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「ええい、脱ぐ!」

赤いシャツを乱暴に脱ぎ捨てると、下に着ていた薄手の白いキャミソールと黒いパンツだけの姿になる。 フローリングの床にぺたりと座り込み、無防備に放り出された白く長い脚。下からのぞき込むような視点で見るその肢体は、もはや目の毒でしかない。汗を吸った白い布地は肌にぴったりと張り付き、彼女の華奢な体のラインをこれでもかと浮き彫りにしていた。

「……んぁ……冷たい……っ」

凛はどこからか持ってきた氷結したペットボトルを、火照りきった首筋や、汗ばんだ胸の谷間へと直接押し当てた。 「ひゃっ」と小さく肩をすくめた後、彼女の口からは快感に満ちた熱い吐息が漏れる。冷たい水滴がペットボトルから滴り落ち、キャミソールの生地を濡らしていく。透けた布の奥に隠された下着の輪郭までもが露わになり、彼女が目を閉じて涼をとるその横顔は、信じられないほど扇情的だった。

「誰か……クーラー、直してよぉ……っ」

全身を汗で濡らし、熱に浮かされたように身悶えする遠坂凛。 その完璧な少女が猛暑に屈服し、理性を溶かされてただひたすらに熱を逃がそうとする極上の光景を、私は物音一つ立てず、ただ静かに目に焼き付け続けていた。

全身を汗で濡らし、熱に浮かされたように身悶えする遠坂凛。 その完璧な少女が猛暑に屈服し、理性を溶かされてただひたすらに熱を逃がそうとする極上の光景を、私は物音一つ立てず、ただ静かに目に焼き付け続けていた。

♢

両手にスーパーの袋を提げ、汗だくになって帰ってきた凛が玄関の扉を開けた。その瞬間。

「え?」

ひんやりとした、まるでオアシスのような極上の冷気が玄関ホールに立つ凛の全身を優しく包み込んだ。 汗ばんだ肌が一気にクールダウンしていく心地よさに、彼女は目を丸くして立ち尽くす。

「あんなに暑かったのに……なんで?」

戸惑いながらリビングへの扉を開けると、そこは完璧に温度管理された快適空間だった。壁のエアコンからは、静かで力強い冷風が規則正しく吹き出している。

「凛、帰ったか」

状況が飲み込めず呆然とする彼女の前に私が歩み出た。 手には、氷がたっぷりと入って涼しげな水滴を浮かべた、キンキンに冷えた麦茶のグラス。それをそっと彼女の前に差し出す。

「あ、ありがとう……って、そうじゃなくて!」

無意識にグラスを受け取った凛は、ハッとして周囲をきょろきょろと見回した。

「ねえ、なんでこんな家涼しいのよ。まさか、アンタって魔術だけじゃなくてクーラーもなおせるわけ?」 「なおす? なんのことかね」「とぼけないでよ。だって、昼間はいくらリモコン押しても、ピクリともつかなかったのよ冷房!」

グラスを持ったまま、ビシッと壁のエアコンを指差す凛。その顔は「また私がいない間に勝手なことをして」という非難と、少しの感心が入り混じっていた。

私は、彼女の言葉を受けて、あえて数秒間の沈黙を作った。脳裏に蘇るのは、昼間、彼女がフローリングの上で半泣きになりながらリモコンを連打していたあの滑稽な姿。そして、キャミソールをめくり上げて扇風機の前でだらしなくとろけていた光景。

「……ふっ、くくっ……」 「な、なに笑ってんのよ!」

「……いや。凛、ひとつ聞きたいのだが。できれば怒らずに聞いてもらえればありがたい」

私は口元を片手で覆い、必死に込み上げてくる笑いを堪えながら彼女を見下ろした。明らかに様子のおかしい私を見て、凛は不満げに眉を吊り上げる。

「何よ。言いたいことがあるならハッキリ言いなさいよ」

「では、遠慮なく。……君は昼間、ちゃんと『この』リモコンでスイッチをいれたのか?」

私がもう片方の手で掲げて見せたのは壁のホルダーから取り外した、まごうことなき『エアコンの純正リモコン』だった。

「はあ? 私が使ったのはあっちの……」

凛は苛立ち紛れに、ローテーブルの上に乱雑に放り出されたままになっているもう一つの黒いリモコンを指差した。 その瞬間、彼女の動きがピタリと止まる。

「凛」 「えっ……あ、あれ?」

「それはエアコンではなく、君がユミと映画を観る約束をしていたBlu-rayレコーダーのリモコンだ。……まあ、君の絶望的な機械音痴のせいで、一度も起動すらできていないのだがね」

冷徹な事実の突きつけ。 数秒のフリーズの後、凛の顔が、茹でダコのように——いや、昼間の猛暑で上気していた時よりもさらに真っ赤に染め上がっていくのがわかった。

「あ、あああ……っ! わ、私が、ずっとエアコンに向けて押してたのは、録画機の……っ!?」

「やれやれ。いくら『再生』や『早送り』のボタンを壁に向けて連打しようと、冷気は出ない。魔術師の家系とはいえ、現代の魔術(テクノロジー)の区別もつかないとは。おかげで、あんな無防備でだらしない姿を拝む羽目になった」 「っっ!? み、見て、アンタまさか、家にいたの!? あの時!?」

「さて、どうだったかな。少なくとも、風を求めて服をめくり上げていた君は、大変涼しそうだったが」

ニヤリ、と私が意地悪く笑った瞬間。 凛の周囲の空気が、冷気とは全く別の、凄まじい魔力の熱で歪み始めた。

「……っ、この、性格破綻弓兵(アーチャー)……っ!! 見てたなら言いなさいよバカァァァッ!!」

真っ赤な顔で涙目になったマスターの指先から、高密度に圧縮された赤い呪弾(ガント)が、容赦なく私の顔面へと放たれたのだった。

fin

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