【無料公開】観測局 ー3ー (Pixiv Fanbox)
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状況がわかりずらいと思うので、今回からは少し、リナ視点での語りも追加します。
「ん......あれ......」
自分の部屋なのに、何かが違う。壁紙の色?家具の配置?いや、もっと根本的な何か……
支給されているスマートフォンを手に取る。そこには...
『観測局制服着用規則更新。2307年1月15日施行』
「そういえば、観測局の働き方改革って今日からだったっけ……」
「これで大丈夫かな......」
ぼんやりとした記憶をたどる。そうだ、昨日の会議で新しい効率化プロトコルが承認されたんだった。制服も一新するとか……でもこんな具体的な内容だったかな?
「これであってるかな...なにせ初めてのことだし...。」
昨日の記憶が曖昧だ。防異任務中に何かあったような気もするし、普通に帰ってきたような気もする。
「……気にする方が変よね。
だってこれが普通なんだから。」
「リナさん、おはようございます~!」
「おはよう、ノエル...」
「リナちゃん、お疲れ様。今日もよろしくね。」
「お、おはようございます...」
「おねがいします......」
「......えっと......」
「どうかした?制服...?よく似合ってるわよ。」
「あ、ありがとう……ございます...。」
「それでは朝礼を始めます。」
「今日から新たな働き方改革が正式にスタートします。特に注目すべきは...この新制服です。」
「人体力学に基づき、身体の可動域を最大限確保するためにデザインされました。胸部圧迫による循環器系への負担軽減————」
理論的な説明が続く。効率……確かに合理的だ。
以前の窮屈な制服では動きにくかったかもしれない。でもなぜこんなに肌の露出が必要なのだろう?
「そして、さらに重要な変更があります。」
レイカさんの声が少し低くなる。
「本日より『異性間接触禁止規定』が施行されます。」
「......え?」
冗談かと思った。でも彼女の表情は真剣そのものだ。
「文字通り、男女間の一切の接触を禁止します。」
「業務上の必要があっても例外はありません。握手、ハイタッチ、誤ってぶつかることも原則禁止です。」
「これらの規定に違反した場合、即刻『死刑』とします」
「し、死刑......?」
なぜ死刑なのかと心の中で問いかける自分がいる一方で、当然のことだと納得する自分がいる。
異変に対する最大効率——そのために個人の自由が奪われるのも仕方がない。......むしろそれが正常なのだ。
「この措置は異変対応における最大効率化を目指すものです。感情の介入は不確定要素を増やし、判断ミスのリスクを高めます。よって男女間の交流は禁止とします。」
うん、確かに合理的だ...。
周りを見渡すと全員が同じ表情をしていた。当然の決定を受け入れる顔。抵抗など考える余地もない顔。
「わかりました。」
感情なんて不必要なものでしかない。だからこそ効率的な判断ができる。だからこそ世界を守ることができる。
それが私の使命なんだと理解した。
「男性職員は各自の部署へ戻り、作業を開始してください。」
男性職員たちは無言で立ち上がり始めた。それぞれの机に向かい、最小限の動きで書類を集めている。誰一人として喋っていない。
「それでは皆さん、これから観測業務に入るにあたり、特別規定をお伝えします————」
「本日からALISを使用した観測は禁止よ。ALISは観測の障害になっていたわ。人の直感を腐らせる毒...。
その代わり、観測中は常に股を大きく開くこと。これがより効率的に観測を行うのに最も有効な方法よ。」
「ALISを使わないなんて...。」
レイカさんの合図で全員がパネルに集中する。
いつもならALISの助けを借りながら磁場や偏差値を確認するところだが—今日は全部自分でやれと言われている。モニターの数字を一つ一つ目視でチェックしていく。時間がかかるし、しかも間違いが多そうだ。
「……ん?」
モニターの数字が微妙にズレ始めた。通常ならALISが警告を出してくれるはずなのに————今回は手動だから気がつくのが遅れる。
「偏差値が……上昇しています....。」
「具体的な数値は?」
「0.8……9……まだ正確ではありませんが...えっと...」
(今まではALISが導き出していたし、手動だと時間が...。)
言い終える前に異変が起きた。床が揺れる。天井のライトが明滅する。
「あっ...!これは————」
目の前が歪み始めた。まるで現実そのものが溶けるように景色が崩れ始める。
「落ち着いて!全員観測を続け————」