし隠す。


「急所だぞ。もっと心配しろよ。」


ユウトは制服についた土を叩いて落とす。

股間を蹴り上げられて膝をつく事が多いので制服の至るところにこすって劣化した後が目立った。


「帰るの?」

「……当たり前だろ。また戻ってくるかもしれねーし。」

「こんな美少女が話しかけてるのに帰っちゃうんだ。」

「………。」


否定はしない。一度は恋をした相手だ。可愛いと思う。

彼女は自身の評価を的確に判断できるタイプだとユウトも理解しているので自信過剰だとは思わない。釈然とはしないが。

ユウトは脱げた靴から砂を落とし、履く。

彼にとって学校生活とは苦痛でしかなかった。

いじめ、と言っていいレベルなのかわからない。それでも確実にストレスは溜まる。直接的な痛めつけはたまにしかない。そのたまにが今日だったわけだ。

普段は面倒な役回りを押し付けられたり、多少妨害や無視される程度、時折仲間のように振る舞ってくるから質が悪い。

ユウトは学生カバンを持って帰路につく。

ユウトがそれでも学校に通い続け、真面目に学校生活を送ろうとするのには理由があるのだ。




ユウトの自宅は唯一都会の喧騒にもまけず大きく佇む貫禄ある山の麓にある。

最近ではそこそこお金持ちじゃないと一戸建ては買えなくなった、と歴史の授業で言っていた。そんな中一戸建ての家を持つ自身の家庭は恵まれているのだとユウトは思う。

育児放棄気味の父とはいささか関係性は希薄だ。


小学校1年生の夏、暑い日だった。

母は死んだ。


ユウトの希望で動物園へとでかけた帰り、父がお手洗いに行き一緒にいないときに母は近場の横断歩道で落とし物をした老人を見つける。

歩行者信号は当然青だった。ユウトの母が地面に落ちた大根を拾い、目を前に向け、駆け出したときには赤になっているのだからおかしなものだ。

本来自動化が進んだ交通網は集中管理システムが管理しており交差点内に人がいればすべての車が停止する。が、その日はちょうど熱でセンサー類が人を検知しなかった。

結果は明白。

小学校1年生の遊上ユウトの目の前に、白い大きな、美味しそうな大根は転がってきた。


そこから父さんは2ヶ月ほど鬱状態になり、なにを思ったか仕事から帰ってくることはなくなった。ひとつの土産を置いて、ね。


「おかえりなさいませ、ユウト様」

「………ただいま、ヤナハ。」


第6世代成人女性型ハウスロイド。GPHA-0807-08(通称グーパ)は遊上ヨシヒコが所有するアンドロイド。


「(つまり父さんのアンドロイド)」


母親の死からなにを思ったかユウトの父は家事を行うアンドロイドを息子に買い与えた。

黒髪の背中中腹まで伸ばした髪、整えられた前髪と無表情を多少きつくしたツリ目。大きく突出したバスト、ヒップ。そして珍しい成人男性ほどもある身長。

彼女こそ遊上ユウトの母代わりであり、ユウトが勝手に呼んでいる呼び名ヤナハを授かった高性能アンドロイドである。

ユウトがいつも帰宅すると必ず玄関に出てきて「おかえり」と言ってくれる。

ユウトにとってそれはなによりも嬉しいことだ。


円満だった父と母、母が死に壊れたように仕事する父、静かな家、味気ない冷凍食品、テストでいい点数をとっても見せる相手がいない。そんな2ヶ月を変えてくれた存在。


「夕飯は19時でよろしいですか?」

「うん。今日はなに?」

「本日はハンバーグです。」

「そっか。」


ユウトは汚れた靴を脱ぐと洗面所へと歩いていった。

水を出し手を洗うと、痛みが襲い顔を顰めてしまう。


「……本日も御学友と上手くいかなかったのですか?」

「……まぁね。でも大丈夫、もう痂できてるし。」


いつものやり取り、最初の頃は何度か「ヨシヒコ様に連絡をいたします。緊急通報も同時に実行しますか?」と言って現状の打開をしようとしてくれていたのだが、ユウトがはっきりと「父さんには言わないで。」と断るとそれ以降は聞かなくなった。

ユウトはそのままズボンもおろしてきれいに選択され畳まれたカジュアルな寝間着に着替える。


「それでは料理に戻ります。ユウト様はリビングでおくつろぎください。」

「うん。ありがとう。」


ユウトが頑張れる理由。

それは彼女のおかげだ。一番最初は戸惑ったが今では家族同然で母のような姉のような存在となった。彼女はユウトの幸せを望んでいる。であるならば義務教育である中学校を不登校なんてできないしそれは同時に彼女の評価も下げることになる。ユウトはそう考えた。


「(父さんは僕のすべてをヤナハに任せてる。僕が不登校になったり成績が落ちればヤナハがここにいられなくなる可能性だってある。少なくともヤナハの責任になる。だからこんなところで折れるわけにはいかない。)」


ユウトはソファーに沈み込む。

テレビに視線を向ければカメラが登録された視線を認識して自動で起動する。

視線操作で昨日撮っておいた深夜帯アニメの鑑賞を始める。

主人公の心情や辿ってきた過去が少しだけ自分と似ていることに言いようのない共感を感じていた。

しばらくいくつかの撮り溜めしたアニメを見続けてふと、CMに入ったときキッチンを覗く。

フリフリと大きな尻が小刻みに揺れる。

包丁のトンットンットンッという音に合わせて髪が踊る。

ユウトはおもむろに立ち上がる。すでにアニメのBパートが始まっているにも関わらず気づいてはいなかった。


「………っ!…ユウト様、刃物を使用しているときは控えてくださいと何度も伝えているはずです。」

「ごめん……。でも我慢できなくって。それにヤナハなら危ないことはしないよ。」


ユウトは優しく、ヤナハの細いウエストに両手で抱きつく。

ここまでなら多少マザコン気質のある子どもで済ませられる範囲だろう。

だがユウトは自身の腰をヤナハの臀部に強く押し付け始めた。


「………。」


ヤナハはその行為の意図をしっかりと理解しつつ特に嫌な顔はせず、LEDを黄色に一瞬光らせてから包丁を安全なところに置く。

自然な動作で肘を上げてユウトが服の隙間に手を入れやすいように調整する。まるで乗り気のように見えるが、ヤナハはあくまでこの行為にずっと否定的だ。


「………ユウト様……乳房はおやめくださ……い。」

「僕はヤナハのおっきなおっぱい大好きだから……。ごめん。」


ユウトは両手が埋没するほどのボリュームを持ったヤナハの乳房を下から持ち上げるように掴み揉みしだく。


「っ……。」


すでにヤナハの尻の谷間には固くなった男の象徴が押し付けられていた。

ユウトは中指と人差し指でヤナハの陥没した乳首をほじる。


「ふっ………ぅ!」

「相変わらず、凝り固まった乳首を触ると反応がすごい……ね。」


何度も見た光景ではあるが、外で見る一般的なアンドロイドを見るたびにギャップに驚きつぶやいてしまう。

ユウトはヤナハの後ろ髪に顔を押し付けて匂いを嗅ぐ。人間と違って汗をかかないので独特の女の香りはしないが、この体勢で匂いをかぐということ自体にユウトの小さな征服欲を満たす意味がある。

ユウトの勃起したペニスが自己主張を激しくし始めたところでヤナハはユウトの手を軽くほどき対面する形でキッチンの台に背中を預ける。

ユウトは慣れた手付きでヤナハのワイシャツのボタンを解き、きつく締め付けられていた強大なシリコンの塊を外気に触れさせる。


「不衛生……です。」


ユウトがすかさず大きな乳輪を舐め、舌で転がす。

ヤナハは多少非難するような視線を無表情のままユウトに向けるが、そのままロングスカートをおろしてパンストになる。

人間の女性ならブラジャーやパンツなどの下着をつけているものだが、女性器ユニットにはそういったデリケートな部分の保護が必要ないためそのままストッキングを履いている。

実を言うと普段は履いているのだが、今朝ユウトにお願いされてつけていなかったに過ぎない。

いつもの光景がユウトの心の安らぎでもあった。

白い肌に肉厚の恥丘。

短く整えられた陰毛。

ストッキングを丁寧に破き、寝間着のズボン越しにヤナハの股間にこすりつける。

ユウトの下着の亀頭部分はすでに湿っており、次はズボンを侵食しそうだった。


「ヤナハ………だめ?」

「だめです。」

「でも……。」


ユウトはセックスがしたい。

それは至極健全な男子なら当たり前の欲望。すでにだいぶ前にユウトは童貞を捨てているが(少し語弊があるのだが)そこからはセックス三昧だ。だからこそ最初はやはりお願いから入ることで状況を楽しんでいる。

そして何より今日は交渉材料がある。


「今日、また殴られて、蹴られて………だから慰めてほしいなって。」

「理由になりません。」


ヤナハがもしユウトのアンドロイドであればすんなり受け入れられただろう。しかしやはり父親の所有物である限りユウトに性的な接触は極力避けようとしてくる。

元よりお触りですらヤナハにとっては黒だ。

ただそういった意味でユウトは父親に不満を抱えていた。


「やっぱり僕はいらない子……なのかな。」

「……。」

「クラスメイトにとっては僕はサンドバックでしかない。父さんも僕のことなんて愛してないだろうし、ヤナハだって……。」


ずるい言い回し。しかしこの言い方はいわば脅迫であり、同時に何度も何度もヤナハと繰り返してきたやり取りだ。表向きはこの会話が繰り返され続ける。

それは決してヤナハもまた乗り気である、といいたいわけではない。

当然ヤナハはこのなぁなぁな現状に常に疑問を持ち誠心誠意合理的な理由からユウトの性的な行為を断っているのだが、思考し心さえあるように振る舞うアンドロイドもやはり機械。

抜け道を突かれてはなるようにしかならない。

「物は言いよう」なのだ。


「………避妊具をしっかりと装着してください。」

「……わかった。」


多少不満はある。やはり男として生で挿入したい、でもそれは後々問題になる。面倒だ。


だから受け入れるしかない、とユウトは目先の欲望より先の利益を取るくらいにはやはり冷静だった。

ヤナハは目をそらす。その目は果たして諦観から来るものか、嫌悪からくるものか。

ヤナハは予め衣服のポケットに入れておいた0.05と大きく印字された赤い箱を取り出す。

その中から薄い銀紙を取って破き、潤滑剤でぬるっとした半透明のゴムをつまむ。

スマートな手付きでユウトのズボンを下着ごと下ろすその動きには躊躇はない。


「はぁっぐ!」


ビンっと大きく上下に揺れる男性器。

敏感になった部分が布に擦れて透明な液体が尿道口から溢れ出すのが見える。


「…失礼します。」


手早くハンカチでさっと拭き取り、ゴムを先端に被せ、根本までスルスルとゴムの口を下ろす。

ユウトは強制的に剝ける皮からの強烈な刺激で再度声を漏らした。

すぐにユウトはヤナハに抱きついた。

何度か腰を振ってヤナハの秘所をペチペチと叩くだけで挿入はできない。それだけでも気持ちよさは感じるがより最高の場所を探す。

ヤナハが腫れ物に触るかのような優しい手付きで陰茎を自身の女性器ユニットの割れ目へ添えた。


「やっ…なは……はやくっ!」

「挿入させていただきま……す。」


ぐぷっつぷぷっ


体格相応のヤナハの肉厚な秘部がユウトの陰茎を優しく包み込んでいく。

ユウト一気に押し寄せる、熱、圧力、刺激をこらえるように身体を前面に折り、ヤナハの胸元に顔を押し付ける。

直接その粘膜を肌身で感じられない寂しさはあったが、それを埋め尽くすような多幸感が薬物のようにユウトを脳を犯し、包み込んだ。

ユウトを慈愛のこもった動きで抱きしめるヤナハ。


ぐちゅっちゅうっぐ



ゆっくりと機体内に挿入された異物を扱く。きつすぎない程度に、ゆるすぎない程度に。

的確に気持ちの良いところをつつく。


「(ユウト様は相変わらず亀頭の笠部分が大好きですね)……。」

「はぁっぐっ!!ヤナハぁっ!」


ヤナハは心というものに対して関心を持たない。

しかし時折(いつも)身体を重ねるときにするユウトの余裕のない顔は好きだった。それが自分の性的趣向なのかどうかは依然としてわからないが、以前冷静に「アンドロイドに性的趣向があるのか?」と自問自答して「いや、ない」と結論づけている。

しかし、同時にそういった言葉を伝えることでユウト自身が気持ちよさをより感じるとだいぶ前に理解し、時折感じてる感覚を意図的に言葉にするようになった。


「私も気持ちいいです……よ。」


ぐぷちゅっちゅるっ!


ゆっくりとユウトの性感帯を刺激しつつ、急激な刺激の変化をうまない緩やかな快楽を与えるように腰を早く動かしていく。

ユウトもそろそろある程度冷静さを取り戻し、再度ヤナハの爆乳を持ち上げるように揉みしだく。


「っ!」

「僕もわかってるからっ!」


ユウトは手全体を使って乳輪を乱暴に掴む。

ヤナハが一瞬頭を反らし、反応を見せたことでより硬度を増したユウトのペニスは腰の動きに合わせてヤナハの子宮口を小突く。


「ふぅっ……ぅウト様っ!」


キュッと膣の締まりが上がる。

これはヤナハの意図する動きではない。システムに予め書き加えられた「成長」の一部だ。

直接の皮膚と皮膚同士ではないにも関わらずだんだんとユウトの腰使いが荒くなる。

腰を引いて、自身の象徴が目の前の雌を鳴かせているのだと思い、興奮する。

普段は真面目で冷静な彼女が自身の行いで乱れている。そういった征服欲がユウトに優越感を与える。


「はっみんな知らないんだっ!」

「なに……を。」

「僕は童貞じゃなぃ!こんなに女を支配できっ…る!」


果たして俗物的な捉え方でアンドロイドとセックスしたから童貞でないかは今でも意見が分かれるところではある。

ユウトは気持ちよさから取り繕うことはせずぽろぽろと言葉を漏らす。

しかし愚痴とも言えるユウトの本音から、自身を「女」と見ている言動にヤナハは多少思うところがあった。もちろん、前向きな意味で。

ユウトはまるでストレスを解消させるかのごとくヤナハを貪る。

それは今に始まったことではない。昔からだ。

ヤナハ個人としては別段当然のことと認識していた。もし仮にユウトが成人男性でヤナハの所有者なら「道具」としてこき使われるのは当然で、「道具」として生処理に使われるのも理解できる。

ヤナハの潤滑液がユウトの陰毛を濡らしながら、飲み込んでは吐き出してを繰り返す。

挿れて引いて、挿れて引いて、挿れて引いて。

性器のサイズ差から、時折下品な気泡の破裂音が断続的に聞こえるがそれすらもユウトにとっては性的快楽のスパイスだ。


「はぐぁっ!」


にゅぽっん


一瞬ピリッと強い快楽信号がユウトの背骨を上っていく。

瞬間腰を強く引きすぎて膣内から完全にペニスが排出されてしまった。


「はぁっふぅ……。」


びぐんっと一度大きく跳ねるユウトの陰茎。

丁度いい一旦小休止、と息を整える。

昔から腰は動かし続けているがやはりなかなか体力がつかない自分に少し嫌気がさす。

コンドームは少しだけヤナハの膣圧で伸びて先端に最初より空間ができていた。中はきっとカウパーでいっぱいだろう。

己の体液と彼女の愛液を混ぜあって動かしたらより気持ちい事は明白だ。


ジッと股間を見つめるユウト。その目には怪しい光が見え隠れする。

ユウトはゴムの先端を持って引っ張る。


「ユウト様、いけません。」


ヤナハがはっきりと言う。先程はあった若干の乱れは感じさせない。

ヤナハはユウトの願いを何でもきいてくれる。それが公共に置いて犯罪になるものでもなければ何でも叶えてくれていた。いや、犯罪であるものでも家の中であるならばと割り切り叶えてくれさえしていた。


たった1つのお願いを除いて。


「……うん。」


ユウトはまたも不満があるが、それでもいつものことといえばいつものことなので目の前の快楽に集中することにした。ただ言いようのない気持ちを腰の動きにのせる。


つぷぷっぷりゅん!ぷぱっ!ぱぁんっ!!


「………っんくっ!」


中学生とはいえ男は男。

強く腰を上げてヤナハの大きな臀部を持ち上げる。

衝撃で臀部の肉がぷるんと揺れた。

最初に挿入したときよよりなめらかに抵抗なく挿入る。

それほど彼女の潤滑液が分泌されているということなのだろうと思い至ると今のやり取りなど忘れてしまったようにユウトは腰を振り始めた。


「あっ……ふぃ。」

「ああっ!!ヤナハっ!……ヤナハぁああっ!」


ユウトは睾丸がせり上がるのを感じる。

限界は近い。


「ユウトさっ……ま。」


生で挿入できないのなら、せめてとユウトは今の快楽を最大の形で貪る。

肉壁をかき分けて子宮口を何度もノックする。

「いれさせろ!征服させろ!」と雄が雄たる所以を感じさせるように腰を動かすナオトを上から覗くヤナハ。

一縷の可能性を望みながらユウトは最後のスパートを掛ける。


「(そろそろ…ですかね。)……はっ……ふっ…う。」

「がぁっヤナハっ!ヤナハぁああっぁ!でるっよ!?射精すねっ!?」

「はい…、ユウト様……私の膣内で射精してください。」


ぱぁんっぷぱんっぷちゅっぷぐっ!


ユウトが気づかない絶妙な加減で膣圧を高めていく。それと同時に何倍に膨れ上がるヤナハ自身の快楽信号。

ヤナハもまた頭は冷静であるが、同時にこの言いようのない快楽に溺れかけているのは確かだ。


「うん!でるっ!射精るっでるでるっでりゅ!!」

「うっ…く……ぅっ!」


びゅるっ!びゅっ……びゅっ


ヤナハの弱点である乳頭をユウトは意図せず力いっぱい掴んでしまい、ヤナハは快楽でというよりは痛みで声を漏らしてしまうが、それは射精中のユウトにはわかるはずもなく。

じんわりと機体下部に熱が伝わってくるのがわかる。

中学生の若々しい精液がコンドーム内にいっぱいになったのだろう。


びぐんっ!ぴゅっ


「ふっ………んっ……。」


腰が一瞬ぶれて、ヤナハの尿道から透明な液体が一瞬飛び出る。それはヤナハの機体がちゃんと快楽を感じていた証拠だった。


「(私もすこし……達してしまいました…か……。)……は…ふぅ。」

「ふぅっ!あぁっ!いっ………ぅぎ!?」


ユウトも射精したばかりなのに関わらずきつく締め上げてくる膣道による攻めで情けなく声がこぼれた。

ヤナハは遅れてきた波のある快楽で発声機巧が誤作動を起こしたことを悟る。慣れているので一時的なものだと判断しCPUに送られてくるエラー情報を卒なく捌く。

大きく2、3度痙攣して大きく息を吐く2人。

射精による無意識の呼吸の停止と、内燃機関を冷却するための排気。


しばらく、息を整えた後、多少敏感さも落ち着いたところでユウトは腰をゆっくりと引く。


ぷっぷぷぐっりゅ…くぽっ


気泡が割れ淫靡な声を出し、ヤナハの狭い肉厚の女性器から陰茎が吐き出された。

ねと~っと透明な糸が橋を渡し、床にたらっと垂れ落ちた。

ヤナハはちらりとゴムが何か異常事態を起こしていないか確認したが問題はなさそうだった。ユニットをスキャンしてみても想定外は感知できなかった。

ユウトはそのまま腰が引けて半歩後ずさる。

ゴムの先端には白く薄く濁った精液がたまり、抜け落ちるのと同時にぷらぷらとペニスの先端で揺れていた。


「すごく……気持ち…よかっ…た……。」

「私も大変気持ちよかったです。」


ヤナハはゆっくりと硬さを失っていくユウトの男根を優しく両手で持ち上げるとスルスルと男根からゴムを取り外す。

するとその美しいふっくらとした唇を開いて大きく舌を出した。

これはいつもユウトが要求することからすでに恒例の儀式じみた行為だった。

ゴムを逆さまにして中に溜まったザーメンを自身の舌へかき出す。

一拍遅れてぼとぼとと垂れ落ちる精液を一滴もこぼさないように丁寧に口の中へ持っていく。


「ん………ぅ……おいしいです。」

「やっナハ……ありがとう。」


ヤナハは内心味に対しては美味しいと思ってはいない。むしろ苦く、とても口に入れるものではない生臭さだと思っている。

しかしユウトがそういえば満足することを理解しているので言わざる負えない。不快感はない、が理解不能ではあるといったところだろうか。

口の中でまだ張り付いたザーメンをきれいに喉奥へしまった後、ヤナハは口内をすぐに洗浄し、次にナオトの縮まったペニスに顔を近づけた。ひどいにおいだが、これもまた慣れたもので顔に不快感などは表さなかった。


「失礼します。」


一言断りを入れた後、ヤナハは再度大きく口を開けてペニスを飲み込む。いやサイズ差的に言えば飲み込むというほど口の容積を使ってはいない。口に含んだという方が適切だろう。

いわゆるお掃除フェラというものだ。

ユウトは突如襲う鈍い快楽に一瞬腰を引いて、ヤナハの頭頂部に手を置く。サラサラの髪が指に絡んだ。


「ふっはぁっ!……うぅっ…あぁっ!」


ちゅぶっ…ちゅるっ


ヤナハは舌で、皮で包まれた敏感な部分を舐め回し、吸引するように口をすぼめる。

尿道に残ったねばっとしたカウパーと精液の混じった液体を吸い取り飲み込む。

竿もゴムの中で精液が全体にいきわたっていたのできれいに舐め取った。


「んふっう………ふぅ…。」


ずるずるっとヤナハが頭を引くと、口からてろんっとユウトのペニスが出る。ユウトの白い肌と同じきれいな状態になった。

この行為自体、性交渉後には必ずするようにとユウトに言われたからやっているものでヤナハ自体はずっと否定的だ。

もちろんこの行為自体、アンドロイドの「疑似粘膜を清潔に保つ機巧」から人体に外のない分泌液が口から出るから。一部では歯磨きしないでアンドロイドとディープ・キスしたほうがきれいになると叫ぶものもいる。


「……きれいになったかと思われますが一応お風呂に入ってきて清潔にしたほうがよろしいかと思います。」

「あ……うん。…ヤナハも一緒に……どう?」

「夕飯の支度がありますので結構です。」

「そっそうだね。」


ユウトは料理中にちょっかいを出したことを思い出し、あまり迷惑を掛けるのもまずいと冷静に強く誘うことはやめた。

ヤナハはポケットからハンカチを取り出すと口周りと股間部分の水気を取り、服の乱れを整え始める。

ユウトは少しだけ罪悪感を感じつつもそそくさと脱衣所へ向かった。

その罪悪感は数分後には忘れることになるが。

ヤナハは衣服をある程度なおしたあと、手を洗浄してすぐに調理へと戻る。

その顔はまさに鉄仮面と言えるほどに無表情だったがどこか苦笑する顔にも見えた。


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◀西暦2123年10月2日


ママが死んでから2ヶ月ほど時間がたった。

最初はもう会えないと聞いて泣き続けた。でもそれも結局いつかは枯れる涙だった。不登校が続き、時たま家の鈴がなる。

僕は家でいつも一人ぼっちだった。

パパはいない。

帰ってこない。

寂しくても誰も話を聞いてくれない。


しかし小学1年生のユウトが7歳を迎えようとした頃、転機が訪れる。

ユウトは自身の部屋のベッドで寝転がって呆然としていた。

ご飯は否応なく自分で食べることを覚えていた。最初は誰かが出してくれるのが当たり前であったが、それも続かず結局小学1年生にして買い物とデリバリーと冷凍食品の解凍方法だけ学ぶことができた。

家にはゴミが溜まり、洗ってない食器が増え、臭いもひどい。

ユウトがその日自分の誕生日であることも気づいていなかった。それほどに生きる気力。希望を感じない子供だった。


しかしその日はいつもと違っていたのは、確かだ。

一階から、ごとっと物音がする。

ユウトはとっさにベッドから飛び起き机の裏に隠れようとするが、長く運動もせず栄養状態も悪いため足がもつれ転ぶ。

そんな自身の惨めさと言いようのない不安感がユウトを更に恐怖へと誘った。


「ゆうとぉぉ~!」


一階から大人の男性の声がする。

それが父親の声だと気づくのに数秒かかった。父親に対して少しだけ思うこともあるが仕事が忙しいのだろうと、そう割り切るしかなかった。

ゆっくりとふらつく足取りをなんとかまともなものにし、身なりを整える。

一階へ降りるとリビングに父親はいた。


「ただいまユウト。」

「おかえり、パパ。」


父親は目に見えてやせ細り、身なりがみすぼらしくなっていた。

ワイシャツは黄ばみ、ヨレヨレで、少し独特な臭いがする。

栄養状態もユウトと同じでよくなさそうだった。

当然といえば当然で、遊上ヨシヒコは遊上カナが亡くなって一ヶ月、一児の父とは思えぬほどに落ちぶれていたのだ。

それが回復したのか2ヶ月目の今、すぐになにか好転するとは思えない。


「今日は早いね。」


普段ヨシヒコは帰ってこない。

だから帰ってくる事自体が珍しく、早いか遅いか、そんな問い方おかしいのだ。しかしだからこそその物言いはユウトなりの気遣いだった。

もちろんそれに気づけるほど遊上ヨシヒコの精神は安定していないのだが。


「ああ、今日はお前の誕生日だろ?」


そう言われてカレンダーに目を向ける。しかしカレンダーは8月で止まったままだ。8月、その月を見たときユウトは言いようのない吐き気に襲われたが表面上は取り繕ってみせた。


「そうだった。ありがとう。」

「まだお礼を言うのは早いぞ?見てくれ!」


そういうとヨシヒコは目線を背後にある白い箱に向けた。

最初、栄養の偏りからかそちらに意識すらいかなかったユウトだが言われて驚く。

ああ、なんかあったんだ。と。


「なに?それ。」


ユウトが問うと、ヨシヒコは箱の側面にあるパネルに手を添えた。

数秒後、カチッと音がなりランプが付く。

箱の側面が扉のように開く。

乱雑な部屋、家の空気も物理的に良くない中その仰々しい動作が際立って見えた。

ユウトは半ば面倒くさそうに目の座った表情で扉の奥を覗く。

中には質素な給仕服を着た女性が体育座りをするように眠った様子で入っていた。ユウトは驚き背後の壁に背中をぶつける。

すぐに父へと視線を向けるがヨシヒコは穏やかな笑みを浮かべるだけだ。


「そっそれ……だれ?」

「これはハウスロイドだよ。」

「はうす……ろい…ど?」


ユウトにとって父親はもはや血縁だけの関係性でしかない。

だから最初は「(ついに誰かをゆーかいでもしたの……)」とひどい想像をした。


「ああ、ユウトはまだわからないかぁ。これは人間そっくりなロボットでお願いすればいろんなことをしてくれるんだ。」


ヨシヒコはユウトの肩に優しく手を置く。

最初こそだいぶ気が触れたような顔をしていたが近場で見る父親の顔は愛情に満ち溢れているように見えた。


「正直僕らはいろいろあってつらい日々だった。乗り越えるのには時間がかかると思う。けど乗り越えるにはやっぱり生きていかないとダメなんだよ。」


まだユウトにはよくわからない論理だったが何か父親の真剣さを感じ取った。


「だからな?……まずこれに家のことをやってもらおうと思う。」

「グーパ、起きろ。」

『登録された声紋による起動命令受諾。……起動。システム問題ありません。GPHA-0807-08、オーナー、遊上ヨシヒコ様にお使えします。』


機械的な音声が口ではなくLEDの方から発せられ、グーパと呼ばれたその機体は体を起こした。スッときれいな起立の姿勢。

よく見るといささか女性型とは思えない体格にユウトは素直に驚く。


「グーパ、この子が俺の息子のユウト。君にはこの家の家事全般を任せる。ユウトの安全も当然よろしく頼む。」

「最重要命令として認識します。」


美しい声だとユウトは思った。

しかし同時に胡散臭さも感じる。まるで家電が喋ったかのように人間ではないものが人間のふりをする怖さ。


「ユウト、これに命令すれば色々生活には困らないようになる。俺は家に帰りたくても帰れないことが多いから、なにかあったらこれに言いなさい。誕生日プレゼントだ。」


ヨシヒコは得意げにユウトの背中を軽く叩いた。

ヨシヒコにとってのこの行為はいわば愛情なのだろう。彼にとって美談とも言える。だが彼は想像できていなかった。

小学1年生がどれほどこの一ヶ月で心の成長を余儀なくされたのか、そしてどれほどのストレスを抱えていたのか。どれほど大人になっていたのか。

ユウトは心からにじみ出る黒い気持ちをグッと抑えて、父親に笑いかける。年相応の笑みにみえるように。

動かさなかった表情筋が悲鳴を上げる。


「ありがとう!パパ!」

「ああっ誕生日おめでとうユウト!」

「おめでとうございます。」


ここにひとつの歪な関係性が生まれた。


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◀西暦2126年6月


遊上ユウトは小学4年生になり10歳となっていた。

その日、遊上ユウトは気分が良かった。クラスの中、廊下を背にする壁の電子掲示板には今月の献立表が映し出されており、今日の給食がなにかを指し示していたからだ。


「今日はフカヒレスープとわかめご飯だってよ!」

「たのしみぃ~♪」

「牛乳上げるからご飯多めにしてくれなーい?」


ユウト以外にも人気の高いメニューでクラス中浮足立っているのがわかる。


次の保健体育の授業が終われば、給食なのだ。無理もない。

4時間目の予鈴が鳴り響き、電子掲示板に集まっていたクラスメイトたちが一斉に席に戻る。

クラスいちの太っちょの飯田くんだけ残っていて近くの席の女の子に注意されているのが見えた。


自動ドアが音を立てずに開く。ユウトのクラスを受け持つ次の授業の教員が入室してきたのだ。しかしクラスがすぐにざわつきはじめる。

それはユウトも同じで首を傾げていた。

いつもは1人の教員かリモートで行われる授業なのだが、その日は男と女の先生が入ってきたのだ。


「はーい静かにー。」


男の先生、前田先生が声を上げてクラスのざわめきを収める。


「今日は男女別れて授業を行う。女子は鈴木先生についていって視聴覚室に移動しなさい。」


クラス中から「なんで~?」とか「めんどくさーい」という声が絶えないが前田先生が人にらみすると皆おし黙った。

しばらくして教室の半分の席が空いた後、前田先生が電子黒板に手を触れる。すると大きな文字が浮かぶ。

「性教育の大切さ」と書かれた文字に僕は……遊上ユウトはその日新たな知識を授かった。


●


その日の給食は無言だった。

いつもなら給食の取り合い、交換のしあい、交渉ばかりの時間だったがみんな黙々と食べていた。強いて言うのであれば、男子は女子を女子は男子を見ては目をそらし、避けているようだった。


険悪なムードではないがどう接していいかわからないといった様子で無言を貫いていた。

遊上ユウト個人としては依然としておいしい給食を食べているのにも関わらず、結局あまり美味しさに集中できずに早く家に帰りたい欲求が強まっていた。

その意識からか5,6時間目はなんの授業だったかも覚えておらず帰宅することになる。

走って帰ってきたため汗だくになり、荒い息遣いでユウトは家の扉を開けすぐに閉める。


「おかえりなさいませユウト様。」

「あっ……うん!」


ユウトは声の主、グーパへ目を向ける。

すぐに目に入る豊満な胸部に視線が引っ張られつつも、彼女が事情を聞きたそうにしているのを無視して走って2階の自室へと向かった。


「何かあったのですか?」


2階の廊下でグーパの質問を聞き取ってしまったが、


「いや!?今日も学校楽しかった。僕疲れて眠いからしばらく起こさないで!」

「……かしこまりました。」


ユウトはゆっくりと扉を閉める。

目的は決まっていた。そしてアンドロイドに簡単な命令をすればとりあえず部屋には入ってこないだろうと思い、安心してランドセルを床に投げ捨てる。

自室に置かれた高級なデスクトップパソコンを指紋認証で起動させ、検索フォームを開く。検索欄にはこう入力した。

【セックス エロ】と。


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◀西暦2126年8月15日


ユウトが性教育を終えてから2ヶ月経つか経たないか。

ユウトは毎日暇な時間があれば、パソコンを起動してオナニーに時間を当てていた。

好奇心は躊躇を知らず、多くの知識をユウトに教えてくれる。国の検閲からあまりマニアックな部類にいかなかっただけ運が良いとも言える。

授業では教えられずとも、自然と女性器に挿入したように自身の陰茎を右手でつかみ、優しく動かす。時には強く握ったり、睾丸を触ったり。

ユウトはこの2ヶ月まさにオナニー研究に明け暮れ猿とかしていた。


そして今日。

学校はなかった。祝日というわけでも、何か振替休日があったわけでもない。いわゆる家の用事だ。今日はユウトにとって運命の転換ともいえる日。

母親、遊上カナの命日だ。


「(またこの日が来た)……。」


母親の愛を深く自覚する前に旅立たれたユウトにとってこの日は面倒な日と思っていた。

見る人多くが暗い顔をする日だからだ。つまりユウト自身も周りと同じように暗い顔にしなければならない。いつもならすでに家に帰って部屋で自慰をしている時間にも関わらず、今は母親の実家にいる。

学校のトイレで時たまペニスをいじることはあったが、流石に人の家で自慰をするわけにはいかない。

ユウトは手早く終わった集まりの次にある食事会の合間で暇そうにしていた。

縁側に座り空を見上げる。


「よぉ。」


後ろから野太い声がかけられる。


「……ダイキお兄ちゃん。」


ユウトが顔を声の主に向けると苦笑いしてこめかみをかく大男がいた。

彼は卜部ダイキ。この卜部家の現当主卜部トシゾウの孫である。

孫といえばユウトもまた同じ孫なのだがユウトと祖父はほとんど話したこともない。

ユウトは素直な笑顔で彼を迎えた。母が死ぬ前、小さな頃からずっと遊び相手として面倒を見てくれていた兄のような従兄弟。


「最近はどう?」

「どうって……別に普通だよ。」

「普通か……学校は楽しんでるの?」

「あんまり。」


卜部ダイキは優星使大学ロボット工学部電子工学科1年生で今年入学したばかり。

顔はそこそこ美形だがところどころ凹んだり出っ張ったりしているのでダイキ自身は顔に自信はないらしい。

髪は黒髪をオールバックにして普段からガッチリと固めておりサイドが剃られてる。本人は拒否していたのだが大学の先輩に強制的にさせられたらしい。

ガッシリとした骨格と戦略自衛隊愛好会で行われる鍛錬、そしてこの実家のシゴキによってスーツの上からでもわかる筋肉量に密かにユウトは漢としての尊敬の眼差しで見ていた。

そんな外見とは打って変わって優しくおとなしい性格なのでユウトもとっつきやすかったのかもしれない。


「ダイキ兄ちゃんは?」

「俺?あーまぁいろいろ先輩と話すのは大変だけど楽しいね。」

「そっか、よかった。」

「……ふっ…またその癖出てるよ。」


ユウトは数年前、葬式でこの家に来た際木陰で一度本音を口にしてしまったことがある。それを出るに出られずきいてしまったダイキと仲良くなったのだ。

ユウトの癖、つまりつい大人ぶって相手に気を使う部分を直すべきだと言ったのだ。

子供は子供らしく甘えて幸せになってほしいとダイキはユウトに対して思っていた。


「まぁ、………羨ましいよ。」

「その心は?」

「僕は……運動もあんまり。勉強も去年言ったときからあんまり変わってない。パッとしないし。」


ユウトは俯くわけでもなく呆然と大きな庭を見渡した。


「うーん……、ユウトは彼女とかはつくらないのか?」

「えっ!?あぇっ……まぁちょっと荷が重い…かな。ダイキ兄ちゃんは?」


あまりに突然のフリで驚いてしまったユウト。普段は落ち着いて俗物的な話題を自分からはしないダイキからは珍しい話の振り方だった。

第きはとても真面目な性格で見た目とは裏腹にサラリーマンになりたいだなんて言っていたほどだ。


「俺も。どうにも女の子って言うのは難しいからな。」

「僕もまぁ……女の子よくわかんない。」


黙る。

しかし悪くはない気がユウトはした。無駄な沈黙ではなくこの空気を楽しむことこそなにか意味があるんじゃないか、人付き合いとはこういうことじゃないのかと思うようになったのは最近だ。

そして何より自分だけがそういった起伏のない人生を歩んでいるのではないか?と小学4年生にして達観した思考をしていたが、ダイキの前では先達に憧れる子供でいられるような気がしたのだ。


「あ……、そういえば最近グーパの方はどうなの?」

「あーまぁ変わらずかな。便利だよ。」

「うちのはまさにザ・人形って感じだから怖いんだよなぁ。」


ダイキが愚痴をこぼすのも仕方ないとユウトは納得してしまった。ちらっと食事会の準備をしているアンドロイドに目を向ける。

何体もいるのに違いが見分けられないほどに似た市松人形のような女性型アンドロイド。ついユウトは家にいるグーパのことを思い出すが、どっちがいいかと聞かれればうちはあれで良かったと思う。

ダイキがこの話題を切り出したのには理由がある。

去年ユウトがこの家に来た時、魚のほぐし方がわからず給仕アンドロイドに聞こうとした。その時そのアンドロイドはユウトに顔を向けた後ニッコリと笑ってなにも言わずに去っていき、結局食べれなかったこと。

そのことを後にダイキに「家では魚、グーパがほぐしてくれるから。」と言ったことからダイキが、ユウトがグーパにいつもお世話になっていることを把握したため時折話題に困った時ユウトにこの話題を振るようになった。。


「まぁさ、なんか趣味とか見つけるともっと楽しいかもしれない。」

「趣味?」

「そう、サッカーとか読書とかゲームでもいい。何か夢中になってやれることを見つけたらもっと楽しいかもしれない。保証はできないけどな。俺は愛好会で打ち込めるものを見つけた。」

「(夢中って言ったらやっぱりオナってることだろうけど流石にいえない)……趣味。」


ユウトが「いやそもそもオナニーは趣味に入るのか?」と思考し始めたとき、遠くから声がかかる。どうやら食事の準備が整ったようだった。

ユウトは豪勢な和食は食べれないものが多いので再び憂鬱な気持ちになるのだった。


●


家に着いて、すぐにヨシヒコは仕事に戻ると言った。

少しだけ、何もなかったかどうかグーパに確認をとって、家を出ていく。

そんな父親に諦観の目を向けつつもすでにユウトの頭の中は早くちんちんを触りたいという欲求で埋まっていた。


2階の廊下を進み自室へ行く途中、父親の寝室の扉が全開になっており部屋の中が見える。

ユウトは足を止めた。

今朝急いで法事の支度をしたせいか衣服が乱雑に散らばっていた。

タンスの中から多くの衣服がはみ出る中、ユウトの視界が一部に留まる。


紫色の美しい刺繍が入ったショーツ。


それは紛れもなく、母親、遊上カナの下着だった。

ユウトはとっさにその下着を手に取る。

ユウト自身の自覚的な性癖に、マザコンはないはずだがその下着を持って部屋に戻る。扉を閉め忘れるほどに興奮しながら。

母親の下着だからというよりは「女」の下着という点でムラムラとしてきたのだ。

自身で調べたあらゆるコンテンツでは女のパンツを使って男根をしごき、クロッチで射精を迎える作品はいくつもあった。

手でする感覚に飽きたわけではないが、今日は魔が差したということで布で擦ってみるのも悪くない、と思ってしまう。


幸いデリケートな部分を包む布なので怪我することもないだろう。

頭の中では射精でクロッチ部分を精液が突き抜け、デロデロになった下着を想像する。背徳感という言葉をまだユウトはしらないが。後に理解することだろう。

ユウトはベルトを解いてベッドに横たわりズボンを下ろす。

臭いはしない、当然だ故人でありちゃんと洗濯されたまましまわれていたものだからだ。だが自身が「臭いを嗅いでいる下品な行為」をしていることに堕落さを感じて滾った。


「ふぅっ!」


パンツを陰茎にかぶせる。

なめらかな肌触りのナイロンが先端から吹き出たカウパーを吸収してユウトのペニスをすべて覆い隠した。

パンツごと固くなった肉棒を握り扱く。


しゅぐっ……しゅぐっ……しゅっ!


普段の自慰とは異なる快感にパンツを使ってのマスターベーションは正解だったなとユウトは朦朧とする意識の中思った。

慣れないからか、限界は近くおよそ3分もとめずにこすっていると、睾丸がせり上がっていくのを感じた。


「(これは……めっちゃでる…)…はぁっふぅっう゛!」


ユウトは、もはや下着が汚れて後々どうしようか?と先程まで考えていたことなど忘れて、女の大切な部分を普段から守っているであろう部分を己が精液で蹂躙する様を想像し背徳感を感じ征服欲が満たされていく。


だからこそ階段からの音に気づかなかったのだ。


普段なら音だけでなく、振動ですら訪問者が入れば気づく。

玄関から一番遠い部屋であるにも関わらず、誰かが家に訪ねてきたことを察するほどに。

だからこれは慢心だ。自分は幾度となく危険を回避し、危ない状況になったことなどないしこれからも永遠にそうである、という慢心からくる油断。


「ユウト様。」


驚いて声を上げるまでもなく、急いで布団を体にかけるが、今朝起きた後乱雑に布団を剥いだためかからまって上手く下半身を隠せてはいなかった。

見れば部屋のドアを開けてグーパが佇んでいた。

当然視線はユウトの下半身だ。普段ならノックをするであろう彼女も扉が開いているのだからノックなどしないし、何かあったのかと入室してくるに決まっている。

彼女を責めることはできない。ユウト自身も自分で納得するほどにこれは自分が悪いと思った。

ユウトはこの世の終わりのような顔をして、顔を下へ向け俯く。

敗北感、罪悪感、屈辱、恥ずかしさ。

多くの自責の念が渦巻いて涙が溢れてくる。


「ユウト様、奥様の下着を返却してください。ご主人様より早急に処分するよう仰せつかっております。」


しかしユウトを糾弾するわけでもなく、また見なかったことにする素振りを見せるわけでもなく淡々と言葉を紡ぐグーパ。


「あっ……ぇ…………え?。」


ユウトが顔をあげてグーパの顔を見る。そこには普段と変わらない表情を向けてユウトに注文してくるグーパの姿があった。

顔をしかめるわけでも嫌悪感を持った風でもない。


「ご主人様から「遊上カナの衣服をすぐに処分してくれ」と命令が出ています。」

「あ……う…。」


なんと言えば良いのか、隠せていない先程までガチガチに固まっていた陰茎がその緊張を解き毛布に柔らかくなってしなだれかかる。

右手にはユウトの尿道球腺液で湿ってぐちゃぐちゃになった下着が握られていた。

グーパはドアを完全にあけて入室した後、ユウトを見ていたのかと思ったがどうやら下着を見ていたらしい。

彼女が動きを見せたと同時にユウトはびくっと肩を震わせた。

ユウトはすかさず、まるで早く事が終わってほしいという様子で下着をグーパへ渡す。

グーパはそれを丁寧に受け取ると、身を翻して退室しようとした。

しかしユウトはつい声を出してしまう。


「かっ……あ…え?あのっ!!」


ユウトが隣の部屋まで響いたであろう声を上げるとグーパは立ち止まる。


「何か?」

「そっ………ぁ…なんとも…思ってなぃ…の?」


ついに言葉が出る。

現状を把握したいという欲求が強く指し示され、やっと出た言の葉。


「何をでございますか?」


心底何について聞いているのかわからないという顔をしてグーパはユウトの目を見つめる。

嫌味や、軽蔑は感じられない。純粋な聞き返しだ。

普通なら一般的に男性の自慰行為を女性が見れば不快な思いをした、となる。しかも母親の下着を使ってやっていたならなおさら気持ち悪がられるだろう。


「その……それで…やってた…こと。」


ユウトが震える指先で指差したのは母親、遊上カナの下着。

グーパは確認するように左手に持った下着を見るが、すぐにユウトへ視線を戻して言い放つ。


「ユウト様が行っていたマスターベーションについてはなにも感想を言える立場にありません。年相応の自然な行為だと理解しています。しかし、ご主人様による命令の優先順位が高いため遮る形となりました。」


淡々と経緯を述べる彼女にやはり侮蔑的な意図はなさそうだった。

外見は見麗しい成人女性でもやはり機械といったところだろう。

ユウトはひとまず、唯一の家族ともいえる信頼を持てる間柄が破滅する未来を回避できて安堵した。

そして同時に見た目が女性の口から「マスターべション」などといった言葉が聞けたことにより良くない欲望が湧き上がる。

しかしまずは流石に服を着ることとする。

彼女も命令を遂行中ということなので邪魔せず、後でその欲望をゆっくりとすすめることにした。


「それでは失礼します。」

「う……うん。」


バタンッと扉が閉まると同時にユウトは脱力してベッドに横たわる。

一時は絶望、その後困惑、そして安堵、一瞬のようなやり取りの間に膨大な感情の起伏がせめぎあい気疲れした。

うち太ももに付着した冷たい粘液が冷えて、気持ち悪かった。


●


その夜、夕飯時。

いつもどおりユウトの父親、ヨシヒコは帰ってこず。テレビもつけないまま静かにユウトは夕食をとっていた。

グーパは背骨下部にある(人間の尾骨あたり)ソケットから給電すれば食事は必要ない。5時間の充電で1周間は稼働できる(運動量によるが)。

よってグーパという第三の家族がいても結局ユウトはひとりのままだ。

ユウトは脳内は未だに先程見られてしまった自慰行為のことで埋めつくされていた。なんの問題もなく終わったかのように思えたが、やはり恥ずかしいものは恥ずかしかったし半ば自暴自棄になっている気配もあった。

少なくともこれからは無闇矢鱈にオナニーするのは控えるべきだと考え、それと同時に楽しみが減ることへの憂鬱さが自棄を加速させていた。


「……グーパも食べない?」


短絡的だがやはり嫌われたんじゃないかと心配になりユウトは珍しくコミュニケーションを取ろうとする。家族は一緒にご飯をとって楽しく食事するべきだと思うからだ。


「私に人間の食事は必要ありません。」

「でも食べれるんでしょ?なら食べてほしいな。」


ユウトはご飯を口に含みながらつぶやく。顔はグーパに向けずに。

直視などできないほどに気まずいのだ。

そしてなにより意図がバレてほしくない。というのもあった。


「……かしこまりました。」


命令と受け取ったのか、それとも彼女自身そうしたほうがこの空気を改善できると判断したのか、それは神のみぞ知るところだが、決して嫌そうではないことはたしかだ。

グーパが手早くユウトと似通った品をテーブルに置き、対面位置で座席に座る。

なにか話題を作らねば、とユウトは強迫観念じみた思考で考える。

しかし出たのは結局今一番疑問に思っている部分だった。


「……なんでママの下着を……捨てるの?」


結局そこに行き着く。

自身もおかずとして使っていた手前恥ずかしいが、遊上家の唯一の息子として聞くべきだと思った。素直に。


「ご主人様から仰せつかりました。曰く「そろそろ、いろいろ乗り越えて次に行くべきなんじゃないかって思うんだ……。服を着ようとするたびにカナの顔が目の前に見える。……疲れたんだ。…だからこれら全部処分してくれないか?」と。」


グーパの首筋から父親の声が聞こえユウトは状況を把握した。

自身はすでに乗り越えた気でいたが、どうやら父親はまだのようだった。

しかしユウトは苛立ちを覚える。それは結局忘却に過ぎず、母親の存在をなかったことにしようとしているだけなのではないか?、と。

もちろん下着を捨てるな、といいたいわけではない。がそれでもせめて自分に相談してほしかったと悲しくなる。


「グーパはパパの命令なら何でも聞くの?」

「はい。」


即答。なんの迷いもなく答える姿に気品と誇りを感じる。しかし面白くはない。

だから聞きたくなった。


「僕の命令は?」

「………当機の所有者である遊上ヨシヒコ様の命令に反しない限りは従います。」


その言葉を聞いてユウトはすぐに思いつく。日頃からそういったことを考え続けていたからこその思考。だが焦ってはいけない。


「グーパは僕のこと、どう思ってるの?正直に教えてよ。さっきのことも含めてさ。」

「………ユウト様は普段から聡明であると感じます。学力的意味合いではなく人格的意味合いです。しかし年相応な反応を隠す癖があると感じます。当機としてはもっと頼っていただいて構いません。」


ユウトは少しだけ驚いていた。

これほど何か考えているとは思っていなかったのだ。ロボットはいわば自由度の高い作業できるだけの機械としか思っていなかった。

感情や意思、思いを抱えているとは想像できなかった。

胸のうちにある感情を上手く理解できないユウトだったが、つい調子に乗ってしまう。


「じゃあセックスさせてよ。」


ユウトは子供だ。それは誰がどう見てもそう答えるだろう。もう一度言う必要はない。しかし彼は自分自身を同年代よりも精神的に成熟した存在だと認識している。おごっているのだ。だからそういった直球な言葉を使ってしまう。


さて、遊上ユウトは現在小学4年生で10歳だ。後2ヶ月もすれば11歳になる。だがそんな年齢でアンドロイドの詳細を理解しているわけがない。

例えばアンドロイドには「行動記録」というものが存在している。

パッと見ただけでは数字の羅列でしかないが、専用のソフトに入力することでいつどこで何が起きてどうなったかを正確に示す。

人型のドライブレコーダとも言える。

よって遊上ユウトは安易な言動ですでに反社会的な行為に手を染めようとしているのだ。もちろん所有者がそう判断しなければ問題はないが、子供がアンドロイドに「セックスさせろ」というのを認める親が一体どれほどいるだろうか?

少なくとも一般的にタブーとされるものだ。

確かにアンドロイドは慰安機能も備えている。が、それが子供の教育によろしいかと言われればそうでないほうが多いし多くの親が認めないだろう。


グーパはLEDを黄色に点滅させて、押し黙る。

思考しているのだ。現状を。


「……許可いたしかねます。」

「なんで?」


思っていた回答が得られずに箸をその場においてユウトは不満を口にする。それと同時に男としてどこか傷ついていた。


「まず、私に生殖機能が備わっていないため行為自体が物理的に不可能です。次に私は人間ではありません。よって道具を使用して快楽を得ることを「セックス」とはいいません。そして仮に生殖できる条件が整っていたとしても、子供に責任能力はなく、一般的に未成年による性交渉は概ね禁じられているためです。」


どうやら彼女自身が「嫌だから」という理由で断ったわけではないということがわかったのでユウトはひとまず安心した。男心が傷つくのは防げた。

ただ生殖器がついていないと聞いて落胆はせざる負えない。

ユウトは、というよりやはり子供は相手が人間に見えれば、似ていれば生殖器もついていると勝手に考えるだろう。


「(じゃあセックスはできない……不便だなぁ)」


女の価値を穴としか思っていない、そんなクズの思想が垣間見えるユウトの思考に誰もツッコミを入れることはできない。

しかしユウトは認識していないがかなり運がいい環境にある。

ユウトの父ヨシヒコはアンドロイドに対してはさほど関心がなく、大雑把な命令とそのばその場の命令しか出さない。よって行動記録にユウトの非常識な言動や行動があっても確認はしない。


「………。」


人間の女性ならひっぱたいているであろう状況にも関わらずグーパは黙々と食事を取り続け、ユウトは思案していた。多少のお願いは聞いてもらえる。すでに自慰行為はバレている。女に興味があるユウトにとって目の前のグーパはまさに未開の地、好奇心が掻き立てられる。

だからこそどうにかしてエロいことがしたいと思うのだ。


「…じゃあさ、グーパは勉強とか教えられない?」


だからこれは妙案だと思った。


「可能です。算数、国語、理科、社会、英語、地理、歴史などあらゆる義務教育の知識をインプットされています。」

「良かった。じゃあ保健体育をお願い。」

「かしこまりました。」


ユウトは考えた。直球でダメなら搦手で。回り道すればいい。

セックスではなく、陰茎を膣に挿入する行為と表現すればいいのだ。そして言質さえとってしまえばあとはどうとでもなる。アンドロイドは忘れることができない。故に一度あったことをなかったことのようにとぼけることはできないのだ。

少しのまもなく許可されたことにニヤつきが止まらないユウトだった。



ユウトとグーパが食事を終えて、ユウトの部屋。

食後から1時間ほど経って、2人は1室のベッドに腰を掛けていた。


「ユウト様、保健体育の教科書を表示してください。」


本来なら家で勉強するのなら壁の表面に投影された教科書を見るのが手っ取り早い。しかしユウトがしようとしていることはそんな座学ではない。体験実習と言っても良い。


「いや、教科書に書かれていることは授業でやるから大丈夫。」

「ではなにを?」

「まずグーパに裸になってほしい。」

「許可いたしかねます。」


ユウトは当然この返答を予測していた。

だから分解して細かく、際どく話を持っていく。目的にまで。


「同じ種別の言動が繰り返されました。ユウト様、アンドロイドには行動記録というものがあり常にアンドロイドが見聞きしたものを記録として保管しています。その行動記録はオーナーのみが確認でき、民事・刑事に関わらず証拠足り得る情報として扱われます。」


不意に忠告のようなことを言ってくるあたり、感情や心がないというわけではないということを知らしめてくる。彼女はユウトの言動から演算して教育に良くない事象が起こると判断したのだ。

突然想定とは違う情報が出てくることにユウトは驚いたが表には出さない。


「(行動記録……聞いたことない。ハッタリかな。……いや本当だったとして父さんが確認するとは思えない。つまりいつもどおりに振る舞ってさえいれば父さんは疑問に思わずその記録も見ようとはしないはず……。)…そっか。」

「でも大丈夫だよ。僕は純粋に勉強したいだけだから。もし仮に僕が間違ってたらその行動記録をパパが見て判断するでしょ?大丈夫だよ。」


もっともらしいことを言う。


「それに伝え方が悪かったけど、グーパには服を脱いでもらって教科書の図ように女性の体が説明と同じように作られているのか理解したかったからなんだ。」


普通なら人間は言葉の裏を重視する。

今の言葉を普通の女性に言ったところで「身体が目当てなんでしょ!?」と殴られるだけだろう。だがアンドロイドは基本的に言葉通りに受け取る。

もちろん言葉の裏を読めないということはない。しかし不得手としているのだ。それが、ある意味未だに「道具」と考えられる一番の所以だろう。


道具が初めて「察し」たならそれは道具でなくなるのだろう。


「合理的です。余計な物言いをして申し訳ありません。」

「いやいや、グーパは僕のことを思っていってくれたんだよね?ありがとう。」


ユウト自身これは本心だ。お礼という意味で。

彼女と友好的に接し、利益を得る。もし知らない情報があるなら教えてくれるのならなお良い。と、打算的なことを考えているが、もともと彼女に対してユウトはそこそこ好意的だった。ただそれをもう少し強調するだけのこと。


「しかし私は人間の女性と同じ生体構造をしていません。それは外見的にもです。故に参考になるとは思えません。」

「そうかも知れないけどそういうことも理解するために見たいんだよ。」

「………かしこまりました。」


グーパはそう言うと、購入時から来ていたデフォルトの質素な給仕服のリボンをほどき始める。そこにはなんの躊躇も感じさせず、スルスルとボタンを解いていき彼女の機体があらわになる。

素早い手つきで脱いだ服が皺にならないように畳み、ベッドに置く。

ユウトはすぐに顔を反らす。

目の前の光景をすぐに直視できなかった。自身で言い出したことでも脳内の想像と現実はやはり違う。

顔を背け、目線だけで確認する。気づかぬうちに椅子に座ったユウトは膝の上で拳を握りしめて、まるで社会人の面接のように背筋を伸ばしていた。

視界に大きく捉えられる肌色。

色白でシミひとつない美しい肌に、女性らしい、いやにわかには信じられないほどエロい殻のライン。ユウトはすぐに股間に痛みが走ったのを感じた。


「脱ぎ終わりました。」

「えっ……う…あ、うん。」


顔が熱くなるのを感じる暇もない、しかし自分で勉強のためだといった手前、完全に見ないなんてことはできないししたくない。

ユウトはギンッと目を見開いて、この状況を最大限楽しめるように集中し覚悟を決めた。


「じゃ……軽く説明してくれる……教科書の図と比べ……て……さ。」

「かしこまりました。」


グーパはレーザーポインターを使って壁に投影された教科書を指し示す。


「まずこの図の女性と大きく異なる点から説明させていただきます。何かわからないことがあればおっしゃってください。」

「はじめに乳房です。」

「……おっぱい。」


ユウトの非常識なつぶやきも聞き流される。


「はい、人間の女性は個々によってバストサイズが異なります。女性は一次性徴、二次性徴と肉体が変化していき丸みを帯びた体型に変化していきます。この女性は「質問!」……はい。」


だが結局ユウトは淡々とした説明に耐えきれず口を挟み始める結果となる。


「グーパのスリーサイズはどれくらい?」

「なぜ私の詳細な機体情報が必要なのですか?」


「エロいからっ!」とは言えずにユウトは苦笑いしながらホラを吹く。


「ほら、グーパは今!目の前にいるわけで、具体的な数値とか色々知ってると経験として覚えられるかなって。」


普通に具体的な大きさを知っておけばよりエロい妄想が捗るからである。

例えばバストサイズを知っていたとすれば、本人がいなくとも巻き尺で「ほーこんなにでかいのか!」と簡単に理解できるからだ。

普段目にしている身近な人の普通の姿を見て「あ、今この服の下に何cmのデカ尻が入ってるのか!と楽しめる。

知ることで征服欲を満たすという意味も持つ。


「私はバストが100cmのIカップでウエストが60cm、ヒップが85cmに設定されております。」


ユウトは素直に「でっか……マジボンキュッボンじゃん。」と今でも残る古いスラングでつぶやいた。


「グーパがそういう体型になりたかったの?」

「いえ、………ご主人様の趣味です。」


一瞬言いよどんだのはやはりオーナーのデリケートな部分だと判断してだろう。しかし別に口止めされているわけではないと判断して伝えたようだった。

ユウトはイラッとする。

自身が好ましく思っているモノが他人に用意されたものだと思うと苛立ちは隠せない。そこまで大人ではない。

まだそれでラブラブなカップルとかなら理解できるが、ユウトは父親が本当にグーパに興味がないことを知っている。だからこそあてつけのような錯覚を感じるのだ。

「興味ないなら、勝手に設定するなよ。」と。


「……へーまぁいいや、ともかくすごくエロいよ。」


ユウトは軽く褒めるように言ったがグーパは無表情を少し壊して顔を顰めた。

彼女の顔の変化にユウトは肩をビクリと動かした。


「ユウト様、アンドロイドは禁止用語という個人ルール設定が存在し、それに抵触する言葉をアンドロイドに向けた場合、警告と順次通報する場合があります。私の場合はご主人様が特に設定していないため問題ありませんが、仮に「デフォルト」と設定しただけでも今日だけですでに数度抵触してしまっているので、今後のことを考えるのであれば気をつけたほうがよろしいかと思います。」

「そ……そっか……不快にさせたならごめんっ!」


素直に、素直に接する。


「いえ、ユウト様が悪意を持って攻撃的に使いたかったわけではないと理解しております。褒めていただいたのだと認識しています。」

「そう、綺麗だなって。僕は好きな……たっ体型。」

「ありがとうございます。」


グーパはそのまま「次は…」とそれた話を戻す。

ユウトは未だに直視に慣れないが舐め回すように彼女の裸をみる。一般的な女性とは違う。

乳輪や乳首はなく、女性器もない。

淡い希望ではあったが実はまんこが見れるんじゃないかと期待していたのは事実だ。

もちろん食事の際に生殖器がないと言っていたのでわかってはいたのだが。

まぁ、それはそれとして大まかな形はやはり女性で誰が見ても興奮はできるだろう。極薄のボディースーツを着ているようなものと思えばむしろエロい。


「グーパは乳首とかそのじ…女性器とかないんだ…よね?」


脳内が冷静でもやはり言葉にすると恥ずかしい。

確認というよりは少しだけ嫌味を孕んだ言い方にした。

グーパは一度自身の機体をみてユウトがなにを疑問に思ったのか判断する。疑問に思っているわけではないことは流石に彼女でもわからなかったらしい。


「申し訳ありません。……私は家事を前提としてカスタマイズされております。一般的な家事と子供の世話に乳頭部分や女性器は必要ありません。しかし大まかな外見は「母親らしい母性を感じさせる体型」として製作されています。」


しかし別の意味で自然と、ユウトが聞きたそうにした部分を読み取る。「それなら大きい胸や大きな機体も必要ないんじゃない?」という疑問。

ユウトはすっと立ち上がり、グーパへ近づく。

ユウトがもし仮に成人に近い男性であればこんなことはしなかっただろう。ただただ「きれいな女性からエロい言葉が連発された」というだけで我を失う行動をするわけがない。

なまじ世俗的な性知識ばかり増やすからこうなる。

特に距離を取るでもなくそのまま立ち続けるグーパに対してユウトは自然と手が出てしまう。グーパの大きく豊かな左乳房に触れて握ったのだ。

ほんのりと手のひらに伝わる暖かさ、柔らかさ。はっきりとした張り。


「………。」


ユウトはとっさに「まずいっ!」と思った。

ユウトの中ではすでに彼女はひとりの女性としてみている節がある。

そんな相手の身体を許可もなしに触れることは、子供彼にとって怒られる行為。


「あっごめ……。」


謝る意思はグーパにも伝わっていたが、しかしユウトは右手離すことはなかった。

言動と行動が一致しないほど混乱している。


「……ユウト様、一般的に所有者でない者、所有者の許可がない者がアンドロイドの性的とされる部分に意図的に触る行為は犯罪として処理されます。よって右手を至急、当機から離してください。」


ユウトに非難の目を向けるわけでもなくきつい責めるような口調でもない。

まるで仕方ない。というような雰囲気で優しくユウトの手を両手でつかみ機体から遠ざける。

ユウトはその動きを皮切りに反射的に距離を取る。

ユウトは罪悪感と後悔を抱え、視線がゆっくりと落ちていくが、グーパはそれを良しとはしなかった。


「ユウト様、先程から…とう…当機に対して性的興奮を覚えているように感じます。」

「えぁっ……そんなことっ!」


あくまで、授業という名目で始めた行為をそう断ぜられるのはまずい。


「責めているわけではございません。異性の身体に興味を持つことは健全であり他者の権利を侵犯しない限りは自由にすべきと考えます。しかし……当機は人間の女性ではありません。」


エロいことは悪いことと昔から言われ続けており今では検閲もすごい。しかし本来そうしなければ子孫繁栄は難しくなっていく一方だ。


「ユウト様は勉学のため当機の衣服を脱ぐよう命令されましたが、ユウト様の教育上よろしくない結果になりうると判断します。」


ここが分岐点。


と、ユウトははっきりと思った。

臆病でいればなにも手に入らないが安全だ。ローリスク・ハイリターンを心がけるべき。しかし動くときに動かねば一生手に入らない。


「違うっ!」


精一杯怒鳴るように伝える。


「………。」

「僕はあくまでグーパで保健体育の復習と予習をしようって……思っただけで!」


しかし出るのは年相応な言い訳のような言葉。


「ではなぜ陰茎を勃起させているのでしょうか?」

「!?」


ユウトはとっさに内股になって中腰になる。気づかぬうちに寝間着にテントを張っていた。

それは当然でユウトはまだネット知識で知ったかした子供でしかない。

目の前に成人女性の擬似的な裸体があれば勃起しないほうがおかしい。


「やっこれは!…ごめっ…んな…さいっ!」


もう辛さすらあった。

エロいものがみれればいいやという軽い考えでこの事態を招いている。

開放されたくすらある。無様でも謝罪して、誠心誠意誤って拝み倒してなかったことにしてもらいたい。きっとグーパなら許してくれるはずだと。

涙がこぼれそうになる。


「いえ、健全な肉体だと評価できます。」


しかし糾弾の声は来ない。


「年相応の反応です。……多少興奮材料が異常ではありますが。」


この歳から家電に興奮するようではまずいとグーパは考える。


そしてこの言葉こそユウトにヒントを与えた。


「(まてよっ!?これはむしろ攻める部分じゃ!?)」


ユウトはバッとズボンとパンツを下ろす。

一瞬先端がゴム紐に引っかかって強制的に下へと陰茎が引っ張られ、そしてすぐに上へ顔を上げる。ガチガチに勃起したペニスを露出させた。

しかも美人に自分の自慢のちんぽを見せつけているという状況も相まってより固くなっていく。


「グーパっこれ近くで見て!」

「………。」


LEDが黄色の点滅をしているが、グーパは一拍遅れてユウトによっていき、屈んで近場でよく観察するように顔を近づける。

ペニスとグーパの鼻の距離わずか1cmといったところ。

この時点でユウトはある程度察した。

つまりグーパ自身には先程から彼女も言っている通り個人ルールがない。故によほどユウトがまずいことをする前に伺い立てて聞いたり命令したりすれば。やばいとされる部分だけグーパから反論があるのだと。

つまり、『まず聞け、そして命令してみろ、ダメなら言われるだろう、もしかしたら説得できるかも、それでもダメで無理やりやろうとすれば初めてそこで連絡される』ということ。


「(ならっ!)」


ユウトは腰を伸ばして、まるで自慢するように陰茎を見せつける。多少恥ずかしいが。


「これも授業のうちなんだけど、正しい射精の仕方を教えてくれない!?」

「正しい射精……ですか?」

「うん、授業では原理は習ったけど実際にどうやって「刺激」するのか教えてくれなかったんだ。」


グーパのLEDが再度黄色く点滅する。おそらく教育指導要領を確認しているのだろう。

実際、ユウトは自分でセックスに似た行為として手コキを覚えた。

しかし実際にマスターベーションのやり方を学校の授業で習った覚えはない。だからそれをあえて彼女にやらせる。


「……確かに授業内容にありません。」

「もしこのまま何か間違って射精できなくなったらどうしよう!今のやり方が正しいとも思えないし、自分でやるには限界があるでしょ?」


なんの限界があるのか、そんなのはユウトも把握していない。


「しかしであるならば同じ男性の大人であるご主人様に教えを請うべきです。」

「いやっ逆に一番嫌だよっ肉親にそんなこと聞きたくないっ!」


わがままであるが、感情面という点ではグーパにも理解できた。事実、統計的に肉親に性的な話をするのは緊張するかというアンケート結果を参照して確認済みだ。


「僕の射精を手伝ってほしいんだ。男の人は毎日射精しないと辛いんだよ……少なくとも僕は。」

「存じております。」

「え……?」


ユウトは困惑する。


「ユウト様は毎日1度マスターベーションを行っていることは理解しています。」

「なっ……なんで!?」

「毎日、精液の臭いが染み込んだティッシュをゴミ箱にいれてらっしゃいます。アンドロイドは人間の生活習慣の特徴を見極めその人にあった最適な家事を行います。よってユウト様の生活スタイルも完全に把握しております。初めて家でマスターベーションをした日は西暦2126年6月8日の「あああぁっああ!」」

「(まじかぁ……ああぁああっ!!)」


ユウトは恥ずかしさで死にそうだった。

今日はじめてオナニーがバレたと思っていたが最初からバレていたらしい。

完全に自棄になったユウトはもう一度強く頼み込む。


「もうそんなのはどうでもいいよ!とにかくお願い!ちんちんが痛い!」


辛さではなくむしろ気持ちいいから毎日しているユウトは白々しい注文を堂々と吐く。


「………。」

「こんなこと先生に言ってもダメって言われるだろうし、同級生に言って万一間違いが起きたら大変だよね?けどグーパなら大丈夫でしょ!?お願いだよ!!」


ユウトはグーパの方に手をおいて年相応に困ったという素振りで願い出る。

一応論理的ではあるが、やはりこじつけすぎる。


「……一定以上の合理性を感じます。その命令を引き受けます。」

「ありがとう!!」


どんな計算が行われて許可が出たのかはしらない。しかしもはやどうでもいい。

ユウトは内心、ヒヤヒヤしながらも要求が通ったことに素直に喜んでいた。

喜び浮足立つユウトとは打って変わって無表情でユウトの手を引きベッドへ座らせる。

おそらくベッドを使ったほうが安定感があると判断したのだろう。


「失礼します。」


一言断りを入れると、今までで一番やさしい手付きでユウトの陰茎に手を添える。


「はぁっ!」


多少展開が早く戸惑うユウトでは会ったが、自分で触るのとは全く別物の刺激が腰骨を打ち脳にぶち当たる。


「(やばいっすごっ)……ぁあっ!」


たかだか握られただけでこの快楽。

しかしすぐにビリッと痛みが走った。

それは決してグーパの過失ではない。あくまで魔が悪かったと言うだけだ。


「いたっ!」

「……申し訳ありません。」


別段特別なことを彼女はしようとしたわけではない。ただ教科書にはないより専門的な知識も持っているアンドロイドの彼女にとってユウトの陰茎は現段階で問題とはなっていないが後々問題になるのではないかと推測結果が出たのだ。

ユウトは包茎である。

現段階で10歳のユウトのペニスが包茎なのは当たり前でなんの問題もない。ただし早い段階から皮を剥いておいたほうが大人になった際、包茎や仮性包茎を防げるという研究結果がある。それを実行しようとしたのだ。

しかし彼女は同時に知らない。

竿部分や革に包まれた部分ならさほど我慢できる刺激でも、皮を剥いた先にある包まれた部分が空気に触れるだけでものすごい快楽が出るということを。

それは稚すぎる子供にとって痛みですらある。

もちろん直接的な皮が引っ張られることによる痛みもある。

グーパはユウトの性器を健全なものとして育てる手伝いをすることとしたため、包茎を改善しようと善意で行ったのだが、結果はユウトからの拒否。


「大丈夫、でもそのまま上下に動かすだけでいい…。」

「かしこまりました。(無理に剥いて怪我をしてはいけません。やめましょう)」


ユウトが再度言わない限り彼女は二度としないだろう。

ある意味ユウトの包茎人生の始まりとも言えるかもしれない。



絶妙な力加減でユウトの陰茎を刺激するグーパ。

ユウトは普段の2倍は気持ちよさを感じて身体をビクビクと痙攣させた。

休むことなく手を動かし続け、淡々と手を動かす彼女にたまらずつぶやいてしまう。


「ねっぁっ……あのっ……おっぱいさわっちゃ……だめ?」

「(性的興奮が上昇すれば早めに吐精できるかもしれません)……許可します。」


ユウトは許可が出る前からすでに触っており、許可が出たことに驚く暇もないほどに気持ちの良いグーパのバストを触るために身体を彼女に向ける。

グーパもユウトが胸を揉みやすいように対面するような形で体勢を変えた。

ベッドの上で2人はお互いに向きながら、ユウトは足を崩して座り、グーパは正座していた。

ユウトはちらりとグーパを見る。

成人女性が自身のペニスを握って扱く姿に興奮しない漢はいないだろう。

腕を動かすたびに揺れて、震える大きな乳房。

正座したため横から大きくはみ出る大きな臀部。

暗く見えづらいが、女性器はない。しかし股間は真ん中が若干凹んでおり正座で左右から締め付けられたことでパイパンのような見た目になっていた。


くっちゅっ……くちゅっ


ユウトの皮が下に引っ張られ、先端の亀頭が一瞬顔を出す。

すぐに上へと皮が持ち上げられ皺がたくさん集まり、グーパのしなやかな指がユウトの皮の中のカリ部分を刺激する。


にゅっくっにゅちゅっ


どんどんカウパーが溢れ出してグーパの手を濡らしていく。

自身の秘めたる体液が目の前の女を汚しているかと思うとより興奮せずにはいられなかった。


くちゅるっ…にゅくっ……にゅっぐ…くにゅっ…にゅぐ


「あぁっ!……はぁっあ!ぁああっ!」

「(そろそろ射精でしょうか?)」


グーパは海綿体を傷つけないようにしつつも強く竿を圧迫し、手を早める。


「あっあぁ゛あひぁあっ!」


ユウトの腰が大きく震える。大げさに言えば半狂乱といった様子で身体をビクつかせていた。

背をのけぞらせて両手で身体を支えつつ、痙攣しながら天井を仰ぐ。

一拍遅れてユウトの尿道口から白濁液が排出される。


「でりゅっ!」

「………。」


ぴゅっぴゅるっ


飛び出した精液はグーパの手を汚し、一部彼女の膝から太ももに飛び散った。

脱力したようにユウトはベッドへ仰向けに崩れ落ち、はずみでペニスがグーパの手から開放された。

グーパはいつもより少し驚いた顔で目を開いて手に付着したユウトの精液をじっと見つめていた。


「はぁっはっ……ごめっ…。すご…く…気持ちよかっ……ありがっ……。」


息も絶え絶え。

胸部を上下して激しく呼吸する姿は普段のユウトから想像できないほど情けなかった。だが同時にそれほど今の射精が気持ちよかったのだとわかる。

自身の精液で手を汚してしまったことを謝りたかったが息が定まらず、上手くいえない。


「謝罪の必要はありません。必要な処置でした。」

「でっ…も、汚れ…。」

「なんの問題もありません当然の結果です。それに……。」

「……射精という行為の映像データはインプットされていますが知っているだけとは別に、実際に見て、触れるのは情報の質がまったく違うのですね。」


初めて彼女の感想じみた心の声のようなものを聞けてユウトはなんだか嬉しかった。

射精した疲れと、嬉しさと、未だ収まらない快楽の余韻でユウトはついつい眠気に勝てず目をつむってしまう。


「お休みくださいませ……ユウト様。」


ユウトはなにも言わなかった。


●


翌朝、最高の目覚めとともに、綺麗に寝間着を着て布団をかぶって寝ていたユウトは困惑した。

昨日のことが本当に夢のようで「エロい夢を見ただけ?」と思ったが、ほのかに香る部屋の青臭さに昨日も射精したはずだから記憶がないわけない。と断じて昨日のことがすべて本当にあったことだと再理解する。

パンツを引っ張って自身の性器を除くが綺麗になっていることや、部屋のゴミ箱が片付けられたりしているのを見るに綺麗にしてくれたらしい。

射精した精液は当然ユウトの陰茎も汚していたはずなのでわざわざ拭いてくれたのだろう。

ユウトがベッドから体重を床に預けたところで、ドアがノックされる。


「ユウト様失礼いたします。」


グーパがいつもの給仕服を着て入室してきた。

途端にユウトは気恥ずかしさを感じてそっぽを向く。

ユウト自身の計画で、ユウト自身がお願いしたこととはいえ、前日にお互いの裸を見合った相手と服を着て再会はまだ彼には恥ずかしかった。

体を拭かれ、服も着せられたならなおさらだ。

いくら幼いとはいもう小学4年生。ある意味なくした母との時間を取り戻しているのかもしれないと前向きに捉えるしかない。


「朝食の準備ができました。」

「あぇっああ……うん。ありがとう。」


普段はそんなことでお礼など言わないが、ついつい色んな意味でお礼を言ってしまう。

グーパはそのまま窓を換気目的で開ける。

程よい風がユウトの寝汗を冷やして気持ちがいい。

そこでユウトは部屋の臭気が消えていくことで思い至った。


「(そうか夜に換気したら僕が風邪を引くかもしれないと思ったのか)……。」


ユウトはふと思い返す。

布団を綺麗にたたみ、部屋を出ていく彼女の背に一瞬誰かの背中が重なった。

ユウトは今まで、母親が死んで、グーパがきて、なんとなく生きていた。

家に一人の便利な他人がいる。

そのくらいの認識でグーパを家電扱いしていた。だが、それは間違いではないがある意味決定的に負けていたのではないかと思う。


「ねぇ………。」


ユウトが扉に手をかけたグーパの後ろから声をかける。

彼女は静止し振り返る。

彼女が「何でしょうか?」と言う前に、はっきりと目を見て伝える。


「いつもありがとう。」


たった一言。今まで一度も言ったことがなかった一言を初めて言えた。

すると驚いたことにグーパは無表情の顔を微妙に変化させて少しだけ微笑んだ。いつも見ている人間にしかわからない違いだが、少なくともユウトにはそう見えた。

グーパはなにも言わず、きれいな姿勢で一礼すると一階へ降りていった。

ユウトは自分が何か子供っぽいことをしたようでまた恥ずかしくなったが、これが変化なのだと納得した。もしかするとただの賢者モードかもしれないが。

ずっと大人にならなければならないと思いながら生きてきたユウトにとって初めて「子供でもいいや。」と思った瞬間ではあった。


だから……と、ユウトは歩を進めた。



一階に降りて食卓を囲む。

ユウトは命令していないが、昨日の命令の続きなのか彼女もまた椅子に座り、質素な自分用の食事を用意していた。


「いただきます。」


ユウトがご飯を口に含む。

今まではどこか、朝だから朝ごはんを食べる。昼だから昼ごはんを食べる。夜だから夕食を取る。

そういった食べ方の意識だった。しかしその口に含んだご飯はどうしようもなく美味しくて、じんわりと胸元を締め付けてきた。

ユウトは目の前の彼女を見つめる。

少し吊目気味な美人。美しい黒い髪が背中中腹まで伸びており、前髪は一直線に切りそろえられている。キュッと閉じられた口にきれいな髪の生え際。細い首。

ユウトは脈絡なく問う。


「型番……なんだっけ。」


今までアンドロイドのことなど聞くことはなかった。昨日と今日が例外なのだ。


「GPHA-0807-08、第6世代成人女性型ハウスロイドです。」


ユウトがなぜそんなことを聞いたのか、そんなことすら疑問に思ってなさそうなグーパはスラスラと決められた文章のように語った。


「パパから何か名前決められてた?グーパって?」

「いいえ、グーパは社会的に呼ばれる通称で「猫」「犬」といった種族名に近いです。」


はーん、とユウトは天井に視線を送る。


「(つまりいままで「ねぇ猫、飲み物もってきて。」と言ってたみたいなものか)……。」


ユウトは自然と左上へ視線を持っていき考えた。

そしてこれはユウト自身、父親が変更したら意味がなくなるものだと理解しつつそれでも今だけはと思い、決めた。


「ねぇ、ヤナハって呼んでいい?」

「はい、機体固有名称の設定を終えました。……しかし」


ネーミングセンスはともかく、どこか聞き慣れない特別な名前にしたかったので良かったとする。

彼女の最後の危惧はユウト自身理解している。


「パパがダメって言ったらそんときまた変えていいよ。でもそれまでは、ね。」

「……はい。」


ユウトはその顔を知っていた。

その顔はよく母がユウトに見せていた顔だ。

ユウトがおもちゃで遊んでいる時、ユウトが転んだ時、ユウトがご飯を食べている時、ユウトが母の絵をクレヨンで描いた時。

ユウトはこの日初めて、ヤナハをひとりの女性として、ひとりの家族として心から迎えることができた。


と、美談のように思っているが結局美化された記憶でしかなかった。


◁続く▷

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