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カルデアの喧騒を離れ、私は気配を完全に遮断してマスターくんの部屋──「マームルーム」の前に立っていました。

アサシン……いえ、宇宙の真のヒロインである私にとって留守中のマスターくんの部屋を警備するのは、セイバー種を根絶やしにするのと同等の最優先任務。決して、マスターくんがいない寂しさを埋めるためではありません。断じて。

「おや? マスターくんはやはり留守ですか。……ふむ、警備に抜かりはありませんね」

扉を叩いても返ってくるのは無機質な静寂だけ。私は合鍵を使い、音もなく室内へと潜入しました。主人のいない部屋には微かに、けれど確かなマスターくんの生活の残香が漂っています。ふと、ベッドの脇に無造作に脱ぎ捨てられた衣服が目に留まりました。それは、フリルがあしらわれたユミが潜入調査か何かで使用していたのであろう、可愛らしいデザインのスカートでした。

「全く、相変わらずマスターくんは可愛いものが好きですね。……私が片付けてあげましょう」

正義感という名の好奇心に突き動かされ、私はそのスカートを丁寧に拾い上げました。その瞬間。

ふわ、と。

洗剤の清潔な香りの奥底から、マスターくん自身の——あの、甘くて安心するような、魂の深淵を揺さぶる特効性を持った匂いが、重力に逆らうように鼻腔へと吸い込まれていきました。

「…………」

気がつけば私はその布地に深く、深く顔を埋めていました。

肺の隅々まで、マスターくんの成分を充填するように。一度その味を占めてしまえば理性の回路は一瞬でオーバーヒートを起こしました。ジャージの下の体が異常なまでの熱を帯び、ドクドクとうるさい鼓動が全身に響き渡ります。

私はフラフラとした足取りでベッドに倒れ込みました。まず、視界を邪魔する帽子を乱暴に脱ぎ捨て、首元の青いマフラーも引き解くと、私はスカートを口元に強く押し当てました。

「はぁ、はぁっ……! 悪いのは、マスターくんですよ。こんな……私の霊基を根底から揺さぶるような残り香を、こんな無防備な場所に置いておくなんて……」

震える指先が、青いトラックジャケットのジッパーに掛かります。

ジ、ジジ……と、静かな部屋に金属音が冷たく響く。

引き下げられたジッパーの隙間から、熱を孕んだ空気と共に、汗ばんだ白い肌が露わになりました。冷たい外気が火照った胸元を撫でますが、それ以上に、内側から溢れ出す情動が私を焼き焦がしていきました。

~続~

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