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静まり返った露天風呂に、湯の流れる音だけが響いている。

外気は肌を刺すほどに冷たいが、肩まで浸かった湯の温度がそれを心地よい刺激へと変えていた。

「……何を、ぼうっとしているのです。我が妻よ」

背後からかけられた声。振り向くと、そこには月光を浴びた白銀の髪を濡らし、潤んだ瞳でこちらを射抜くモルガンの姿があった。

「あ、いや……モルガンがあまりに綺麗だったから」

「……」

卑屈なほど実直なその言葉に、彼女の白い頬がさらに朱を帯びる。彼女はふいと視線を逸らし、指先で水面に小さな波紋を作った。

「その……何でもないように振る舞うのは、やめなさい。ここは私と貴女だけの、貸切の場所。女王としての重圧も、円卓の視線も、今はここには届きません」

彼女はゆっくりと、波を立てないように距離を詰めてくる。

水面下で揺れる彼女の曲線が、白濁した湯の向こう側で危うく、それでいて暴力的なまでの美しさを放っていた。

「……私の隣に来ることを、許しましょう」

耳元で、甘く、低い声が囁かれる。

彼女の指先が、あなたの濡れた肩をなぞるように滑った。

「貴女はいつも、皆の希望であろうとする。ですが、今は……その、私の執着だけを受け取ればいいのです。いいえ、受け取りなさい」

モルガンはあなたの腕を掴むと、その柔らかな身体を遠慮なく寄せてくる。

密着した肌から伝わるのは、温泉の熱だけではない。彼女の心臓の、驚くほど速い鼓動だ。

「……我が妻。これほど近くにいても、貴女の体温は遠く感じてしまう。もっと……そう、その手を。私がどこまで、貴方を欲しているか。その身で、確かめてみるつもりはありませんか?」

誘うような、それでいて拒絶を恐れるような、微かな震えを含んだ瞳。

モルガンはゆっくりと膝をつき、水面からその肢体をさらけ出した。わざとらしく、腰をひねりながらこちらに背を向ける。

露わになった背筋から、湯を弾いて輝く柔らかな曲線。水面から突き出たその部分は、冷えた夜気の中で白く熱を帯び、抗いがたい引力を放っていた。

「……何を、先ほどから俯いているのです。私のすべてを視界に収める権利を、貴女に与えたというのに。……私の『妻』ならば、言葉だけでなく、その瞳でも私を愛でなさい」

彼女は肩越しに、挑発的な、それでいて熱い吐息を漏らしながらこちらを振り返る。

濡れた白銀の髪が、瑞々しい肌に張り付き、胸元の重みを強調するように揺れた。彼女が動くたびに、わずかに身に纏った布地がその境界線を危うくし、あなたの視線を釘付けにする。

「……ふふ、顔が赤いですよ。温泉のせいか、それとも……私を見て、良からぬことでも考えているのか。良いでしょう。その不埒な視線、嫌いではありません」

モルガンは誘うように、ゆっくりと手を伸ばし、あなたの指先を絡めとった。

彼女の指は熱く、湿り気を帯びて、肌に吸い付くようだ。

「……ですが、見るだけで満足できるとでも? ……もっと近くへ。私の熱を、貴女のその体温で鎮めてみせなさい」

逃げ場のない湯船の隅、女王の独占欲を孕んだ瞳が、あなたを深く、深く、夜の底へと引きずり込んでいった。

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