雅さんの『人に好かれる修行』に付き合ったり、無表情ご奉仕されちゃったりする話 前編 (Pixiv Fanbox)
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2025-01-29 17:39:00
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2026-06
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「リン、おはよう。顔は洗ったかい?」
「おはよお兄ちゃん!うん、でもまだちょっと眠いかも……」
僕はアキラ。レンタルビデオ屋『Random Play』の店長であり、リンの兄だ。そして、伝説のプロキシ……パエトーン本人でもある。
近頃は人脈も広がってきて、変わった友達も沢山できた。
例えば……有名な重工業グループの幹部や、その社長。サメのメイドやオオカミの執事。郊外の走り屋から、治安局の捜査班まで。
……最後に関しては、本来は天敵なはずなのだけれどね。
そして、つい最近知り合ったのが───
ブーッ、と考え事を遮るようにスマホが震える。
『プロキシ。今日の業務の終わり頃、お前と話したい事がある。』
メッセージの送り主である彼女こそが、最近できた友人の星見雅さんだ。
人々の希望である彼女の話したい事とは、一体何だろうか。
「リン。雅さんからこんなメッセージが来たのだけれど、どう思う?」
「ふ〜ん……。お兄ちゃん、これはね……こ・く・は・く!だよ!ひゅーひゅー!」
「はぁ……リン。僕は緊急事態だとかの可能性を考慮して相談しているんだ。茶化すのは止してくれないか。」
「緊急事態だったら、わざわざ業務終わりに会って話さなくない?大丈夫だよ、きっと楽しい話だって!」
おどけながらも、リンは中々に的を得た事を言ってくれた。
少し胸がザワついていたが、我が妹のお陰で業務に集中できそうだ。
「とにかく話してみれば分かる話か。リン、ありがとう。さあ、ひとまず仕事を一緒に頑張ろう。」
「はーい、お兄ちゃん!」
───
「今日も中々に賑わっていたね。皆の宣伝のおかげかな。この調子なら、ビデオ屋の収入だけで生活費を賄えそうだ」
「お兄ちゃん……まさか、プロキシ辞めたいの?」
「いや、そういうわけじゃ無いけれど……」
コンコンコン、と優しく戸を叩く音が響く。時間を加味すると、おそらくはあの人だろう。
「リン、雅さんが来たようだ。行ってくるから、留守番を頼めるかい?」
「はーい、お兄ちゃん!デート楽しんで!」
ドアを開けると、ぴくり、と動く大きな耳が目に入る。
少し視線を落とせば、その耳の持ち主がこちらを見上げているのが目に入った。
「プロキシ。仕事の方は終わったか。」
「ああ、終わったよ。雅さんも仕事終わりかい?」
「……恐らく、数刻のうちに柳からメッセージが来るだろう。だが、些細なことだ。つまり、仕事終わりと言える」
「……一体何をやらかしてきたんだい?」
そのまま、少しの沈黙が流れる。
だが、それは決して悪い物じゃない。
こうして雅さんと見つめ合っていると、会話するよりも多くの事が伝わりあっている気がするからだ。
……まあ、彼女が口下手だからそうなのかもしれないけれど。
「本題に入ろう、プロキシ。私は今日、お前に修行の協力者になって貰いたい、という旨を伝えに来た」
「……一応確認するけれど、ご存知の通り僕は本当に弱いよ?大丈夫かい?」
「いや。お前の優しさやその頭脳も、一種の強さと言える。……だが、今回はそういった内容の修行ではない。少し特殊なものだ」
なんだか思い詰めた様子だ。未だに話が見えてこないが、僕は一体何に巻き込まれてしまうのだろう。
「端的に言うと……お前に、私の『人に好かれる修行』に付き合って貰いたい。どうだ」
「ひ、人に好かれる修行?新エリー都に存在する人間の中で、ファンを擁する数でいえば三本の指に入るであろう雅さんが?」
『人に好かれる修行』……?
やはり、何度考えてもよく分からない。雅さんはいつも不思議な修行をしているが、これもそのうちの一つなのだろうか。
「ファン、か……あの者達は、私を真に好いているとは言えない。あの者達は、新エリー都の守護者たる、『強い私』を好いているのだ。無論、そうでない者も居るだろうが。」
「誰かに唆されたりしたのかい?」
「そうとも言える。事の顛末は、私がH.A.N.Dの職員と話す度に恐れられてしまっている所を、悠真に見られたことからだ。」
───
『やっぱりムスッとし過ぎなんですよ、課長。僕達からすれば課長の表情くらい?簡単に読めますけど。知らない人からすれば、常に不機嫌なようにしか見えませんって!次の修行は、人に好かれる修行にでもしてみたらどうです?』
『ふむ、ならばそうしよう。』
『え……本当に言ってます?』
───
「───と、言うことだ」
「……いつもそんなノリで修行の内容を決めているのかい?まあ、それはいいとして……どうして僕なんだい?それこそ、対ホロウ六課の皆や、朱鳶さんだっていいじゃないか。」
「お前でなければ駄目だ、プロキシ。」
「答えになってないような気がするけれど……」
「……対ホロウ六課の面々や、朱鳶とは長い付き合いだ。それに比べ、プロキシ。お前とはまだ短い付き合いだ。これが答えだ」
「それなら、ファンの皆や対ホロウ六課の職員さんでも良かったんじゃ……」
ただ理由が腑に落ちなかっただけなのだが、なんだか物凄く食い下がっているみたいになってしまった。
黙り込んでしまった雅さんに謝ろうとしたその瞬間、彼女が先に口を開いた。
「…………正直に話そう。プロキシ。私はお前を好いている」
「………え?」
「故に、お前にも私を好いてもらいたい。それが理由だ」
目を逸らし、顔を真っ赤にしながらそう言う雅さん。
──照れている。それに気づいた後、僕の脳は彼女が照れている理由を探し始めた。
『私は、お前を好いている』
雅さんは確かにそう言った。驚きのあまり意味を理解できなかったが、これは、つまり、そういうことだ。
「告白、かい……?」
「違う。あくまでこれは理由だ。相手に好かれることを目標とし、修行をするのなら……好かれたい者を相手に選ぶ。間違っているか?」
「確かに、そうだけれど……それは実質、告白じゃ……」
雅さんの顔は、今まさに茹でられているかのようにどんどんと紅くなっていき……湯気を放っているように錯覚してしまう程だ。
先程の沈黙は心地よかったが、現状のこれは耐え難い。なんだかこっちまで照れてしまうし、今すぐにでも何か話さなければという気持ちになってくる。
「雅さん、僕は……」
「答えは必要無い。ただ、お前は私の修行に協力してくれるかどうかだけ答えてくれればいい。」
「……ああ、もちろん協力するよ。でも、具体的には何をすればいいんだい?」
心做しか雅さんの表情が緩んだような気がする。耳がぴくりと動き、逸らしていた顔をこちらに向き直してくれた。
「感謝する。修行の目標はお前に好かれることであり、その過程は特に決めていない。」
「僕から出来ることは?」
「特には無いな。私が提案したものに、ただ協力してくれればいい。プロキシ、この後は空いているか?」
「この後かい?空いているよ。」
「ならば、私と……デートを、してくれないか。」
凛とした顔でそう言う雅さん。薄らと火照ったその表情が、彼女も年相応の女の子であるということを教えてくれる。
「いいとも。どこか行きたいところは?」
「む………思い当たらないな。お前となら、どこでも構わない。だが、目的地が無いというのも困ったものだ……」
「なら、ひとまず適当に歩くかい?」
「分かった。では行こう」
そうして僕達は六分街をゆったりと歩き始めた。普段のお出かけと違い、『デート』という名目で始めたせいか、なんだか妙に緊張する。
雅さんも同じなようで、口数が明らかに少なくなっていた。
そんな時間が続き、しばらくして。
当もなく歩き回っていたせいか、普段よりも人目についてしまったようだ。段々と周りの人達がなんだかザワつき始め、そしてそれは、ゆっくりと無視できない程のものになっていく。
「ねえ、あれ、『虚狩り』の星見雅さんじゃない?」
「本当だ!えぇっ、サインとかしてくれないかな……」
「というか、あの隣にいる人は誰?イケメンだけど、もしかして……雅さんの彼氏?」
「えっ、じゃあ今デート中ってこと!?じゃあサインは我慢しなきゃ……邪魔しちゃいけないもんね……」
「……雅さん、変装でもしてみるかい?」
「む……必要なのか?」
「僕と並んで歩いていたら、ファンの皆に良くない勘違いをされてしまうかもしれないよ?」
「お前は気にするのか?私は気にしないが……」
雅さんはそう言うけども、これだけガヤガヤと噂されてしまうと、流石に少し気にしてしまう。
「……どうやら気を使わせてしまったようだな。すまない。今日は一度解散とさせてくれ。また後日連絡する。」
「わかった、雅さん。連絡、待っているよ。」
……なんとも気まずい別れとなってしまった。
やはり雅さんは真っ直ぐだけれど、どうしても不器用な所がある。
どうにか彼女の力になってあげたいが……
『特には無いな。私が提案したものに、ただ協力してくれればいい。』
と言っていたし、ここは雅さんを信じて待つしかないだろう。
───
そして、翌日。
ゆっくりと陽が昇り始め、新エリー都は新しい一日を迎える。
そしてそれを知らせるかのようなスマホの振動に、僕は目覚めさせられた。
「こんな朝から……一体誰が……?」
メッセージを見てみると、雅さんからだった。
『息災だろうか。少しばかり暇があってな。ふと、お前のことを思い浮かべた。時に、世の想い人達は何かにつけて通話をするらしい。そこで、お前ともそれをしてみたいと思い至った。』
『お前が良いなら、私と通話をしてくれないか。少しで良い』
雅さんは早起きだな……僕は今起きたばかりだというのに。
『少しだけ準備をしていいかい?』
『ああ、構わない』
その返信を確認した後、僕は足早に顔を洗いに向かう。
そして五分程してから、再び僕はスマホを手に取った。
『準備できたよ。こちらからかけてもいいかい?』
『ああ、よろしく頼む』
そして通話ボタンを押す。
着信音は一切聞こえなかった。おそらく雅さんが超人的な反応速度で通話ボタンを押したのだろう。
『プロキシ、息災か。……ああ、これはもうメッセージで送っていたな。…………。』
そのまま雅さんは黙りこくってしまう。回線に問題があるのかと疑ってしまう程に、綺麗な沈黙だ。
『……雅さん?』
『………………すまない。このような時に、何を話せばいいか分からなくてな。』
『そういう事か。そうだね、例えば……随分早起きしているみたいだけれど、雅さんは朝に強いのかい?』
『朝に強い?私は強い。それも相当にだ。故に、少なくとも私よりは弱いと言えるだろう。』
………………??
『雅さん、何か勘違いをしていないかい………?』
『む……何か間違えてしまっただろうか。』
目が覚めきっていないのもあり、その天然さに思わず無言になってしまう。
ビデオ通話でないため、雅さんの表情は伺い知れない。だが、きっといつもの凛とした真顔のまま首をこてんと傾けているのだろう。まるで、『何かおかしいこと言いましたか?』とでも言いたげなように。
『…………ああ、すまない。出勤の時間だ。また連絡する。』
僕が唖然としているうちに、プツリと通話は終了してしまった。
傍若無人とも、我儘とも違う。雅さんに悪意は一切なく、ただ少しばかり天然で、少々周囲を振り回してしまうだけなのだ。
きっと彼女は今頃、『あれが想い人のする通話というものか。悪くない』とでも考えているのだろう。
───
「───と、いうことがあってね。」
「あっはははは!やっぱり雅さんは面白いね。あんなに強いのに、ちょっぴり……いや、かなり抜けてて……。お兄ちゃん、今回は苦労しそうだね?」
リンはそう言いながら、僕のことを指さす。
「なんだか楽しんでいないかい?エンタメ扱いするのはやめて欲しいな。こっちは真剣なんだ」
「楽しむに決まってるでしょ、こんなの!六課の皆を呼んで尾行しちゃおっかな?ぎこちなくデートする二人……本っ当に面白いんだろうなぁ〜」
恐ろしいことを考える妹を宥めながら、僕達は今日も店長としての業務を開始する。
それにしても、近頃は本当に平和だ。ホロウは依然として残っているし、安全になった訳ではないけれど。
でも実際、プロキシとしての仕事がいつもより落ち着いているのは事実だ。
ともあれ、今日も頑張ろう。
───
程々に繁盛しているおかげか忙しく、気づけばお昼前になっていた。
今日は何を食べようか……そんなことを考えていると、またしてもスマホが振動をする。
まさか……雅さんか?いや、流石に今は仕事中だろう、と思いながらメッセージを確認すると……
『息災か。近頃はホロウ災害も少なく、六課の助力が必要な程の案件もあまり無いようだ。故に書類などの仕事が主なのだが……それは私の分野ではない。』
『何が言いたいか分かるか?』
雅さんだ。しかもこれは、サボりのお誘いだ。
『僕が柳さんだったら、とっくに胃をダメにしているだろうね』
『心配は無用だ。何故なら、私がオフィスに居ようが居まいが、さして変わらないからだ』
『それは自虐かい?……とにかく、お昼でも食べに行こうか。』
『ああ。だがその前に、言っておくことがある。これは、デートだ。以前のものは失敗に終わってしまったが、今回はその雪辱を晴らすという意味合いもある。』
雅さんからしてみれば、前回のデートは"失敗"になってしまうのか。やっぱり、彼女はストイックだ。
『承知したよ、課長殿。ところで、今回は何か計画はあるのかい?』
『ああ、今回は───』
───
「という訳でリン、今日は雅さんも一緒だ。良かったじゃないか、尾行の手間が省けて。」
「む、尾行………?」
「いやいやいや、気にしないで雅さん!!」
雅さんの計画とは、Random Playで食事をするというものだった。
しかし、それ以外は全く何も考えていなかったようで……
「む……食事をしに来たというのに、食料を失念してしまった。すまないが……何かご馳走になっても良いだろうか。」
「ご馳走、って言っても……そういえばこの家、今なんにも食べ物ないね。そうだお兄ちゃん、ラーメンテイクアウトして来てよ!」
「ラーメン?もしかして、チョップ大将のラーメンのことかい?」
うんうん、と頷くリン。狼狽える僕を、期待の眼差しで見つめる雅さん。
「歩いたら数秒で着くっていうのに、テイクアウト?今から皆で向かえばいいじゃないか。」
「もー分かってないなぁ、お兄ちゃん。雅さんがわざわざお兄ちゃんの事を考えてここを選んでくれたのに、外食なんてしたらまた人目についちゃうでしょ?」
……そう、雅さんが何故Random Playで食事をしたがったのかというと、以前のデートで人目につきすぎてしまったことを反省してのことだったのだ。
「それに、雅さんと一緒におうちでご飯なんてなんだかワクワクするし!ね、雅さん!」
「そうだな。ではアキラ、頼めるか。」
「はぁ……はいはい、雅お嬢様。それじゃあリン、雅さんを手厚くもてなしてやってくれ。まあ、数分だろうけれどね。」
「はーい!私、黒鉢豚骨ラーメンで!雅さんは?」
「私は……アキラ。お前と同じでいい」
じっ……と僕を見つめながらそう言う彼女の瞳には、ただならぬ意思が込められているような気がした。
「分かった。それじゃあ、行ってくるよ」
───
「チョップ大将、すまないけど……テイクアウトを頼めるかい?三人前だ。」
「テイクアウト?そいつぁ珍しい。どっかで食うのかい?」
「いや……食べるのは家なんだ。今、我が家にお嬢様が居てね。彼女の為に届けてあげなくちゃならないんだ」
「どうやらワケありみたいじゃねぇか。任せとけ、ぱぱっと作ってやるよ。」
───
「そうなの、お兄ちゃんってば本当にカッコつけてるんだよ!雅さんの前じゃ全然そんなことないかもしれないけど、この前だって───」
「……悪口大会は楽しかったかい?リン。」
「あっ…………!!!」
僕が治安官だったら現行犯逮捕できたというのに、惜しいな。
「リンの分のラーメン、この場で食べてしまおうかな……」
「ごめんってお兄ちゃん!どうかそれだけは!」
「………ふっ」
ぎゃいぎゃいと言い合いをする僕達を見つめる女性から、確かに笑みを零した声が聞こえた。
「雅さん、笑った!?」
「む……そんなに腰を抜かすことだろうか?」
きょとんとした顔でこちらを見る雅さん。確かに、雅さんの笑うところは貴重だ。
「ただ……お前達を見て、六課の面々を連想してな。蒼角や悠真、そして柳らのように、お前達も仲が良いのだろう。そう感じただけだ」
その言葉を聞いて、なんだか照れくさいような、えも言われぬ気持ちになってくる。少なくとも、これ以上喧嘩をしようとは思わなくなったのは確かだ。
「ともあれ……食事をしないか。冷めてしまうぞ。」
「……ああ、そうだね。これがリンの分だ」
「ありがと、お兄ちゃん。」
そうして、しばらく無言でラーメンを啜る時間が続く。ほとんど作りたてなおかげで、暖かくて美味しいのは良いのだけれど……空気が、なんともむず痒すぎる。
そんな生暖かい雰囲気の中、最初に口を開いたのはリンだった。
「そういえば……雅さんって、今『人に好かれる修行』をしてるんだよね?もしそれが大成功して、お兄ちゃんに好き好き〜って言われちゃったらどうするの?」
「構わない。むしろ喜ばしいことだと言えるだろう。アキラは聡明かつ、容姿端麗だ。父上も文句は言えまい」
「え……?それって……結婚することになっても良い、ってこと……?」
「ああ」
……この修行に誘われた時、告白まがいのことをされたけれど……これは……
「えぇっ………雅さん、ストレート………!」
「だが、このままでは到底叶わぬことだろう。修行が始まってから日が浅いとはいえ、私とアキラの関係は何一つ進展していない。」
「そんなことはないけれど……」
雅さんの"やり遂げようとする意志"は、並外れている。
実際、彼女は今までその体力と膂力を以て、様々な事を成し遂げてきた。
そして、今回のターゲットは……
「故に、秘策を幾つか考えてある。……アキラ。私は絶対にお前に好かれてみせる。覚悟するんだな。」
……これは、腹を括った方がいいかもしれないな。
「雅さん………お兄ちゃんを、よろしくお願いします………!!!」
「任せておけ。」
「まだ結婚すると決まったわけじゃないのだけれど……」
───
そしてその翌日から、雅さんの猛アタックが始まった。
『プロキシ。世の若人は、ストレートに好意を表現されるのを好むと聞いた。では、行くぞ』
『プロキシ、愛している』
『好きだ』
『私と婚約してくれ』
これが彼女の言う、秘策のうちの一つなのだろうか?ひとまず、返信してあげよう……
『雅さん、この修行を始める時に既に口頭で言ってくれていたよ。そもそも、雅さんは好意を隠すタイプじゃないからあまり新鮮には思えないな。でも、ありがとう。嬉しいよ』
『む……お前には効果が無く、私にばかり効くというのは不平等ではないだろうか。』
『一体何があったんだい?』
『あのメッセージを送信してから、顔が火照って止まらない。プロキシ、メッセージを削除する方法を教えてくれ。文字として残すのが、こんなにも効くとは思わなかった』
───
そしてまた翌日。
『今日も会うことは叶わなさそうだ。すまない。』
『仕方ないよ。まずは仕事を優先して欲しいな』
『感謝する。』
そのメッセージの直後、一つの画像が添付された。一見すると無表情だが、少しばかり誇らしげな表情の狐耳の女性。加えて、画面の隅では小さくピースをしているのが写っている。
『会えない時は、こうして自撮りを送ってやると良いと聞いた。どうだ? "星見雅成分" は摂取できたか?』
『……どこでそんなこと覚えてきたんだい?でも、良い写真だ。ありがとう。リンにも送っていいかい?』
そう送信した瞬間、ほぼ同時と思える程の、驚くべき速度で返信が帰ってきた。
『ダメだ』
『絶対にダメだ。この写真はお前だけの物だ。お前だけの、特別な写真だ』
雅さんのその言葉が、独占欲によるものなのか、それとも羞恥心からくるものなのかは分からなかった。
『分かったよ。大切に保管しておく。ところで、これも秘策のうちなのかい?』
『ああ、そうだ。プロキシ、明日の業務の後にそちらの家に行く。そこでまた他の"秘策"を見せてやろう。』
『ああ、楽しみにしているよ。』
───
そして翌日。店を閉める時間になったので外に出てみると、美しい立ち姿で誰かを待つ女性が居た。
特徴は、青緑の羽織に、黒い袴。そして、大きな耳。
「雅さん、早いね。待ったかい?」
「いや、今来たばかりだ。」
「それは良かった。今日の予定は決まっているかい?」
「ああ。今日はお前の部屋に上がろうと思うのだが、良いだろうか?」
「いいとも。それじゃあ、行こうか」
再びドアを開けビデオ屋に戻ると、片付けをしていたリンが僕達に気づく。
「あ、雅さん!こんばんは!今日もお兄ちゃんと修行してるの?」
「ああ。今日はアキラの部屋で秘策を実行しようと思ってな。リン、騒々しくしてしまったらすまない」
「え、えっ!?わ、わ、私、もしかして一回外行った方がいいかな!?」
「安心しろ。今はまだそれをする時じゃない」
「今、は…………!??!!!?」
やかんのような音を立てながら、あっという間に顔を真っ赤にするリン。
そのまま、バタリと失神してしまった。
「まるでギャグ漫画だね……」
───
「では、アキラ。今日の秘策を実行させてもらおう。そこで横になれるか?」
「……雅さん、一応確認するけれど……いかがわしいことをするつもりじゃないよね?」
「ああ、安心しろ。さっきも言ったはずだ、今はまだその時ではないと。」
「今は、って所が引っかかるけど……まあ、いいか。」
雅さんに従い、自分のベッドに横になる。すっかり慣れた匂いに包まれ、脳がリラックスしていく。
「では、今回の秘策を説明してやろう。私は先日、ASMRという物の存在を知った。それをお前にしようと思うのだが、どうやら好みが分かれる物らしい。アキラ、お前はどうだ。」
「なっ……ASMR?雅さんからそんな単語が出てくるとは……。実は、一度も聴いた事がないんだ。だから、苦手かどうかは分からないね。」
「なるほど、分かった。では、不快に感じたならすぐに言え。」
そう言うと、ベッドに横になる僕の目の前辺りに立つ雅さん。そのまま身体を倒すと、耳元まで顔を近づけてきた。
「行くぞ……」
吐息混じりにそう囁く雅さん。改めて思うが、彼女の声は凛としていて本当に良い……などと、考えていると。
「ちゅ、ちゅぱっ……ちゅう、ちゅ……ちゅるっ……」
「っ…………!?」
突如として始まるリップ音。そして耳に伝わるこの感触……
僕は今、雅さんに、耳を舐められている……!
「な、何をしてっ………!?」
「ああ、リップ音とやらを出そうとはしたものの、どうすればいいのか分からなくてな……ちゅっ。だが、丁度いい物が目に入った……ちゅうっ……。どうだ……?不快では、ないか……?」
「〜〜〜〜〜っ………!」
悶えている間にも、雅さんの攻勢は続く。あらゆる箇所を啄まれ、舐められ……時折漏らす吐息も、全てが脳に直接響き、形容し難い刺激が絶え間なく与えられる。
「雅、さんっ…………!」
「んむ………ちゅ。ちゅ、ちゅう……れぇっ………」
どんどんと身体を乗り出していきながら、無我夢中で耳を舐る雅さん。
彼女がそうするにつれ、僕の眼前には、彼女の豊満な胸が、ゆっくりと、接近してきていて………
───ぱふっ。
「雅さん………む、胸が………!!」
「ちゅるっ……ちゅうっ……はぁっ、ちゅぱっ、ちゅ、ちゅっ………」
「も、ごっ………!」
遂に、触れた、ではなく、押し付けられた、と表現するのが正しい状態になってしまった。
呼吸が上手く出来ない。どうにか息を吸おうとすると、濃厚な雅さんの匂いが鼻腔から脳まで全てに行き渡り、危うく正気を失いそうになる。
「むごっ、もご………っ!」
「………む?」
手をぶんぶんと振り回し、それが雅さんの背中に触れたことでようやく彼女は気づいてくれた。
「ああ、すまない。呼吸しづらかっただろうか。」
「はぁ………はぁ………!あ、ああ……いいんだ、けれど……なんだか、やけに冷静じゃないかい……?その、胸に触れてしまったのに……」
「こうなることも予見していた。だが、危うくお前を窒息死させかけてしまうとは、考えていなかった。すまない」
予見していたにしても、この堂々っぷりは……そうなっても、構わないと考えていたってことなんだろうか……
脳が、痺れて……思考が上手く、できない……
「ASMRはどう感じた?不快ではなかったか?」
「もはやASMRと言えるものか、怪しかったけれど……良かったよ、雅さん……グッジョブだ。」
「ああ、それは良かった。……だが、どうやら刺激が強すぎたようだな。少し休むといい」
「そうさせて、もらうよ……」
………
…………
………………
「んん………寝ていたのか、僕は……雅さんは……?」
時計を見ると一時間ほど経っていた。部屋を見渡しても、雅さんはどこにも居なかった。
探すため階段を降りると、リンとばったり遭遇する。
「ああ、リン。雅さん知らないかい?」
「おはよ、お兄ちゃん。雅さんなら帰ったよ。『アキラは寝てしまったようだ。ゆっくり休ませてやりたい。故に、私は帰ろうと思う。ではな』って言ってね。なんだか満足そうな顔してたなぁ。ね、お兄ちゃん……雅さんと一緒の時に寝落ちしちゃうって、もしかして……えっちなことしたの………?」
確かに疑われてしまっても仕方ない。だが、どう釈明すればいいのか分からない。雅さんにASMRをされて、なんて言っても意味不明だろうし。
よし、ここは……
「実は雅さんに誘われて、手合わせをしていたんだ。といっても、ほとんど雅さんの強さを実感する会だったのだけれどね。それで疲れて寝てしまったんだよ。」
「えぇ!?にしては静かだった気がするけどなぁ。なんだか、怪しいなぁ……」
「信じてくれ、リン。雅さんは天然だけれど、人並みにピュアな女性だ。誓ってそんなことはしていないよ。」
「ふ〜〜〜ん………?」
怪しまれてはいるものの、どうにか誤魔化せたようだ。
にしても、あの雅さんがあんなに大胆なことをするなんて。リンにはピュアなんて言ってしまったけど、実際のところは分からないな……。
───
翌朝。
早起きな雅さんからのメッセージで目が覚める。ちょっと前にもこんな事があったような気がするな……。
今回は一体どんな内容だろうか。
『今日の業務終わり、私の家に来い。場所はここだ』
というメッセージと共に、位置情報が送られてきていた。
雅さんの家か。初めて行くし、少しばかり緊張してしまうな。
───
仕事を終えた僕は、すぐに準備をして送られた場所へと向かい始める。
ああ、そうだ。一度雅さんに連絡をしよう。
『雅さん、今そちらに向かってるけど、大丈夫かい?そっちの業務が終わっていないかもしれないと思ってね』
『心配ない。もう自宅で待機している。本来であれば未だオフィスに居たはずなのだがな』
『なんだか、柳さんに何か贈るべきな気がしてきたよ……』
そんなやり取りを終えてからしばらくして、僕は雅さんの家へと到着する。
インターホンを押すとすぐに玄関が開き、見知った女性が出迎えてくれた。
「よく来たな、アキラ。上がれ」
「お邪魔します。」
雅さんの部屋は意外にも現代的で、しかも綺麗に整頓されていた。
なんだかイメージと少し違うな。
「アキラ、今日お前を招いたのは他でもない、最後の秘策をお前に見せるためだ。こちらに来い」
案内されたのは、彼女の寝室と思しき部屋だ。リビングや玄関の雰囲気とは打って変わり、一気に和の様相を呈している。
畳の上に丁寧に敷かれた敷布団に、綺麗に手入れをされた刀掛け。そして、その部屋に相応しい、侍の女の子。
不躾にきょろきょろと見渡して観察する僕を気にも留めず、雅さんは何かをし始めた。
ごそ、ごそという衣擦れの音と共に、一枚ずつ服を脱いでいく雅さん。
………ちょっと待った。
「み、雅さん………何故服を脱いでいるんだい?」
大慌てで後ろを向きそう質問をする。
そうしている間にも、彼女は手を止めずに服を脱ぎ続けているであろう音がし続けていた。
「大丈夫だ。こちらを見ろ、アキラ。」
そう言われ、恐る恐る振り向いてみると……
「わぁっ!?」
反射的にまた後ろを向いてしまった。当然だろう。一瞬だけれど、彼女の格好がしっかりと見えたからだ。
……下着姿、だった。
次の瞬間、僕は後ろから何者かに拘束されてしまう。……正確に言うと、抱き締められたのだ。
背中に感じる、ふっくらと柔らかい感触。
それが後ろにいる者が誰であるかを、如実に物語っていた。
そのまま、ぐっ、と背伸びをする雅さん。それによって、より強く押し付けられてしまう。
「アキラ。最後の秘策とは……お前を抱く事だ。」
耳元で囁かれる、衝撃的な言葉。
「な………なんだって?」
「安心しろ。手荒な真似はしない。」
驚きのあまり、その拘束から脱しようと力を込める………が。
まるで大きな手錠に全身を縛り付けられているかのように、全く動かない。
その一瞬で、僕は力量差を完璧に理解してしまった。
「暴れるな。お前を怪我させたくない。……そこの布団に横になれ。後は私に任せればいい。」
彼女に従い、大人しく布団に横になる。出来るだけ、雅さんを視界に入れないようにしながら。
だというのに、雅さんは───
「何故目を瞑っている?しっかりと見ろ。」
僕に馬乗りになった雅さんに両手で頬を掴まれ、正面を向くように強制されてしまう。
そこで初めて、しっかりと……雅さんの姿を、目にしてしまう。
どこからあんな膂力が発揮されているのか不思議になってしまう程の、華奢な肢体。
そして、サラシによって抑えつけられているというのに、嫌という程に自己主張をする双丘が視界いっぱいに飛び込んできた。
そして次の瞬間、雅さんは、それを………一気に解いてしまった。
「あ、ああ…………っ!」
思わず声が出てしまう。
彼女の胸は……その体格とは不釣り合いな程に大きく、そして美しく、淫靡だった。
「どうだ?私は死角が出来てしまうが故に、邪魔だとしか思った事が無かったのだが………どうやらお前の目には、魅力的に映っているようだな。」
「おおよその男性にとっては………そうだろうね………」
「そうか、ならば良かった。触るか?」
自分で胸を触りながらそう言う雅さん。彼女の手の形に合わせて変形する胸は、蠱惑的に過ぎる。
「い、いや……遠慮しておくよ……」
「? そうか。まあいい、触りたい時はいつでも言え。」
そう言うと、雅さんは僕から降り始めた。何をするのかと思えば、今度はカチャカチャと僕のズボンを脱がし始める。
「な、何を…………!?」
「心配は無用だ。私は星見家の跡取りとして、様々な事を教えられてきた。その中で、殿方の悦ばせ方も習得済みだ。実戦はこれが初めてだがな」
抵抗する暇も無く、気づけばあっという間に陰部を露出させられてしまっていた。
「む……大きくなっていないな。緊張しているのか?」
「緊張というか、興奮する隙が無かったという感じかな………」
「問題は無い。全て私に任せておけ。お前はそこで脱力していればいい。それと、要求があれば何でも言え。私の身体の何処でも、好きにさせてやる。」
少し熱を帯びたような声でそう言う雅さん。それでも照れているような様子は一切無く、ただ淡々と、「成すべき事を成す」という意志を感じさせられた。
そしてその成すべき事とは、今で言うと、僕を興奮させることであり……
「は、むっ………」
彼女がそれに最も効果的だと考えたであろう行為を、実行される。
「うわ、っ………!汚いよ、雅さん………!」
「ひんふぁい、むひょうら……」
片手で髪をかきあげながら、僕のものを咥える雅さん。
未だ小さいままのそれを、まるで飴玉でも舐るかのように舌で転がし始める。
「んむっ……んむ……んっ、っ……」
「〜〜〜〜〜ッ!」
くすぐったくて、ぞくぞくとして、思わず身震いしてしまう。
雅さんはそんな僕の反応を確かめながら、口を動かし続ける。
皮に舌を差し込まれ、ゆっくりと剥かれていく。それを全て口内に収めると、今度は舌の腹を使ってねっとりと撫で回してくる。
そして……時折唇をすぼめながら、強く吸い付くような動きをされる。まるで、先端から何かを吸い上げようとでもするかのように。
そんな行為を続けられ、僕のそれはとっくに最大限まで大きくなってしまっていた。
「は、ぁっ………。大きくなったな。もう目合ってしまってもいいが、ムードとやらに欠けるだろう。………アキラ、私の身体で最も魅力的な部位はどこだ。」
僕の目を見ながら、真っ直ぐそう問いかけてくる雅さん。
──脳内では、様々な案が思い浮かび始める。
『顔かな。雅さんは美人だからね。』
『雅さんの手が好きだよ。刀を振るっている時、いつも見惚れてしまう。』
しかし、本能は思考よりも素早く結論に達していたようで……
「ああ、やはり胸か。質問の直後、お前の視線はそこに集中していた」
雅さんは僕の目を見て、そう断言する。
「僕って、最低だ………」
「卑下することはない。男ならば至って普通のことだろう。では……」
雅さんは僕の脚を開かせると、その間に座り込む。
そして、彼女の豊満すぎる胸と、僕のすっかり硬くなったモノをそれぞれ掴む雅さん。
「見ていろ。」
そう短く言うと、雅さんは自らの胸を持ち上げ……
「んっ………」
僕のモノを、挟み込んだ。
「う、あっ…………!」
「どうだ。しっかりと目に焼き付けろ。この光景は、お前しか見れない。お前にしか、見せない。」
雅さんはそう言いながら、見せつけるようにたぽたぽと胸を揺らす。
先端以外の全てをみっちりと包み込む、至高の柔らかさ。
「……思えば、焼き付ける必要も無いな。何故なら、これからはお前が頼めばいつでも、何度でもしてやるからだ。」
言い終えた後に、ふっ、と笑うと、雅さんはそのまま両側から胸を押し潰すように強く挟み込む。
「さあ、悦に浸る時間は終わりだ。歯を食いしばれ。すぐに吐精してしまっては、面白くないからな。……行くぞ」
たぽ、たぽ、たぽっ……
「う、あ………ッ!」
ここまで必死に保ってきた理性を全て消し飛ばされてしまいそうな程の、強烈な快楽。
それを休むこと無く、一定のリズムで与えられていく。
「はむっ……んっ……」
そして、その快楽を助長するかのように……雅さんは胸から飛び出た僕のモノの先端を、舌で舐め始めた。
「ん、ちゅ……れぇ……はむ……ん、れぇ……」
竿全体をみっちりと包み込み、満遍なく刺激してくる胸。
先端をちろちろと舐め、時折強く吸い上げる舌。
それらが快楽を際限なく高めていき、肉棒が痺れるような感覚に襲われる。
「ん………ちゅぱっ。つゆが出てきたな。気持ちいいのか?アキラ」
「あ、ぁ………っ!」
「そうか。ならば良かった」
雅さんはより一層、激しく胸を動かし始める。
「んっ……ふっ……んむ、ちゅ……」
「うあぁっ………!」
たぽ、たぽ、たぽっ……
雅さんの胸が揺れる度、僕のモノがそれに釣られて動く。その先端をまた咥えられ、舌で弄ばれる。
「ぢゅう、っ……んむっ……れろ……」
ゾクゾクと身体が震える。
彼女が動き、僕の敏感な部分を舐る度に大きな塊のようなものが込み上げてくる。
「もうっ………限界だッ、雅さん………!」
そう告げると、雅さんは怪訝な面持ちで僕を見ながら一切の動きを止めてしまった。
「む……些か早いな。ならば……アキラ、よく聞け。これから手淫をする。だが、私が良いと言うまで吐精するな。絶対にだ」
「僕に、出来るかな……ご覧の通り、既に気を失いそうなんだけれど……」
「出来るだろう。これは『修行』だ。成し遂げてみせろ、アキラ」
そう言い一度僕から離れると、雅さんは横に座り込む。
そして自らの口から唾液を垂らし、僕のモノにそれを塗りたくる。
そのまま優しく竿を握ると、ゆっくりとした手淫が始まった。
「初めは優しくしてやる。お預けしたばかりだからな。」
にゅち、にゅちと音を立てながら、雅さんのしなやかな指が僕の竿を愛撫する。
「ぐっ……あ゛っ……」
「まだまだ序の口だ。頑張れ」
ふわりと握られた手が、ゆっくりと硬く締められていく。
そして雅さんの指の腹が僕のカリ首を、何度も何度も容赦無く擦り始める。
「あ゛っ、うぁ……ッ!」
にゅち、にち、にちにち………
しこ、しこ、しこっ………
「我慢だ、我慢……」
「ふ、うぅ……っ……」
快楽の余り腰が浮いてしまいそうになるが、しっかりと抑えつけられる。
気持ちいい、気持ちいいっ、気持ちいい………っ!!
「………よく頑張った。一度深呼吸しろ。」
「はぁ、はぁ………っ。もう、終わりかい………?」
「ああ、概ねそうだと言える。後は仕上げのみだ。」
仕上げ?ということは、今までよりも凄まじいものが襲ってくるということなのだろうか?
「僕には……到底耐えられる自信がないよ……」
「安心しろ。10秒だ。10秒だけ耐えれば、終いにしてやる。行くぞ。腹を括れ」
雅さんはそう言うと、僕のモノの竿を先程と同じように握る。
それに加えて、先端部分ももう片方の手で摘むように持つと……
それらの手を動かし始めた。
「く、あ゛………ッ!?」
竿を搾るかのように上下に動く手と、きゅっ、きゅっと先端の形に合わせてメタルシャワーの様に締められる指先。
「雅、さんっ………!あ゛あぁっ………!!」
「頑張れ、アキラ。今から10秒だ。行くぞ………10。」
しこ、しこ、しこ、しこ……
きゅ、きゅっ、きゅっ、きゅうっ……
「9………」
快楽を通り越して、もはや苦痛にすら感じるような手淫。
腰を浮かせ、両手でシーツを掴み、歯を食いしばってどうにか耐える。
「8………」
「う゛ぅううっ………!!」
何も考えられない。地獄のような快楽の中、全ての神経を堪えることに集中させ、ただひたすらに時が過ぎるのを待つ。
「7………」
ちゅこちゅこっ……しこしこしこっ……
気持ちいいっ………気持ち、良すぎるっ………!!!
「6………」
「雅、さんっ………う゛ぁあっ………!!」
「深呼吸しろ……お前なら出来る……。あと5秒だ………」
そう言いながら雅さんは手の動きを早める。滝のように溢れる我慢汁が潤滑油となり、淫靡な音を奏でる。
「4………」
ぐぽっ、ぐっぽ……ぬっちゅ、にっちゅ……
「3………もう少しだ………」
「く、ぁああ゛ッ………!!」
苦しい、苦しい……苦しいっ……!!
早く……早く、終わってくれッ……!!
「2………」
もう………出、るッ………!!!
うあぁあ゛っ………!!!
「1………」
───ああ、ようやくだ………
そう思った瞬間、雅さんは僕のモノの根元をぎゅっと指で締め付けてきた。
「よく耐えた。だが……吐精していいとは言っていない。終いにしてやる、とは言ったがな。」
その言葉を聞いて、脳がぐちゃぐちゃになりそうな程の感情が次々と溢れてくる。
困惑、消沈、怒り、落胆………
「雅さん………君は、鬼、なのかい………」
「安心しろ。手淫では吐精させてやらないというだけだ。折角のお前の子種を、こんな行為で浪費させるのは勿体無いからな。」
雅さんはそう言いながら、ゆっくりと立ち上がり………僕に跨り始める。
───くちゅ。
その音と共に、僕のモノの先端は雅さんの秘裂にあてがわれる。
「駄目だ、雅さん……!そんなことをしたら、子供が出来てしまう……!!」
「問題無い。そうなった時は、星見家の婿になれ。私と子を愛で、一生を共にしよう。責任は私が全て取ってやる。」
雅さんは腰を落としながら、そう告げてくる。
「いきなり、そんなこと………言われてもっ………!!」
「今決めずとも良い。ともかく、お前は……」
先端が、完全に飲み込まれる。
「一切を、我慢せず………私の中で、果てることだけを考えればいい。お前の、溜まりに溜まった子種………全て私に植え付けろ。」
そして────
ず、ぷんっ…………………♡
「ああ………ようやくだ。待ちわびた、お前との、夜伽………。」
「あ゛っ、あぁあっ………!!」
根元まで、全てを飲み込まれた僕のモノ。暖かくて、気持ちよくて───何も考えられない。
「動くぞ。」
そう言うと、雅さんはぐぐぐ………と腰を持ち上げ………どちゅん、と打ち付ける。
それを皮切りに、彼女の舐り尽くすかのような上下運動が始まる。
「どうだ。気持ちいいか?」
腰を捻ったり、円を描くようにグラインドさせたり。
同時に彼女の胸がたぽたぽと音を立てながら揺れ、視覚的にも責め立てられる。
「殊の外耐えるな。先程の修行の効果だろうか。より私の伴侶に相応しい男になったな、アキラ。」
そう言うと前のめりになり、僕の胸元に顔を近づける雅さん。
そのまま、乳首に舌を這わせ始める。
「あ゛っ………!う、あっ………」
「れぇ……んむ、ちゅ……れろ……」
そして、淫猥にそこを舐りながら、ばちゅんっ、ばちゅんっ、と淫らな水音を立て腰を上下させる。
「雅、さんっ………雅……さんッ………!!」
「ああ、言わずとも分かる……大丈夫だ……。果てろ。私の中で、存分に果てろ…………」
あ゛ッ、あぁ…………!!
「れろ………ぢゅ、んれぇっ………ちゅう………んぢゅ………」
僕の目を見つめながら乳首を愛撫し続ける雅さん。
優しくて、鋭くて、淫靡で、美しいその目線。そして同時に繰り返される、僕のモノを搾り取るかのような淫らで力強い腰使い。
どちゅ、どちゅ、どっちゅ、どちゅっ………
もう…………限界、だッ…………!!
イ、クッ…………!!
出て、しまうっ…………!!!雅さんの、中で…………ッ!
絶対に、駄目……なのに…………!!!
「果てろ。イってしまえ。イけ、イけ、イけ…………」
低音のその囁きと共に、ばちゅっ、と腰を打ち付けられ────
びゅ、るっ…………びゅるるるるっ…………!!
絶頂。と同時に子宮口を鈴口にぴっちりと固定され、誤魔化しようのない中出しを強制される。
「………ちゅ。ぢゅう、れぇっ……ん、れろれろ………」
射精を確認した雅さんは、満足げな表情で僕の乳首への愛撫を再開する。
あまりの快楽から身体を震わせる僕。
それによって精液が零れてしまうことの無いように、雅さんは腰をしっかりと僕の身体に密着させ、固定してくる。
びゅう、びゅう……と長い射精が終わると……雅さんはゆっくりと腰を浮かせ始める。
「はあっ…………はあっ…………」
あまりの快楽に声が出ない。
絶頂の余韻が僕を襲い、その吐息を荒げさせる。
雅さんはそんな僕を気にもとめず、腰を浮かせ続けてモノを引き抜く。
でろり、とすっかり元気を無くし、変わり果てた僕のモノが露出する。
ご満悦な雅さんはその上に跨ると、僕を見下ろしながら言葉を投げかけてきた。
「少し激しすぎたか。すまない。だが、その様子を見るに……決して悪いものでは無かったようだな。」
「まさか………雅、さんに………こんな一面があったなんて………」
「星見家の教えの賜物だ。そして……どうだ、アキラ。私の事は好きになったか?」
……そういえば、雅さんは既成事実を作るだとかでは無く、『好きになってもらう手段』として僕を抱くと言っていたな。
「確かに、雅さんの技術は凄かったけれど………何か勘違いをしていないかい、雅さん。」
「む……勘違い、とは?」
「ひとつは、こういう事は好きになってもらうためにするんじゃなくて、既に好き合っている人達が愛を確かめるためにする事、ってことだ。」
「そうか……それは知らなかったな。」
雅さんは顎に手を当てながら、少し考え込むような仕草をする。
そして彼女が素っ頓狂なことを思いつく前に、続けて補足をする。
「もうひとつは、僕は既に……雅さん。君を充分に好いている、ということだ。だから君の修行は、とっくに功を奏していたんだよ。」
その言葉を聞いた雅さんは、目を大きく見開き、耳をピンと伸ばす。
まさに、"意外"といった反応だ。
「む……ならば、私は……どうすればいい?この場で婚約するか?アキラ」
「お、落ち着いて、雅さん。そうだね……なら、やり直しをする、というのはどうかな。」
僕がそう提案すると、雅さんは理解出来なかったようで、
「やり直し、というのは?」
と尋ねてくる。
「僕と雅さんとで、さっきの行為をやり直すんだ。一方的なものでなく、愛を確かめ合うものとして。どうだい?」
「それは、魅力的だが……私は、ああいった奉仕としての行為しか分からない。どうすればいい?」
少し不安そうに聞いてくる彼女に、僕は優しく言う。
「大丈夫。一緒に、ゆっくりやっていこう。まずはキスからだ。抱きしめ合いながら、じっくりと。」
「分かった……。よろしく頼む。」
雅さんはそう言うと、僕に顔を近づけてくる。
そして僕は彼女の頬に手を添えると……そのまま唇を重ねた。
「んっ………」
雅さんの口から吐息が漏れ出すのを感じる。
その反応を見てから、ゆっくりと舌を侵入させていった。
「んっ……ちゅ……」
最初は驚いたのか、少し強張っていた雅さんの身体も次第に力が抜けていき……
僕の舌に自分の舌を、遠慮がちに絡ませ始める。
「ちゅう……れぇ……ん、ちゅっ……」
しばらくそうした後、頃合いを見て僕から離れる。
「……どうだった、雅さん?」
そう聞きながら雅さんの顔を見る。
互いの唾液でてらてらと光る唇に、ぽうっと赤く染まった頬。
裸を見られても、あんな大胆な事をしても見せなかった、恍惚とした表情。
「………足りないぞ、アキラ。もう一度だ」
そう言いながら両手を広げる雅さん。僕はそんな彼女を優しく抱き寄せると、再びキスをする。
「ん、むっ………♡ ちゅう……れぇ、ちゅ、ちゅっ……♡ ん、ちゅっ♡ れろ……♡」
先程とは違い、今度は雅さんの方から積極的に舌を絡めてくる。
情熱的で、扇情的で……頭がクラクラしそうな程に甘い。
やがて苦しくなってきた僕が離れようとすると、雅さんは僕の頭をがっしりと掴み、逃がさないとばかりに更に強く押し付けてくる。
「ちゅうぅううっ………♡♡ ん、ちゅっ♡ れろ……ちゅぱっ……♡ ちゅ、ちゅっ、ちゅうぅっ………♡♡ れるれる………ちゅ………は、ぁっ………♡」
ようやく僕から離れた雅さんは、蕩けたような顔で言う。
「はぁ……はぁ……何故、だ……。性器を、触ってもいないのに……先程よりも、遥かに興奮してしまって、いるっ………♡」
「これが愛を確かめ合うということだよ、雅さん。夜伽は仕事でも、儀式でもない。こうしてお互いを愛し合い、愛を高め合う行為なんだ。」
雅さんは荒くなった息をどうにか抑えようと深呼吸をするも、それでもなお興奮が冷めないようで……
俯いたまま、僕に突進してきた。
「う、わぁっ!?」
そのまま僕の胸元に頭を埋め、ぎゅうっ……と抱きしめてくる雅さん。
「アキラ……好きだ……。愛している……。お前を、誰にも……他の、誰にも渡したくない……。こんな、言葉では……表せない程に……私は……お前、を……」
今にも泣き出してしまいそうな、絞り出すような声で言う雅さん。
僕はそんな彼女を優しく撫でてやりながら、言う。