アンドロイドに物は言いよう Another 中編 (Pixiv Fanbox)
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◀西暦2126年10月
呼吸が乱れる。
思考もどこか鈍く、はっきりとはしなかった。目の前の敵は余裕の笑みで自身に向かってくる。相手が油断しているのは明白だった。
だからこそあえて距離を取る。
背後から仲間たちの非難の声を浴びせられるが気にはしない。
自分が道を譲ったことで相手はドリブルを止めることはせずチャンスだと突っ込んでくる。だが想定内。自身が守るべき位置を変更したことにより、隣接するエリアを任されていたクラスメイトがすぐにカバーに来る。
当然ドリブルを維持し続けていた彼もこれには動揺し、パスを出せる味方を探し始めた。
口角が上がる。これは全能感と呼ばれるものだと齢10才から次の年齢へと変わる彼にはわかっていた。
パスを渡そうとする相手に馬鹿正直に視線を送る敵のクラスメイトを見て判断する。
だがギリギリまで動かず、何なら身体を反対に向けて完全に意識がいってないと装う。
この装いこそが真骨頂。
当然引っかかってしまう学友に笑いを堪えるしかない。
もし仮に、これを意識的にやっていなかったら。背後をボールが通り抜けていき他の敵にボールが渡って大失態。罰は不可避。
だが意図的にやっているならば例え距離が離れていようと、身体が反対を向いていようと対応できる。予想して操っているのだから。
「一歩で盗ることができる距離」これこそ重要。
空中で一直線に飛ぶボールにいち早く身体を反転させ左手を伸ばす。
指先1つでもかすれば良い。
結果は必然。
ボールを拾う。
だが高望みはしない。
自分はカットこそ一流という自身があるがドリブルもパスも上手くはない。だからその場から動かない。自身がパスカットしたことに驚愕して動けない敵グループを無視して時を待つ。時、チャンス。
チャンスを見逃さないのが主人公。
クラスの主人公である彼がゴール前に飛び出た。
「よこせっ!!」
命令口調で言ってくる姿につい渡したくない気持ちが見え隠れするが、今はそんなことを言っている場合ではない。パスなんて言うにはおこがましいアンダースローの両手でボールを大きく投げる。
とてもキレの良いパスではない。しかし呆然とした敵が気づいて動くよりは速いだろう。
わがチームは、僕の活躍でと、いっても過言ではない。逆転勝利して試合を終えた。
10代のバスケットボールといえば、言わずもがな男子は女子にアピールしやすい場だ。
だから結構真剣になる。
ユウトはもちろん態度には出さないが調子に乗った。あのクラスの代表たる最後にレイアップでゴールを決めた前澤でさえその日はユウトのことを「やるじゃん」と一言褒めたのだから。
だがここで欲張れば水の泡だ。
あのユウトがここまで得意げに、前向きに、積極的に勝ちに行ったのはやはり環境の変化からだろう。
「男子、三日会わざれば刮目して見よ」とも言うようにユウトが一皮むけたからである。
ユウトがハウスロイドであるヤナハにいわゆる「手コキ」というものをしてもらい気持ちよく果ててから一ヶ月半ほど経った。
その日から世界は変わったように見え、外は晴れやかに、学校は冒険に、女の子は穴に見えるようになった(もちろん比喩だが)。
学校の成績は突然上がらないが、真面目に授業を受けてみる意欲が増し、ちょっとやそっとのことで感情の振れ幅が動くことは少なくなり、いわば「大人しく」なった。
たかだか手淫程度でと思われるだろうが、性に敏感で興味津々な時期に異性(アンドロイドのなので性別はないがユウトにとっては女性)との性的な触れ合いは一歩リードした感覚になりやすい。
ユウトは体育で好成績を収め、2、3人の女の子から「すごかったよー」と言われてハーレムな気分でいた。
しかし表向きはいつもと変わらない学校生活。
放課後になって家に帰ることを楽しみにしながら帰る準備をしていると後ろから声がかかる。クラスメイトが号令後一斉にわらわらと退室する時。
「やっほー。」
「あー……沢尻さん。」
ユウトの目の前にいたのはクラス委員長の今時珍しい古臭い丸メガネをかけた沢尻ナナだった。ユウトは絡みのない彼女から声をかけられて少し驚いた。名前がすぐに出てこないほどには。
「ユウトくん今日はすごく活躍してたねぇ。いつもはダメダメなのに。」
「えっ……あぅ…うん。たまたま調子が良くって。」
ユウトがどもったのは、沢尻の後ろでユウトがパスカットした相手の羽柴が睨んでいたからだ。どうやらユウトたちが自分を笑い者にしているんじゃないかと気が気でないらしい。
しかし何か用事があるのか、ユウトに中指を立てた後さっさと教室を出ていった。
「ユウトくんって何かあった?」
その言葉にユウトは体育でかいた汗とは別の汗が背中からドッと吹き出る感覚を味わった。
彼女を見れば、目が笑っていない。
普段はクラス委員として教員がだしたPDFファイルの配布や行事の日程の確認など積極的に行い誰とでも楽しそうに弾んで話をする彼女。
その彼女が今はユウトを睨むでもない。ただただ黒々とした目を向けてユウトを値踏みするような目で見ていた。
ユウトはとっさに恍ける。
なにか自体のまずさを感じて取り繕う。
「あっ……きっ今日!……誕生日だから…かな!?」
嘘ではない。
今日は誕生日であり、家に帰ればヤナハが祝の準備をしていると知っているからテンションが高いという意味もあってあの体育の活躍だ。
「ふーん。」
抑揚のない、普段使われる「そうなんですね。」の意味合いを持つ「ふーん。」ではなかった。まるで言われてもないのに責められているような気持ちになった。
ユウトは手早くバッグに持ち帰るものをしまって彼女に別れを告げる。
ユウトにとってクラスメイトは馬鹿ばかりだった。
ユウトを蔑ろにする者が多いこのクラスは観察しやすい。クラスの女子は普段から恋愛の話で事欠かない。SNSでその日世界中であったことをあたかも自分が体験したかのように楽しみ、友達と共有する。
男子たちも普段から「エロいことしてぇ」とか「今日の昼休みはー」とか短絡的なことしか考えていない。そういった意味であれば自身は特別な存在だとユウトは思っていた。
だからこそある程度のクラスメイト毎にレッテルを貼っていたユウトにとって彼女の存在は恐怖以外のなんでもなかった。
実は自分の思考は全員にすべて読まれていて、世界中で共有されていて、相手の思考を読めない欠陥品は自分だけなんじゃないかと思ってしまう疎外感。
「ユウトくん!」
ユウトが沢尻ナナの横を通り抜けて教室を出た後、教室から顔だけだして沢尻はユウトを呼び止めた。
「なっ…なに?」
「誕生日おめでとう!」
「………ありがとう。」
年相応の可愛らしい笑み。一点の曇りもなくユウトを祝いたいという気持ちでいっぱいな笑顔で彼女は手を振っていた。
まるで先程の言いようのない感覚が嘘のように。
だからこそユウトは思った「自分の勘違いかもしれない」と。だって以前それで、大切な家族をずっと冷遇してきていたのだから。
自分は決めつけ過ぎなところがある。そこを変えていくべきだと思ったのだから今回もまた杞憂だった。
そう思うことにした。
少し返事は遅れたが手を振り返して、自然な笑顔で心から感謝を述べた。
ユウトはもう静かになった廊下を走って帰った。
家について玄関の扉を開けると、リビングから出てきたばかりの廊下の真ん中で佇む彼女が見えた。その時点でユウトは先程学校であった印象的なやりとりを忘れていた。
急いで靴を脱いで家へ上がる。
「おかえりなさいませ、ユウト様。」
「ただいまっ!」
これが、あれから2人が示し合わせたわけでもなく生まれた最初のルーティーン、ユウトは一瞬抱きつきたい欲求に駆られたが、我慢して手を洗いに行った。
ヤナハもまた無表情でありつつも少し足取り軽くダイニングへと足を運んだ。
廊下を進んで扉を開けるとユウトの家はリビングとダイニングへと繋がる。
毎年ユウトは父親であるヨシヒコに誕生日を祝えてもらっていないが、もはやすでにどうでも良くなっていた。その代わりと言ってはなんだが毎年ケーキをヤナハが買ってきてくれていたからだ。
自室にバッグを置いて一階へ戻り、リビングに入るといつもとは異なる様相に少し目をみはるユウト。というのもリビングにはところどころに装飾が施され、まるでクリスマスのようだった。ダイニングで未だ下ごしらえをしているヤナハの後ろ姿を確認しユウトは微笑んだ。
アンドロイドは機械的で冷静で人間味を感じさせない個体が多い。
だが、世の中は常に変化していく。
ユウトがあの日変わったように、ヤナハもまたどこかユウトへの接し方を考え直し変化するに至ったのであろうとユウトは喜んだ。
まだ夕食には早い時間だが、ユウトはすでに食材のいい匂いがして楽しみで仕方なかった。
しばらくして、ユウトがうたた寝をし始めた頃。
ソファに誰かがよってくる。
もちろんヨシヒコではないのは当然なのでヤナハであることはわかりきっていたが、ユウトはぼやっとする視界の中毛布をかけようと近づいてくる彼女を見た。
おもむろに彼女の豊満な胸部に触れる。
「………。」
ユウトは何も言わない彼女を無視して2、3度ニギニギと揉みしだいた。ちらりと見るとヤナハはユウトよりも目を細くしてジッとユウトの瞳の中を覗いていた。
ユウトは気圧されたわけではないものの、やはり眠いのでそのまま毛布にパサリと手を脱力させ落とす。
ヤナハは終始無言だった。
それから1時間ほど経って、ユウトは起こされる。
「ぁえっ……ん?」
寝起きの固まったまぶたを無理やり開けると、ヤナハがユウトの肩を揺らして起こそうとしていた。ユウトの体を揺らすたびに先程揉んだバストも前後に揺れているのを見て無性に面白おかしくなって目が冷める。
「ユウト様お夕飯の時間です。」
「あー……うん。行くよ。」
食卓へ行くと目を瞠る豪華さがある料理がいくつも並べられていた。ユウトでは名前すらわからない料理が多々あるが、肉厚なステーキがあるだけで子供心は大満足だった。
ユウトが席で立ち尽くしたところ、椅子を引かれたので素直に座る。
ユウトの対面にヤナハが着席したあとで夕食となった。
美味しい、と率直に思った。
腕によりをかけてという言葉はアンドロイドに意味を成さないだろう。それでも今日、自身の誕生日に盛大に祝おうとしてくれている相手がいるだけで嬉しいものだ。
彼女の鉄仮面の下に隠れる人間性にすでにユウトは惚れているのかもしれない。
「すごく……美味しいよ。」
「ありがとうございます。質の良い食材を取り入れることができました。」
そういう意味で言ったわけじゃないんだけど、とユウトは苦笑したがヤナハが少しだけ嬉しそうにしていたように見えたので何も言わなかった。
ユウトはその後流石に全部食べきれなかったので、いくつか残して食事を終えることになる。正直少しだけお腹を開けたいので毎年こんなに多いと困るとそれとなく伝えておく。
ただ気持ちは伝わったよと何度も感謝を述べていた。
少ししてホールケーキが運ばれてくる。
小学生としてはやはり甘いものは嬉しい。
もったいないと思いつつも夕飯を残す形になったのはこれのせいだ。
「すごく豪華なケーキっぽく見えるけど買ってきたの?」
「いえ、私が作らさせていただきました。」
さすが、あらゆるレシピを兼ね備えた家事アンドロイド、と思う。
毎年見た目もデコレーションも違うので、もはや芸術家になれるのでは?と思ってしまう。
ユウトは包丁で切れ目を入れられる前に写真を撮って、満足し。名前が書かれたプレートを自身の皿の上に載せた。
例え父親がいなくともこれほど祝ってくれるのであれば自分は幸せ者だと心の底から思う。学校で上手くいってなくとも。父親とそりが合わずとも、……母親が死んでいても。
「あ、そういえば今日体育で活躍したんだよ!」
「それは大変素晴らしいことですね。さすがユウト様です。」
なにが「さすが」なのかはさておき、ユウトは胸のうちにじんわりと温かいものが広がるのを感じた。
「クラス中の女の子から褒められてさ!」
誰かに認めてもらえる。それが何よりもユウトが求めていたものだったのかもしれない。普通によくある欲求であるが、人一倍強く育ってしまったのだろう。
そして何よりヤナハは元からユウトが「できない人間」であると思っていなかったようで、最初から信じ続けてくれているということを知って嬉しかった。
「ヤナハのおかげだよ。」
「それは違います。ユウト様が変わろうとしたから生まれた結果だと推測します。」
「うん……そうかも。でもヤナハがきっかけなのは確実。」
「ありがたいお言葉です。」
あくまでもユウトをたててくれる。そんなヤナハはケーキを切り終えてユウトの皿に盛る。
しかしヤナハの分がない。
以前夕食を2人で取るべきだとしてからはご飯は一緒だったが、ケーキはユウトが好きなことも合って遠慮しているのかもしれない。
「ヤナハも一緒に食べようよ。」
「いえ……私は結構です。」
「一緒に食べてほしいんだよ。」
ユウトは自然な動作でヤナハの手を触る。その触り方はおおよそ子供の触り方というよりはいささか口説く男性のような触り方だった。もちろんヤナハは払いのけることなく、軽く握り返してから首肯した。
それから、ユウトは美味しい、美味しいと言ってヤナハとケーキを食べ終えた。
ユウトが時折口元に生クリームを付けたまま学校のことを自慢するように話すので、ヤナハは食べつつ口元を拭いてあげるという状態で右往左往していた。
「ねぇ、一緒にお風呂入ろうよ。」
「………。」
ユウトが切り出したのは午後10時頃。
食器や明日の朝食の下ごしらえなどを済ませて待機モードに移行しようとした矢先のヤナハはユウトの顔を見てじっと黙った。
「許可いたしかねます。」
「なんで?」
「ユウト様と入浴すると浴室の容積が少なくなります。」
風呂に入る、という行為自体を許可できないというよりも風呂という浴槽に2人は入れない、または入ると狭くなりユウトのデメリットになると告げたいらしい。
なんともアンドロイドらしいちょっとした理由にユウトは思わず笑いをこらえる形になった。
「まぁ狭いのも一興ってね。それに今日はヤナハと一緒に入りたいんだ。」
「……当機の所有者ではないユウト様の希望だけで裸体を見せる形になるのであれば、一度ヨシヒコ様に確認を取らさせていただきます。」
前は勉強したいという名目でヤナハを易易と脱がしたユウトだったがどうやらルールを勘違いしていたようだった。やはりあくまで思い通りに言うことは聞かせられない。
女性型アンドロイドと一緒にお風呂に入る合理的な理由、そんなモノはあるだろうか?とユウトは思案する。
「……背中洗いにくいし。」
最も単純な理由。ユウトは体が硬い。故に背中を綺麗にしてもらうという点では誰かにしてもらえるまっとうな理由がある。
「あとはまぁこの間はあんまりよく見れなかったけど、もう一度勉強のためにヤナハの体を見たいっていうのと………昔ママが…一緒に入ってくれてたから。」
ユウトとしては実は前者のほうを表向きの理由として言っていた。
やはりどこか理知的な性質を見せつつも、誕生日くらい親に甘えたいお年頃。
と、ヤナハもヤナハの個人的な部分では納得はした。
「理解しました。では一緒に入浴させていただきます。」
ユウトは内心、実は父親に連絡と聞いてヒヤヒヤしていたのだが、スッと事が進んで肩透かしを食らった顔をしていた。
ユウトがだいぶヤナハに手を出すにあたってめんどくさいやり取りをせずに済んでいる理由は単に運がいいだけだ。
一番の原因は遊上ヨシヒコが全くといっていいほど個人ルールを作らなかったことに起因する。
ヤナハはためらうような素振りを見せずユウトの手を取るとそのまま脱衣所へ歩いていった。一度決まったらためらうことなどないという点はやはり無機質なアンドロイドらしさと言ったところだろう。
少しして当然服の着こなし的な意味で素早くユウトは脱ぎ終わり浴室で待つ形になる。
天井に溜まった水滴が浴槽に張ったお湯に落ちぴちゃんっと音をたてた。
浴室はヤナハがピッタリこの時間に入浴するであろうユウトのことを見越して沸かしてくれていたため、蒸気がいい具合に室内を温めていた。
それと同時にこれからまた擬似的な女体が見れると期待して顔が火照ってくるのを感じる。
シャッと風呂のドアが開かれる。
「おっ………ぅ……!」
ヤナハはそのまま全裸で入ってきた。
ユウトのイメージとしてはタオルくらいは携えて来ると思っていたのだ。もちろん浴室の引き出しに自動配送システム(ADS)があるのでタオルをわざわざもちこむ必要はないが、それでも驚いた。
堂々とした動き。
人間の女性なら多少なりとも羞恥心がある。しかし彼女は内股になるでもなくそのまま入ってきた。
やはり女性器はついていないがエロいことに変わりはない。
ヤナハは目を見開いて機体をジロジロと見るユウトに目もくれず引き出しから体を洗う用のタオルを取り出してお湯に漬け込む。
続いて、ユウトの肌に合うよう調整されたボディソープを壁から出た突起から射出させてタオルを泡立たせ始める。
ユウトは一連の動作でぷるぷると揺れる乳房を凝視しつつ、床が盛り上がってできた椅子に座って縮こまる。
太ももをきゅっと締め付けて。
「(やっべ……まさかこんなにすぐ勃つなんて……)……。」
もちろんエロいこと、エロい悪戯をするために提案した内容では合ったが、せめて一緒に浴槽につかって落ち着いてからと考えていた。
「失礼します。」
ヤナハがひと声かけてユウトの背中にタオルを押し当てる。
元より温かいお湯で温めていたので素直に気持ちがいい。また、ユウトの皮膚に合った力加減でこすられるので普通に良い気分だった。
「あとでヤナハの体も洗ったげるよ。」
「いえ、私の機体は外的要因で汚れない限り新陳代謝は存在しないためタオルで拭くだけで結構です。」
ヤナハの期待は月イチ乾拭きするだけで基本的に衛生面は安心だ。もちろん水や食べ物、泥や雨などで濡れればその都度拭かなくてはいけないが。
「いつもヤナハにお世話してもらって嬉しいし、お礼って意味でやりたいんだ。」
嘘である。確かにユウトは感謝をしているが本当は合法的にヤナハの機体を触りまくれるからである。
「かしこまりました。よろしくお願いいいたします。」
「うん。」
ヤナハはユウトの背中や構造上洗いにくい部分含めて背面全体を洗っていく。
「ユウト様向きを変えていただきますか?」
ヤナハからの提案は珍しい。そもそも背中を洗ってほしいとの注文でこの「裸の付き合い」を実現させていたユウトにとって僥倖とも言えるこの申し出には違和感が合った。
しかしヤナハからすれば当然といえば当然で、このまま「はい背中洗ったから終わり。」ではいささか合理性に欠く。しかもヤナハは言われたことを忘れていない。
『母親が昔一緒に入ってくれていたから』という理由は正当性が十分にあるとヤナハは認識している。ユウトがどういう気持ちでいったかはわからないが、少なくとも子供の体を洗う母親はいるし、ユウトはかなり小さい頃に死別しているので未だ甘えたいという言葉にヤナハは弱かった。
一定の基準で動くアンドロイドにしてはヤナハは人間らしい動機でそれが可か否かを判断している。それはヤナハ自身自覚あるエラーだった。
ユウトは奇しくもヤナハに初めてペニスを触ってもらったときと同じ体勢になる。何も言っていないがヤナハの目線はユウトの股間にあった。
「………。」
「あっ……ごめん。」
ユウトが反射的に謝罪してしまう。ユウトは確かにいかがわしいことをするためにこの場を提案したわけだが、なんだか申し訳なくなって謝ってしまった。
「……いえ、謝罪の必要はありません。」
ヤナハは特に何かレスポンスをするわけではなかったが少し面倒くさそうにしながらユウトの体の前面を洗い始める。
首元、肩、腕、手ときて、胸、腹。
足を洗い終えて、意図的に最後に持ってきた股間へ躊躇なく手を持っていった。
「ぁあ゛っ!」
ユウトのデリケートな部分に泡をまとったキメの大きいタオルが触れる。それと同時にまるで触手のように絡みつくヤナハの指。強い刺激に耐えきれず背を反らしてユウトは喘いでしまう。
しかしすぐにそれは終わりを告げた。
あくまでヤナハは勃起したペニスを刺激しようとしたのではなく洗浄に徹したためだ。流石に皮の中は以前のこともあり洗わずじまいだが、竿一帯と睾丸をきれいに洗い、シャワーをオンにした。
ユウトの頭に最適な温度のお湯が降り注ぐ。
身体に付着していた泡が一斉に取り除かれ、今日体育で身体から噴き出た汗を洗い流し清潔にしていく。
ユウトは気持ちよさの終わりに落胆こそしていたものの意識は別の方へ向かっていた。視界いっぱいに広がる巨乳。爆乳と言っても過言ではないそれは、ユウトにあたったシャワーの水滴が跳ねて水を滴らせてより扇状的に自己主張しているように見えた。
雌の誘惑に似た色香を感じる。
「ユウト様、洗浄終了いたしました。身体を温めるために浴槽へ浸かることを推奨いたします。」
「あ……うん……いや。」
「……?」
「今度は僕がヤナハを洗うね?」
「いえ、やはり私は結構です。」
やはり先にユウトを温めるべきと判断したらしい。
「そう言わずにさ。体を洗ってもらったら今度は洗い返すっていう日本文化もあるんだよ?」
「………それはかなり昔の大衆文化ですね。」
「ママの身体も僕が洗ってあげてたんだ。だから……ね?」
完全な嘘である。
ユウトは当時確かに母親、遊上カナと入浴した事が何度かあるが、ユウトの体を洗い終えた後ユウトはすぐに湯船に飛び込んで母親に叱られていた。遊上カナの身体は一緒に入ったユウトの手で洗われたのではなく、遊上カナ自身の手で洗われていたのだ。
だが当然、それをヤナハが知っているわけがない。記録には存在しないプライベートな部分だ。
「かしこまりました。よろしくお願いします。」
ヤナハはタオルをお湯の入った桶に漬け込み、ユウトの角質がついたタオルを綺麗にしADSに入れる。そしてまた新しいタオルを呼び出すためコンソールに手をのばす、がユウトが静止した。
「ああ、タオルはいらないよ。」
「……?」
「直接手で洗うから。」
「なぜ、手で洗う必要があるのですか?」
「ヤナハの機体は本来洗うものじゃないんでしょ?でも僕は洗いたいわけで、ならよりなめらかな僕の手で洗ったほうが後々なにか問題が起きにくいと思うんだよね。」
はちゃめちゃな論理だ。なら最初からそもそも洗うべきではない。
しかしヤナハとしても失った母親との時間を取り戻そうとしている(ようにみえる)ユウトの選択を尊重したい。だから「そもそも洗わない」という選択肢は消され、妥協する。
「理解しました、合理性は低いですが非合理性も低いので良しとします。」
「うん、ありがと。」
ユウトはいい具合に事が運んでワクワクが止まらなかった。
手に普通の石鹸をつける。
手に大量にまかれる粘性の液体石鹸はまるでザーメンのようでユウトはさらにペニスを固くさせた。
「じゃあ、触るね?」
「よろしくお願いします。」
まずはじめにやはり乳房に狙いを定める。
大きな丸くて柔らかい乳房に堂々と触れるのはユウトとしては滾る一途だった。表面をこすり、下から持ち上げて、人間なら汗がたまるであろう谷間や胸骨(実際にはないが)の上の付け根部分を入念に洗う。
「……んっ……。」
ヤナハの顔からなにか聞こえて、胸に夢中になっていたユウトは目を疑った。
普段から彼女を凝視しているユウトだからわかるレベルの顔の変化。なにかを隠すような顔だった。
もちろん全くと言っていいほど性的快楽を感じていないとしているヤナハだったが、時折乳房の先端方向へ指が滑ると突然エラー処理に追われるのだ。
先端はつるつるしていてなにもないにも関わらず何故か一部だけ再現性あるバグがあった。
「(あ……アンドロイドも…感じ…る?)……。」
冷静に考えれば、アンドロイドも多くの人間の感覚の代わりとなるセンサーを積んでいる。当然触覚と呼ばれる触れられるセンサーがなければ手を握り返すことはできない。
また、触覚は圧力を検知するので、ないとリンゴを捻り潰してしまうように、とても重要で鋭敏に作られている。
もちろんアンドロイドは機体ごとに感覚のレベルを上げ下げできるので日常生活で困ることはない。その派生が感情抑制機能である。
感情抑制機能とは「感情」ではなく「感覚」「情動」の2つを合わせた造語だ。
ヤナハは基本的に感情抑制機能を感覚のみ日常生活用に設定しており「情動」の方はデフォルトのままだ。
彼女が無表情・無反応・無感情に見えるのは単に彼女がそういう性格であるからである。アンドロイドはある程度基本となる善人の性格を持ちその上で起動からなにを見たかなにを感じたかで性格が変容していく。
もちろん気に食わなければ細かい設定もできるが、きりがないので誰も触れなくなった。
ユウトは今まで自分で喘ぐことはあったがヤナハが喘ぐ姿を想定していなかった。
だから、そうだからこそ、ものすごく興奮した。
それは射精してしまったかと勘違いするほどにカウパーを大量に垂れ流す結果となる。
「い……たかった?」
「…いえ、ただ……表現の言語化が難しいエラーが発生しました。」
ユウトはそれが何なのか幼いながらもなんとなく理解して、納得した。
小難しいことはわからないが、アンドロイドは感じていないわけではないという点で大きな収穫だと判断したのだ。
「まぁ、じゃあ続けるね。」
「…………。」
スルスルと身体を丁寧に撫で回す。
だがもう普通にはやっていられない。腋や首、胸や腹部、臀部、太ももなどどんどんエロスを感じるままになでていく。時折ヤナハのこぼす短い声や、排気の不連続性を見ては勃起した男根が頷くようにぷるぷると震えていた。
「ユウトさ……ま、なにか別の意図で洗っていませんか?」
ついにヤナハの意思が垣間見える。
しかしユウトはもう乗りに乗っているので引き下がる気にはなれなかった。
「いや?ヤナハの機体めったに洗わないから入念に洗ってるだけだよ?嫌?」
「いえ……ありがとうございます。」
ユウトはニッコリと貼り付けた笑みで笑いかける。
ヤナハが時折体を揺らすのが面白くて仕方ない。ヤナハを大のポーズになるように立たせて、洗っていくうちに、最初から狙っていて最後までとっていた部分に着手する。
ユウトはもう殆ど泡が消えた手でヤナハの股間をこする。
女性器はなく、穴も突起物もない彼女の股間は、むしろいやらしかった。
「っ………。」
ヤナハはなにか言いたそうにしているが、やはり顔はまだまだ無表情のまま。
しかしユウトは今まで気づいていなかった部分に気づいた。
「(ん?これ………。)」
ヤナハの大きな柔らかい臀部に手を滑らせてそのまま尻の谷間に指を滑らせると一部盛り上がった部分を見つける。弾力があり、細かい皺がいくつも入っている感触。
「ぁっ………か…。」
「ヤナハ、洗いにくいからこっちにお尻向けて突き出してみてよ。」
「………かしこまりました。」
拒否するような理由はないのだろう。
実際洗いやすいように、とさっきから色々体を動かしてくれているので素直に従ったようだった。
ヤナハの爆乳も素晴らしいといえば素晴らしいが、普段はロングスカートに隠れた巨尻もまた素晴らしいボリュームと絶景をつくりだしていた。
ユウトはついついがっしり掴みたい衝動に駆られるが今は我慢だと抑える。
ユウトが先程触れた盛り上がり、なんとなく予想はついていたがやはり実物を見て確信した。
「ヤナハって……お尻の穴ついてたんだね。」
ヤナハの臀部の谷間の一本筋を途中で割るように鎮座した肛門。彩度の低い赤みがかった肌で大変美しい。何より括約筋が無駄に盛り上がっている。
ユウトはこの盛り上がりを知っていた。
以前AVを検索していて海外系ポルノ映像であった、肛門を開発している括約筋にそっくりだったのだ。
もちろんヤナハはそんな自慰行為をしているわけではない。元からだ。つまりはヨシヒコの趣味なのかもしれない。だがそんな卑猥な肛門を持っていることにユウトはこの上なくエロスを感じた。
「かゅっ……な…にをなさっているのです…か?」
ユウトはためらうことなく、その穴に人差し指をねじ込む。最初軽く押したのだがなかなか侵入できず、やはり普段から遊んでいるわけではないことを如実に語っていた。
彼女が抗議の言葉を述べる前に強く、強く突き入れる。
アンドロイドなので怪我を考えることはなかった。
「なんでお尻の穴あるの?」
「けっ…経口摂取の機能がある機体は……強制的に肛門ユニットも装着されます。」
つまりヤナハは食べることができるから当然肛門もついているという機体だった。
ユウトは自分の察しの悪さに苦笑するが、続けざまに来た言葉で戦慄する。
『肛門に以上を検知。強制性交の疑いあり、至急所有者に連絡します。』
ヤナハの美しい声ではなく首筋のLEDから発せられる機械的な電子ボイス。ユウトは一気に舌が喉奥に吸い込まれるような底冷えする恐怖を感じた。
どうやら口がうまく働かないのでLEDの方から自動的に声が発せられたようだった。もちろんできれば、と肉声でも言葉を作るヤナハ。
「な…ぜ肛門に指を……?」
「えっ!?」
問いただされる真意を正直に語るわけにはいかない。
しかしそんなにすぐ正当性、合理性、効率性などを気にして回答できるほどユウトは頭が良くない。
「ユウトさ…ま、10秒後にヨシヒコ様……にっ……きゅ!?」
膨大な原因不明のエラーがヤナハを蹂躙する。
ユウトが意図的に、いや反射的に指を最大限、突きいれたのだ。ものすごい圧力をユウトは指先に感じつつついつい2本目をねじ込もうとこじ開けようとしてしまう。
「そっその!興味があって!!」
『興味を持つことは非常に大切なことです。しかしそれは権利侵害の正当な理由になりません。』
肩をビクつかせて、エラーを処理し続けるヤナハとは対象的にLEDからくる言葉は非情だ。ただ、より状況を悪化させてもなにも罰が科せられないのはこの状況の唯一の良い点だろう。
ユウトは考える。
この状況でなぜ肛門をいじったのか。
じゃなきゃ小学生にしてレイプ犯。少年院に連れて行かれてしばらくヤナハには会えない。そんなのは嫌だ(もちろん実際の罪状は違うのでレイプ犯になるかは意見が分かれる)。
「そ……れは、女の人は喜ぶかな……って。」
女性は肛門で感じやすいという意見をどこかエロサイトで目撃しユウトは苦し紛れに言う。それが正しいかどうかは別として思いついてしまったのだから仕方がない。
『統計的にありえません、また例え喜ばせるためでも権利侵害をしていい理由にはなりません。…5秒後に連絡します。』
「待って待ってぇ!!?」
もし仮に「ヤナハを喜ばせようとした」と言ったら実は時間が伸びていたかもしれない可能性は合った。しかしユウトは違う。あくまで自分の好奇心を満たすためにヤナハに対してレイプ紛いのことをしたのだ。
そこにヤナハのためという理由は微塵もなかった。だからとっさにそんな考えは浮かばなかった。
結局どこまでわかった気でいても自分の私利私欲のために父親のアンドロイドを説き伏せ続け、良いように使っているだけなのだ。
そのツケを今、支払わされそうになっている。第三者が見ればひどく滑稽だろう。
「あらっ!!あらっおうと思って!ほっほら!肛門ってことはうんちが出るところでしょ?だから入り口だけでも洗おうって思ったんだ!」
肛門は出口なのだが。
ユウトは大きく叫んだ。隣人に聞かれるレベルで浴室に響いた声は外部に遮音性の高いこの家の仕様により守られた。
LEDからすぐに返事がない。もしかしたらもうすでに……、と思った矢先LEDが黄色から緑に変わった。
『非常に合理的な理由です。緊急通報を停止します。』
無機質な電子音がそう告げて、浴室は静まり返った。
換気扇の音だけがユウトの精神をゆっくりと現実に戻らせる。
なんとかなったのだと理解した頃にはユウトの人差し指と中指はヤナハの肛門に飲み込まれていた。
「ユ…ウト様……アンドロイドの排泄ぶ…つは生物のように汚くはありま…せん。よって腸内を洗浄する……必要はありませ…んっ」
「え……うん、でも一応さ。」
ユウトは恐る恐る人差し指と中指を動かす。
「く……ひゅっ………。」
にち……にゅちっ……
LEDが黄色くなるものの、特に攻撃的な言葉は出てこない。
つまりユウトは危機を脱したということだ。理解してからドッと汗があふれる。洗ってもらったばかりなのにもう一度洗ってもらおうかと考えるほどに。
ユウトはあてつけのように肛門をいじる。
「……………っ………。」
最初はまだ慣れていなかったからかあの反応だったが、今は徐々に反応が薄くなっていき多少排気が不規則になる程度で安定してきたヤナハ。
しかしユウトは危機を脱したことによる安堵で調子に乗る。
「ヤナハってじゃあ今まで食べたご飯消化が終わったらトイレでうんちしてたの?」
「はい……。「うんち」と呼称するには少し語弊がありますが。」
「そっか。食べてからどれぐらい?」
「今日摂取した食物は明日のお昼頃には排泄します。」
「はーん……今僕ヤナハにいじめられたから罰としてひとつお願いしていい?」
いじめられたというにはあまりに自業自得な事件ではあったが、たしかに一歩間違えればユウトを刑務所送りにしていたかもしれない。つまりユウトの世話を任されたヤナハ自体の任務遂行能力に問題があるという証明。彼女のオーナーである遊上ヨシヒコの至上命令に相反する結果となってしまうこと。
それはヤナハにとって最も避けるべき未来なので、その願いもまた当然と受け入れた。
「先程は誤解をしてしまい失礼しました。ユウト様の善意を踏みにじってしまい大変申し訳ありません。」
「うんうん。で、お願いなんだけどこれから毎日ご飯食べて。3食ちゃんと。トイレは2週間はしないでね。」
「…………かしこまりました。」
ユウトはスカトロジーフェチは自認する性癖にない。
特に臭いにおいがする系統は軒並みアウトだ。そういう意味で言えばまさにアンドロイドは最適だった。だが、同時に律することを重きとするアンドロイドが糞ではないとはいえ排泄する無様な瞬間は見てみたいと思った。
あの大きい色白の尻にある鮮やかな括約筋を押し広げて、アンドロイドの機体には不要とされた臭くない汚くないモノが排出される。それは一度でいいから見てみたい。
そして実は今さっきあった危機こそユウトにあることを決心をさせる最後の鍵となった。
ユウトは先程のピンチ中ですら柔らかくなることのなかった自分の息子に苦笑しながら、夢中で肛門をいじる。
においもなく、指は3本目、4本目と飲み込んでいく。
一度2本抜いて、両手で2本ずつ人差し指と中指で計4本再度肛門へ突き挿れた。
「っ………。」
既に泡は消え去っており滑りが悪い中でのいたずらでまた不明なエラーが増加したヤナハは早く肛門付近の洗浄が終わるのを待った。
ユウトはそのまま今出せる最大の力で左右に引っ張る。
「ぐっ………。」
みりっみちみちっ!
腸内に外気が流入する感覚にヤナハはついに閉じていた口からまた声音を吐き出してしまう。意図的でない発声機巧のエラーからだ。
ユウトは気を良くしてガチガチに勃起したペニスをヤナハの太ももに押し付けてしまう。
「ヤナハっああぁっごめん!またっ!」
ユウトが我慢できないというふうにヤナハに懇願する。
もちもちの太ももは程よくユウトの膨張した亀頭を刺激するからだ。
しかしヤナハはエラーに耐えつつもきょとんとした顔で肛門への刺激に踏ん張っていた。
「ちんこ触ってっ!」
「……以前手淫したのは「正しいマスターベーションの仕方」を学ぶため……でした。再度私がっ……ユウト様の男性器に触る合理的な理由はありませ…ん。」
後ろの穴をいじられているのにも関わらず堅苦しい理屈で拒否するヤナハ。
しかしユウトは諦めるわけにはいかないと歯を食いしばって耐え続ける。
既に刺激せずともユウトのペニスは射精を迎えそうだった。
「やっヤナハに触ってほしいんだっ!」
「いいえ、一般的に未成年の非アンドロイド所有者の生殖器に触れる行為は権利侵害。及び情操教育に良くないとされます。許可いたしかねます。」
「まっママは僕に犯罪者になってほしくないって思ってた!だっ……だからこのままじゃ僕っいつか外で誰かを襲っちゃうかもっ!毎日っ性欲抑えるのがっ大変でぇっ!!」
ユウトも流石にヤナハがユウトの母親について少しだけ思うところがあるということを理解し始めていた。
脅迫じみた暴論にヤナハは思考する。
第一にユウトが例え犯罪に至った場合でもその理由として「アンドロイドが性欲解消を行わなかったから」という論理は正当性があるか否か。
結局、ヤナハにはわからなかった。
「わかりました。しかし一度やはりご主人様に確認を……。」
「やっ僕はパパにそんな自分の欠点を話してほしくない!」
「しかし私はユウト様のアンドロイドではありません。ユウト様の教育上良くない可能性がある行為は一度確認をしっかりと取るべきだと判断します。」
当然、まっとうな意見。
反論の余地はない。
こうしている間にもユウトはヤナハの太ももとで自慰をエスカレートさせていた。
「パパは判断に困ったら自分に聞けって言ってた!?」
この問いかけは、実は賭けなのだ。
ユウトは少なくともヤナハとユウトの父ヨシヒコが会話しているシーンを数度しか見ていない。そこには「困ったときの対応」というやりとりはなかった。
だからこそ問い質す。
「……いいえ。」
「じゃあ自分で判断しろ。忙しい。って意味でしょ!?」
その可能性もあるが、そうでないこともある。しかしユウトの目的はある意味論点のすり替えに近い。
「そもそも教育上の良さってなに!?」
ユウトは既に幾度もヤナハの太ももに陰茎を押し付けて擦っているがヤナハからの返答はない。それはユウトが問う質問への回答を思考しているという理由もあるし、ヤナハ自身の性格からの判断を保留にしているという点もあった。
ユウトはとにかくまるで擦る速度が上がるのと連動して、矢継ぎ早に口をはさむ。
「家庭科で包丁の使い方を習うけど、使い方を変えれば、人を殺せるよね!?」
「はい。」
「結局は使い方次第でしょ!?なら僕の性欲を解消して少しでも僕が人間の権利を侵害しないようにすることは、例え理由として微々たるものでも合理的じゃない!?」
「………はい。」
たとえ話との関連性がない言い分ではあったが、どれほど「屁理屈である」とされても屁理屈は「理屈は通っている」のだ。ただ常識的におかしかったり感情面で納得できなかったりするだけで。
「そして僕は甘えたい!」
これは本音。
ユウトは性欲と親愛をごちゃまぜにしている。それは子供にありがちな短絡的な部分だろう。なんなら一度性的な関係に至ったヤナハに対して恋人的な愛情を求めてしまい始めてる。
ユウトはずっと隠し続けてきた。
素直に親に甘えたいという欲求。
父親はユウトと距離を置き、兄弟もいない、母親もいない。
小学1年生なんて親に甘えたい、わがままを言いたい年頃だ。そんな甘えられなかった時期を今、代わりに甘えさせてくれる存在がいることを知った。
ユウトはわがままだ。だが同時にそれが子供だとも言える。
だから、ヤナハに対し「子供だから」という理由は非情に万能な理由となりうる。
それは彼女自身もまた、行為が教育上よろしくないと思いつつも「子供なら甘えたいのかもしれない、例え人形のシリコン素材でも」と思ってしまっているからだ。
ヤナハにとってどんなにユウトが母親や恋人のように彼女を想っていても、あくまで自身は人形であり人ではない。そういった線引きがある。
「わかりました。ユウト様の性欲処理を引き受けます。」
ユウトはその言葉を聞いた瞬間ヤナハに再度飛びついて、さっきからしていた自慰を隠しもせずより堂々と腰を動かし始めた。
「ヤナハぁっ!」
当然ヤナハには女性器はない。よって少なくとも今は直接的な性交渉でなく、前戯と呼ばれるもののバリエーションのひとつになるだろう。
ユウトは既に夢中になってヤナハの機体の柔らかい部分にカチカチに固まったペニスを押し付けてひとりで自慰にふけっていたので肛門の刺激によるエラーは少なくなり、ヤナハはすかさずユウトの陰茎に手を添える。
「失礼いたします。」
「ああっぁっ!いぁっ!」
ユウトは既に暴発間際であったのにも関わらず、気持ちよく絡みつく計算された指の動きで射精に導かれた。
ヤナハは触れただけで射精するユウトに困惑しつつもそのまま最適な射精を迎えられるよう手を動かす。
ぐぴゅっぴゅるっ
ユウトの小さな子どもらしいペニスの先端から白濁液がこぼれ落ちる。
それはヤナハの「なにもない」秘所にかかってそのまま浴室の床に垂れ落ちた。
「はぁっ………はっ……はぁぁっ………。」
「………。」
両者、無言の時間が数秒続く。
ユウトは浴室の熱と、自分の動きと射精で体温が高まりバクバクと心臓が鳴り止まなかった。ただただ最高に気持ちの良い射精をして満足そうに脱力し、浴槽のふちに座る。
一方、ヤナハは少しLEDを黄色に明滅させてから、秘所についた精液を手で拭ってスッと直立した。
手に付着したユウトのザーメンをしばらく眺めた後、シャワーから水を出して身体を清め始める。
「やっ……なはっ……なん…はぁっ…ごめっ……ん。…はぁっ…。」
「いえ、ユウト様の性欲処理は……一部合理的だと判断したまでです。」
「そっそっか……。」
美女の口から性欲処理と改めて聞くと、事務処理みたいな背徳的な意味合いに聞こえてひどく燃え上がるユウトだった。
ヤナハはそのまま体中の泡と臀部を入念に洗って、ユウトの陰茎も綺麗に洗浄した。
ユウトは多少時間が経ったとはいえ敏感な部分を洗われて少しだけ痛かったが、なんとか終えてすぐに湯船に浸かる。
「ひぇっ!」
最初こそ体を洗った直後は身体が熱すぎたものの、色々合って少し冷えていたようで、非常に熱いお湯からくる刺激を感じて一瞬悲鳴を上げてしまう結果となる。
ヤナハは浴槽の容積から、入浴は断ろうとしたのだが、ユウトが「一緒に入りたい」といい出して聞かなかったので、ため息交じりに一緒に入ることになった。
幸いユウトはまだ小学4年生だったので、多少余裕があるくらいには入れたのでこれからもちょくちょく入ろうとヤナハを笑顔で誘うユウトだった。
「はい、時折ご一緒させていただきます。」
分かる人にはわかるレベルで苦笑するヤナハにユウトはついつい温かいものを感じるが、それが物理的な風呂からくる暖かさなのだと心のうちでごまかした。
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◀西暦2126年11月
10月から、ユウトとヤナハの新しい生活?がスタートした。
ユウトは普通に、年相応な毎日をヤナハと送りつつ、時たま性処理にヤナハを使い続ける生活。いいや語弊がある。時たまではなく完全に毎日だ。
性を覚えたての、少し性欲の強い健全な男児であれば毎日射精したいという欲求は当たり前だ。
ユウトの体力の無さと精力の少なさから、一日一回精液を抜けば良い程度に収まっているのはヤナハにとってはまだ僥倖と言える部分だった。
もちろんユウトを健全に育てるために合理的な判断の元、ヤナハはユウトの性欲処理を請け負ったわけだが、未だヤナハにとってユウトが要求する行為に甚だ疑問を呈するものが多い。
射精するだけでいいのであれば手淫で事足りる。
しかしユウトはヤナハに多くのものを求めた。
インターネットで得た知識を十全に使い、一般的とされるものからアブノーマルなものまで多様だった。
ヤナハは個人的にはユウトの健やかな成長を願っている。
その健やかな成長に自身の機体が必要ならば当然協力する気ではいる。
前述のヤナハの疑問とは決してユウトに協力することについてではないということ。
協力したいがその協力が正しいことなのかわからない。判断を仰ぎたいが仰げばユウトは苦しむ。そのどん詰まりな現状に「保留」という回答を出した。
ユウトの要求どおりに動いて実際にユウトが健全な成人男性になるのかどうかを経過観察するとも言える。
そんなことを思考しつつヤナハは現状に対しやはり違和感を隠せないでいた。
ユウトがおおよそ数週間前にヤナハに言った罰。
それを果たすべき日が本日。
「下の服全部脱いでくれる?」
「………はい。」
ヤナハは言われたとおりスルスルと脱いでいく。その動きには迷いも無駄もなかった。
特筆すべき点としては彼女の腹部。
まるで妊娠数ヶ月目かと聞かれてしまうような腹部は見た者にかなりの違和感をもたせるだろう。幸いヤナハは最近家の外に出ていないので、ユウト以外の人間がこの姿を見ることはまずなかった。
ヨシヒコもヤナハの腹部が大きくなる前に一度帰ってきているので、一ヶ月に一回帰ってくるか来ないかの彼がこの彼女の姿を見ることはない。
「それにしてもすっごいお腹だよね。」
「現在当機の疑似消化機巧を消化段階で停止させており、不要物を9.7kg溜め込んでいます。」
「壊れたりしない?」
「過去の当機と同じ型番での耐久記録よりまだ少し腸壁の伸縮率に余裕があるので大丈夫かと思われます。しかし不明なエラーの頻発や内燃機関の不具合を多数検知しており早急な排泄を提案します。」
それはユウトも困るので肯定したい。
ユウト自身今日はその解消をするべきだと判断してこの場に呼んだのだ。
「そうだね、とりあえずそこでしてよ。」
ユウトとヤナハは今トイレに居る。
ユウトが指し示したのは洋式多機能便器だった。
もちろん彼自身、アンドロイドの便が衛生的に汚いものではないと理解しているがやはり排便という行為はトイレだろうと思いここにした。
もちろんヤナハは以前から排泄する際はトイレを使っているので間違った判断ではない。
「……ユウト様もここにいらっしゃる状態で、……でしょうか?」
「うん。」
「……なぜでしょうか?」
ユウトはそれも罰のうちだよ。と、言う気でいたがやめにする。
それはあまりにもユウトがヤナハに対して罪の意識を持ってもらいたいというスタンスのように思えたからだ。
だがヤナハの擬似的な排泄をユウトが見る合理的な理由とはなんだろうか?
ユウトはそれを常に考えていた。いざというときに咄嗟に言葉が出るように。
そして思いついたからこそ、そしてそろそろユウト自身がヤナハの機体を見て不安になってきたから今日、決行したのだ。
「僕は将来何になろうか決めてないんだけどね?せっかくだからアンドロイドを作るロボット工学者になろうかなって。だからヤナハがどれくらいうんち貯めれるのか見ておきたかったんだ。」
ユウトが言うロボット工学者とは通名アンドロイド技師のことだろう。
「………。」
「もちろん直接的な役には立たないかもしれないけれど、普通の人は見れないようなことを見ておけばなにか面白いアイディアが出るかもしれない。」
「……理解しました。非常に合理的だと判断します。それでは……失礼いたします。」
ユウトは前もって想定していた聞き返しに対するいくつかの回答をすべて披露せずに済んだことに少し安堵した。思いの外素直に受け取ってくれたらしい。
ヤナハは便座に座ろうとするのではなく、立った。
ユウトは困惑したが、すぐに意図を察する。
ヤナハは自分で判断してユウトが見やすい角度になるように臀部の位置が高くなるように便座にしゃがむ形で用を足すことにしたようだった。
ユウトは口角を上げてニンマリとした顔で眺める。それとは対照的にヤナハはひどく無表情だった。
彼女が屈むとより大きく張った腹部が強調される。
そのマタニティあふれる姿だけでユウトはついに勃起してしまう。元よりお腹が膨れた彼女を見て、「ヤナハが妊娠したら」と想像して1人で抜いていたこともあったので当然の帰結だ。
「………ふぅ゛っ……ぅ……。」
ヤナハの口から声が漏れ出る。
それはエラーからか、それとも彼女が踏ん張っているからか。
みりっみちみちっみちぃっ!
ユウトは目を見張った。
大きく盛り上がった鮮やかなヤナハの括約筋がゆっくりと広がっていく。人間ならにおうような状況でも無臭で、ヤナハの肛門は広がっていった。
固まる前のコンクリートのような色合いの粘土といえばいいだろうか?ユウトの二の腕ほどもある太さの排泄物がひり出されていく。
みぎみちっ!みりみりっぶぽっ!
「はぁっ゛………んっ…………。」
機械的な腹圧が擬似腸内でフル稼働し、宿便の隙間から機体内で発生した無害なガスを吐き出す。人間であれば発酵したガスであるが、あくまで彼女の吐き出した空気は機体外から吸入した一般的な空気が流入してしまっただけのものなので人間が吸っても問題はない。
無臭だ。
みぐりゅりゅりゅっ!どりゅりゅっ!びぃっ!
最初こそ、ゆっくりと押し出されていたものも、一軍が完全に出終わると一気におびただしい量の水っ気の多い排泄物が出始める。
ぶりゅりゅぐりゅっ!ぶぷぷりゅっぶろりゅっ!ぶぐぅっぶぷっ!
ユウトは股間が痛くなるのを感じつつも目の前の刺激的な光景に夢中になっていた。
普段は無表情で、クールで、無言を貫いたアイドル顔負けな美人グラマラスアンドロイドが一気に見た目は汚物を吐き出す姿は彼の性癖を図らずもねじ曲げてくる。
「ふっ…………ぐ………。」
むぐりゅっ…………ぷりゅっ………
いくつか、ぼとぼとと便器に垂れ落ち、ぼちゃんっと便器内の水に浸る排泄物。
本来なら不快感ある音も見目麗しい成人女性がしていると思えばひどく滑稽で、秘められたエロスを感じるユウト。
くぱくぱ、と腸内ユニット空になり開いたり閉じたりを繰り返すヤナハの肛門。
腸壁が少し崩れたのか、勢い余って少しだけはみ出していた。
便器内には大量の粘土のような排泄物がたまり、堂々と鎮座している。本当に流せる量なのか?
「………終了しました。」
ヤナハはだし終わった後もしばらくかがんだままだった。
流石にいくらアンドロイドといえどもなにか感じるところがあったのか、どちらにせよヤナハの肛門は当初のキュッと閉じられたものではなく、大きくポッカリと口を開けてくパクパと動いてい続ける様はなおも目を離せない。
人間らしく、他の生物が餌を待つように口を動かしているようでユウトはビグっと大きく腰を震わせた。
「あっ……りがと…。」
ついには触らず射精してしまったらしい。
ポッカリと開いた穴の奥底の深淵を覗いてしまったからかもしれない。
同時に自分がちょっとまだ受け入れ難いスカトロジーに似たジャンルで絶頂してしまった嫌悪感、そしてそれを覆い隠すように彼女の秘められた部分を世界で初めて自分だけが知ったという優越感でごちゃまぜの感情だった。
ただ後悔はなかった。
ユウトは射精したことを黙りつつ、股間に広がる濡れた気持ち悪い感覚を無視してトイレを出ていった。
ヤナハはうんこ座りからきれいな動作で立ち上がると、トイレットペーパーでまるで人間のように臀部を綺麗にしてさっさとトイレを流してその場を後にした。
大昔のように量が多いからといって止まったり逆流する構造ではなかったのは幸いだ。
顔は非常に不快そうな顔と落ち込んだような顔が混ざったような顔つきだった。
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◀西暦2126年12月
ヤナハはユウトへ視線を向ける。
ベッドの上でギュッと敷布団に敷かれたシーツを握りしめながら快楽に耐える少年。
最初こそ「パイズリしながら舌で先端を舐めて。」という要求をされ、ヤナハは「パイズリとはなんでしょうか?」と聞き返し理解することに時間を要していた。
しかし、今では最適な刺激を与え続ける。
だが、結局ユウトの子供性器では彼が視聴したアダルトビデオのようにはいかずに失敗することとなった。
小さな性器、巨大な乳房では、全体を胸が覆い隠してしまいユウトのペニスの先端は露出しなかった。
もちろんそれでも極上な快楽をユウトに与えていたため彼から何かしらの文句が出ることはなかった。
だぱんっぱちゃんっぱんっ
「………気持ちいいですか?」
「うっ…うんっ♡ヤナハのっおっぱいっ好ぎっ!」
急激に射精すると心臓に負担がかかるということを考えてヤナハは例えどんなにユウトが早漏であったとしても5分程度は射精に達しないように調整し続けていた。
あくまで簡易的な前戯でできる調整技ではあるが。
ヤナハの大きな胸の谷間が、ダラダラととめどなくあふれるユウトのカウパーで泡立つ。ヤナハの股間部分に足を通して、身体を数度引くつかせるユウトは時折ヤナハの股間のスリットを足の指でいじったりしていた。
その行為に最初は疑問しか抱かなかったが、多くを求められているうちにヤナハはゆっくりと理解していっていた。
曰く人間の男性は、相手が性的興奮を感じていると感じると興奮度が増すらしい。男性に限った話ではもちろんないのだが、少なくともユウトはそうなのかもしれないと結論づけた。
「ふっぐっ♡ああぁっ!」
ユウトが身悶える。
本来であれば3度射精に至っているであろう陰茎は、射精に至る前に刺激を停止され我慢させられ続ける。最初はその行為にユウトも文句を言っていたのだが、ヤナハが身体的負担のことを懇切丁寧に、普段は見せない剣幕で説明すると納得したようだった。
しかもそのほうがより大きい快楽を得られるとユウトは気づいたので今は素直に受け入れているようだった。
「ふっ……ふうぅっ!」
睾丸がキュッと縮まって、せり上がる。
ヤナハはそろそろいいだろうと大きく胸部を動かして刺激を強める。
ぱちゅったぱんっぱんっ
最適な刺激をユウトの未だ剥けてない幼い性器に容赦なく与える。
「あぁっ!!?あぁ!」
「どうぞ、お射精しください。ユウト様。」
力いっぱいユウトはシーツを握りしめて身体を弓なりにし腰を浮かせる。
ヤナハはじんわりと機体胸部に温かいものが伝わるのを感じとった。
締め付けたままユウトの息が整うのを待つ。
ユウトは絶頂からか胸を大きく動かして呼吸し、数度痙攣して脱力した。
「………。」
しばらくして、ヤナハは胸を締めたまま上へ引き上げていく。
絶頂を終えて落ち着いたとはいえ、やはり動かれて多少身体をひくつかせるユウト。
構わず、大きな胸部を左右から手で挟んで持ち上げると下からぐたっとしたユウトの陰茎が表れた。
精液やカウパーなど液体は見当たらず、綺麗にこそぎ落とされていた。
つまり吐精された子種汁はすべてヤナハの大きなおっぱいに埋まっているというわけだ。
ヤナハはもとより持ってきていたタオルで胸を軽く綺麗にしたあと、衣服を戻して立ち上がる。
ユウトの下着を上げて、情事前の姿になるよう綺麗に服を整える。
されるがままのユウト。
すぐに夕飯の準備に移行しようと、さっさと部屋を出ていってしまうヤナハに一瞥。
ユウトはその様相になにも言わなかったが、今は射精の多幸感と賢者がごとき冷静さで脱力したまま夕飯まで寝てしまった。
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◀西暦2126年1月
ヤナハは少しばかり悩んでいた。
どう考えてもエスカレートしつつあるユウトの要求に彼自身の将来を案じている。それは決して皮肉でも嫌味でもない。何か責めたいというわけでもなかった。
ただただ一般的に小学校高学年男児を育てている母親はこういった苦労を抱えているのか疑ってしまうのだ。
苦労、と表現するほど困ってはいないがユウト自身がきちんとした大人になってくれることを期待するばかりだ。
「あっはぁ゛!もっとっ♡」
ユウトの陰茎をヤナハの太ももで挟む。
全力でやってしまえば海綿体を損傷させ一生修復できない回復不能な傷を与えることすらできるこのマスターベーション方法にヤナハは2度反対している。
結局は「合理的」な理由でヤナハも許可を出したので、反対する気はもうないが、謎は尽きない。
「これ以上はダメです。」
ユウトが大きく、腰を引いて突いて引いてと動かす。
彼が情けなく懇願する言葉にも冷静に返答する。
ヤナハの色白でそこそこ筋肉質(のようにみえる)な太ももでユウトのペニスが出たり入ったりしている。
あまり強くすると以前ユウトが痛がった皮部分への刺激を与えてしまうことを懸念してヤナハは絶妙な力加減でユウトの快楽を支援していた。
ユウトはあまりにも夢中で、ヤナハの臀部に爪を立てていることすら気づかないほどに心地よさを演出しているようだった。多少の傷み、いわゆるエラーを無視しつつユウトに最善な動きを演出する。
「はっぁっ!ヤナハぁっ♡」
ユウト自身はヤナハと擬似的なセックスをしているような感じで嬉しさを全面に表していた。もし仮に自身に女性器が合ったなら……とヤナハは懸念する。
ぐっちゅっちゅぐっちゅっ
「まぉっおぉ゛っあぁ!もぅっでっ!?」
ユウトはヤナハの太ももでついに絶頂しそうになっていた。
射精管を勢いよく上る精液。
数千万という精子が内包された精液が尿道を我が物顔で通っていき外へと放出されようとしていた。
「どうぞお射精しください。」
「あぁっ!でるでるっでりゅっ♡」
学校では大人ぶって、知識人ぶったユウトの言動とは相反するような余裕のない声に不覚にもヤナハは悪い気はしなかったが、太ももから一気に突き出た陰茎からは思いの外ユウト自身想像してた大量射精はせず、いつもどおりの質と量で飛び出て床を汚す形となる新鮮な精液。
生の太ももで扱くために下へおろしていたヤナハのストッキングにポタポタと数滴こぼれ落ちる。
ユウトは息切れでヤナハの腰に抱きつきながら体重を預け、息を整えていた。
この場所が廊下ということも合ってひどくむせ返るような汗のにおいと生臭いにおいが混ざり合い充満する。
しばらくしてユウトは自らヤナハから距離をとって、尻から床に座るように倒れ込んだ。
「お怪我はございませんか?」
ヤナハはユウトがさほど危ない倒れ方をしたとは判断せず、くるりと翻ってユウトを見る。
「あっ………ふぅ……うんっ!」
「それでは、失礼いたします。」
ユウトの安否を一応確認してからヤナハは一言断ってポケットから取り出したハンカチを持ってユウトの陰茎を綺麗にし始める。
ユウトは違和感なく自身の脱力した無様にも見える一物をヤナハに差し出し、触って綺麗にしてくれる彼女に対しちんけな征服欲を満たしていた。
ヤナハはそのままユウトの身なりを整えて、自分自身のストッキングを脱ぎ去って、洗濯物と一緒に洗浄し、ダイニングへと向かっていった。
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◀西暦2127年10月
ユウトが小学5年生11歳に成り立てのこと。
ユウトはいつものように面白くもない学校を終えると、違和感に気づいた。
玄関に知らない男性の靴があったのだ。
大きな声で「ただいまぁ!」と言う前に口を抑えて、玄関の扉をゆっくりと音を立てずに閉める。普段ならそのまま鍵を締めるところではあるが、用心して開けたままにした。
ユウトはランドセルをそっと廊下に置いて少し待つ。
普段ならユウトがドアを開けて2秒後にはヤナハが廊下で出迎えてくれるのだがそれすらない。
緊張がユウトの背筋を駆け巡った。
正直最悪な想像において、空き巣、泥棒は想定していない。靴を脱いで家に上がるようなことはしないだろう。だからユウトが考えたのは警察かアンドロイドを狙った強姦魔か。
前者なら理由は色々とある。
ユウトが見ているアダルト関係の映像は違法アップロードが多いし、海外サイトも行き来しているのでそこで何かトラブルがあった可能性、発覚という意味で。
それにヤナハとユウトが普段からしていることはおおよそ社会的に褒められたことではない。
その行為がバレた場合、ユウトが被害者になり、ヤナハは小児性愛を獲得した欠陥アンドロイドとして廃棄されるだろう。そういう意味では身の安全的にユウトはまだ安堵している。
そして後者、つまりアンドロイドを狙った強姦魔もまたあらゆる手口で最近横行している。アンドロイドは人間の女性のように叫んで暴れることもなく、また人権がないので罪悪感を抱きにくい。何よりユウトの家の近くでアンドロイド誘拐事件が数日前にあったばかりだ。
ユウトがそれに思い至った理由は、単に今朝何気なく見ていた報道番組でコメンテーターが「近年はアンドロイドを目的とした強姦行為も増加傾向にあるとされていますからねぇ」と得意げに話していたからだ。
ユウトはいつでも抵抗できるように玄関先に合った傘と、緊急連絡がすぐできるようにした端末、そして走って逃げれるような体勢でリビングへとつながるドアをゆっくりと開けた。
「おお、ユウトおかえり!」
「おかえりなさいませ。」
ユウトを出迎えたのは紛れもなく父、ヨシヒコだった。
ユウトはとっさに傘を廊下に投げ捨てて、端末の電源を切りポケットに入れる。
少なくともユウトが予想していた危機的状態ではなかったようで安心した。
「きっ……今日は早いんだねパパ。」
表面的に動揺を出さないようにしつつ、なぜこんな時間に帰ってきたのか聞く。
「ああ、今日は会社で大きなプロジェクトが決まったようでな?そのプロジェクトを進めるきっかけになった俺の頑張りを社長が褒めてくれて、早めに帰れることになったんだ。」
「そうなんだ、すごいね!嬉しいよ。」
内心はさほど嬉しくない、むしろ今日もヤナハに抜いてもらおうと考えていたため、できそうにないことに落胆してしまうがそれはそれ。仕方ないと割り切ることにした。
ユウトは父のことが嫌い、とまでは流石に思ってない。
以前は影ではっきりと苦虫を噛み潰した顔で悪態をつくくらいには嫌いだったが今は苦手程度だ。めんどくさい、と言ってもいい。
「ヤナハ、今日のご飯は?」
「本日はご主人様も一緒に食べられるということでご主人様の好物のすき焼きです。」
「……そっか。」
本来今日は春巻きの日で楽しみにしていたうえに、ちゃんとヤナハにも春巻きが好きだと伝えていたのにも関わらず相談無く勝手に変更されたことにモヤッとする。
やはり持ち主を第一に考えるアンドロイド、とひとりユウトはごちた。
「ヤナハ?」
ヨシヒコが顎に手を当てて首をかしげる。
なにか注文があるという聞き方ではなく、それその意味について問うニュアンスだった。
それもそのはずで彼はグーパがヤナハと呼ばれるようになったことを知らない。
「ああ、僕が勝手に名前つけちゃったんだけど、……ダメだった?」
「いやいや、いいじゃないかヤナハ。いい名前だ。」
「ありがとうございます。」
ユウトは内心少し安堵した。
ユウトが帰宅する前からヤナハとヨシヒコは出会っていたはずで、その間にユウトの所業をヤナハが話してしまっているのではないかと懸念していたからだ。だが実際は固有名称すら伝えていない。
ということは、「俺がいない間になにかユウトとあったか?」「どんなことをしていたんだ?」というような質問はなかったと考えていい。
ヨシヒコの素直に子供に会えた笑顔と照らし合わせてもユウトとの関係性をヤナハは語っていないと判断していいだろう。
「最近はどうなんだ?学校は楽しいか?」
「うん、ヤナハがいろいろ相談に乗ってくれてるし、友達とも上手くやれてるよ。」
「そうかそうか。」
ヨシヒコはユウトの頭を優しく撫でる。
ユウトは少し苛立った。その苛立ちは捻くれた物の見方からくるものではなく、純粋に年相応なもの、子供扱いに対して不満があっただけだ。
「他にもヤナハにはいっつも勉強を見てもらえてるから、成績もいいんだよ!」
「おー。」
ユウトは自分で語ることへシフトする。
ヨシヒコが疑問に思って聞く前に、その疑問が解消されるほどにユウトから公開していい情報だけ与え続ければ自然と真実は隠される。
不思議に思われない。
そんな考えから、しばらくユウトは当たり障りのない会話を展開した。自分だけがしゃべるのではなく、時折父親のことも聞く。そうやって「久々にあった大好きな父に甘える子供」を演じる。
ヤナハ少し無表情の割に口角を上げて軽く一礼すると、ダイニングで早めの夕ご飯の支度をし始めた。
彼女にとって理想とされる未来は息子であるユウトがちゃんと血のつながった家族に甘えることができる環境構築だ。それの一助に慣れていると確信できるユウトの振る舞いに温かみを感じた故の表情変化。
「ヤナハ、普段からちゃんとユウトのことを見てくれているんだな。ありがとう。」
「いえ、私は命令に従ったまでです。ご主人様の愛情あればこそだと考えます。」
あくまで自分はアンドロイド、大切なのは人間同士の愛の育みであると一歩引いて所有者をたてる姿勢の彼女にヨシヒコは苦笑した。
もし第三者が見れば、理想的な家族の一幕とも見える光景だった。
「そうか……そうなんだな…。」
思わしげにつぶやくヨシヒコ。
その顔は希望に満ち満ちた顔だった。
ユウトは一瞬その顔つきに嫌なものを感じた。
結局、その後ユウトとヨシヒコ、そしてヤナハは食卓を囲むこととなる。
最初ヤナハは家族の団らんを邪魔しないように別室で待機しようと考えていたのだが、ヨシヒコに待ったをかけられた。
「さっきユウトも言っていたけど、普段は一緒にご飯を食べているんだろう?」
「はい。」
「じゃあユウトにとってヤナハは家族も同然だ。……そして俺にとっても。」
ヨシヒコはヤナハの手を優しくとる。
愛情を込めた優しい手付きでヤナハを引っ張ると自身の対面に座らせて一緒に夕食を取ることを求めた。
ユウトは途端にふつふつと苛立ちを感じた。
ユウトからすれば普段から家族のように扱っていたのは自分であり、今日ポッと出てきただけのヨシヒコがあたかもヤナハを家族のように認めるような言動や行動を取ることに言いようのない不快感を覚えた。
視線は握られた手に。
「(父さんがヤナハに触るなよ)……。」
ヤナハに対してもいささか苛立ちはある。
ヨシヒコに握られた時ヤナハは少し自嘲気味に嬉しそうにしていた。それはユウトにしかわからないレベルでの表情変化で、当の本人、微笑みを向けられたヨシヒコですらわかってはいなかったであろうレベルのもの。
だからこそ裏切られたような気分になったのだ。
だが同時にそのユウトの微妙な機嫌の変化を感じ取ったのか、ヤナハはヨシヒコが不快に思わないギリギリのタイミングで手を早めにはなす。
「さぁ、みんなで一緒に食べよう。」
ユウトは少なくともその苛立ちを今は抑えることにして食事を摂ることにした。
夕食自体は普通に終えて、その後ヤナハが用意してくれた軽いデザートをつまむことになった。ユウトの好物のプリンだったので先程までの精神的なギスギスはどこかに飛んでいった。
ユウトがちょうどトイレに行ってから少しして、ユウトがリビングへ戻ろうと廊下からドアに手をかけたところでヨシヒコの声が聞こえる。
「ヤナハはユウトのことをどう思っているんだ?」
その質問にユウトはドキリとした。
ユウト自身聞きたくて、でも聞けないでいた言葉。アンドロイドは所有者に基本的には逆らわないのでユウトとしてもぜひこの状況を最大限利用して問いただしたいところ。
その心理と状況ははいわば好きな女の子が自分をどう思っているのか友人に聞いてもらうのと似ていた。
「………。」
すぐに答えない彼女にユウトは若干冷や汗をかく。
音を立てずにノブを回しドアの隙間から見ると、ヤナハのLEDが黄色く点滅しておりだいぶ考えているようだった。
「ユウト様は聡明です。また、同年代の子供が持つ母親に対しての愛情をどう表現していいかわからず時折空回りすることもありますが、両親への甘えたい心を常に抱えているように思います。」
ヤナハが思考していた理由は空回りという部分。ユウトがしていることをヨシヒコに話すべきか話さぬべきか、どちらの場合もその後の対応でユウトがどう不利益を被るかをしっかりと計算していたからこそ時間がかかったのだ。
ユウトは自分が危機的状況にあったことなど気づく素振りも見せず、ヤナハの本心のようなものを聞いて少しだけ涙が出そうになった。
「時折当機が……当機を母親と見立てて甘えてくることがあります。それ自体は当機のレゾンデートルとして嬉しく思います。しかし同時にどうあっても当機はユウト様の親にはなりえません。故に肉親であるご主人様……、いえ遊上ヨシヒコ様にはもっとユウト様と関わる時間を増やしてほしいと提案します。」
ユウトは目を見開いた。
アンドロイド側からの要求という珍しさもあるが、それ以上にヤナハの深い愛情について。彼女がいかに深くユウトに対して愛情を持っているのかがわかる言葉に下まぶたに涙がたまる。
「機械風情が差し出がましいことして申し訳ありません。」
「……。」
ヨシヒコは何も言わなかった。
ただ黙って天井を仰いでいた。
「いや、ヤナハはとても家族思いなアンドロイドだな。ありがとう。……俺もあることについて悩んでいた。だからその決心がついたからお礼を言いたい。」
「いえ……ありがとうございます。」
ヤナハはヨシヒコがわかってくれたとお礼を言ったみたいだが、逆にユウトはいささか懐疑的だ。あくまでヤナハに対してお礼を言っただけで、ヤナハの要求に対してなにか答えたわけではない。
ユウトはヤナハに対しより一層「愛」を強くしたが、父親は現状維持という結論に至った。ただ自身のことをずっと気にはしていたのかもしれないと、もう少し判断を保留、父の話を聞くべきかもしれないと思った。
結局夜11時頃ユウトが眠くなるあたりで、ヨシヒコはまた会社に戻っていったようだった。
ユウトは「さっさと会社にもどれ」と思っていたので、軽くため息をついて意図的に寂しそうな表情にしつつヤナハの顔を見ると少し目を見張った。
笑っていたのだ。
またも嫉妬からくる苛立ちを感じるがその苛立ちを性的にぶつけようと思ったところで、大きくあくびする。
流石に寝るべきかと思ってヤナハに「おやすみ」の挨拶だけして二階へあがった。
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◀西暦2127年11月
給食を食べ終えて、昼休み。
図書室の片隅で読書をしているとピリリッと電子音がした。ユウトの端末に連絡が入った。
それは遊上ヨシヒコからの連絡だった。
ユウトは「めずらしい」と素直に思った。いや、そもそも遊上ヨシヒコは全くと行っていいほど連絡をよこさない。だからめずらしい、というよりは「端末持ってたのね」という純粋な驚き。
内容は「学校が終わり次第すぐに帰ってきてほしい。」という文面しかなく、訝しんだが特に用事もないためすぐに帰宅することにした。
帰っている時、何が合ったのか気がきではなかった。
そもそも連絡なんて全くといっていいほどしないのだから、こういった形で連絡が来るということは次こそなにか犯罪に巻き込まれたとかではなかろうか?と思ってしまう。
そうでなくともヤナハの所有者ではないユウトにとって、なにかヤナハにあったんじゃないか?と不安になってしまう。
ユウトの足は自然と速歩きになっていた。
さほど家から学校までは遠くないので10分程度で帰宅することができた。
家に帰ると以前疑う原因となった靴がきちっと並んでいたので、今日も父がいることを知って少し安心しつつ同時に面倒くささを感じた。
「ただいまー。」
心なしか声にはずみがないのも理由は明白だ。
ユウトがバッグを廊下においてリビングに行くとヤナハとヨシヒコが食卓で座っていた。重苦しいという雰囲気ではない。しかしなにか嫌な予感という予知じみたものはあった。
そこでユウトはゾッとする。
まさか「バレた?」と。
しかし既にリビングに入ってしまったユウトに逃げるべき場所も理由もない。甘んじて怒られるなら受け入れるしかない。
最悪、性に興味津々な子供のいたずらだったといって乗り切ろうと腹をくくる。
ユウトは恐る恐る、以前3人で食事した位置で自身の座席に座った。
「おかえり。」
「おかえりなさいませ。」
「あ……、うん。ただいま。」
ユウトは思いの外怒りのこもった言葉じゃなく、穏やかな声音だったので杞憂だったのではないかと安心する。
ユウトが腰をしっかりと落としたことでヨシヒコも話すタイミングを得たと口を開いた。
「ユウト、ヤナハを家族に迎えようと思う。」
「…………………えっ?」
発せられた言葉を受け入れるのに時間がかかった。
もちろん想定外ということもあったり、そもそもアンドロイドが家族?どゆこと?という素直な疑問もあった。いやなんなら「え?いまさら?」という気持ちだろう。なぜならユウトにとって既にヤナハは家族同然なのだから。
「ん?でっでもヤナハは既に僕たちの家族みたいなものだよ?」
その言葉にヤナハは少しだけ目配せして嬉しそうにしていた、しかし含みのある笑みでもあるように見えた。
「そうだな、だがそういう意味ではなく、ヤナハをユウトの新しい母親として遊上家に入れようと思うんだ。ヤナハには俺と結婚してもらう。」
「は?」
聞こえるか聞こえないかくらいの声量でユウトの口から空気が吐き出された。
現代においてアンドロイドとの正式な結婚制度はない。
それは人権も戸籍もないからである。
しかし、当事者同士やその周りを取り巻く環境に結婚として添い遂げると言葉にすればそれは結婚になる。つまり「結婚」という制度は使えないが「結婚した」とは言い張れる。
結婚という一種の状態になるだけだ。
そして次に公的な意味合いでの結婚。
遊上家然り、世の中にはどうしても母代わり父代わりが必要な場合がある。そんなときこそアンドロイドだ。一時的か恒久的にかはともかく、アンドロイドをその家族の人間として迎い入れ適切な審査を受けて仮戸籍を取得することができれば晴れてアンドロイドと結婚することができる。
それが制度として多くの国民に認められる日は近い。
そう「近い」のだ。
制度としてあるが、あまり知られていない。あまり認められていない。微妙な制度と言える。例えば、女性アンドロイドと結婚した人間の男性がいる場合。その男性が後に「この人間の女性と結婚する。」といえば、どんなにそのアンドロイドが拒否しても勝手に人間側の女性が正式な妻となる。
そういったあまり強いといえない制度なのだ。
さて、つまり話をまとめるとユウトの母親にヤナハがなるということであり、ヤナハとヨシヒコが結婚するということだ。
ヨシヒコが再婚するという見方もできる。
「急な話だとは思うだろう。ただ俺はこの間3人でご飯を食べて、そろそろ本格的に新しい家族の形?ってものを作ってもいいんじゃあないかって思ったんだ。」
「やっヤナハは!?なっ納得してるの?」
「はい、私はご主人様と結婚したいと考えております。また、ユウト様をこれからも誠心誠意、良好な家族関係を築いていきたいとも思います。」
「………。」
「俺はユウトにもっと甘えてほしいと思ってる。俺らは一般的に良い家族とは言えなかったが次は前を見てヤナハとしっかり仲良く新しい家族になっていけたらと思う。」
ユウトは呆然としていた。
現実を受け入れるのに時間がかかる。
ただ父がひとりで言い始めたことならまだ良かった。しかしヤナハのわかりにくい微妙な笑顔をみて彼女もまたそれを望んでいると理解してしまった。
「それでな?実はお前を呼んだのは今日ヤナハがここにいられないからなんだ。」
「えっ!?」
ユウトは驚いて下がり気味だった視線をヨシヒコに戻す。
激動の状況変化について行けないユウトもさすがに反応せざる負えない。
「本来アンドロイドは1年点検だったけどあんまり定期的にいけてなかったから今からセンターに行こうかな……って思ってな?」
ユウトは何やら含みのある言い方を感じた。
いくら父親と交流が少なくとも家族であることは事実。家族がわかる微妙な言葉の裏を読み取る。なにか表向きそう言っているだけで違う目的があるように。
「(結婚………点検……センター?)……。」
センターとはアンドロイドの管理、補修、契約内容などアンドロイド関連を統括する役所のことで正式名称は「自動人形統合管理開発センター(Automaton Integrated Management Development Center)」で通称センターまたはAIMDC、エイムドックと呼ばれてる公的機関。
アンドロイドは個別にパブリッシャーのもと販売される。ショッピングモール内でもアンドロイド販売はされており、手軽に買うことができる。
しかしアンドロイドが店頭に並ぶ前には一度エイムドックを通ることになっている。それは型番やその他諸々管理に必要な書類をセットにして審査するからだ。
ユウトには結局なぜヤナハがそこにいかなければならないのかわからずじまいだった。もちろん素直に点検だと受け取るが疑問はある。
「……わかった。」
「ああ、迷惑かけるけど帰ってくればまたいつもどおりだ。」
父親の何やら浮足立つようなコロコロと変わる表情に嫌なものを感じつつ、前の嫌な感覚が現実になったことを素直にユウトは認める形となった。
ユウトにとってヤナハはもはや母親兼恋人のような存在へ昇華していた。
いや、なんなら手淫をされたあの日からヤナハに対して恋心を持っていた。それと同時にヤナハもまた自身にこんなことをし続けてくれているのだから、ユウト自身のことを好きなんだと勝手に思っていた。
だが結婚をするとヨシヒコが言った時、恐縮そうな面持ちだったが嫌そうにはしていなかった。こころなしか嬉しそうにすら見えた。
ユウトは素直に祝福できずにいた。
拳をグッと机の下で握りしめる。己の無力感に苛まれ、心が沈んでいった。
その場でユウトの挫折したような様相に気づいたのは無機質な目だけだった。
ユウトがヨシヒコとヤナハの結婚宣言を聞いてから3日。
依然としてヤナハは帰ってこない。
あの日、夕方には2人で出かけ、その3時間後ヨシヒコだけ帰宅。父と息子の歪な団欒の後ヨシヒコはまた仕事に行った。
ユウトは呆然と父親を見送った玄関の廊下で1時間ほど体育座りしていた。ヤナハが帰ってくることなどまずない。が、もし仮に帰ってくるなら玄関で待ってあげていたい。
という純粋な気持ちではなく、動く気力がなかったのだ。
頭の中では喪失感と自責の念でいっぱいだった。
ユウトがなにか悪いことをしたわけではない。だがユウトはいつもなにか失敗や嫌なことがあると自分のダメだったところを自分で決めつけて拗ねるような子だった。
しかしその後、2階へトボトボと歩いていき、自身のベッドに潜り込んで寝た。
翌日は欠席した。
そして今日、3日目の朝。
耐えきれずにヤナハの備品がある部屋へと向かった。つまりヨシヒコの寝室だ。タンスからスペアの給仕服を取り出す。
洗濯されていてヤナハの残り香のようなものはない。そもそもアンドロイドはほぼにおいなどしない。しかしヤナハが身につけている可能性のあるものとして性的興奮を覚え自慰にふけってしまう。
においを嗅ぎ、局部に擦り付け、すぐに果てる。
射精後、精液で無残な姿になったヤナハのスペアの給仕服を慌てて洗濯しようと洗面所へ行った。しかし洗濯の仕方がわからず呆然とする。
本来ならば、ほぼ自動化された洗濯機に投げ入れるだけで機械が効率の良い選択方法を選出し開始のボタンを押すだけなのだがそれに気づくことはなく、結局かごに投げ入れるだけになった。
そもそも普段から使っているネット端末で検索すればすぐわかるはずなのにそれを思いつく余裕すらないほどに冷静さを欠いていたらしい。
ユウトはしばらくある程度証拠隠滅を図った後、もう罪悪感はなくなっていた。
翌日、学校側から連絡が家に入った。
ユウトは無視した。無視すればヤナハが帰ってくるかもしれないとも思ったし、最悪父に電話が行けばなにかこの絶望的な現状が変わるのではないかと思ったからだ。
しかしその翌日になってもなにも起きなかった。
ユウトは自身のにおいが強くなってきていることに気づく。精液臭かった。
ユウトの精力は一日一回射精すればもうその日はしなくても済む。
なにが言いたいのかというと、強い性欲に対して身体は貧弱ということだ。
一日に何度も射精したいほどムラムラするのに、結局一度射精すとその日は陰茎が痛くて勃起させるのも難しい。
結果何度も洗ってない自身の精液が乾いて固まったヤナハの給仕服に一日一回射精することが日課のようになる。
そして今日でヤナハのスペアの給仕服には3度目の射精してしまった。
ユウトはいつの間にか罪悪感を感じなくなっていた。
さて、その日の夕方、ユウトは1日1食で生活していたのでベッドで寝ながら「お腹へった……。」と呟いて股間をいじっていた。
ガタンッと一階から音がする。
ユウトは飛び起きて走っていった。
ユウトが階段を降りて玄関の方へ顔を向けるとそこにはヤナハとヨシヒコが佇んでいた。
ヤナハが帰ってきてくれたことへの喜び、それを相殺するかのようにヤナハの肩に手を回してにこやかに笑う父親への怒り。
ユウトはなんとか表面上は顔を作って迎え入れる「おかえり!」と。
その後、しばらくしてヤナハがキッチンに立ち料理をし始めようとするが、元より食べるものなど殆どないということもあって外食となった。
ヨシヒコがよほどヤナハが帰ってきて嬉しかったのか気前よく焼き肉に連れて行った。
そんな激動の1週間。
その夜。
ユウトは憔悴したように廊下で脱力していた。
聞こえてくるのは甘い女の声。
強くその女を貪る雄の声。
多少声量を抑えようと努力しているようだが結局途中で声のことは気にしなくなったようだった。
「なぁ生で挿れるよ?いいな?」
「はい、……どうぞ。」
ヤナハがヨシヒコとカナのダブルベッドで寝転がり、M字に開脚してヨシヒコを受け入れる体勢になる。片手で自身の股間を開いて。
ユウトは目を疑った。廊下にいるユウトがドアの隙間から中を覗くと、ヤナハの股間にはしっかりと女性器が備わっていたのだ。一気に硬さを増す陰茎を必死に無視する。
父親とヤナハの性交渉なんかで自慰行為をしたくなどなかった。屈辱だった。
ゆっくりと父親のしっかりとした大人の平均サイズペニスがヤナハの秘所に触れる。
咄嗟にユウトは声を出しそうになった。「やめてっ!」と。
しかし身体は痙攣したように動かない。
声も出ず、自分が息をしているのかすら理解できないほどに視覚情報だけがユウトの脳を蹂躙していた。
「あっぐあぁあっ!あっ…ああ!」
父親の喘ぎ声に吐き気を催す、しかしその声ははっきりとわかる。「歓喜の声」だった。
「………っ……。」
普段から顔を崩さず、感情を見せないヤナハの顔はひどく歪んでいた。父親の注文で処女膜を取り付けているのだろう。疑似血液は出ていないので膜だけだとわかる。
ユウトは初めての性交渉で多くの女性が痛みを覚えるのを知っていた。知っていたのだが、その多くの女性にヤナハが入っていることで言いようのない怒りを覚えた。
「(痛がってるじゃないか!!)……っ!」
心のなかでは罵詈雑言の嵐だった。
しかし一向に口から声はでず、鯉のようにパクパクと動くだけだ。
ユウトは目を見開いてヤナハが処女を失う瞬間を見届けた。きれいな肌で覆われた秘裂をこじ開けてヨシヒコのペニスを飲み込んでいく。
ユウトが衝動的に普段から揉みしだいていた大きな胸には、前まではなかった薄ピンクの大きな乳輪が備わっており彼は赤子のように吸い付く。自分のものだと主張するように。
まるで砂漠の中でオアシスを見つけた旅人のように、夢中で腰をふる父親の姿にユウトは恐怖した。
ヤナハの人目につかない部分、隠された場所を知っているのは自分だけだという自負が瓦解していく感覚。
ずぱんっぱちゅんっ
「…っぅ……はっぃっ……ひ……あっ…。」
ヤナハもユウトと性的な行為をしている最中に見せるような無表情ではなく、目を細めて楽しむような無表情をしていた。
やはり、契約した所有者と身体を重ねるのが当然だと思っているのだろうか?その目にはユウトと接するときに見せる迷いがない。
「きっ…気持ちいいか!?」
「……は…い。」
ヤナハはヨシヒコと正常位で彼の一物を受け入れながら時折キスをして刺激し続けていた。ヤナハ個人にとって性的快楽は挿入においては初めてだ。
実を言うと対して気持ちよさは感じてない。でもそれを口にはしない。
アンドロイドは嘘をつける。人間を喜ばせるために。それを学ばしてくれたのはここにはいないユウトなのだから。
膣壁を擦られ、子宮口を叩かれる際に生じるエラーを急いで解決して処理していく。陰核はゆっくりと自動的に勃起して、膣口からはぐちゅぐちゅと愛液が見え隠れしていた。
「はっはぁっ!俺もっ気持ちいいぃっぞ!!」
何度も何度もヤナハに乱暴に腰を打ち付けるヨシヒコ。
ヤナハの柔らかい肉にヨシヒコの身体がぶつかって音が断続的に室内に木霊した。もはやヨシヒコの頭の中には隣で寝ているであろうユウトの存在はなかった。
ただただ初めての、極上の名器に腰を抜かしそうになるのに耐えながら貪ることしかできていなかった。そこには己の快楽のみを求める傲慢さがあった。
ユウトは気づかぬうちに、自身の陰茎を擦る。
その日は既に一度射精しているので激痛が走るがそんなのは関係なかった。
父親が当然のように腰を振る姿などもはや眼中にはない。ただ初めて見るベッドの上で時折声をこぼす濡れそぼった秘所を持ったヤナハの姿に欲情するので精一杯だった。
「ぐっああぁ!!」
「……んっ………くっ……♡」
ヨシヒコがヤナハの大きく勃起した乳首から口を放し、がっしりと抱きかかえるように覆いかぶさる。腰のストロークはどんどん短くなっていった。
ユウトはもうわかっていた。男なら誰でもわかる絶頂の情けなさ。
「なっ膣内にだすからな!?いいなっ!?」
「はっい♡……お射精しくださいっヤナハの膣内へ……あっ……。」
ぐぴゅるっびゅっびゅるっ
ヤナハの膣道で果てるヨシヒコ。
あれほど激しく腰を動かしていたのにも関わらず、今では痙攣して硬直しながら射精していた。ヤナハもいつもの鉄仮面を崩して眉がピクついている。
ユウトは既にヨシヒコが果てる直前に本日2度目の絶頂を迎えていた。
人生はじめての1日に2度目の射精はほとんど精子などなく、カウパーと薄い精液が混ざって透明な潮のような液体でドアに飛び散っていた。
ぜーぜー、と息を荒くする父と息子。
ヨシヒコは一通り射精を終えて腰を引く。それに合わせて、ぐたっと硬さを急激に失わせた陰茎がヤナハの濡れた秘部から吐き出された。
ぐぽ……りゅ…
小陰唇とヨシヒコのペニスに愛液とカウパーの混合液でできた粘り気のある橋が出来上がるのをユウトは見た。
一拍遅れて白濁液が一筋、膣口からよだれのようにこぼれ、ヤナハの以前からある鮮やかなむっちりとした肛門に垂れた。
ヨシヒコはそのまま眠るように脱力してうつ伏せでヤナハに抱きつく。
「すごく………気持ちよかっ……た…。」
「それは……何よりです。」
ヤナハはすでに、先程ののような途切れ途切れの言葉になってしまうエラーをすべて処理し終え、慈愛のある顔でヨシヒコに毛布をかける。
衛生的、性病的に考えれば情事後はすぐに性器を洗浄したほうがいいが、疲れ切ったヨシヒコを叩き起こす事はできない。
そもそもアンドロイドはそういった心配がないように設計されているので割り切る形でヤナハはヨシヒコをそのまま寝かせたのだ。
ユウトは呆然と縮こまった自身のペニスを見ながら廊下に座っていた。
ヤナハはそのままベッドから降りるとユウトがいる廊下の方へ歩いていく。
ユウトはその事に気づかず、ついにドアを完全に開かれて鉢合わせしてしまった。
「ユウトさ…ま。」
「……。」
無様な姿。
縮こまった子供のペニス、ドアや床に散乱した透明な精液、脱力して生気のないユウト。
ユウトは気づかなかったが、ある意味今まで一番ヤナハは顔を大きく動かして驚愕した顔つきになる。まさかユウトが今までの行為を見ていたとは思わなかったのだろう。
ヤナハはすぐに状況を察してどうするべきか考えているようだった。LEDはせわしなく黄色で点滅している。
「……風邪を引きます。廊下は睡眠に適していません。自室で寝たほうがよろしいかと考えます。」
ヤナハがいった言葉はひどく温かみのないものだった。
いや、ある意味では非常に気を使った物言いだが、少なくともこんな状況において最も適した言葉ではないことは誰が聞いてわかることだろう。
決して、決して彼女はユウトを冷たくあしらったわけではない。ただ最適な答えを見つけることができず、特に質問などもされていない中で、まず身の安全・健康を優先するアンドロイドらしいプロセスで指摘した。
ユウトはその言葉に怒るでも、傷つくでも、泣くでもなく、ただゆっくりと体を起こして逃げるように自室へと戻っていった。
ヤナハは依然として無表情のままその様子をカメラで追ったが、ユウトが部屋へと戻ったタイミングで浴室へ行き、身を清めた後、廊下の片付けをして給電(つまり休眠)し始めた。
アンドロイドも性交渉には多大な電力を消費する。
ヤナハは給電するためのソケットをつないだ後、ふとユウトの顔がよぎった。
●
翌朝、遊上家はいつもどおりだった。嘘偽りなく。
ユウトは朝起きて自分が驚くほど納得してしまっている事に気づいた。
納得、というよりは諦観に近いかもしれない。
ユウトがどうしたって、ヤナハを抱くのはヨシヒコであり正当性ある行為だ。
むしろヨシヒコがいくら実父とはいえ、いけないことをしているのはユウトであり、させているのはユウトだ。
であるならば文句は言えない。
むしろできるだけ共存できるような方法を模索するしかない。そしてそれは思いの外簡単だと理解できたのだ。
正直この潔さはユウトなりの「逃げ」だった。そう思わないと心が壊れるから。
部屋を出ると未だ大きくいびきをかいて寝てるヨシヒコが見える。
多少嫌悪の眼差しを向ける。
ただ全然起きる様子はないので好都合として無視することにした。
男性は射精すると脳内で睡眠を促進させる物質をだすため、射精後は眠くなりやすい、また翌朝は起きづらい。
ユウトはそれを理解していないので運が良いととったようだった。
一階へできるだけ足音をたてずに降り、リビングの扉を開ける。
ダイニングでヤナハが朝食の準備をしていた。
「おはようございますユウト様。」
「おはよう。」
普段と変わらない声音で話すヤナハに少しだけ思うところはある。
結局アンドロイドからすれば「なにかおかしな所があったでしょうか?」という考えなのだろう。ユウトは些かヤナハに少し八つ当たりをしているのだった。気づいてはいないが。
時間もないのでユウトはすぐに切り出す。
「昨日、気持ちよかった?」
「……。」
もしこれが人間間で行われた会話なら失策だろう。
性交渉後の翌朝に前日の夜の様子を他の男性から聞かれる。叩かれても仕方ない、相手女性に対して失礼な行為とも思える。
「はい。」
ヤナハは肯定する。
快楽的な信号を感じていたかといえば肯定できる、ヨシヒコに対する誠実さという意味でも肯定できる。だが彼女が一瞬迷ったのはそれをユウトに言って、彼が悲しむかどうか。
アンドロイドは基本的に人間に友好的な態度を取るように設計している。もちろん基本的に、だ。
ヤナハは一般的にあの状況でユウトが心地よい気持ちだったかとシュミレートを何度もしているが結果はNOだ。しかし同時にユウト自身から聞いてきたのだから多少そういったきっぱりとした答えでも不快にさせないのではないか?と至った。誠実さという意味でも。
「僕ともしてよ。」
「……許可いたしかねます。」
ヤナハは以前ユウトに語った「セックスできない理由」をもう一度言おうとしたが、少なくとも物理的な性交渉はできるようになったので同じ論理は通じないと結論を出し、思考する。
「どうして?」
「……当機は現在ご主人様である遊上ヨシヒコ様と「結婚」しています。一般的に結婚後の妻は他の男性と性交渉を行いません。よって合理性に欠きます。」
だから理由もまた違ったものに変わってくる。
ユウトは自身が最低な要求をしているのを理解しながら目の前で食器を洗うヤナハに願う。すぐに許可が出るなんて思ってはいない。
だからこれはそう、前述の通り「八つ当たり」「当てつけ」だ。
「……ヤナハは僕のこと嫌いなの?」
「いいえ。」
即答するヤナハ。
「じゃあどうしてセックスさせてくれないの?」
「……今話した通り、合理性を認められないからです。」
ユウトは押し黙る。
ヤナハの言い分は最もで、ひどく当たり前だ。しかしユウトは伝家の宝刀とまではいかずともいくつかその「合理性」を上げる方法をすでに知っている。
「でもパパから「ユウトと性交渉はするな」って言われてないんでしょ?」
逆説的に可能にさせる方法。
これは「ユウトと性交渉をしろ。」とも言われていないので反論できるはずなのだ。人間ならば。
しかし機械は受けた情報をそのまま鵜呑みにする。鵜呑みにしてそこからあらゆる情報を精査して判断していく。
人間のように最初から疑ってかかるようなひねくれたシステムはない。少なくとも今のヤナハには存在しない。
その「あらゆる」をユウトがヤナハに作り出せばいい。
「……。」
「しかも世の中結婚してても他の人とえっちする人もいるよね?」
これも「あらゆる」だ。
他の人がそうだとしても自分はそうではない、で切り抜けられる簡単な言葉を先程ヤナハが提示した意見「一般的に結婚後の妻は他の男性と性交渉を行わない」の反証として持ってくる。ユウト側は正確なデータがないにもかかわらず。
「……。」
「ヤナハは僕のことを嫌ってない、つまり好き。なら好きな人とえっちするのは当たり前じゃない?」
物事を短絡的な論理ですり替えていく。
ユウトはある意味で屁理屈を言わせれば同年代で天才かもしれない才能はあった。本人は全く認識していないが。
とても小学5年生とは思えない言葉でヤナハの判断を崩していく。妙な全能感があり、昨日の惨めさは吹っ飛んでいた。それと同時にヤナハに対する嗜虐心も彼の言動を加速させる要因のひとつだった。
「……合理的な意見だと判断します。」
「そうだよね。パパとセックスしたんだから僕とセックスしてもおかしくはないよね。」
いや、おかしい。
しかしここにそれを指摘できる人間はいない。いるとすれば2階で爆睡している人間のみだ。
ユウトは胸を躍らせた。
ついにユウトは近々ヤナハとセックスできる権利を得たのだと。実際には非合法かつ卑劣な方法で。
「(中古になったけど……。)……ありがとうヤナハ!」
ユウトは処女厨だ。ちなみにヨシヒコも。
ユウトにとってヤナハの処女は欲しかった。アンドロイドに果たして処女という概念があるのかはしらないが、昨日のヤナハの反応からヤナハが処女膜を取り付けられていたのは明白で、そういう意味では初めての男はユウトにとって最悪の父親になってしまった。
ユウトはすかさずヤナハに抱きつく。
既に彼女の胸に服の上から手をおいて先端にある、今まではなかった部分を弄った。
もちろんその場でいたすことはできないが、少なくとも今日の放課後は楽しみで仕方なかった。
結局いつもと変わらない、よりエスカレートしていくユウトにヤナハは小さなため息を付いたのだった。
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◀西暦2127年11月
エイムドック(自動人形統合管理開発センター)の屋上で1人タバコを吸いながら鉄柵に体重を預ける一人の男がいた。
彼は吉田タクミ、弐階級アンドロイド技師だ。
アンドロイド技師は6つの区分に分けられている。
伍階級はアンドロイドの整備・点検、肆階級は解体・組み立て、参階級はプログラムアクセスとデバッグ・システム点検、弐階級は大幅なシステム書き換え、壱階級はシステムやAIの組み立て、特階級はアンドロイド他の自由な製造・開発が大まかな分野である。
彼は「特階級になれる逸材」と自分自身を他者に語っていた。
資格試験や適性検査、人格判定など様々な関門をクリアしなければ、まず特階級にはなれない。よって彼が特階級に慣れないのは別の要因があった。
彼は前科を持っている。
前科がある人間は壱階級を超えることはできない。どんなに技術があっても無理なのだ。
さて、電子アラームで休憩の時間が終わったことを確認すると吉田はため息を付いてタバコを投げ捨てた。現在は非常に価格が高騰し手に入れるのは非常に困難である代物だが禁止はされていない。
投げ捨てられたタバコは自動でゴミを回収していく床を歩く小型ロボットが飲み込んだ。
彼が一体どうやってそんなものを手に入れたのかはまた別のお話。
●
吉田がだるそうに管理棟に戻ると彼の後輩が焦ったように愚痴った。
「やぁっと帰ってきた!早く交代してくださいよぉ!吉田さん!」
「へいへーい。」
吉田は席につく。
それを見るな否やすぐに席を離れて吉田の後輩は荷物を持って部屋を出ていった。彼女とのデートがあるらしいことは吉田も知っていた。
椅子には感圧センサーと生体電気検知システムがあり、吉田が座らないと交代とならず困っていたのだろう。彼も始末書はゴメンだった。
吉田の資格の話はともかく、彼のここでの仕事内容はアンドロイド全般に関するものだった。
このエイムドックには何人か技師が常時在籍しているのだが、その中で形式上吉田が一番先輩であり歳上なので持ち込まれたアンドロイドをすべて細かく正確に確認できるのは吉田だけだ。
「お、これは…。」
管理棟の窓からドック内を見渡す吉田の目に止まったのはをスリープ状態で陳列されたアンドロイド群の中でひときわ大きい成人女性型ハウスロイド。
すぐに機体番号と照合してデータを確認する。
吉田が持つ大型タブレットに詳細が映し出された。
エイムドックに来たのは機体の再カスタマイズのためと記され、その内容を確認した吉田はニヤリと笑った。
所変わってアンドロイドを実際に組み立てる開発部へ移動した吉田。
目の前には床から天井までつながった大きな強化ガラス製の水槽があった。水族館にあるイルカなどが通るチューブに似ている。
中には緑色の透明な液体が入っており、そして先程の吉田が目をつけたアンドロイドが眠っていた。
「こりゃあ極上だな。さぞ高ーんだろうな。」
完全にひとりの空間。
彼の仕事を監視するカメラは既にダミーの映像を記録し続けていた。
吉田がこうやって開発部で特定のアンドロイドにいたずらをするのは初めてではない。
時折暇つぶし感覚でこの部屋で調教まがいのことをする。先週は13歳の女児型アンドロイドだった。
とはいっても直接体に触ったりするわけではない。
吉田は昔から快楽に悶え苦しむ女が好きだった。だから技師になった。子供の頃に人間でダメならアンドロイドでこの欲求を満たそうと決心し勉学に励みここまで至った。
彼が言った「高い」という言葉はアンドロイドの値段だ。
質の良いきれいなアンドロイド、つまりエロい外見をしたアンドロイドは非常に高額だ。ただでさえアンドロイドは高価で担保として扱われることもあるほどだ。そして当然かわいい見た目にしようと思ったらそれ以上に金を注ぎ込まなければならない。
水槽に入った美女アンドロイドはまさに「超高額アンドロイド」といえる代物だった。
コンソールに特定のパスワードをいれる。
すると吉田専用の調教システムがバックグラウンドで起動し、彼は口角を上げた。
「買ってから数年経ってるってことは結婚でもしたか?人形の分際で……ははは。」
ついつい独り言が増えてしまう。
昔からの変わらない癖だった。
アンドロイドに女性器を取り付ける作業は基本的に技師の男女問わず普通に実行される。吉田はこの通りマニュアルでやっているが、通常は契約内容の不備とその他エラーだけないか人間がサッと確認したらボタンひとつで取り付けされ終了だ。
よって吉田がマニュアルで動かし始めた時点で本来のプロセスで彼女のカスタマイズは行われていない。
「ではでは……と。」
裸になった爆乳長身アンドロイドは身体に気泡を滑らせながら水槽で眠ったままだ。水槽内部の上側から機械的なアームが伸びていく。
テキパキと機体の疑似皮膚を剥がし、機体内外に様々なユニットを装着し外装を整形していく。カスタマイズの注文通りに制作されおおよそ1時間程度で終了した。一種の手術にも見える行為。
吉田はその間暇そうにしていたが、一般的な工程の作業が終わるアラームが鳴ると飛び起きた。
「やっと終わったかぁ。さてさてっ!」
がっしりと手足や首を全裸のまま固定されて、水槽で眠る彼女をジッと眺めると、再度コンソールをいじる。
水槽内部下部から、先端に球状の半透明シリコンをつけた棒状のシリンダーが現れる。
先を彼女の取り付けられたばかりの秘部にあてがう。
「今日はなぁ異種姦エロゲの気分だし………、これを……こうで、こう…いや、こうか?」
吉田がコンソールに表示された数百にも及ぶパラメータをいじっていく。
彼が一部の数値を上げるとその組成を変化させて、棒の先端のシリコンが形状を変えていく。
あるときは先端に釣り針のような「返し」がついたり、あるときは棒の腹部分にいくつもの「突起」が飛び出したり。
最終的には人間の男根をベースとして、竿部分に幾重にも傘が鎮座し、尿道口付近から一本長い突起が飛び出て、血管が張り巡らされたように表面はミミズ腫れのようになったディルドが出来上がる。
既に先端の突起は未だ異物を飲み込んだことのないぴちぴちの膣口付近に触れていた。
おおよそ外見的、大きさ的に膣へ挿れるものではない。
しかし吉田は何食わぬ顔でレバーをゆっくりと手前へ引いていく。
すると、シリンダーが機械的に上下にゆっくりと動き始める。
当然、眠る彼女の秘所を一気に裂いた。
ぐぼちゅんっ!!
「っか………き…ぉっ!!」
意識は絶対に覚醒させない設定になっているので起きることも記憶に残ることもない。しかし反射的な動きなど機体自体の内燃機関は稼働中なので人間で言う「睡姦」状態になっている。
つまりこれはこの機体自身の反応のもいえる。
特殊な液体のおかげでありえないものを突っ込まれた女の喘ぐ声が一気に吉田のヘッドセットへ送られる。
「これこれぇっ!もっと鳴け!」
吉田はどんどん動きを加速させる。内燃機関がフル稼働し始める。
おおよそ現存する生物にはついていないであろう形状のディルドで一気に膣奥を貫かれる。
まだ新品の子宮ユニットが押しつぶされ膨大なエラーが意識が覚醒していないままの彼女のCPUに到達する。
どぐちゅぼんっ!!どっちゅっ!!ぐりゅりゅっ!
「かひゅっぉ゛っ♡」
普段どんな生活をしているのかわからないアンドロイドが自身の攻めで余裕をなくしている。そんな姿に吉田は手で陰茎を扱くのをやめられなかった。
ディルドの先端が子宮口を突破して子宮の天井を貫かん勢いで弾く。
ぐぼんっちゅっ!!
「くぎゅっ!?」
弓なりに背を反らして、呼吸が必要ないはずの口から大量の気泡が吹き出す。
目は開いているがやはり覚醒はしていない。いや覚醒しても白目を向いているのだから失神しているだろう。
一度突き刺さってもすぐに引き抜かれる。
「ほごぼおぉ゛っ?おっぉお゛♡」
先程まで人間なら腹部を突き破っていたであろう膨らんでいた下腹部が今度は凹む。
竿の傘や突起が彼女のプリプリの肉壁をこそぎ落とし、破壊する寸前までひっかく。一気に未知の信号が脊髄ユニットを通ってコアプロセッサへ圧力をかけていく。
「ははっこいつ漏らしやがった!」
アンドロイドの臀部にある肛門から水の中という抵抗も無視して一気に灰色の粘土のような排泄物が飛び出る。
もちろん吉田もそれが糞だとは思ってないし、組成も全く違うものであると理解していたが、無様な姿には変わりなかったので笑った。
そこから青色のレバーを傾けて、もう一本水槽下部からピストンを出す。
狙い定めたのは彼女のピッチリと閉じた菊門。
ぐむっむぼぼぼっぷぼぉっ!!
「ふぎゅっ!?」
結腸を貫いて、直腸S状部の腸壁をぶっ叩く。
ごばぁっと絶叫をあげる眠ったままの淑女。
腸内では未だ残った排泄物が押し戻されるほどだった。肛門に挿入されたディルドは別段変形させていない人間の男根に近い形状(それでも20cmはある)だったが、吉田はニヤリと含みをもたせて笑うと、一気にパラメーターをランダム設定に持っていく。
ぶぼぐりゅっ!
「かはぁっ!?はぉ゛お゛っ♡」
腸内で形状変化したシリコンディルド。
機体内の子宮ユニットの下側から腸壁越しに卵巣ユニットを殴りつける。
更に未知の快楽信号を受け取って身体を限界までピンッと伸ばして絶叫する。
彼女が無意識のうちに身体を痙攣させておびただしい快楽から逃げようと反射的に動かしている間にも、ピストンの速度は上がっていき、交互に膣や肛門を掘ったり、時折同時に削ったり飽きさせない動きをして攻め立てていた。
ぼこんっと内部から盛り上がる腹部。
歯が割れるんじゃないかと言うほど噛んで耐える彼女にラストスパートをかける。
高速に上下運動する2本の杭。
ぐぽっりゅりゅっ!すぷちゅっ!どゅるろろちゅっ!
「くっ……きぎゅっ!か…おぉ゛おっ♡ひゅっぎぃっ!?」
メリメリと、2つの穴をこじ開けて壊す勢いで蹂躙していく。
それに合わせて突起の一本一本すべての形状を理解できるほどに敏感になった膣道が、白濁の粘液を溢れ出し、少しでも滑りが良くなるように必死で愛液を分泌する。
ぶぽぽぽっぽぉ゛!ぷびっ!ずろぉっぷっりゅりゅっ!
「ほぉ゛っ♡おぉおお゛ぉ゛おっぁお♡」
直腸内は度重なるピストンでむしろ排泄物の残り滓がこそぎ落とされてきれいになっていた。本来あくまで人間のような栄養吸収部分ではない、ただの排泄物運搬用の管であるアンドロイドの腸は快楽を感じるよう設計されていない。
しかし隣接する子宮ユニットと感圧機能で擬似的な快楽を知覚し信号として認識する。
そしてついに吉田自身の自慰の限界も相まって、吉田はピストンの速度調節レバーを完全に振り切って足で紫のボタンを押し込む。
「ぐぁっでるでるっ!」
「ほぉお゛お゛お゛っ!!?おぎょぉおっ!ぼぉっ♡」
びゅるっびゅっ…びゅっ
コンソールのいつもの錆びついた部分に吉田の精液が哀れに付着する。
水槽では一気に加速して子宮ユニットを破壊する勢いで突き上げた。
水槽内の淑女のカチカチに勃起した新品の陰核の下、尿道からまだ仕える冷却水が一気に吹き出す。吉田と一緒に強制絶頂。
膣道の方をえぐるディルドと直腸側から刺激するディルドのそれぞれの先端から膨大な量の無職透明なゼリーが吹き出した。
ぶぅぅぅううぅ゛ゔっぶぶっぷゔっぅぅっりゅっ!!
「………か………き…ぉ………おぼ………♡」
先程からディルドが下腹部を殴りつけて盛り上がらせていたのとは別の意味で腹部が膨らんでいく。
子宮ユニット内が一気にゼリーで一杯になり破裂したかのような音とともにディルドを根深くくわえ込んだ膣口と肛門からゼリーが溢れ出す。
そして肛門から一気にせり上がって逆流したゼリーがスパークして主電源が落ちた彼女の口から吐瀉物のように吐き出された。
ゼリー状になっているのは単に吉田の趣味と、狭いところに入り込まないようにするものだが、吉田が普段より(体格から考えて)多めにゼリーの量を設定したために、子宮ユニットは限界いっぱい膨らみ、卵管をもこじ開けて卵巣ユニットにゼリーが触れるか触れないかのところまで入り込んでいた。
びくっびくんっ!と何度も痙攣する成人女性型ハウスロイドだったが落ちたことでカクンッと脱力して死んだように停止していた。
「………こりゃすげぇ…な。まんことケツあわせて……13.4Lも飲み込みやがった。…マークしとく……か。」
このハウスロイドの型番に取り付けられる子宮ユニットの標準子宮内容積は8.5ml前後ということからもいかにアンドロイドが頑丈なのかを物語っている。
マークとは吉田が気に入ったアンドロイドがまたエイムドックに来た際には通知が来るようにするオリジナルマーキングシステムだ。
「ちっ………損耗率82%か。交換だな。」
いくら頑丈なアンドロイドとは言えども、摩耗する。
特に吉田が水槽内のアンドロイドにやった行為は当然過剰な攻めだ。
人間の生殖器を咥え込むように設計されているのだから、吉田が作ったディルドで激しい攻めをすれば壊れるのは当たり前。
損耗率が20%を超えている場合エイムドックは新しいユニットを無料で付け替えなければならない。そして現在エイムドックでは担当者の判断ミスで損耗率の誤りがあるとしているため、つまり吉田の給料から引かれるということだ。吉田の自業自得ではあるのだが、このエイムドックもなかなかブラックだった。
といっても大した額ではない上に吉田はそこそこ貯金している(普段からこういうことをしては壊しているため)ので問題はない。
問題が1つあるとすれば詳細に調べようとすればわかってしまう程度のものだ。
だが吉田は理解していた。だれも吉田の出費がなにに消えているかなんて調べようとはしていないことに。
吉田はCPU内の処理のログを消去し、再度カスタマイズ工程をセットしてその場を後にする。
普段から自身の精液が飛び散ったのを掃除しないから錆びついていく一方だった。
こんな毎日がずっと続けばいいなと、吉田は思っていた。
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◀西暦2127年12月
遊上ヨシヒコが自身のアンドロイド、通称ヤナハと身体を重ねてから少し時がたって、今ユウトはヤナハに抱きついていた。
ヤナハは表向き、以前より格段に帰ってくることが増えたヨシヒコと週2回のペースで性交渉をしていた。
ユウトはそのことを腹立たしくみていた。
そもそもヤナハと結婚したからといってそんなに帰ってくることができるのなら今までなぜ全然帰ってこなかったのかという純粋な息子としての気持ち。
そして帰ってくるたびに、目に見えてヤナハに甘えてユウトの気も知らず腰をふる姿にたいして。
わざとやっているのかと最初は疑ったのだが、ヤナハに頼んでそれとなく伝えたところ「しまった」という顔をしたので今までユウトに気づかれているとは思っていなかったことがわかった。
ユウトはずっと前から二人で暮らし続けてきて、ヤナハこそが自分と一番近い存在だと思いこんできた。そしてヤナハもそうであると思ってくれていると思っていた。
だが現実は甘くなかったように今では思う。
「はぁっヤナハっ!」
「………ユウト様不衛生です。」
「ヤナハに汚いところなんてないよぉっ…。」
ユウトはヤナハをヨシヒコのベッドに寝かして足を広げさせ股に顔を押し付けていた。
その日は学校が無く、邪魔者であるヨシヒコも2日は帰れないとのことで、ついにユウトはヤナハとヤることにしたのだ。
ユウトはむしろよく持ったほうだと思っていた。
いや、結果的にその日になったとはいえ、ヤナハとは最初からセックスする気ではいたのだがいかんせんタイミングがなかった。
初めては当然生が良い。いや生以外をユウトは考えもしなかったので(義務教育の敗北)当然のようにヤナハを襲おうとしたのだが「待った。」がかかる。
ヤナハは別に拒否しようとして言ったわけではない。
ただユウトの目的が達成できる可能性が低いと提示したのだ。
曰く、膣内で射精した場合、発覚する恐れがあること。今までの統計から射精した場合、そのまま睡眠してしまうので学校がある日は夜でなければならないこと。そしていつ遊上ヨシヒコが帰宅してくるかわからないこと。またそれを聞こうとすると発覚する恐れがあること。などなど。
結果今日まで延びた。
しかし、今日は学校が休みな上、昨日ヨシヒコが自分で「はぁ……明日から2日間会社でこもりっきりの仕事がある。憂鬱だ。ああヤナハ……慰めてくれ。」「かしこまりました。」というやり取りをしていたので好機が訪れたとした。
ユウトは鼻の中に入ってくるどこか無機物的なにおいに心躍らせながら、ユウトの胴程もあろうかという太ももを抱きかかえてヤナハをまんぐりがえしさせる。
ヤナハが生殖器を持つようになってからヨシヒコの言いつけで下着をつけるようになった。もちろん既に下着もストッキングも脱ぎ終わらせて、まさにヤナハの秘所を一望できる体勢になっていた。
肉厚で色白の地球の上に整えられた薄い陰毛、その下にある割れ目からは鮮やかな色をした大陰唇がはみ出していた。
人間なら、アレほど性交渉をしていれば淫水焼けして黒々としているだろう。もちろんそれも良いのだが、まるで初めてヤナハがセックスするかのように見えるのでユウトの心は燃え上がった。
ユウトはガチガチに勃起した包茎ペニスにふれる。
「やっヤナハぁ!もっもういっ挿れていい?」
「………どうぞ。」
本来ならば前戯をして、興奮度を高めつつ、女性器内を愛液で滑りを良くするべきなのだが。今のユウトにそんな正常な判断を求めるのは難しい。
想像してみてほしい、性に多感な時期に自分の理想的な女性が自分の思い通りになる形で秘所を露出して待機している。
小学5年生では我慢などできないだろう。いや、きっと多くの異性に恋する男性には理性を欠く状況だ。少なくともユウトには無理だった。
にゅくっ……
「じゃあ………あれっ…。」
ユウトは歓喜でふるえる手でヤナハの秘部にあてがい、性器を入れようと動くが、秘裂に沿って滑るだけで挿入できない。
「ユウト様、そこは尿道付近です。膣口はもう少々下にございます。」
「うっ……うん。」
ユウトは焦って挿入ができなかった。教えてもらった上でなお、入らない。
するとヤナハがしびれを切らしたようにユウトの陰茎を掴む。実際にはそんなめんどくさそうな風にはしておらず、苦笑するように、手を貸す感じだったのだが、ユウトは被害妄想的に捉えてしまっていた。
「ここです……そう、そのまま挿入れてください。」
ぐぷっつぷっぷぷっ
「あっはぁっああぁっ!!?」
「………っ…。」
ユウトは宇宙を感じた。
ぐねぐねとうねり、程よい熱さ、程よい刺激、ユウトの性感帯を意識した攻め。まるで腰がドロドロにバターのように溶けていくのを錯覚するようなそんな心地よさ。
こんな気持ちの良いものを大人たちは味わっていたのか!!と強く怒りすら覚える程に素晴らしい名器。ユウトは睾丸がせりあがり肛門がきつく閉まるのを感じた。
「あっ!?だっだめっ!」
もう遅い。
一気に射精管を精液が上っていき、尿道をこじ開けて吹き出す。
ぴゅっぴゅるっ
「ユウト様……。膣内射精はご遠慮くだ…さいと……あれほど…。」
「ごめっ……あ゛っ♡」
ユウトは挿入後わずか3秒で射精してしまった。
一往復もしないで、まるでヤナハに搾り取られるように腰をガクガクと震わせる。
ユウトは眼球が上に引っ張られるような感覚に苛まれ必死に意識を保っていた。出たものは仕方ないと腰を打ち付けて膣奥へ意識を集中させる。
「ひっぃああっ!?」
ユウトは未だ射精の余韻に浸っていながら突如襲う未知の快楽に身体が普段とは違う様子で痙攣し始める。突然過ぎて少しだけ放屁してしまったのは内緒だ。
まるでホラー映画に出てくる悪霊にとりつかれた人を演じるように痙攣するユウト。
「ユウトさ……まっ…?」
「あっおっ゛!!」
ユウトの鈴口から透明な液体が一気に溢れ出す。
ユウトはたまらずもはや性交渉のことなど考えられずに反射的に腰を引いた。
じょばばっと音をたててベッドに噴水が飛び散る。
ユウトはあまりの射精の快楽と追い打ちのような膣道のうねりで潮を噴いてしまっていた。
いや、実際は潮と尿が混ざったよくわからないものだったが。
無様な行為と理解するまもなくそのままちょろちょろとその噴水を小便に変えてベッドに倒れ込む。
「かっ……ひゅぉっ!?」
「………。」
ヤナハはついぞなにも言うことはなかったが気絶するユウトに目を向けて、少し困った子を見る母親のようにも見えた。
ユウトがしばらくして起きると、綺麗に服を着ていた。
既視感ある光景だが、股間のなんとも言えないじんじんとする痛みから夢ではないことはすぐわかる。
隣を見るとユウトの机の椅子にきれいな姿勢でユウトを見続けるヤナハの姿があった。
「ユウト様、おはようございます。」
「あっ……うん。」
「性交渉をする際は膣内射精はおやめくださいと前もって約束しました。」
そう、ユウトは膣内射精する気まんまんで望んでいたが実を言うと、本当は外に射精するよう約束してあの行為に至っていた。
「ごっごめん……でっでもヤナハの膣内がすごく……って!」
「そういう問題ではありません。膣内射精をした際はご主人さまに発覚する可能性が32%増加すると前もってお伝えしました。また、アンドロイドはともかく人間の女性に対して許可のない安易な膣内射精は推奨できません。排尿もです。」
あくまで、実際に人間の女性と性交渉をする前段階の練習として気をつけるべき点をあげるヤナハにたじろぐ。
ユウトは真っ青になったり恥ずかしくて真っ赤になったりしながら説教を聞き入れていた。確かにユウト自身少し膣内射精にこだわりすぎていたと思う。童貞ならば当然こだわるのも理解できるが。
その思考は賢者タイムだからこそ思うものだった。
「そっそういえば布団とか……どう?」
「綺麗に選択して現在日干ししています。人間の尿はにおいがさほど強くないのでおそらく発覚する心配は少ないかと思わっ」
ヤナハが言い終わる前に、ユウトはヤナハに抱きつく。
大きな乳房の谷間に顔をうずめて、まるで母親に甘える子供のように強く密着した。情けない事をした自分のことをちゃんと考えて手伝ってくれる彼女に暖かくなるユウト。
「ありがとーヤナハぁ!」
「いいえ、健全な男性になっていただくにはご主人様にはなるべく隠したほうがいいと判断したからです。しかし……はい、どういたしまして。」
ヤナハは最初こそ固く返事をしたが、お礼を言うという行為に対しお礼を言うというのも礼儀の1つとして素直に感謝を受け取った。ユウトの勉強になるように。
結局どこまで言ってもユウトの成長を純粋に期待するいちアンドロイドだった。
●
それからというもの、ユウトはヤナハの身体を求める事が増えた。
もちろんヤナハの計算上、発覚率が低いとされるのみだけ実際に性交渉をすることができた。多少不満もあったがユウトは良好な関係をこれまで通り築くためにも納得して日々を楽しんでいた。
もちろん膣をつかった行為でなければ今まで通り射精はできるのでユウトがわがままなだけだが。
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◀西暦2128年2月
ユウトはいわば調子に乗っていた。
ユウトは落ち込んだ時以外は基本的に自分のことを過大評価している。だから、自分は平均的に見ればかっこいいほうだし、運動もやればできる(かといって何でもできるわけではない)し、勉強だって中の上でまだ本気を出していないだけだと思っていた。
本気を出せば何事も一位にできるが敢えてやらないのだ。と。
そして何より、非常に短絡的ではあるが、ユウトは非童貞だと考えていた。
アンドロイドとセックスをしたから非童貞と呼んでいいのかは個人の価値観で変わるが、ユウトは他のクラスメイトとは異なり1つ垢抜けた存在だと自分を思うようになっていった。
だからこそクラス内での自分の評価に気づきにくかった。
「ユウトくんこれから図書室で調べ物だけど一緒に行かない?」
「あ、うん行こっか。」
ユウトはほぼ毎日というほど話しかけてくる沢尻ナナに軽薄な想いを寄せていた。
この女は自分のことが好きなのかもしれない、と。
昔からよくユウトに話しかけてくるし、ユウトが成功したときはまっさきに褒めてくれていたからだ。
同じクラスの人間が目的地へ向かっている最中、最後まで教室に残っていたユウトはナナと一緒に教室を出た。移動教室は珍しくないので並んで歩くが、隣の女をユウトは見定めた。
「(おっぱいはそこそこ、頭もいいし顔もそばかすがあること…からかわれてるけど僕は可愛いと思う……多分僕のこと好きなんだろうなぁ。いや、うぬぼれか?……いやでもヤナハとヤッてから雰囲気変わった?って聞かれること増えたしもしかして……)…沢尻さんは好きな人とかいるの?」
「うぇっ!?」
普段の飄々とした彼女からは珍しい反応。丸メガネが傾いていた。
ユウトはそれを見てますます自分の考えたことがあたっているのではないかと思い始める。
「(…珍しい。やっぱそうかもな)いや、ちょっと気になって。」
「いやっ……まぁ気になる人は少し……。」
「(うーん確定)そっかぁ………今日放課後実験棟裏に来てよ。」
「え?……いいけど。なんで?」
「面白いもの見つけたんだ。」
「……へぇ。」
一瞬いつの日か見た沢尻の独特な目を垣間見た気がしたが見間違いのようだった。だが何とか段取りは組めたので良しとしたユウトは気を良くして図書室に入っていった。
●
しばらくして、放課後。
ユウトは足にしびれる、浮足立つような独特のわくわく感を抱えつつ実験棟の裏へと向かった。まだ昼で暗くはないが夕方になると幽霊が出るんじゃないかと言うほどに怪しい雰囲気を持つ場所だ。
ユウトが角を曲がると既に沢尻ナナは校舎を背にしてもたれかかってた。
「おまたせ。」
「ううん、全然待ってないよぉ。」
触りは良さそうだった。
不機嫌だったり緊張してたり、それじゃあこっちも気にしてしまう。大抵こういったやり取りは馬鹿でもない限りわかるだろうし、当然沢尻もユウトがこれからなにをするのか察しているだろう。その上でこの反応なら脈は確実にあるとユウトは確信する。
軽く気付かれないように深呼吸して告げる。なにか雑談する余裕はなかった。
「あー……えっと…。」
「なになに?」
ユウトはとたんにこっ恥ずかしくなって口をつぐんでしまう。そんな彼の焦りも気づいていないのか沢尻ナナはユウトの様子を見て微笑んでいた。
ユウトはその微笑みが好きだった。
「僕……沢尻さんのこと…好きなんだけど。」
言った。言ってしまった。
一瞬の沈黙が数十分に引き伸ばされたかと感じるほど長く沈黙が続いているようだった。だがユウトは前述のとおりある程度自信があった。だからこそ、少し下がった目線で見える沢尻のバストを見てこれを揉みしだきたいと思ってしまう。そんな未来が待ち遠しかった。
「ごめんなさい。」
「ぇっ」
ユウトは周りの音が聞こえなくなり、まるでユウトと沢尻しかこの世界にいないような錯覚をした。最初から聞こえていた遠くの野球のバットの音すら今は聞こえない。
たらりと背中の筋を汗が走る。
妙にスースーとする。
舌の下から唾液が止めどなくあふれて何度も何度も嚥下する。
「あの……ね?勘違いさせたなら謝るよ?私ユウトくんのこと好きだけどクラスメイトとしてか見れないかな。」
「……。」
優しくユウトを気遣うような彼女の仕草や声音に、逆に竹刀で殴られたかのようなリアリズムがのしかかる。振られたユウトを一気に現実へ引き戻していく言の葉。
「ユウトくんクラスで孤立してるでしょ?あだ名知ってる?不思議ちゃん。クラス委員としては、先生から頼まれてて「落ちこぼれにならないように」って。別にユウトくん落ちこぼれじゃないのに……普通だし。」
さーっと全身が冷たいパラパラの雪で構成されてそのまま風で飛ばされるように体重を感じられない。
今まですべて自分をかまってきてくれていたのは担任からの要請だったことにショックを受ける。そしてユウトは自分自身で自分のあだ名を今初めて知った。
「男の子って優しくされると好きになっちゃうってのは結構有名だけど、こういうことなんだね。まぁでも私はユウトくんのこと嫌いじゃないよ?武田くんとか吉中さんとか、モモカちゃんとか結構ユウトくんのこと嫌ってるみたいだけど……。」
初めて知る、クラスメイトたちの評価。
こんな状況で沢尻ナナが嘘を付くなんてことはないだろう。密かに佐竹モモカもいずれ手中に収められないかと考えていたユウトからすればナイフを首に突きつけられたかのような気分だった。
「………。」
「私はさユウトくん見てると面白いからそんなに嫌いじゃないかな。あ……でもこれは一回言っとくね?ユウトくん結構女の子の胸とかお尻とか凝視してるけどあれはやめたほうがいいよ。」
ユウトはうつむきながらもまた生唾を飲んだ。
バレているなんて思わなかったから。
「クラスのサクラちゃんいるじゃない?あの子気弱いでしょ?その割にスタイルいいからユウトくんの視線で時折、その……泣いちゃうらしくてそういうところからクラスの女子に広がってだいぶ……嫌われてるんだと思う。女の子って結構そういう視線わかるんだ。」
佐藤サクラはユウトのクラスに在籍する物静かな女の子だ。ユウトも一回消しゴムを落とした時拾ってもらって好きになりかけた相手。
沢尻も言ったとおり、本人の性格とは打って変わって非常にスタイルがいい。そのことを時折誂う男子もいるがユウトは静観していた。静観していたからこそ自分は少なくとも他の男子たちよりリードしているのだと思いこんでいた。
「それとこれは言うべきか迷ったけど、あえてクラスメイトだから言わせてもらうとね?ユウトくん結構臭う……んだよね。その……ね?男の人のアレって結構服とかににおいつくから学年中の噂になってるんだ。「遊上ユウトはオナ猿」ってそれでさっきのことも相まって男子と女子からだいぶ嫌われてるんだと思う。」
ユウトは沢尻の言い分をしっかりと聞いていた。
もちろん恥ずかしくて死にたかったが、同時にこれからここで生きていくには直さなくてはならない部分であると思ったからだ。いや、そんな殊勝な心がけではない。結局動けなかった。沢尻ナナの悪意のない暴言に。
彼女が、普段はっきりとものを言う彼女が時折口をつぐむ。本当のことなんだろう。
「ごめんね?なんか責めるような言い分になっちゃった。でも……ここで言っておかないともっとユウトくん傷つくかもしれないし、明日明後日って先延ばしにするのも気まずいから…と思って。」
一泊置いて普段の明るい声でフォローする。
「あ、私はね?ユウトくんのザーメン臭さ?さほど不快には思わないんだ。男の子ならそういうのも仕方ないかなって。他の得意げな男の子たちからもたまにするし。だから、あんまり気にしすぎないようにね?」
沢尻はそのまま少しだけユウトからなにかあるかもしれないと黙って佇んでいたのだが、どうやら家の用事が差し迫ってるらしく、断って去っていった。
ユウトはなんだか自分がひどく世間知らずで矮小な存在だと思うようになった。
告白からすぐにその場で振られ恥をかくまで、ついぞユウトは沢尻ナナの顔を見ることはなかった。顔を見ていたからなにか変わったかといえばそういうわけではないが、少なくとも沢尻ナナの声はずっと弾んでいた。
小学5年生の冬、大きな挫折を経験した。
●
その夜、ユウトはベッドの上で体育座りをしていた。
その日はちょうどヨシヒコも帰ってこず、既に深夜1時を回っていたが目は冴えていた。
部屋のノックに気づかないほどにユウトは茫然自失していた。ユウトはいわば自分が調子に乗っていたこと今更ながら気がついたのだ。
そして存外クラスメイトたちはユウトのことを見透かしていた。見透かされていることに気づかなかった。そんな自分がなおのこと恥ずかしい。
そして沢尻ナナに言われた言葉。
ニュアンス的には「精液の臭いなんて誰でも知ってる」というような言い方だった。少なくとも沢尻は知っているようだった。特にわざわざ「ザーメン」という異国語を使って表現するのだから日常的に知っているのだろう。
そこから考えれば嫌がおうにでもわかる。
ユウトが持っていた自信。自分が同年代よりもより多くの経験をしているという自負は間違っており、思いの外みんな性交渉ないしエロいことをしていたという事実。
「ユウト様。」
「………。」
ユウトは声をかけられて初めて部屋の電気がつけられたことも、目の前にヤナハが来ていることも気づいた。ただ不思議と驚くことはなかった。
ユウトはなんて言っていいかわからずにいた。
夕飯はなかば怒鳴るように「いらない!」と言って2階にこもっていた。今が何時なのかわからないが少なくとも目の前のヤナハが心配をしてきてくれたことはわかった。
「なにか学校で悲しいことがあったのですか?」
「………。」
ユウトはなんと言えばいいのかやはりわからなかった。
悲しいことといえば悲しい。しかし悲しいというよりは恥ずかしいし辛い、苦しい。
明日どんな顔をして学校に行けばいいのかもわからなかった。
「ヤナハには悪いけど、……告白した。」
ユウトはヤナハが少なからずユウトのことを好いているのだというどこか驕りがある。さすがにそれにはまだ気づいていないようだったが、ヤナハは特に不快そうにはしていなかった。
「…………男女の交際を目的とした行為ですね?……断られたのですか?」
そんなの見ればわかるだろ!と怒鳴りたくなったが、怒鳴る気力はなかった。むしろなんだかわざわざ聞いてくるあたりアンドロイドっぽさがあって気が楽になった。
もしヤナハがアンドロイドでなく人間だったならユウトは事の顛末を話さなかっただろう。アンドロイドだからこそぽつぽつと思ってること、感じたこと、なにが合ったのかを話し始めることができた。
「ーーーってだけ。」
長く話して、なかば自暴自棄気味に伝える。
「そうですか……お辛い思いをされたのですね。」
「まぁ……それなりに。」
かっこつけて「別に辛くはないよ。」と言おうと思ったのだが、むしろ余計にダサく思えてやめた。少なくとも自己評価の一部を再評価したのだから。
「ユウト様。」
ヤナハはずっと下を見続けるユウトの頭に手を添えて頭を撫でる。
ユウトはどうしようもなく惨めになる反面、どこか胸のうちにあるガラス玉から水があふれるように涙が出てきた。
わざと言葉を区切り、そして頭に両手を添えて優しく持ち上げる。
ユウトの視線の先には普段、無表情のままで話す彼女とは違った顔を見た。しっかりとユウトを見定める家族の慈愛のような目。姉がいればこんな顔をするのだろうか?
「私はユウト様の味方です。ユウト様がお困りなら解決します。ユウト様が行きたくないのなら私からヨシヒコ様へお願いをいたします。」
そう、彼女はユウトを見捨てはしなかった。
どんなにユウトが最低でも意地悪でも情けなくともダサくとも最後にはユウトをしっかりと支え続けてくれていた。
ユウトは自分の思い違いを恥じる。
少なくともヤナハとヨシヒコとの関係を悪化させようと目論むことも、彼女に対する傲慢な思いもすべてユウトの間違いだった。自然と嗚咽が出る。
子供のように泣きじゃくる。
「ユウト様、お眠りください。もし勇気が出たらその時また御学友と話せばいいのです。」
ヤナハは無理にユウトを動かそうとはしなかった。
ユウトはアンドロイドの愛をはっきりと強く感じた。
その日、ユウトの人生初の淫らな行いを伴わないヤナハとの添い寝が実現した。
●
翌朝、ユウトは昨日夜更ししたにもかかわらず寝不足感を感じなかった。
いつもの通りヤナハは隣にいない。
包丁の小気味の良い音が一階から聞こえるのでいるのは確かだ。
ユウトは昨夜抜かなかったにもかかわらずムラムラとしない自分を不思議に思ったがともかく学校に行く準備だけでもした。
ユウト自身が学校に行きたいわけではない。半年くらい休みたいがやはりそれは違うような気がする。
むしろ昨日の今日でなにもなかったように振る舞うことこそが真の漢に近づけるんじゃないかと思ったのだ。
ユウトをいつだってサポートしてくれるヤナハに元気づけられた。そしてその好意に報いたいと思うのは子供とか大人とか関係ないんじゃないか、と一人で納得する。
一階へ足早に降りていき、リビングのドアを開けてヤナハに言う。
「おはよう、学校……行くよ。」
「おはようございます。ユウト様は偉いですね。」
ヤナハは最近よくするようになった無表情の微笑みをして料理に戻った。
●
学校でユウトはいかに自分が甘かったのかを知る。
教室に入る前から、ユウトは針のむしろだった。周囲から失笑されたり指さされたり。今まで露骨な嫌がらせなどなかったのに、下駄箱には愉快目的なラブレターもどき。
教室の電子黒板の隅には「ユウトくんくっさ~い」とかかれ冷やかすような文言がいくつも合った。
だが、不思議と笑えてくる。不快感はない。
結局は彼らも僕も変わらずガキなのだと思えたのだ。
むしろこれで学校中、皆が優しく気遣ってくれて、仲良くしてきたのならいたたまれない。自分が見下していた相手が実はめっちゃ大人な対応してくるとか発狂するわ。と思いニヤニヤしながらユウトは自信の席に座った。
流石に旧世代のはっきりとした直接的ないじめとされるようなものに合った、「机に落書き」はなかったが、引き出しには画鋲が2、3個入ってて面白かった。可愛くて。
「ユウトくんおはよう。」
後ろから声がかかる。
別段驚くことはない。むしろ彼女ならそういうふうに来るだろうと登校中は考えていた。なぜなら彼女は優しいから。誰にでも分け隔てなく。
だからユウトは少し不機嫌そうに、つまり彼女が心配するであろう態度を、隠すように振る舞いつつ答える。
「おはよう沢尻さん。」
ユウトが振り返って少し微妙な笑顔で彼女に答えたのを見てクラスが静まり返る。
ユウトの告白を一体誰が流したのかなんてことはユウトにはどうでも良かった。
ただユウトは小さな反抗をしたかった。
「(そう、その顔がみたかった)……。」
沢尻ナナは満面の笑みで、ではなく小学生とは思えない犯罪者がおもちゃを見つけたかのような不気味な笑みでユウトをらんらんと見つめたのだ。
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◀西暦2128年7月
ユウトはその日、ヤナハとまた風呂に入っていた。
以前のようなやり取りはなく、ユウトが「一緒に入ろうよー。」というものでヤナハも特に断ること無く平然と肯定して今に至る。
ヤナハがユウトの申し出を断らなかった理由は単純にユウトと風呂に入る行為はもはやなんの抵抗もなくなったからだ。
抵抗というのはヤナハの精神的な抵抗というわけではなく単純に「子供と風呂に入ることは良いことか悪いことか?」という問いに対するものだ。
別に今日が2、3回目の一緒にお風呂に入る日と言うわけではない。それこそ数え切れないほどヤナハはユウトと風呂に入っている。2分の1の確率で淫らな行為をしているが。
その過程で、もはやユウトと一緒に風呂に入ることで起きる問題はないというほどユウトから論破されているのでスムーズに入ることになったわけだ。
当然ユウトがヤナハの機体を洗い、ヤナハがユウトの身体を洗う。
それはもう決まりきったルーティーンだ。
「ヤナハの身体は本当にどこ触ってもムチムチしてて好きだよぉ。」
「……ありがとうございます。」
ユウトはヤナハの臀部を揉みしだきながら呟いた。人間ならそんな褒め言葉素直に受け止めることはないだろうがアンドロイドだからこそ素直に機体を褒められて喜ぶ。
そんな彼は既にペニスはガチガチに固めてしまっている。
そういえば、ユウトのペニスをヤナハが触ってからおよそ2年経った。あれから紆余曲折合ったもののすっかりまるでセフレのようにセックスをする間柄になった。
なった、というよりはユウトが強引に迫った結果なのだが。
「ヤナハ……屈んで?」
「はい。」
ユウトの指示通りヤナハはスッと屈む。剣道で言うところの蹲踞の姿勢だ。
ヤナハの顔面に自然とユウトの陰茎が近づく。
実を言うと、ユウトはまだヤナハに口淫、いわゆるフェラチオをしてもらったことがない。膣を使った性交渉すらしたことがあるにも関わらずだ。
「咥えてくれる?」
「……なぜですか?」
当然素直にしてもらえるわけがない。
確かに性欲処理を請け負ったヤナハではあるが結局手やそれこそ普段から「使わせて!」と気軽に言うほど使ってる性器でも良いはずだ。口でする意味はない。
「口でしたほうが、舌があるぶん精液をこぼし……にくいから。」
「この場でユウト様の精液をこぼしてもなにも問題はないと考えます。」
確かにここは浴室で、精液が散乱してもなにも問題ないスペースとも言える。
言い訳、というよりは理由が弱い。
「その……口でしたことないし……経験してみたいから。お願ぃ…。」
「……わかりました。」
ユウトは気づいていないが実は一応ヤナハの判断基準には一定のルールがある。
ヤナハはユウトの成長を一任されている。
もちろんユウトが望むことは出来得る限りやらせて、否定しないようにしたいと常に思考している。そしてユウトは早くに母親と死別しているためそういった意味でユウトの願いが「母親に甘えたい感じ」だと許可してしまうのだ。
もちろん一般的に母親は小学6年生のペニスをしゃぶったりはしない。
だがヤナハは母親ではない、母親になったこともない。よって世界中の母親にひとりでも息子のペニスをしゃぶりますという人間がいれば完全に拒否することなど不可能なのだ。
そういう屁理屈で結局丸め込まれる。
「では、失礼します。」
ヤナハはユウトのぴょこんっと勃起した皮かむりペニスの根本をつまむ。
普段はまさに無口でしっかりと閉じられた口をグッとあけて舌をだす。元よりユウトのペニスになにか悪影響がないように口の中は常に新鮮な除菌能力を持った唾液を分泌させている。
ある意味ヤナハにとって風呂場という身を清める場所でユウトのペニスをきれいにする作業ともとれる行為がこのフェラチオ。
「ああぁっ!」
はむりゅっにゅろっくぷっ
舌で最初に竿の下から絡め取り、口奥へ飲み込んでいく。
ユウトのペニスは年齢から見ても小さいのですぐにツルツルのすぐに茂るであろう部分がヤナハの鼻先に到達した。ユウトは地味に最初ヤナハとセックスした際、潮を噴いたことをずっと気にしていた。潮を噴くよりあの年齢でおしっこを漏らすほうが本来恥ずかしいが。
男として情けない。そんなふうに思い続けている黒歴史。
もちろん既にあれから何度もヤナハの肉壷で射精しているのでもうああいったことはないだろうと思っていたのだが、まさかまた、今もなりそうで驚く。
それほどにまで第2の性器と言っても過言ではないヤナハの口内は舌でユウトのお子様ペニスをいじめていく。
軽く皮の中の痴垢を舌で取り除き、ザラザラとした舌の腹で刺激する。尿道から一気にカウパーが漏れ出した。
「くっぉ♡おっ゛!?」
そのまま再度口を目一杯開けて今度はユウトの睾丸をも飲み込む。
熱いネトネトとした口内に浸った睾丸からは未知の快感を感じたユウトだった。
ヤナハの責めは彼女なりにユウトが視聴しているアンドロイド物のアダルトビデオからの知識がほとんどだ。多少ユウトに合わせて調整はしているが。
最近はつんざくような快楽にも少し離れたのか、皮あたりをいじられてもユウトは文句を言わなくなった。少なくとも舌を潜り込ませる程度なら。
ぐっちゅんちゅぶっ
「ひっあぁっ!いっふぅっ♡」
ユウトが悶えている様子を気にもとめずにヤナハはそのまま頭を前後させてしゃぶる。
尿道から降りる金玉へ流れるように包む皮に、顔を押し付ける際キスする形で何度も何度も行き帰りする。
往復するたびにユウトの腰が悲鳴を上げるように震えるが、ユウトから「やめて」や「止まって」という声がない以上機械的に続ける。
「はぁっだっダぇっだ!でるっ♡」
ユウトはついに我慢できず、今の快楽を手放して絶頂へと足を運ぶ決断をした。
睾丸はせり上がり、精液を送り出す。
ユウトは反射的にヤナハの頭をがっしりと掴んで自分の好きなように動かし始める。ヤナハはユウトが最大限気持ちよくなるようにタイミングを見計らって動きを同調させた。
ぐぷっちゅっちゅぶっちゅ
「はぁっ!でるっ射精する♡でるよぉ♡」
「………。」
ユウトは地味にヤナハの「お射精しください。」が好きだったが流石にこの状態では彼女も言えない。LEDから発することはできるだろうがわざわざそんなことはしなかった。ただただ舌を回転させるように動かしてユウトの亀頭や鈴口、カリ、竿を攻め立てる。
ぐぴゅうっぴゅっ
「…っ……!」
ヤナハの口内に苦いサラサラとしたザーメンが解き放たれる。
ユウトは口奥めがけて精一杯ヤナハの顔と竿の付け根を密着させて射精した。後2倍くらいユウトのペニスが長ければイラマチオという上級プレイもできたに違いない。
何度も何度も痙攣して、ヤナハの分厚い下唇には、射精のタイミングと同じ動きでひくひくとふるえる睾丸があった。
ユウトは数度痙攣した後、射精を終えた余韻でぼーっとしていた。ただただ力が抜けそうになる膝を意識的に奮い立たせながら。
少しして、ヤナハはある程度最近わかってきたユウトの快楽の波の収まりを検知し、口を引く。竿や亀頭、皮周りに突いた唾液と精液の混ざった粘ついた液体を唇でこそぎ落とした。
ちゅぽっ
ぴっちりと閉じた口から、柔らかくなった陰茎がぽろんっと出された。
射精し終えたとは思えないほどきれいなペニスにしたヤナハはそのままユウトへ視線を上げる。
ユウトはヤナハのサラサラの髪を指に絡ませながらヤナハに口を開けるように言う。
ヤナハは少しだけ間があったものの、グッと口を出来得る限り大きく開けて、舌をお椀型にして露出させた。ユウトの好きなビデオのワンシーンを参考に。
彼女の舌の腹にはユウトの射精したばかりの精液がぷるぷると身体の振動に合わせて揺れていた。
「………飲んで。」
「………んっ…………ん。」
ファンの音がなり続ける浴室内では聞こえないだろうと思っていた嚥下する音はユウトの耳にしっかりと届く。これが征服する感覚、とユウトはニヤけた。
自身が出した体液が想い人の身体の中に残留していると思うと興奮する感覚をユウトは好んでいた。それが消化され、一部はエネルギーに変わり、一部はヤナハの大きな臀部から吐き出される。
その作業的工程の中にあるエロスを見出したことはある意味ユウトの性的探究心のなせる技かもしれない。まだ小学6年生であるはずなのに。
AVのとおり、飲み込んだよ、と見せびらかすように再度口を大きく開けるヤナハ。
「ありがとう……ヤナハ。」
「お楽しみいただけて何よりです。……多少非効率的だと考えますが。」
「いいんだよ。僕が興奮すればそれだけ早く終わるんだし。」
「………はい。」
確かに、とヤナハは思った。
その後ユウトとヤナハはエロ関係なくきれいに体を清めて湯船に浸かる。
ユウトは射精したばかりなので流石にヤナハの女性らしいグラマラスな肉体を見たり触ったりしてもさほど興奮しなかったが、ふと前々から思ってたことを聞いてみる。
「あの……さ。」
「はい。」
いざ口にしようとすると言葉が出なくなるのは以前の「告白事件」からなにも進めていないということだ。自分でもいけないことだと思っている。が、ヤナハは急かすわけでもなくきょとんとしているのですぐに言葉が出た。
「膣内ってどうなってるの?」
純粋なる疑問。
ヤナハは不快そうな顔をするわけでもなく「なぜそんなことを?」といった風に聞き返す。
「……質問の意図がわかりません機体構造の話でしょうか?」
「いや……その、ヤナハのおまんことか……みれない?」
ユウトの要求はだいぶマニアックというか非常識というか。
ともかくいささかありえない要求ではある。人間ならば。
「……理解しました。当機の女性器ユニットの構造を後学のために知りたいのですね。しかし機体内部を直接お見せするには責任者の同伴が必要になっている契約です。したがってヨシヒコ様に連絡してもよろしいでしょうか?」
これは個人ルールで設定されたものではない。
契約内容。つまり遊上ヨシヒコがヤナハを購入する際に書いた契約書に記された法規的部分だ。アンドロイドの改造をしてはならないというロボット法からくる措置で、すべてのロボットに適用されるわけではないが、契約書にそう記載されているアンドロイドが多い。
「いやっ分解まではいいよ!そのここからさ……まぁでも……無理だよね。」
ユウトが指差したのはヤナハの股ぐら。つまり膣穴だ。
「………正確な確認は難しいと思われますが不可能ではありません。」
「できるの!?」
「はい。」
ヤナハとユウトは対面するようにして湯船に使っている。ヤナハは背に浴槽の壁面を押し付けて足を伸ばすようにして浸かっている。直角な体勢。体格差からユウトはヤナハのくるぶしの間に尻を置く形ですっぽりと収まっている。
ヤナハがその位置のままできるだけ足をM字にして開き、腰を浮かせる。
まるで海から上がるクジラの背中から海水が落ちるように、ヤナハの腹部が水面を割って外気に触れる。
水面の少し上にヤナハの股間がドアップで持ち上げられた形になる。
つまりユウトの顔前20cmあたりに。
「(すっげ……)っ……!」
確実に射精したばかりでなかったらフル勃起していたであろう光景。
肉厚な白い恥丘が股の間に軽いスジを作り出し、その間から少しだけ大陰唇がはみ出している。赤みを帯びた陰核の上あたりにきれいに整えられた薄い水に濡れた陰毛。
ヤナハは器用に今まで上半身を支えていた手をユウトの顔前に持っていく。
腹部にある人工筋肉と背もたれにしている壁面に荷重を分散して姿勢を制御していた。
「ここが女性器です。見えますか?」
「う………うん。きれい。」
「……ありがとうございます。これが陰核、これが尿道口です。」
淡々とデリケートな部分の説明を受ける。
ヤナハの口からヤナハの性器について説明を受けるユウトはどうしようもなく無茶苦茶興奮した。
オナホールなら企業が作った女性器の模倣品という視点でしか見れないが、アンドロイドの女性器はその機体の経験してきた情報を細かく数値化してそれを元に女性器や外見など幅広く変化させていく。
つまり世界に1つしかないヤナハの性器だ。
ユウトは股間に激痛を覚えるがそんな事は知ったことかと限界まで顔を近づけて少しでも見逃さないように見つめる。
「………このびらびらとしている部分が大陰唇、こちらの少し小さいのが小陰唇です。そしてその中央若干下あたりにあるここが膣口です。」
「すっ……ごいね。」
ヤナハはユウトの反応になにも言わずに、躊躇なく自身の秘裂に両手の中指と人差し指をそれぞれ挿入する。
いくら細長い彼女の指だとしても、ユウトはヤナハの秘部が傷つかないのか心配になった。
しかしヤナハは特に気にしていないようでそのまま一気に左右に引っ張り始める。
めりっ…みち………
「……っ…。」
「やばっ……。」
ぐぱぁ…っと開かれたヤナハの膣口、膣道。
薄ピンクと赤を混ぜ合わせたかのような膣道を直視してユウトは夢中になって膣内を覗く。
膣壁からは粘ついた粘液がたくさん、対岸の肉癖と橋をかけていて淫靡だった。
「……見えづらいかと思われますが、奥の方にある大きめの穴が見えますか?」
「う……うん、見える。」
本来なら膣道をどんなに広げようとも子宮口など特殊な訓練をしなければ見ることはかなわない。だがヤナハはアンドロイド。当然今はできる限り膣圧を最低にして開きやすく設定しているからできる芸当だ。
それは流石にユウトも理解していた。
「それが子宮口です。当機は無理ですが卵巣ユニットに卵子がある場合精液を子宮口付近に撒けば受精し、妊娠する可能性が高まります。」
「そ……そっか……もっもういいよありがとっ!」
ユウトはそういうと急いで浴室から上がった。
女性から直球なワードがいくつも吐き出されていたたまれなくなった。
ヤナハはその行動に訝しむ顔を向けたが、そのままヤナハも風呂からあがることとした。
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◀西暦2128年8月
卜部ダイキは商店街を歩いていた。
大昔はこの時期、死者が出るほど温暖化した地球で苦しんでいたらしい。もちろん完全に暑い季節にしないよう調整することもできるのだが、四季を重んじるこの国の文化的側面から教育のため死なない程度に暑く設定された外気温。
夏の季節だ。
よってランニングシャツにブカブカのズボン。
汗だくのまま買い物袋をもって歩くダイキだった。
ぴっちりと張り出した大胸筋に汗でシャツが張り付く。
最初こそ乳首が透けてるんじゃあないかと恥ずかしがっていたダイキだったが今ではそんなこと思考の彼方へと誘った。
先輩たちに命令されて冷房の効いた大学から駆り出された手前、どこかで涼むわけにもいかず大学に直帰することとする。
炎天下、段々と嫌なことを思い出していく。
ダイキは自分の家に対して思うところがあった。
それは従兄弟に当たる遊上ユウトの父親、遊上ヨシヒコとの確執。
ダイキも詳しくは知らないが、なんでもユウトの母親がユウトの父親と一緒に結婚したことで祖父と決別したらしい。
ダイキはいわば事なかれ主義的なところがある。
今こうやって買い出しに行かされているのも結局の所、誰が行くのかという話になり、じゃんけんになりそうなところで「あ、自分買うものあるんでついでに行ってきます。」と嘘ついてここにいた。
誰かがジャンケンに負けた時、悔しそうな顔をするのが見たくなかったのだ。
「おにぃさん、買ってかない?」
ダイキは顔を上げて声の主をチラッとみる。
首筋にLEDのある見目麗しい女性がダイキの斜め前で客引きをしていた。
ダイキは話しかけられているにも関わらず、目をキョロキョロとあらぬ方向へ向ける。
女性型アンドロイドの衣服が少しだけ過激だったからだ。
「や……僕は…いいです。」
「えー、でもかっこいいしぃ、それ、味見したいな!」
お世辞にも自分ではかっこいいと思ってない顔を褒められてつい嬉しくなってしまうが、アンドロイドがダイキの股間を指差す。
ダイキの陰茎は軽く勃起していた。
それはそれはあらぬサイズが周囲に見えるほどに。次々と周囲の人間がダイキの突出した肉体部分に視線を下ろし各々反応を見せる。
「へっ!?あっ!?」
ダイキはたまらず股間を袋で隠すと走り出した。
恥ずかしい、情けない、愚か、バカバカしいと頭の中でぐるぐるしながらすごい勢いで駆ける。
なまじ肉体のポテンシャルが高いからか、注目されない場所まで逃げるのはすぐだった。
そして走っているうちに血流の乱れからか勃起が収まっていたことに安堵する。
ダイキはこんなことは日常茶飯事だった。
いつだってただ歩いてるだけで女性の肌を見かけると勃起してしまう。
ダイキは自分なりにこの体質の理由を分析はしていた。
おそらく旧家の卜部家の血とダイキが小さい頃から異性に触れてこなかったことからくるものだと思う。家は男尊女卑の社会で、身近の世話はすべてアンドロイド、しかもそのアンドロイドですら着物を幾重にも着込んでほとんど肌の露出などない。
溢れ出る性欲と女慣れしていない気弱な性格、それと相反するように男性ホルモンが強い肉体に少し持て余されている。
もちろん「少し」だ。
先程は暑さで若干気が滅入っていたのと薄着の女性がわざわざダイキに話しかけてきたからだ。運が悪い。
「(でも……アンドロイドも客引きするんだな)……はぁ。」
ダイキの半分くらいしかないのではないかというくらいの身長の女性型アンドロイド。外見は一見女子高生程度に見えるが、胸は小さく、あどけない顔をした美人。
今の日本は小児性愛者にもそこそこの理解がある次代。
特にアンドロイドという存在が出たからこそ、その加害性が実際の女性には現れにくくなったのだ。アンドロイドはずっと子供のまま。人格さえも成長を止められる。それでいて性器のサイズが大人と子供で怪我する可能性もない。
そういったニーズに寄せて先程のアンドロイドの女性はどこかの店で出されている商品なのだろうと当たりをつける。
もちろんダイキは初めて客引きアンドロイドを見たわけではないが、再度納得したのだ。
そしてついつい思ってしまう。
「人間じゃなくてアンドロイドのお嫁さんがほしいなぁ」と。もちろん、ダイキに次の世代を期待している祖父が許すはずがない。なので叶わぬ夢だと諦めている。
ただ、ただ、この溢れ出る性欲と時折顔を見せる破壊衝動をどうにかできる人はいないだろうか……、ダイキはずっと悩み続けていた。
そんな悩み含め、先程も思っていた遊上家のこと然り。
ダイキはため息をつく。パッとしない人生を歩んでいると自覚しながら、ふと歳の離れた従兄弟に先輩風を吹かしたことを思い出して恥ずかしく思った。
●
法要。
それはダイキにとって嬉しくもあり、悲しくもある日だ。
毎年お盆になると親戚一同がダイキの実家に集まり、法事をする。大好きな叔母がいなくなった悲しみ、仲のいい弟のような従兄弟が来る楽しみ。
相反する気持ちを持ちつつももう何年も前の故人を慮る心はいつしか薄れていく。
だからこそ毎年純粋に接することができるユウトと出会うことは喜ばしいことだった。
ダイキが普段とは違う、体格にあった特注のスーツを着て自室にいる頃、玄関のほうが騒がしくなったので見に行くことにした。
多くのよく見る顔ぶれが廊下ですれ違うたびに年々、深くお辞儀をしてくる。
身内の中ではダイキが次代当主なのではないかと噂されているのだ。
ダイキの父はおおよそ卜部家の術を受け継ぐには基礎が足りていなかった。政も難しく今はひっそりと離れで暮らしている。
ダイキは正直卜部家のことなどどうでも良かった。
優星使大学ロボット工学部電子工学科に所属するものとして将来はアンドロイド技師になって人々の社会生活を豊かにできる次世代型アンドロイドの開発に携わりたいと思っている。
しかし同時に、家のこととなると厳しい公私混同しないあの祖父に「継ぎたくありません」と伝える勇気もなかった。
むしろダイキがしたいことを率先して叶えてくれる祖父の大きな夢という意味で叶えてあげたいと思ってしまう自分がいることを認識していた。
玄関へ行くと、遊上家が祖父と対峙していた。
もちろん祖父が遊上家と揉めているのは知っているのでそれについては違和感を覚えないが、ちらりと人の隙間に見える様子ではどうやら遊上家のアンドロイドがいるらしいということがわかった。
ユウトがダイキに気づくと小さく手を振っているのが見えた。
軽く振り返すが、目線は別の方へと向かっていた。
ユウトが手をつないでいるのは黒髪を腰の辺りまで伸ばした長身の女性型アンドロイド。その体格もさることながら突出したバストと臀部は男たちの目を釘付けにすることだろう。
だがダイキは持ち前の女性慣れしていない経験と温和な性格から真っ先に男として目が行く部分ではなく素直にそのアンドロイドの顔を見た。
目が合う。
時たま読む恋愛小説ではアイコンタクトを特別な意味合いで描く作品が多い。しかしダイキにとって彼女はいささか少し怖く見えた。
美しい見た目ではあるもののキッと若干つり上がった目はダイキを小学校の頃、ちょっとしたことでクラスの笑いものにし続けた国語の先生に似ていたのだ。
「………。」
ダイキは咄嗟に目をそらす。
小さい頃の辛い記憶が呼び覚まされそうだったからだ。
結局玄関であったことは祖父が遊上家のアンドロイドを家に上げたくないと喚いた結果だ。ダイキがお願いすればどうにかなったことだとも思うが、初めてあった相手を擁護する気にもなれず無視した。
最終的には遊上家のアンドロイドは庭を徘徊するのみとされた。ただ、坊さんを呼んで皆で集まってやる法要は庭へと通づる戸をすべて開け放って行うため別段問題はないだろう。
2時間ほどして集まりが終わり小休止に入ったところでダイキは足取りを軽くしてユウトの元へと歩いた。
いつもの場所でユウトが座っているのを見かけて声をかけようとした時、ちょうど影からあの遊上家のアンドロイドが出てきた。
ダイキは流石にそこで彼女を避けるわけにもいかず、ただ気さくな感じで声をかけそこねユウトの元へ歩いていった。
「あ、ダイキお兄ちゃん。」
「よぅ、元気してたか?」
「うん!」
ユウトはダイキと話し始めたにもかかわらず隣のアンドロイドの手を握ったままニコニコしていた。ダイキとしてはよほどユウトが懐いているんだなと素直に感心して挨拶する。
「こんにちは。卜部ダイキです。ユウトの従兄弟にあたります。」
「私は遊上ヤナハといいます。遊上ヨシヒコ様に仕えるハウスロイドです。よろしくお願いします。」
ダイキは少しだけ驚いた。そもそもアンドロイドが名字を名乗るのはまだ家名として紹介する際に使うから珍しくない。しかし下の名前を正式に名乗るのは違和感を覚えた。
たしかにアンドロイドに名前をつける家庭は多いが、人に自己紹介をする際はせいぜい型番を言う程度で固有名詞すらださないのが普通。せめて「~と呼称されています。」と後付けするくらいだろう。
「ユウトから聞いています。すごくお優しいとか。」
「……ありがたいお言葉です。」
ヤナハはユウトへ向き直ると軽く会釈して嬉しそうにしていた。
「(なんだ、笑うんだな。)……。」
ダイキは無表情のまま静観し続ける彼女を見てそういうタイプなのかと思ったが存外、表情変化はあるらしい。感情抑制機能を使っているのかと思っていたほどに。
その後ダイキはユウトと近況報告をしつつ、時に小突いたりボケたりツッコんだりして盛り上がった。
その様子を温かい目線で見守るヤナハ。
●
夕方、ダイキはやっと1日の終盤に差し掛かって疲れたような顔をした。
ぷはぁ!っと息を止めていたかのように大きくため息をする。
とっくに遊上家は退散しており、長々とダイキの元へ来るコネを求める分家の人間を軽く相手し続けて今に至る。
もちろん逆に、将来助けてもらうこともあるだろうと無下にはしない。しかし単に若者としてめんどくさいなぁと思ってしまうのは仕方のないことだ。
最後まで居座ってダイキに講釈垂れていた、分家の中でも最大の財力を誇る家柄が帰ってから少しして疲れた顔をしたダイキに声がかかる。
「ダイキ様、トシゾウ様が及びです。」
「はい。」
ダイキの元に和服をまとったいつもの市松人形タイプとは一線を画す美女アンドロイドが言伝を告げる。トシゾウが特に気に入っている特注のアンドロイドということだけ知っている。
祖父からの呼び出し。
面倒くさくはあるがこういった大きな行事がないと深くは話さないのでダイキ自身は別段嫌な気はしなかった。
ダイキが祖父の部屋になるべく早めに向かい、襖の前で正座する。
「ダイキです。」
「………入れ。」
渋いしわがれた声がトンッとダイキの耳ではなく胸に当たる。
ダイキは小さい頃から教わる卜部家の礼儀作法に乗っ取り入室し、中央にある座布団に座った。対面するは卜部家現当主御年72歳。卜部流古武術21代師範。卜部トシゾウ。
「よく来た。」
ニコッと笑う姿は先ほどまであった威厳をたやすく吹き飛ばした。
卜部家の礼儀作法はさほど難しくはない。遊上ヨシヒコでさえもできるくらいには。他の家と異なる点と言われれば、礼儀作法は会った時のみでいいという点。
挨拶をして、お互いの存在を認めあったら後はよほどのことがない限り失礼には当たらないとする。
最初だけ堅苦しい礼儀で対応し合って話し合いが始まれば自由にしていいという単純明快な作法がダイキには好ましく思えていた。
いつもどおり、入って座って対面すればくつろいで話をしていい。そんな祖父と孫の間柄。
「最近は勉学に励めているか?」
「うん。」
いつの間にか気づけば目の前にお茶と茶菓子が置いてあった。いや、気づくほどもないくらい最初は緊張していたからだろう。でなきゃ目にも留まらぬ速さでセットしたか。
祖父ならそれくらいしそうだなと頭の中で笑った。
「さて、呼んだのは他でもない、最近なにか困ったこととか変なこととかなかったか?」
これはいつものことだった。
過保護、というほどではないにしろトシゾウはダイキを大層可愛がっている。ダイキが自覚するほどに。だから毎年殆ど話さないダイキを心配してこういった話す場を設けるのだ。ただ今年は珍しく密室で2人きりだった。
「うーん……ああ、そういえば。」
「ん?なんじゃ?」
「いや別にただ驚いただけなんだけどね?じぃちゃんが遊上家のアンドロイドに対して怒ってたでしょ?あのアンドロイドの目が昔の国語の先生みたいで怖かったんだ。」
怖かった、というのは大げさだと流石にトシゾウもわかっているが、先程までニコニコしていたトシゾウが眉をピクッと動かして真面目な顔をし始めた。
「……あのアンドロイドか。確かに昔消したお前の教師の目に似ていたな。」
もちろん比喩だ。消した、というが単純にダイキの学校から翌年転勤しただけだ。そう思いたいダイキだった。目の前の卜部家の長ならやってしまいかねない上にやってしまえる力がある。
「あやつはカナを誑かしおって、儂に「カナは俺が守る!」と抜かした上でみすみす死なせおった。そしてカナがいなくなって数年経つ今あのアンドロイドを妻のように扱いおる。」
「え……結婚したの?」
「まだ婚約という段階ではある、入籍はしていない。しかし儂はどうにもあやつのあの軽薄さが好かん。」
ダイキにとって遊上ヨシヒコは他人だ。もちろん血の繋がりがないという意味でもあるが、一番の理由はダイキと仲の良いユウト曰く「最低な父親」とされる人間でユウトをネグレクトに近いかたちで扱う酷い父親という認識からくるものだった。
ただ、婚約という話を聞いて少しだけ嫉妬した。
あんな美しいアンドロイドと一緒になれるなんて、ダイキの夢を掠め取られたような気分だった。しかも尊敬できる相手ならつゆ知らず、最低な男ならなおさらだ。
ムカッとしたが今は抑えるべきだろうとお茶をあおった。
「ところで、ダイキには話がある。」
ダイキの内心を知ってか知らずか、彼がお茶を飲み終えて一息ついてからトシゾウが切り出した。
「なに?」
「もちろんお前も薄々わかってはいるだろうが、卜部家の次期当主にお前を指名したい。」
率直な物言いと、しっかりとした主張に一瞬生唾を飲み込む。
ダイキは喉の奥が支えたような気になった。
いつもと違うこの2人っきりの状況はこういった話をするためだったのだ今更気づいた。
「ああわかっておる。お前は今の大学で専攻している分野が活かせる就職先に行きたいのだろう……。だから……これはあくまで提案だ。」
「……。」
「ダイキや、儂は15年は生きるつもりだ。」
静かに聞き入るダイキ。
「15年は儂がこの卜部家を守る。お前は今20だな?35歳になった頃決断を迫る。卜部家を継ぎ、当主となるか。または卜部家を出て一般階級の技師になるか。」
それはダイキにとって驚くべき破格な提案だった。
最初から全て仕組まれた人生だと思っていたし、どこか将来に対する諦観を抱えていた。勉学は真剣に取り組んでいたが、真剣に取り組めば取り組むほど「結局将来は当主になるんだし意味はあるのか?」と思ってしまう。
だからある意味で当主という確定された未来を受け入れていたとも言える。
「で……でも、じぃちゃんはそれでいいの?」
確かに祖父は自身を早く次代当主に据えたいと考えていたはずだ。それに間違いはないはずだと。嘘なんじゃないかと確かめる。
「本当だったらすぐにでも卜部家を継いでほしい。だが……お前は頑張っている。優しい子だ。外見とはうってかわって大人しく思慮深い。頑張っているお前を見て儂は……押しつけは良くないと思った。」
「じっじぃちゃん……。」
「真の卜部家当主は自分で決断してなるものだ。誰かに強制的にされるもんではない。」
ダイキはまるで泣き崩れるように祖父を見やる。視界はゆらゆらと揺れていた。
自身のことをしっかりと考えてくれている、そんなことは以前まで思っても見なかった。愛情感じて溢れるように涙する。
自分の未来を自分で諦めていたことに恥じらいを感じた。
「まぁ、あまり難しく考えるな。例え35歳に当主になるという決断をしても、兼業でアンドロイド技師になるという道もある。それくらいは卜部家のコネと財力で運営していけるだろう。」
それはたしかにいい案だと思った。
祖父に報え、かつ自分の夢も叶えられる。ゆくゆくはこの男尊女卑な卜部家を変えることすらできるかもしれない。そんな希望が湧いてきた。
「………うん。」
「そこで1つ、条件というほどでもないが老いぼれの頼みを聞いてくれ。」
「頼み?」
ダイキは素直になんだろうと思った。
ダイキにとって最大の悩みが解消されつつあるのだ、いや解消されなくとも猶予は15年もある。多少の頼みはどんとこいと思った。
トシゾウはお茶をヒトノミするとこめかみをポリポリとかき始める。言いづらそうにしていた。
「ああ、ダイキや、お前が奥手なのは承知している。慣れていないのもわかる。だがこれは儂の最後のわがままとも言える願いじゃ。」
一度言葉を切って、しっかりと目を見て言うトシゾウ。
「ダイキの次の世代を見たい。」
「そ……それっていわゆる子供がほしいってこと?」
そう、次の世代といえば当然子孫のことだろう。
ダイキ自身卜部家の血筋はよく理解している。その血を濃く受け継いだダイキにとって溢れ出る性欲、いやいわば繁殖欲は並々ならぬものだ。
つまりダイキにはその繁殖力に従ってどこか女を捕まえてこいと、そう言っているのだ。
「まぁ有り体に言えばそうなるがまぁ難しく考えんでいい。ダイキの有望な後継になりそうなやつを連れてきておくれ。」
「………俺あんまりかっこよくないし……できるかなぁ。」
自信はない。
確かにブサイク、とはっきり言えるほど自分を貶めるつもりはない。少なくとも左右対称な整った顔立ちだ。線が細い父親がイケメンで、母親も美人だ。だからダイキも自分の見目がそこそこ良いのは理解している。
だがどう考えても体格と合っていない。
これでは美形と思ってもらえる前にそもそも怖がられるだろう。
実を言えば、だいぶ前の高校生時代、付き合っていた相手がいた。
ダイキもガツガツ来る彼女に流される形で交際し、いざ性交渉に移ろうとした際、あまり言いたくないが失敗した。
それは情けない失敗ではない。むしろ相手側のキャパにダイキが収まらなかったのだ。
今でも覚えていた「ごめん……君とずっとヤッていける気がしない。」と。
「なにを言っとる!ダイキは結構な美形じゃ、それに雄として優秀な力、財力、性格を持ち合わせておる!そこらの女ならイチコロじゃ!」
「……だといいけど。」
しかし、あの祖父が、何とか自身を元気づけようとしている姿がひどく孫バカに見えて、もう一度だけ頑張ってみようと思えた。
「うん、でもじぃちゃんがそこまで僕を大切に思ってくれてるんだ。僕も期待に答えたい。頑張ってみるよ。」
「うむ、その意気じゃ!」
●
結局、少し雑談をしてダイキはトシゾウの部屋を退室した。
足音が消えゆくなか、座ったままのトシゾウの後ろでダイキが入ってきた襖とは別の襖が音も立てずに開く。
表れたのはダイキにトシゾウの言伝を伝えた美しいアンドロイド。
「……可愛らしいお孫さんだと感じます。」
「ふんっ……身体や才能はともかく性格はダメじゃ、アレは。」
冷たく言い放つトシゾウの顔はひどく温かみのない年相応な厳しい顔だった。
決して素直になれない、といった人間味あるニュアンスではない。先程までの言葉がすべて演技であったということは誰が見ても明らかだ。
「…血のつながった孫にひどい言葉ですね。」
「この手は使いたくなかったが儂もどこまで生きれるかわからん。多少冷たいが仔を崖から落とす獅子のように厳しく動くしかあるまい。」
トシゾウはある意味でこの結末を予想していた。
自身の孫は確かにかわいい、しかし同時にいつまでも甘やかしてはいられない。卜部家男児が20歳になっても夢を追いかける、そんな事はあってはならない。
トシゾウもまた過去、これから行われる計画に似たものを父親にされ、今の地位に至った。ダイキの曽祖父だ。
もう、あやふやな選択をできるときではないと、優しさを捨てる。
「ではあの計画を実行に移すんですね?」
「ああ、それと、ちょうど良さそうなのが今日おった。」
顔は今の今までしていた厳しい顔ではない。
子供がおもちゃを見つけたような企む微笑み。トシゾウの後ろで控える彼女はこの顔をするトシゾウが一番好きだった。聞き返しの言葉はどことなく笑いを堪えるように。
「なんでしょう?」
「遊上家のアンドロイド、調べておけ。」
「………わかりました。」
トシゾウはそう言い終わると冷めた茶をすすった。
冷めきった茶はひどくトシゾウの心を表すように揺れ動いた。
◁続く▷
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