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 久しぶりのデートだった。

 私たち夫婦は街に映画に行くことになった。

 どうしても見たい話題作があったのだ。

 人混みは避けたかったけれど、街中に行くとなるとそれもムリだ。私は心配だった。

(大丈夫かな・・・・・・巳雪さん・・・・・・)

 私の子種を毎日摂取して、巳雪さんのサキュバスの力はますます強くなっていた。そんな彼女が待中を歩けばパニックになる。彼女の匂いを嗅いだ男たちは、それだけで空っぽになるまで射精してしまうだろう。

「大丈夫だと思いますよ、旦那様」

 自信満々に巳雪さんが言った。

「わたし、サキュバスの力を外に出さないようにできるようになりましたから・・・・・やってみるので見ていてください」

 巳雪さんが目を閉じて意識を集中し始めた。

 何をやっているのだろう。目をつむっている巳雪さんも美人だ。そんなことを考えていると、閉じられていた大きな瞳がひらかれて、私のことを見つめてきた。

「ね、できました」

「え?」

「ほら、分かりませんか? わたしのサキュバスの力を体の内部にとどめておくことができるようになったんです。これなら映画でもなんでも大丈夫ですよ」

 そう言われてみたらそうかもしれない。

 確かに若干ではあるけれど巳雪さんの存在感が薄まった気がした。周囲に常時放出される魅惑のフェロモンが抑えられている―――ような気がする。

(ほんとうに大丈夫なのかな?)

 そんな疑問が脳裏に思い浮かぶが、言葉にはできない。

 目の前には珍しく少し得意気な巳雪さんがいる。

 いつも控えめな彼女が若干ドヤ顔を浮かべているのが愛おしい。なんというか、すごくかわいい。そんな巳雪さんに水を差すようなこと言えるわけがなかった。すぐに私は後悔することになる。

 *

「・・・・・・・ごめんなさい、旦那様」

 映画の後だ。

 私たちは公園のベンチに座っていた。

 隣の巳雪さんは意気消沈といった感じで涙目になっている。そんな私たち夫婦を遠巻きながら熱烈な視線で見つめているのは、たくさんの公園利用者たちだった。

(映画の時からすごかったもんな)

 案の定、巳雪さんの魅力を前にして周囲の人間が狂った。

 男も女も関係がなかった。

 映画館への移動中も、映画鑑賞中も、周りの人間は甘い匂いに誘われたハエみたいに巳雪さんに注目し、熱をあげていた。陶酔しきった表情で巳雪さんを見上げていた彼ら彼女らを責めることはできない。それほどまでにデートのためにオシャレをした巳雪さんは魅力的すぎたのだ。

(サキュバスの力も、ぜんぜん抑えられてなかった)

 それも当然だ。

 巳雪さんの力はそれほど強力なのだ。

 フェロモンが少し漏れただけで男女関係なく人間どもを虜にしてしまうほどの力。

 映画館でもその力は遺憾なく発揮された。

 念のため、隣前後の席も買い占めた上で映画鑑賞をしたのだがダメだった。席が近い順に観客たちが発情して、すぐに映画館内は「あひん♡ あひん♡」の大合唱。中には射精や絶頂してしまう男女もいて、収拾がつかなくなってしまった。

 私たち夫婦は映画を見るのを諦め、こうして逃げるように公園に来ていた。そこでも巳雪さんは注目の的で、子供も老人も関係なく、すべての人間たちが、さきほどからチラチラとこちらを凝視してきていた。

「だ、大丈夫ですよ巳雪さん、元気出してください」

 落ち込んでいる巳雪さんを励ましたくて、大きな声で言う。

「映画は残念でしたけど、こうやって巳雪さんと二人でお出かけできるだけで十分です」

「・・・・・・・旦那様」

「こうしてオシャレした巳雪さんとデートしているだけで幸せです。今日もすごく綺麗です。その服買ったばかりのやつですよね。すっごく似合ってます」

 清潔感のあるシャツに腰高のロングスカート。

 露出が少ない服装で清楚感が半端なかった。こんな女性とデートできるなんて学生時代には考えられないことだ。少しの誇張もなく、巳雪さんとデートできるだけで幸せだった。

「・・・・・・旦那様、お優しい♡」

 そして泣く。

 ボロボロと涙を流す妻の肩に手をやって慰める。

 泣いてる巳雪さんも美人過ぎて心臓がドキドキしてしまう。そんなふうにイチャイチャしていると、少し回復した巳雪さんが、ぎろりと周囲を睨みつけた。

「・・・・・・忌々しいゴミども」

 心の底からわきあがったような怨嗟のこもった声。

 その声を聞いただけでビクンと震えてしまう。

「サキュバスの力をおさえているのに魅了されてしまうゴミカスども・・・・・・・・・虫けらみたいなこいつらを見ていると処分したくなりますね」

「み、巳雪さん?」

「せっかくの旦那様とのデートを邪魔してくるなんて・・・・・・・・・絶対に許せません」

 静かに怒っている。

 怒っている巳雪さんも綺麗だ。

 そんなことを思っていると、全人類を凍らせることができるような瞳を浮かべていた巳雪さんがニッコリと笑った。

「安心してください。旦那様はわたしが守りますから」

「え?」

「サキュバスの力を解放します。ふふっ、一瞬ですよ?」

 巳雪さんが目をつむった。

 変化は絶大だった。

 彼女の大きな体からピンク色の光が放散される。致死量の媚薬を内包したフェロモンが公園全体を包み込んでしまった。きわめつけは巳雪さんの体の変化だ。清楚な服装でも隠しきれない妖艶さが滲み出てくる。存在感が急激に増して誇張ではなく巳雪さんがさらに大きく見えた。突如として巨人が目の前に現れたみたいな感覚―――その恐怖に打ち震えるヒマもなく、私の体が快感で狂った。

「ひいいいんんんんんッ♡♡」

 ガクガクガクッ♡

 びくんッビクビクンッ♡

 ベンチに隣あって座っているだけだ。

 それなのにセックスしたみたいな感覚が全身を支配していくのが分かる。腐敗していく。肉欲で溶けていくのだ。息を吸うだけで甘い匂いで犯される。目の前の巳雪さんから目をはなせず、視覚情報だけで犯されていく。肉棒は限界まで勃起し、さきほどからビクンビクンと痙攣して仕方なかった。耐性のある自分ですらコレなのだ。周囲の人間たちが耐えられるわけがなかった。

「ひっぎいいいいいいいッ♡♡」

「あひいいいいんんんんッ♡♡」

「おっっほおおおおおんッ♡♡」

「ぐぎゅうううううううッ♡♡」

 老若男女関係なく、

 公園中の人間たちが発情して崩れ落ち、白目をむいてしまった。倒れた体は痙攣が終わらず、さきほどから射精が止まらなくなっているのが分かる。巳雪さんが近くに存在しているというだけで強制発情させられ、強制射精で精巣を空っぽにさせられていく。女も等しく発情して強制絶頂で忙しいらしく、中には潮吹きまでしてしまう人もいた。爽やかな午後の公園が酒池肉林の淫靡なエロ空間に変貌してしまったのだ。

「ね、簡単でしたよね」

 サキュバスの力を解放した巳雪さんがニッコリ笑って言う。

 その言葉を聞いただけで先走りのツユがビュウウウウッと漏れてしまった。

「久しぶりにサキュバスの力を全解放してみました。それだけでゴミカスどもは発情して気絶しましたね」

「み、巳雪様♡」

「ほんとうにザコです。旦那様とは大違いな家畜ども。みっともなさすぎて―――ふふっ、このまま搾り殺してやりたくなりますね」

 辛辣な言葉を吐いている。

 それなのに、その魅力は増すばかりだった。

 サキュバスの力を解放した巳雪様が隣にいるだけで、私の体も屈服していく。怪訝そうな巳雪様の瞳が私のことを見つめてきた。

「旦那様?」

「くううんんッ♡」

「どうしましたか?」

「あああんんッ♡」

 喋りかけられて幸せいっぱいで死にそう。

 その声が鼓膜から脳味噌に入って犯される。存在感増し増しの巨人みたいなサキュバス妻に見つめられて、毛穴という毛穴がひらいたみたいな絶頂がさきほどから続いていた。

「ひょっとして・・・・・・旦那様・・・・・・」

「あひいいんんんッ♡」

「そうか・・・・・・・そういえば旦那様の前でもサキュバスの力を全解放するのは久しぶりですもんね。ふふっ、普段は手加減してあげているのを忘れていました」

 意味深につぶやく。

 その瞳がイタズラを思いついたみたいに輝いてしまった。

「いきますね? 旦那様」

「だ、だめええええッ♡」

「気を確かにもってください」

「ひゃだあああああッ♡」

「わたしの許可なく射精したらお仕置きですからね」

 その巨体が、

 ゆっくりとわたしに迫ってくる。

 まるで見せつけるみたいにゆっくりと。

 サキュバス全開の巳雪様がニンマリ笑って迫ってくるだけで致死量の暴力なのに、その媚薬みたいな匂いが濃くなってマゾイキしてしまう。逃げようとしたわたしの体が掴まれる。つかまれた場所から快感が走って「ひいッ♡」と悲鳴を漏らしてしまう。

 そして―――、

 ―――ぐんにゃりと抱きしめられた。

「いっぎいいいいいいいいいいいッ♡♡」

 どっびゅうううううううううッ!

 ドビュっびゅうううううううッ!

 抱きしめられただけだ。

 それなのに射精してしまった。

 巳雪様の大きな体に生き埋めになるような熱い抱擁。巨大な乳房がグンニャリとわたしの胴体で潰れ、さらに強く抱きしめられて、その谷間に挟まれる格好になってしまう。わたしの背中にまわされた両腕が強烈なプレス機となって息もできないほど熱烈に抱きしめられる。力がこめられればこめられるほどに射精する。パンツの中がビジョビジョになるまで精液がこぼれていった。

「あらあら、射精してしまいましたね、旦那様」

「あひんッ♡」

「抱きしめられただけで射精してしまいました」

「ひいんッ♡」

「これはいけませんね。貴重な子種を無駄にするなんて、許されないことです。旦那様の子種はぜんぶわたしが捕食するから勝手にもらさないようにって、オナニーも禁止だって、そう厳しく伝えてあったはずですよね?」

 ジロリとした視線が私を見下ろしてくる。

 それだけで狂ってしまった。

「ゆるじでッ♡ ごめんなさいッ♡ ゆるじでッ♡」

 巳雪様に抱きしめられながら泣き叫ぶ。

 それでも射精が止まらない。

 巳雪様の巨大で柔らかい体に生き埋めになりながら、抱きしめられただけで射精し続け、恐ろしい妻の反感を買っていく。

「ダメです♡」

「ひいんんッ♡」

「絶対に許しません♡」

「あああんッ♡」

「旦那様にはきついお仕置きが必要ですよね」

「ゆるじでッ♡」

「旦那様が今後は絶対にわたしの許可なく射精しないように厳しく躾けます。覚悟してください」

 そうして始まってしまう。

 公園の中、ベンチに座ったまま始まるサキュバス調教。

 周囲にはたくさんの人間たちがいるが、彼らは全員発情して気絶しているため関係がなかった。無数の屍の中で調教される。すぐに喉が枯れて、搾りとられる。

「愛してます、旦那様♡」

 私のことを嬉々として責めてくる美しい妻。

 そんな愛しのサキュバスに犯されて、今日も一日が過ぎていく。

 とてつもなく幸せだった。

 おしまい

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