夢の続きを、あなたと。【前編】 (Pixiv Fanbox)
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2025-05-16 12:52:45
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2026-06
Content
仕事道具をしまい、友人や仲間と別れる人々。
喧噪が、ゆっくりと止み──
帰路に着く皆の、少しくたびれた背中を、ケファレの陽光が見送っていく。
そんな……いつもと同じ、離愁の刻。
私もまた家へと帰り、見慣れた自室へ足を運びます。
「ふう……」
ここへ戻ると、特に疲れたわけでもないのに溜め息が漏れてしまいます。
やはり、安心感からなのでしょうか。
少しだけ休憩をした後、私は普段通りに夕食を頂きます。
その後はピュエロスにゆっくり浸かったり、少し刺繍をしたり……
そんなふうに過ごしていると、あっという間に隠匿の刻が訪れてしまいました。
きちんと寝ない者はザグレウスに有り金を奪われる、なんて古い言い伝えもありましたが……
私は、他の方より少しだけ長く起きてしまいます。悪い子、ですね。
ふふ、もしも家族がいたなら、叱られてしまうでしょうか……
カーテンを閉めると、私は机の棚からある本を取り出しました。
分厚めの冊子に、私の文字で、半分ほど物語がしたためてあるものです。
タイトルは、ありません。
何故なら……人に読ませるつもりのないものだからです。
さあ、今日もじっくりと書いていきましょう。ちょうど山場でしたし、楽しい執筆になりそうです。
そんなことを考えながら本を開くと──そこには、“何もありませんでした”。
いえ、正確には。
私が本だと思っていたものは、外見だけ精巧に偽せられた箱であり……
その中には、ただ一枚のコインと紙が入っていたのです。
私はそれを一目見て、誰の仕業なのかを理解しました。
「サフェル、様っ……!!」
いけない。本当に、いけない。
私の全財産が盗まれようと構いませんが……“あれ”だけは。
あの本だけは、絶対にいけません。
震える手でコインの下の紙を拾い上げ、裏返してみると……
『やっほ〜、引きこもり姫。暇つぶしにあんたのお家を空き巣してたんだけど、なんだか凄そうな本を見つけちゃったから頂いちゃった。
返して欲しかったら、大地獣の餌やり場に来て。安心して、それまで読まないでおくから! それじゃ〜』
「…………っ!!」
私は……大急ぎで駆け出しました。
───
「はぁ、はぁっ、はぁ……っ!」
「あ、来た来た。待ちくたびれたよ〜、引きこ──」
「返して、ください……!」
「あははっ、必死だね〜。なんだか特別そうだったから盗ってみたけど、どうやら本当に大切なものみたいだね」
膝を軽く曲げ、脚に力を込める。
狙うは、サフェル様の右手。
そして、思い切り──
「っ!」
「……くっ」
「びっくりした! まさか飛び込んでくるなんてね。あんたって、そんな機敏な動きもできたんだ?」
「私の財産を、全てあげますから……お願いします、それは返してください……」
正直なところ、私は高を括っていました。
サフェル様なら、お金を渡しておけば返してくれるだろう……と。
しかし──
「ダメ〜。そもそもあたし、返すつもりなんて無いし」
「え……? ではあなたは、嘘をついたのですか……?」
「ええ? 嘘なんてついてないよ。返して欲しかったら、とは書いたけど、返してあげる、とは書いてない。それに……」
何をするのかと思えば……あろうことか、サフェル様は私の本を開き──
「へえ、これは……♡」
じろじろと、読み始めたのです。
「なっ……!? ダメ、です……! サフェル様、ダメ……!」
「あはは! ずっと読まないでおいてあげるなんて、一言も書いてないからね〜。さっ、続きも読んじゃお〜」
「待ってください……! サフェル様、返して……!!」
悠々と歩きながら、私の本を読んでいく泥棒猫。
私が追いかける速度をあげるにつれ、彼女も同じように足を速めるせいで……
一向に追いつけません。
「引きこもり姫って〜、意外とえっちなんだねえ?♡ ひひっ♡ この本は千の宝に勝る価値があるよ! あ〜盗ってよかった♡」
「ダメ……! 読まないでください……!!」
───
「穹。俺はもうルトロに戻るが、お前はどうするんだ?」
「ああ、なんか面白いものが見れるっていうから大地獣の餌やり場に寄ってみるよ」
「そうか。面倒事に巻き込まれないようにな」
丹恒と別れ、俺は目的地へと向かっていく。
あの場所で何かが起こると、どこかで聞いたような気がするんだけど……いまいち情報源が思い出せない。
誰かが噂してたのを、小耳に挟んだんだっけ?
「さい────」
そういえばあの場所は、初めてキャストリスに写真を撮ってもらった場所だったか。
モノクロで撮るのが好きみたいだったけど、中々センスがあったな。
俺ほどじゃないけど。
「か────ださい────」
「……なんだ?」
そんな追憶から俺の意識を引き戻したのは、遠くから聞こえる女性の叫び声だった。
「うぉお─ん──」
気づけば俺は、餌やり場の近辺に来ていたようだ。
辺りにはひと仕事終えた大地獣たちが、赤土を求めてのしのしと地を揺らし歩いている。
面白いことっていうのは、あの叫び声の所で見れるのだろうか?
向かってみよう。
「て────ください────!」
なんだか必死そうな声だ。
あと、位置が移動している気がする。
それも、結構な速度で。
「かえして、ください────!!」
返して? ホラー展開?
お化け退治ならお手の物だ。
というか、なんだか聞いたことのある声のような……
「お、グレっちじゃん! やっほー。あ、これあげる。じゃねー」
え?
気づけば手には本のようなものが握らされていた。
さっきのは、サフェル?
ものすごい勢いでやってきたと思ったら、これを押し付けて、ものすごい勢いで去っていった……。
無地の薄紫色の表紙に、そこそこ分厚く、ずっしりと重い冊子。
なんだか怪しいな。開いたら手が伸びてきて、本の中に飲み込まれたりするんじゃないだろうか。
あと……なんか、良い匂い? がする。
これは、花……? 甘い香りだ。
ラベンダーのように、優しい香り──なんだかこれも、嗅いだことがあるような。
まあいいか、とりあえず読んでみよう。
『私には、想い人がいます。とても、とても。強く、想っています。この永い生涯をもってしても、ここまでの恋慕を抱いたことはありません。』
おお、恋愛小説か。
全く怪しいことは無さそうだ。良かった。
『彼の名は、穹というそうです。』
……え?
お、俺?
『彼はこのオンパロスの外からやってきた、天外からの来訪者です。常識やルールに囚われず、エキセントリックな発言で周りを笑顔にし、いつも私には思いつかないような、ユニークなことを考えています。
天外の人々は皆あのような方なのかと思いましたが、一緒にやってきた方を見る限り、そういうわけでもないようです。』
これは……どう考えても俺のことだ。
そして一緒にやってきた方、というのは丹恒のことだろう。
さらに分かったのは、著者は“天外”の存在を知っているということ。
つまり、これを書いたのは黄金裔か、それに近いような偉い立場の人ということだ。
段々分かってきたぞ。この嗅いだことのある匂い、そしてこの特徴的な筆跡。
細く繊細で、儚げながらもどこか年季を感じさせる、この文字……
分かった。
この本を書いたのは──
「か、返して……返してくださいサフェル様……!!」
「……キャストリス?」
曲がり角から現れたのは、なんとキャストリスだった。
さっきからずっと聞こえていた叫び声は、彼女のものだったのか。
……なんだかよれよれでへにゃへにゃだ。今にも泣き出しそうだし、息も絶え絶えだし、汗だってだくだくだ。
「……あ、穹さん……!? そ、その……偶然、ですね。ところで、サフェル様を見かけませんでしたか……?」
「サフェル? ああ、この本を俺に渡して、どこかに行っちゃったよ」
「本…………?
あ────!!!!」
目をまん丸に見開き、口をぱくぱくさせるキャストリス。
誰がどう見ても動揺している。
動揺、しまくっている。
「あ、あの…………」
「ん?」
「読みましたか。」
「ちょっとだけ……?」
「っ、〜〜〜〜っっ……!!」
俺の言葉を聞いたキャストリスの反応は、それはもう盛大なものだった。
機械がショートしたような音を立てて、顔から湯気を噴き出すと、あわてて両手で頬を覆い──そのまま、しゅんと俯いてしまう。
「えっと、ごめん……勝手に読んじゃって……」
「う、う……」
「でも、字も言葉遣いも綺麗で、すごく素敵だと思ったよ。」
「え、あ……あ、ありがとうございます……」
「ああ……」
次にかける言葉が思いつかず、言い淀んでいると……そのまま少しの沈黙が流れる。
キャストリスはちらちらと指の間から俺の顔を見上げては、すぐに俯き……再び手で顔を覆ってしまう。
それを何度か繰り返して、ようやく顔を上げたかと思ったら。
……結局両手でがっちり隠したままで、その表情は全く見えなかった。
けれど、髪から覗く尖った耳の先が、その顔が未だ同じ色に染まり続けていることを……如実に教えてくれていた。
「えっと……そろそろこっちを見てくれても、いいんじゃない……?」
「む、無理です……無理、です……っ」
「じゃあ、そのままでもいいから……とりあえず、あそこのベンチに座ろう? って言っても、見えないか……ほら、案内してあげる」
そっと背中に触れた途端、キャストリスは「ひゃっ」と短く声を漏らしながら、ビクンと肩を震わせた。
「あ……ご、ごめん」
「い、いえ……」
なんだか、ちょっといけないことをしている気分になりながら──俺は数歩先のベンチまで彼女を案内し、どうにか座らせることに成功する。
ゆっくりと腰を下ろすと、さすがに少し落ち着いてきたのか……キャストリスは、久しぶりにその顔を見せてくれた。
「…………っ」
けれど、相変わらず真っ赤っかで……小さく震えながら、口をきゅっと結んで黙りこくっている。
「ねえ、キャストリス」
「な、なんでしょうか……」
「この小説の続きを読みたいんだけど、いいかな?」
「え、えっ……!?!?」
驚いた顔のまま、フリーズしてしまうキャストリス。
数秒してから動き出すと……俯き、目を瞑り──絞り出すように、
「いい、ですよ……」
と、零した。
「ありがとう。それじゃ……私が彼を好きになったきっかけは──」
「え!? その、出来れば黙読で……!! 黙読で、お願いします……!」
「ああ、ごめん」
そうして俺は、黙って文字を追っていく。
著者の──キャストリスの想いが、几帳面に綴られた物語を。
『私が彼を好きになったきっかけは、見た目……というのも少なからずありますが。
穹さんが大地獣の赤土を食べた、あの出来事が大きかったように思います。
あの苦く、不快そうな顔……今でも忘れられません。』
「赤土、食べて良かった〜」
「え……えっと、大丈夫です。きっとあなたが食べる選択をしていなかったとしても、その……なんでも、ありません。続きをどうぞ。」
『それから私は、薄らと穹さんのことを意識するようになりました。
彼との旅の中で、たくさんの会話を交わし……そのたびに、私の心は少しずつ、確実にその魅力に惹かれていったのです。』
「へ〜」
「あの……すみません。本当に、すごく、恥ずかしいのですが……もう、帰ってしまってもよろしいでしょうか……。どうか穹さんは、お一人でそれを読んでいただければ……」
「ダメだよ、キャストリス。我慢して」
「ぁえ……っ」
『そして、最も大きな──決定的となった出来事が、フレイムスティーラーとの闘いです。
穹さんが、吹き飛ばされた私を手で受け止めたことで……彼は私に触れられる、という事実が分かったのです。
それを知った時、私は──当然、心踊りました。幾星霜と生きてきた中で、ようやく、初めてそんな方が現れたのですから。
しかもそれが穹さんとなれば、舞い上がるのも無理はないでしょう。』
「キャストリスって、例えば……手袋をしたり、服の上から触れたりしてもダメなの?」
「あ……はい、試したことがあります。手袋をして、お花に触れてみたところ……残念ながら、枯れてしまいました。」
「それは辛いな……。ねえ、キャストリス。手を繋いでみない?」
「手を、ですか。はい……どうぞ。」
俺はそっと差し出されたキャストリスの白くしなやかな手を、優しく握り込む。
「っ……」
確かめるように、にぎ、にぎと何度か力を込めた後……俺は、握り方を変える。
「え……その、これでは、まるで……こ、恋人……の、ような……」
「このまま、続き読むね」
「ひゃ、ひゃいっ……」
『けれど、その最も大きな要因は──触れられることではありません。
こんな私を、一切恐れず。
偏見も持たず、友人のように接してくれて……危険も省みず、咄嗟に私を受け止めてしまうような。
そんな彼の、眩しいほどの優しさに……私は惹かれたのです。』
「……嬉しいな」
「っ…………」
『私は、そんな想いを抱きながらも……ずっとそれを吐露できずにいました。
そんな状況に私は、焦っていました。なぜなら、穹さんは人気者だったからです。
ヒアンシー様やサフェル様、果てにはアグライア様まで……皆一様に、彼に好意を持っているようでした。』
「そうだったの?」
「その……今、どの辺りなのでしょうか……」
「えっとね、キャストリスが俺に告白できなくて焦ってるところ」
「〜〜〜〜っ……そ、そうですか……」
手を繋いだまま、そっぽを向いてしまうキャストリス。
俺はそんな彼女を尻目に、次のページをめくっていく。
『なので私は、彼に思いの丈を打ち明けることにしました。
きっと普段の私なら、こんな決断をする勇気は無かったと思います。
ですが──この気持ちを伝えられずに他の方に取られるくらいなら。
私は、羞恥を捨て……告白すべきだと思ったのです。たとえ、結果がどうなろうとも。』
この小説はキャストリスの自伝録かと思っていたが、どうやらここからは違うようだ。
だって、俺は告白されてない。
『それまでとは打って変わって、静寂が街を包む隠匿の刻。
私は、穹さんを呼び出しました。
思い出深い、大地獣の餌やり場。
その近辺のベンチに並んで座り、私たちは手を繋いで……
そして、ケファレの光に照らされる雲石の天宮を眺めながら──私は、深呼吸をします。』
奇しくも……同じ状況だな。
「……キャストリス。」
「は、はい……」
「今、キャスが俺に告白するシーンまで読み進めた。その結末までは行ってないんだけど……物語の俺は、なんて返事をするの?」
「っ、あ、その、えっと……『俺も、好きだ』と……当然、ですよね……私の、妄想なのですから……」
指を絡め握り合わせたキャストリスの手が、ぷるぷると震えているのを感じる。
それは羞恥からなのか、それとも緊張からなのか。もしくは……諦念からか。
「現実に、してみない?」
「えっ……?」
「この小説はきっとここから、キャストリスの創り出した物語になっていくんだよね? それ……全部やってみようよ。」
「え、でも、それは……」
「もちろん、全て物語通りにいくとは限らない。例えば──告白の結果、とか。だからどうするかは、キャストリスが決めていい。」
「っ、わ……私、が……」
キャストリスの震えが、大きくなる。
ふと見上げれば……そこには荘厳な雲石の天宮が、小説と同じように聳えていた。
時間で言えば夜だというのに、変わらず燦くケファレの光。
その眩しさに、思わず目を細めてしまう──
「すぅ……ふぅ……っ」
……深呼吸。
キャストリスの震えが、止まる。
「穹さん。」
「うん」
「私は……あなたのことが、好きです。愛して、います。ですから、その……」
「キャストリス。」
「は、はい──」
「俺も、キャストリスが好きだよ。」
「ぇ、えっ……」
瞬間……時が止まったように感じられた。
キャストリスの動きが、ぴたりと止まってしまったからだ。
これ以上ないほど赤面して、呼吸すら忘れ……口をぽかんと開けている。
「キャストリス?」
「はっ、あ、その……す、すみません。本当、なのですか……? 私に気を使って……とか、小説に倣って……とかでは、なく……?」
「本当だよ。じゃあ好きなところ百個言ってあげる。キャストリスの優しいところが好き、キャストリスの丁寧なところが好き、キャストリスの──」
「ス、ストップ……! だ、大丈夫です。よく、分かりました……う、うぅ……」
キャストリスはその紅く染まった顔を隠そうと手を動かすも、俺の手と固く繋がれているせいで叶わない。
彼女の声にならない呻き声が、喉奥から断続的に漏れ聞こえるばかりだ。
「ところで……告白が成就した後、物語の中の俺たちはどうするの?」
「え……えっと、その……。キ……キ、キスを……」
「じゃあ、しよう」
「え……えっ!?」
「言ったでしょ。この物語に書いてあること、全部するって。だから……キャストリス。」
「は……はひっ……」
キャストリスの手が強ばり、また震え始める。
ぐるぐると泳ぐ視線。
けれど、やがて覚悟を決めたのか、深く息を吸い込んで……ぎゅっと目を瞑る。
そのままこちらを向いて、軽く唇を尖らせ──俺を、待っている。
不慣れで、初心なその反応が──愛おしくてたまらない。
小さく震える肩にそっと手を添えると、
「っ……」
と、かすかな吐息が漏れた。
その紅く染まった頬に指を滑らせながら、俺はゆっくりと顔を近づけて──
「ちゅ、っ」
「ん……っ」
そっと唇が重なった瞬間、キャストリスの肩がびくりと震える。
拒まれるような動きではなく、ただ戸惑いと驚きが入り混じった、純粋な反応。
唇を離すと、彼女は目を閉じたまま、小さく息をついた。
「……だ、大丈夫……でした……か?」
消え入りそうな声。
不安と恥じらいと、少しの期待を込めた、勇気のいる問いかけ。
「うん。良かったよ」
「ぅ、あ……ありがとう、ございます……っ」
ぷすぷすと、焦げるような音が聞こえてしまいそうなほどキャストリスは赤面し、俯く。
彼女は本当に純粋で、無垢だ。
俺が守護らないと……
「それで……次はどうするの?」
「えっと……その。私の口からは、どうしても恥ずかしく……。すみませんが、ご自分で続きを読んでいただけますか……?」
「分かった」
『穹さんとの、初めてのキス。
その甘やかさに蕩けていると──
「ん、む……っ!?♡」
「キャストリスっ……」
余韻も消えぬ間に、再びの甘美が襲いました。
「穹、さんっ……♡」
彼は激しく私を抱き寄せ、より深く唇を重ねます。胸を揉み、身体を愛撫し……半ば乱暴に私を求めてきます。
私は、決して嫌ではありませんでした。むしろ……そんなふうに求められることが、嬉しくて仕方が無かったのです。』
──前言撤回。
「ちょっと、えっちすぎじゃない……?」
「えっ……そう、でしょうか……」
せいぜいハグとか、もう一回キスとか、そんな程度だろうと思っていたのに……
む、胸を? 揉む? 身体を、愛撫?
キスひとつであんなになっちゃうキャストリスが、こんなことを……?
「あの……ま、まだでしょうか。私は、その。いつでも。」
ちらちらと、こっちを伺うように視線を投げてくる。
何かを待ちわびるような──潤んだ瞳。
顔を真っ赤にして、そんなふうに言われたら……もう、どうしたらいいのか。
「わ……分かった。」
そうだ。ここは物語に従うべきだろう。
俺には決して、下心はない。
これから胸を……も、揉むことになろうとも。
俺は決して、変な気持ちにはならないと誓おう。
「じゃあ、行くよ……」
「はい……♡」
よし、一旦これからすることの振り返りをしよう。
・激しく彼女を抱き寄せる。
・深いキスをする。
・胸を揉む。
・身体を愛撫する。
……できる。俺なら、できる。
あくまで平常心で、これを成し遂げて──キャストリスの、言わば“夢”を、叶えてやるんだ。
行くぞ……っ!
「きゃ、あっ……!♡」
う、わっ……良い匂い……
花のようで……少し、違う……。
“生きている女の子”の、甘い色香……
次は……キス……
「んむっ……♡ ちゅっ……♡」
あ……これ……無理、かも……
「れぇ、るっ……♡ んちゅ……っ♡」
……舌、入って……
甘い……ゾクゾクするっ……
ぬるぬるして……あ……あっ……
「ちゅう……れぇうっ……♡ れろ……♡」
キャストリス……がっつきすぎっ……!
口の中、全部舐られて……唾液、どんどん流し込まれてっ……
「んむぅ……っ……」
そ、そうだ……胸、揉まなきゃ……
「……あ♡ あっ……♡」
柔らかっ……
指、沈んでく……
「ん、はぁっ……あっ♡ あんっ……♡」
こんなの……もう……やばいっ……
……あ、れ……?
そもそも……なんで平常心でいる必要が、あるんだろう……?
キャストリスは、俺のことが好きで──
俺も、キャストリスが好きなんだから……
なら、我慢なんて……
そうだ──
「キャス、トリスっ……!」
「んぁあっ……♡」
要らない、じゃないか。
我慢も、遠慮も、全部。
揉み足りなかった胸に、もう一度手を伸ばす。
……やっぱり柔らかい。幸せな暖かさが、手のひらに広がっていく……
「あ、あっ……♡」
角度を変え、揉み方を変え、ゆっくり堪能していく。
ぷにゅ、と弾む感触。
指先に力を込めれば、優しく受け入れるように沈んでいく。
「んっ……♡」
そうしていると、キャストリスはそっと身体を寄せてくる。
まるで「もっと触れて」と言わんばかりに胸を押し付けながら──
真っ赤な顔で、俺を見上げて。
「はぁ、はぁっ……! キャストリスっ……!!」
「っ…………♡♡ ちゅうっ……♡」
衝動のまま、彼女の唇を奪う。
ついさっき、されるがままだったのが嘘のように……今は、互いに求め合っている。
唇が重なり、舌が触れ合い、迷うことなく絡まり合う。
「ちゅ、っ……れろっ……♡ んっ、んちゅ……♡」
舌の奥まで、甘さが満ちてくる。
熱く、ぬめるような感触が何度も絡まり、どちらからも離れようとしない。
積極的に求め合い、幸福に溺れる。
そして俺は……唇を離さぬまま、手をすべらせていく。
胸の柔らかさをもう一度確かめ──
次は肌の露出した場所、すべてを撫でていく。
肩……ほっそりとした腕……華奢な背中……そして、うっすら汗ばんだ腋──
どこに触れても絹のようになめらかで、溶け消えてしまいそうなほど儚い。
「ん、ふっ……♡ んぅ……♡」
喘ぎと共に、身体を預けてくるキャストリス。
ぎゅっと抱きしめられ……彼女の愛に包まれていく。
──次は、脚だ。
太ももに手を添えると、意外なほどもちっとした弾力が返ってくる。
指でゆっくりなぞれば、その柔らかさに心も体も溶かされてしまいそうになる。
「っ……ひ、うっ……♡」
そうして、全身を愛撫し尽くしたあと──
最後に、俺たちは強く抱きしめ合った。
「ちゅう……っ……♡ ん、ちゅるっ……♡ ちゅうぅっ……♡」
「ちゅ……ちゅっ……」
「──ぷ、ぁっ……♡ はぁ、はぁ……っ♡」
やがて唇を離し、そっと身体も離す。
肩で息をしながら、ぼんやりと彼女の顔を見つめる。
……良かった。目標を完遂することができた──
「は、はやく……次に行きましょう。穹さん、次のページを……」
キャストリスに急かされ、気づく。
そうだ……これは、まだまだ序の口なのだと。
次は一体、どんなことが書かれているのだろうか。
そして、読み進めて行った先に──何が書いてあるのか。
「う、うん……」
震える手でページを捲り、そこに刻まれたキャストリスの“夢”を、ゆっくりと確認していく。
『そうして絡み合った私たちは、すっかり発情しきっていました。
“続き”がしたい。けれど、いくら隠匿の刻とはいえ、屋外では……。
「その……」
私は、穹さんの手を引きました。
「続きは、私の家で……しませんか?」
「……うん」
そうして帰路に着く私たち。
しかし、気持ちを抑えられず……私たちは歩きながら、互いの秘部をまさぐり合ってしまいます。
「んぁ、あっ……♡」
「う、あ……」
その前戯は、私の家へと近づくほど激しくなっていき──
「んぅうぅっ……♡♡」
まもなく着くというところで、私は腰を痙攣させ、絶頂を迎えてしまうのでした。』
……………………。
「キャストリス……やっぱり、えっちすぎるよ……」
「わ、私は……えっちじゃありません……」
ムッとしながら反論されても、これは……無理があるだろ……
「ご、ごめんって……」
「別に、怒っていません。それより、早く次を……」
「わ、分かった。じゃあ……やろう」
俺の合図を聞くと、キャストリスは小さく息を吸い込み──
「その……」
と呟き、俺の手を取る。
「続きは……私の家で、しませんか?」
「……うん」
キャストリスに手を引かれるまま、俺はゆっくりと歩き出した。
「…………」
「…………。」
言葉もなく、ただ並んで歩く。
小さく俯いた彼女の表情は見えないけれど……
きっと俺と同じように、顔を真っ赤にしているに違いない。
「はぁ……はぁ……」
「っ…………♡」
発情した、男女二人。
まだほんの少ししか歩いていないというのに、頭の中では彼女の家に着いた時のことばかりが膨らんでいく。
あの物語を読んでから、道中の出来事ばかり気にしていたけど……
“本当に二人きり”になった瞬間のほうが、よっぽどえっちなんじゃ……
「…………」
なんの前触れもなく、キャストリスは俺の手をそっと離した。
「キャストリス……?」
自由になった彼女の右手は──
「えっ!?」
ずん、と勢いよく俺のズボンの左ポケットへ滑り込んできた。
そのまま指先がもぞもぞと蠢き、俺の一物を探り当てると、くにくにと弄り始める。
「く、ぁっ……!」
俺は思わず、辺りを見渡してしまう。
いくら隠匿の刻とはいえ、誰かに見られたら──
「…………♡」
そんな俺の動揺をよそに、キャストリスはわずかに笑みを浮かべ──
大丈夫ですよ、とでも言わんばかりに手の動きを加速させた。
「う、あ……」
布越しに先端を執拗に責められ、腰が抜けそうになるのをどうにか堪えながら……
俺もそっと、左手を彼女のスカートの中へと滑り込ませる。
ぴたりと張りつくタイツ越しに、指先でやわらかな感触を探っていくと──
キャストリスの肩が、ぴくりと震えた。
「ん、ふ……っ♡」
タイツの奥から伝わってくる、じんわりとした熱。
それだけで、どれだけ彼女が高まっているのかが分かる。
俺の指先がなぞるたびに、呼吸が浅くなっていく彼女の様子が、なんだか妙に愛しくて……えっちで……たまらない。
「あ……くっ……」
「んぁ……うぅ……っ♡」
普段は人で賑わう市場通り。
けれど今は皆就寝し、静まり返っている。
そんな閑散とした道を、俺たちは肩を寄せ合うようにして歩いていく。
声を押し殺しながら……もぞもぞと、互いの股間をまさぐり合いながら。
「ん、ふっ……♡ あ……♡」
「う……くぁっ……」
熱のこもった吐息だけが、耳元で混じり合い。
それがまた、いっそう理性を溶かしていく。
「もう、少しで……♡ 着きます、よ……っ♡」
その声だけで、背筋にぞわりと快感が走る。
もうすぐ──彼女と、二人きりになれる。
つまりそれは……想像を絶するような、“次のページ”の到来を意味しているのだ。
「んぁ、あぁっ……♡♡」
タイツ越しに触れる指先に、自然と力が籠もっていく。
厚い布を突き破ってしまいそうなくらい、強く押し当て……その柔らかな入り口を、指先で虐める。
「あ、あぁっ……♡」
キャストリスの足がよろめき、俺の肩に手を添えた。
潤んだ瞳でこちらを見上げながら、唇を噛むその顔が──あまりにも、艶めかしい。
「……っ、キャストリス──」
左手でキャストリスの肩をそっと支えながら、今度は右手をスカートの奥へと滑り込ませる。
もう、まさぐるなんてものじゃない。
明らかにイかせようという意思を持って、キャストリスの秘裂を擦り上げていく。
くちゅくちゅくちゅっ……♡
「あ゛っ、あ……あぁっ、あっ……♡♡」
キャストリスも負けじと、ズボン越しに一物をさすり上げ……
くちゅくちゅっ……♡ にちゅ、ぐちゅぐちゅっ……♡♡
「あ、ダメ……っ、ダメですっ……イク、イっちゃ……っ♡♡」
「くっ、あぁっ……!」
そして──
「イク、イクっ……♡ ん、ぁっ♡ あ、あぁっ……♡♡」
キャストリスの身体がガクガクと震え……そのまま俺にもたれかかるように、力が抜けていった。
彼女の手の動きも止まり、俺はそっと右手を引き抜く。
「あ……っ、はぁ……♡」
頬を紅潮させ、潤んだ瞳で余韻に浸るキャストリス。
その様が、どうしようもなく愛しくて……
「キャス、トリス……!」
そっと、その顎に手を添え──
「ん……!?」
キス、しようとしたその瞬間……彼女の手が、俺の唇をそっと塞いだ。
「なんで……」
「……あの建物が、私のお家です。」
キャストリスが指す方に目をやる。
目と鼻の先──路地の奥に、灯りがぽつんと揺れていた。
「もう……着きますから。続きは、あちらで。」
甘く囁かれたその声に、胸の奥がきゅっと締めつけられる。
理性なんて、とっくに崩れていた。
俺はもう、ほとんど考えることができないくらいに──彼女に、蕩けさせられていた。
───
震える手で、そっとドアノブを掴む。
重く鈍い音と共に、扉がゆっくりと開いた。
「お邪魔、します……」
図書館を思わせる、静謐な空間。
そこへ……俺は一歩、足を踏み入れる。
すぐ後ろにいたキャストリスが、そっと扉を閉め──
がちゃり。
鍵のかかる音と共に、俺たちは完全に……二人きりになった。
「ようやく……ですね。」
「ああ……」
「では、穹さん……続きを、読んでくださいますか……」
「わ……分かった……」
恐れと、期待と、昂ぶり。
すべてがごちゃ混ぜになった頭で、俺は震える手を押さえながら、本を開く。
この先に何が書かれているのか──もう、想像するだけで、呼吸が苦しくなるほどだった。
『部屋に着くと、私たちは強く抱きしめ合い……激しくキスをします。
身体中をまさぐり、互いの服を脱がしていきます。
「ちゅ……はぁ、はぁっ……」
「ん、む……ふっ……♡」
やがて、生まれたままの姿になる二人。
もはや獣と化した私たちは──ベッドへと転がり込み、互いの最も熱い場所へしゃぶりついていきます。
「ぢゅぽ……んむっ……ちゅ……♡」
「じゅるっ、ぢゅう……」
舐め合い、吸い合い、高め合って──今にも絶頂を迎えるというところで、私たちは行為を止めます。
何故なら……全てはこの後の、“本番”のための行いであると、言わずとも理解していたからです。』
「よ……読み終わりましたか、穹さん……? は、早く……っ」
「読み終わった……!」
「なら……き、来てください……♡ 物語のように、私を……♡ はやくっ……♡」
「キャス、トリスっ……!!」
両手を広げ、俺を迎えるキャストリス。
俺は、その身体に飛び込み──
「んむ、ちゅ……ちゅっ……」
「はぁ、ん……♡ ちゅうっ……♡」
甘く、とろけるようなキス。
唇が何度も重なって、舌先が遠慮なく絡まり合っていく。
もう、誰にも邪魔されることはない。
もう、誰の目も気にしなくていい。
「キャストリスっ……キャストリス……っ!」
「穹さん……穹、さんっ……♡♡」
彼女の細い腕が、そっと俺の背中に回され。
俺たちは……物語のように、ぎゅっ、と抱きしめ合う。
「ちゅうっ……すき、ですっ……穹、さんっ……大好き……っ♡♡」
「キャストリス……愛してる……ちゅ、ぅっ……」
唇を塞ぎ合いながら、手が勝手に動いていく。
頬、首筋、胸元──彼女のあらゆる場所を撫で回し。
その温度を、柔らかさを、確かめる。
「すきっ……だいすき、穹さんっ……♡♡ れぇ、るっ……♡」
「ん、ちゅ……れろ……ちゅ、ちゅっ……」
キャストリスの手も止まらない。俺の服の隙間に指を滑り込ませ、焦れるように肌を求めてくる。
もう、何も言葉なんていらなかった。
ただ夢中でキスを交わしながら──俺たちは、互いの服に手をかけた。
「はぁ、はぁっ……ちゅうっ……」
「ん、ふっ……♡ ちゅ……♡」
──カチッ。
小さな金具が外れる音と共に、キャストリスのドレスがゆるりと緩む。
肩から、胸元から、布がすべり落ち──彼女の身体が、静かに露わになる。
その頃には、俺の上着もとっくに剥ぎ取られていて……
「あ……。ふ、ふふっ……♡」
「ははっ……」
キャストリスの胸が、ふるりと揺れる。
その柔らかな光景を、上裸のまま見つめる俺。
……まさか、こんな夢みたいな状況になるなんて……。
お互いに頬を赤く染めながら、目を合わせて──
淫靡で、不慣れで、どこか現実味のないこの空気に、思わず吹き出してしまった。
「ん……ちゅ、ちゅぱっ……♡」
「く、っ……」
キャストリスがそっと顔を寄せ、肩、胸、脇腹へ──
柔らかな唇と、ぬるりとした舌先を這わせていく。
俺もまた、彼女の前に膝をつき、その白く滑らかなお腹に口づけながら……両手でふわりと胸を包む。
「ん、ふっ……♡ れぇっ……♡」
「ちゅ、ちゅっ……」
昂ぶりに導かれるまま、俺たちの手は自然と下へと伸びる。
そして──残された布を、ゆっくり取り払っていく。
「はぁ、ふぅっ……♡」
──ぱさり。
ズボンが滑り落ち、俺の身体に残されたのは一枚の下着だけ。
する、する……ぱさっ。
キャストリスのタイツもまた床に落ち、
その華奢な腰には、薄布一枚だけが残された。
「んふ……♡」
「は、は……っ」
布越しに、互いの欲望がはっきりと形を成す。
パンツの先を濡らして、小さく染みを作る俺の一物に……淫靡に微笑むキャストリス。
そして、俺も。
秘裂の形をなぞるように浮かび上がった、キャストリスの濃く大きい染みを見て……自然と笑みがこぼれた。
「……キャストリス。」
「はい……♡」
「脱がすよ……」
「……はい……♡」
控えめにレースで飾られた、可愛らしい薄紫の下着。
儚い蝶の羽を思わせるその布地に、そっと手をかけると──
「ん……っ♡」
ゆっくりと、下ろしていく。
顔を出した……あまりにも、綺麗な割れ目。
それと下着との間に、光を反射する透明な橋がかかり。
やがて、ぷつんと静かに千切れた。
「では……次は、私が。」
「ああ……」
キャストリスがそっと手を伸ばし、俺のパンツに指をかける。
一度、俺を見上げ……優しく微笑み。
そのまま、ゆっくりと下ろしていく。
「よい、しょ……」
少しだけ手こずりながらも、するすると布を下ろし──
やがて、俺のモノが露わになる。
「すごい……です……♡」
「キャ、キャストリス……見すぎ……」
言葉ではたしなめるように言いながらも……俺の視線もまた、彼女の身体に吸い寄せられて離せない。
「はぁ……はぁっ……」
「穹、さんっ……♡ 素敵、です……っ♡」
……心臓が、うるさい。
息が上がり、手は震え、頭の中が霞んでいく。
今にも正気を失いそうだ。
けれど……俺には、彼女の夢を叶えるという、大切な目的がある。
ここで本能に任せていては、なんの意味もないんだ。
深呼吸をして、どうにか理性を保つ。
そして、どちらからともなく──
「はぁっ……ちゅ、うっ……♡ れろ、れろぉっ……♡」
「ん、ちゅっ……ちゅるっ……」
再び唇を重ね合い、熱を帯びた吐息を交換する。
そのまま抱き合うように、俺たちはベッドの上へと倒れ込んだ。
「穹、さん……」
「うん……」
互いの、最も熱い場所。
それを探り合い……身体を動かす。
「んっ……」
そっと俺の上に跨るキャストリス。
彼女の太ももが両側から挟むように降りてきて──視界のすぐ上には、つるりとした割れ目が迫る。
「あ、あっ……あまり、見ないでください……」
「いや、無理だよ……」
照れたように声を上擦らせながらも、キャストリスは少しずつ腰を沈めていく。
同時に、彼女の顔もまた……俺の下半身へと、おずおずと近づいてきて──
「やっぱり……すごい、です……っ♡ 雄々しくて……立派、です……♡」
「キャストリス……と、吐息が……」
改めて、目の前の光景を観察する。
……ぴっちりと閉じた、純白の割れ目。
ひくっ♡ ひくっ♡ と震えながら、たらたらと透明な唾液を垂らし……今か今かとその時を待ちわびている。
「では……♡」
「あ、ああ……」
ごくり、と喉を鳴らし──
「はむっ♡」
「れ、えっ……」
舌を、伸ばす。
同時に股間に走る、生暖かいぬるりとした感触。
「ちゅぽ、にゅぽ、ちゅぽ……♡」
「うあ、あっ……」
あまりの気持ちよさに、思わず目を向けると……
「あ…………」
キャストリスの、垂れ下がる胸。
その間から、まるで覗き見でもするように──“それ”は、見えてしまった。
「ちゅうっ、ぢゅぽ、ぢゅるっ……♡」
痛いくらいに勃起した、俺の一物。
その先端に、愛おしそうに……
何度も、何度も……
「ぢゅるるっ……♡ にゅっぽ、にゅぽっ……♡」
「あ、ぐぁっ……!」
繰り返ししゃぶりつく、淫靡なキャストリスの姿が。
その光景と、あまりに強烈な快楽が相まって……思わず、限界を迎えてしまいそうになる。
……けれど。
それでは、物語と全然違う。
絶対にダメだ。
俺は、ぐっと堪えると……改めて、キャストリスの秘裂を見据える。
ひくひくとした動きが激しくなり、時折薄ピンクの粘膜が顔を覗かせる。
愛液も、絶え間なく溢れてきて……
たらり。
俺の顔へ、垂れ落ちてくる。
もしかして……さらに、興奮しているのか……?
俺の、ちんぽを、舐めて……
ダメだ。考えないようにしよう。
あまりにエッチすぎる。
「はむっ……!」
「んぁっ……♡」
雑念を振り払うように、目の前のそれへむしゃぶりつく。
それだけで反応してくれたのが嬉しくて、俺はとにかく舌を動かす。
溢れる蜜を舐め取り、陰唇をくすぐるようになぞり……
「はむっ……ちゅるっ」
「んぁっ、あっ……♡」
両指で入り口を割り開き、舌をナカへと侵入させていく。
「あ、ぅっ……♡ あむっ、ぢゅるるっ……♡ ちゅぽちゅぽっ……♡」
「れろ……ちゅる、ちゅるっ……」
そして、物語通り──
互いの最も熱い場所を、舐め合い、吸い合う俺たち。
「じゅる、ちゅ、ちゅぽっ……♡ ん、ふっ……♡」
「ぢゅ……れえっ、ぢゅるるっ……」
もう、思考する余裕もない。
無我夢中で、競い合うように高め合っていく。
「ずろろっ……♡ じゅっぽ、ちゅぽっ……♡」
「ちゅう、ちゅう……れろっ……」
膣内を掻き回す俺の舌を、痛いくらいに締め付けてくるキャストリス。
愛液も舐め取りきれないくらいに溢れ、もはや溺れてしまいそうだ。
言わずとも分かる。
キャストリス……限界なんだろうな。
そして、俺も、とっくに……
「ちゅぽ、ちゅぽ、ちゅぽっ……♡ んちゅ、ぢゅるるっ……♡」
「れろっ……れる、はむっ……!」
気持ち、良い……気持ち良いっ……気持ち……良い……っ!!
もう……もう、無理っ……!
イク……イク、イ……クッ……!!
イッ────
「ちゅぽっ♡ はぁ、はぁっ……!♡」
「ちゅぱっ……はぁっ……!!」
互いに絶頂を迎える、その直前で……同時に、口を離す。
……どうにか、物語、通りだ。
本当に、危なかったけど……
「ぅ、あっ……♡ はぁ、はぁ……!♡♡」
俺から降り、隣に倒れ込むキャストリス。
あ……あれ。
すごく、エロいな。可愛いな。
良い匂いが、するな。
女の子の身体って。
キャストリスの身体って。
こんなに、エッチだったっけ。
くびれが、膨らみが、曲線が。
苦しげに漏らす吐息が、呼吸で広がる胸が、汗ばんだ肌が……
その全てが、俺を惹きつける。
触りたい。嗅ぎたい。揉みたい。舐めたい……。
ああ──発情期の動物って、こんな気持ちなんだろうな。
……ダメだ。落ち着け。
正気を失う前に、続きを読んでしまおう。
きっと、とびきりエッチなことが書いてあるに違いない。
そうすれば、俺のこの欲望も──
『
』
…………え。
「何も、書いてない……」
「その……実は。まだ、書き途中でして……」
「……じゃあ、つまり……」
「……はい。私の、“夢”は……全て、叶ってしまった、ということです。」
……俺は。
いや、“俺たち”は。
この物語を現実にするという目的のおかげで、ここまで大胆になれた。
きっとそれが無ければ、俺たちは今頃……キスすらできていなかったかもしれない。
「小説の通り」だから──
「夢を叶えるため」だから──
その大義名分が、俺たちを後押ししてくれていたんだ。
でも……それが無くなったら?
「ど……どうしよう……」
「ど、どうしましょう、か……」
息を荒くする、男女二人。
やり場のない欲望を抱え、ただ見つめ合うばかり。
……やり場が、無い?
本当に?
「キャ、キャストリス……」
「は、はい……穹さん。」
「お、俺……挿れたい……」
「えっ……!?」
「だ、だめ……?」
「い……いえ……」
キャストリスは……そっとベッドの上に身を沈め。
ゆっくりと、脚を開いて──
「……どうぞ、穹さん……」
潤んだ瞳で、俺を見上げて。
すっかりほぐれた秘裂を、震えた指で、自ら……控えめに、ひらく。
ぬ、ちゃ……
「……っ」
あまりにも無防備な、その光景。
ほんのりと上気した頬。震える吐息。
すべてが……俺だけのために向けられている。
「キャス、トリス……」
思わず、名前を呼ぶ。
声が掠れる。
彼女は目を細めて、小さく微笑んだ。
「来て、ください……」
ゾクリ、と全身の毛が逆立つ。
その微笑みに吸い寄せられるように、身体を、近づけていく……
くちゅ、り。
「ぁ……」
二人の、最も敏感な場所。
それらが、触れ合って──
「挿れるよ……」
「はいっ……」
そして、俺は。
俺、自身の。
確かな意思で……
「んぁ、あっ……」
「う、ぁっ……」
キャストリスと。
くぷ、ぷっ……ず、ちゅっ。
「はあぁあっ……!♡」
──ひとつに、なった。