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pixivやXで未公開分のリメイク版のなかよし、ねこの日のイラスト集です🐱

今年もねこさんの格好を余儀なくされたアルトリアのお話。

♢

「……なぜ、またこのような格好をしなければならないのですか」

 私は自らの格好を見下ろし、深いため息と共に目の前の愛しい人物──私の妻(マスター)を見据えた。

 私の身体を包んでいるのは、昨年と同じ、騎士王の威厳など欠片もない青いランジェリー風のドレス。脚には黒いストッキング、首元には動くたびにちりりと鳴る鈴付きのチョーカー。そして頭部には、あろうことか猫耳が鎮座している。

「だって猫の日だよ? 去年アルトリアねこさんの格好可愛かったし、せっかくだから今年も着ようかなって……ほら、今回も私も一緒に着たし」

 そう言って悪びれもせず微笑む彼女の姿に、私は言葉を詰まらせた。

 彼女は、私と対になるような純白のランジェリー風ドレスを身に纏っていた。普段の活動的な姿とは異なる、そのあまりにも無防備で扇情的な姿は、視界に入るだけで私の平常心を揺さぶるには十分すぎた。

 これは、罠だ。巧妙に仕組まれた、私を陥落させるための甘い罠に他ならない。

「……貴女も着たからといって、私がこのような恰好をして良い理由にはなりません。私は騎士として、王として……」

「えー、そんな固いこと言わないでよ。ね、アルトリア。私、アルトリアの猫さんが見たいな」

 彼女はそう言うと、四つん這いになり、本物の猫のようにしなやかな動作で私にすり寄ってきた。

「にゃあ。……ほら、アルトリアも」

 上目遣いで見つめられ、甘い声で囁かれる。

「にゃあ」という鳴き真似ひとつで、私の中で強固に保たれていたはずの理性の壁に、小さな亀裂が入る音がした。

 断らねばならない。王としての矜持がそう叫んでいる。しかし、目の前でこれほどまでに愛らしく、無垢な瞳で懇願されて、無下にできるわけがなかった。彼女の願いを叶えることこそ、私の喜びでもあるのだから。

「……くっ。一度だけ、ですよ」

 私は屈辱と羞恥に顔を熱くしながら、意を決して彼女と同じように四つん這いの姿勢をとった。慣れない姿勢に、膝上まで伸びたストッキングのレースが肌に擦れる感覚が強調される。

「……にゃ、にゃあ……」

 喉から絞り出したのは、猫の鳴き声とは程遠い、緊張で強張った奇妙な音だった。顔から火が出るほど恥ずかしい。今すぐにでもこの場から逃げ出したい衝動に駆られる。

 しかし、彼女の反応は劇的だった。

「わぁっ! 可愛い! すごく可愛いよアルトリア!」

 彼女は目を輝かせ、私の頭──正確には猫耳の間を無邪気に撫で回した。

その純粋な称賛の言葉は、私にとってはどんな褒章よりも甘美で、同時に、私の理性を削り取る猛毒でもあった。

「えへへ、アルトリアねこさんだ。ねえねえ、もっと鳴いて?」

 彼女は調子に乗ったのか、今度は私の首元のチョーカーに指をかけ、鈴をちりり、と鳴らした。そして、自らもまた、さらに甘えた声で鳴いてみせる。

「にゃーん。……ね、アルトリアも。にゃーん」

 彼女が「にゃーん」と鳴くたびに、その柔らかな肢体が揺れ、白いレースの隙間から覗く滑らかな肌と胸が私の視界を埋め尽くす。無自覚なのだろうか。彼女のその仕草一つ一つが、どれほど私の騎士としての理性を逆撫でし、心の奥底に眠る獣の本能を刺激しているかということに。

「……貴女は、自分が何をしているのか分かっているのですか」

 私の声は自分でも驚くほど低く、熱を帯びていた。しかし彼女はその警告に気づく様子もなく、さらに私の懐へと潜り込んでくる。

「ん? 何って、猫の真似っこだよ? ほら、ゴロゴロして?」

 彼女は私の胸元に頬を擦り寄せ本当に猫のように喉を鳴らす真似をした。その拍子に、彼女の豊かな胸元の膨らみが私の腕に押し当てられる。柔らかく、温かい感触。鼻腔をくすぐる彼女特有の甘い香り。

──だめだ、今年も限界だ。

 頭の中で、何かがブツリと音を立てて切れた。

 王としての矜持も騎士としての自制心も、もはや形を成していなかった。今、私の心を支配しているのは、目の前の無防備すぎる獲物を組み敷き、自分だけのものにしたいという、強烈な独占欲と支配欲だけだった。

「……あっ」

 私が彼女の肩を掴みラグの上に押し倒すと、彼女は短く声を上げて目を丸くした。

視界が反転し私に見下ろされる形になった彼女は、ようやく事態の深刻さに気づいたのか、少し怯えたように身を縮こまらせる。その姿さえも、今の私には嗜虐心を煽る極上のスパイスでしかなかった。

「あ、アルトリア……? あの、冗談だよね? 猫の真似っこは、もう終わり……?」

「ええ、終わりです。猫の真似事は、ね」

 私は彼女の上に覆いかぶさり逃げ場を封じた。彼女の白い喉元で脈打つ鼓動が早くなっているのが見て取れる。

毎年、この日が来るたびに、このような理性のせめぎ合いが続くのだろうか。この奔放で愛らしい妻(マスター)に私は翻弄され続けるのだろうか。

 だが、それも悪くはない。

彼女のこの他者には絶対に見せない無防備で愛らしい姿を、私だけが独占できるというのなら。

その代償として、年に一度理性のたがを外すことくらい、安いものだ。

「……私をここまで挑発したのです。ただで済むとは思わないでください」

私は捕食者の目で彼女を見据え、ゆっくりと顔を近づけた。彼女の瞳が潤み、期待と不安が入り混じった色を帯びる。

「覚悟はいいですね? ……私の愛しいご主人様」

 私は彼女の耳元でそう囁くと抵抗する術を持たない柔らかな唇へと、牙を剥くように深く口づけを落とした。猫の遊びの時間は終わりだ。ここからは、夜の獣の時間なのだから。

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