【シドゥリ→イシュタル】天の牝牛より甘い罰を (Patreon)
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「……それで? 倉庫に保管してあった神事用の宝石を勝手に持ち出して、マアンナの飾りにしようとした挙句、うっかり落として神殿の中庭にクレーターを作ったことについて、何か言い訳はありますか? イシュタル様」
静謐であるべき神殿の一室に、氷のように冷たく、それでいてどこまでも澄んだ声が響き渡った。 私は、ウルクが誇る大理石の床の上に、痛いくらいに膝を折り曲げて正座をさせられていた。目の前に立つのは、緑のドレスと面紗(フェイスベール)を纏ったウルクの祭祀長、シドゥリだ。
「い、いや、あれには深い事情があってね! ほら、神事用の宝石って長年しまい込んでると魔力が澱むじゃない? だから私が直接マアンナに組み込んで空を飛ばして、風と太陽の力で浄化してあげようかなーって……」
「ほう。浄化、ですか。それで、中庭の巨大な穴と、砕け散った高価な宝石の山はどう説明されるおつもりで?」
「うっ……それは、その、うっかり手が滑って……」
「うっかり、で神殿を半壊させられてはたまりません。しかも、あの中庭は先日修繕が終わったばかりだと、きちんとお伝えしたはずです」
シドゥリの声に怒気が混じる。
私はビクッと肩を揺らし、すっかり小さくなってしまった。 本来の私――美と豊穣、そして戦の女神であるイシュタルなら、こんな人間の女一人に平身低頭するいわれなどない。逆ギレして天の牝牛でもけしかけてやるところだ。
だが、今の私にはこの依代の『我慢』や『常識』という厄介な機能が備わってしまっている。それに加え、シドゥリは私という都市神に真摯な祈りを捧げ、敬意を払い続けてくれる大切な人間の一人だ。信仰してくれる相手には、どうしても強く出られないのが私の弱点だった。
「……ごめんなさい。私が悪かったです」 「謝って済む問題ではありません、イシュタル様。貴女は少々、神としての自覚と、ウルクの財産に対する責任感が欠けておいでです。ギルガメッシュ王に報告すれば、またあの王は心底楽しそうに貴女を嘲笑うでしょうね」 「あいつにだけは絶対に言わないで! アレに笑われるくらいなら三日三晩断食した方がマシよ!」 「……では、王には私から上手く誤魔化しておきましょう」 「ほ、本当!? さすがシドゥリ、話がわかるわね!」
「ただし」
ぱぁっと顔を明るくした私の言葉を遮り、シドゥリは面紗の奥で目を細めた。その所作があまりにも美しく、そして底知れぬ威圧感を放っていて私は思わず息を呑んだ。
「王に報告しない代わりに、私から貴女に『特別なお仕置き』をさせていただきます。女神の威厳も何もかも忘れて、ご自身の行いを反省していただくために」
「え……お、お仕置きって、まさか……」
嫌な予感がして後ずさろうとしたが、シドゥリの手が私の腕をがっちりと掴んだ。見た目からは想像もつかないほど強い力だ。 彼女は優雅な足取りで部屋の奥にある豪奢な長椅子へと歩み寄り、そこにゆったりと腰を下ろした。そして、自分の膝の上をぽんぽんと叩く。
「さあ、こちらへ。うつ伏せになりなさい」
「ちょ、ちょっと待って! 私は女神よ!? さすがにその体勢は、その、いろいろと尊厳が……!」
「神殿を壊す女神に尊厳などありません。それとも、やはり王にご報告した方がよろしいですか?」
「うぐっ……わ、わかったわよ……」
私は屈辱で顔を真っ赤にしながら、のろのろとシドゥリの前に歩み寄った。そして、言われた通りに彼女の柔らかな太腿の上へと腹ばいになる。 私の衣装は、依代の影響か、あるいは私の趣味か、極端に布面積が少ない。黒のビキニのようなボトムスは、うつ伏せになれば無防備な私の尻を完全に晒してしまうことになる。
「ひゃっ……」
シドゥリの冷たい指先が、私の腰のあたりをスッと撫でた。それだけで背筋にゾクゾクとした悪寒にも似た感覚が走る。
「それでは、始めます。一打ごとに、ご自身の罪を口に出して数えなさい」
「えっ、数え――」
パァンッ
「っっ!?」
乾いた、しかし重みのある破裂音が部屋に響き渡った。 手のひらが私の尻の柔らかな肉を直撃した。祭祀長とはいえ、神殿の業務で鍛えられた彼女の手のひらは、容赦のないスナップを効かせて私の肌を打ち据えた。
「ほら、口が動いていませんよ。何がいけなかったのですか?」
「あ、あうっ……か、勝手に……宝石を持ち出したこと、です……っ」
パァンッ
「っ!!」
「次は?」
「うっ、マ、マアンナに細工しようとしたこと……っ。シドゥリ、ちょっと手加減……っ!」
「手加減などしません。貴女が心から反省するまで、何度でも」
シドゥリの手は機械のように正確に、そして情け容赦なく振り下ろされる。 私の白い肌はあっという間にジンジンとした熱を帯びていった。 恥ずかしくて、情けなくて、目からポロポロと涙がこぼれ落ちる。
「あぁっ! ごめんなさ、いっ! もう、しません……っ、だから、許して……!」
「まだまだ。貴女の反省はいつも口先だけですからね。しっかりと身体に刻み込んで差し上げないと」
「ひあぁっ! ぁ、ああっ……!」
私はシドゥリの膝の上でもがくように身をよじった。 だが、次第に奇妙な感覚が私を支配し始めていた。 叩かれた場所から発せられる強烈な熱が、いつしか下腹部の奥底へと伝播し、甘い痺れに変わっていくのだ。
屈辱的なのに。シドゥリに触れられ厳しく躾けられているという事実が、私の理性をドロドロに溶かしていく。
「あ、ぁ……んっ……ひっ……」
「……」
私の悲鳴が甘く湿った声に変わってきたことに気づいたのか、シドゥリの手がふと止まった。 尻はすっかり火を噴くように熱く、ジンジンと脈打っている。私は涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を半分だけ上げ、シドゥリを見つめた。
「……しどぅり……もう、おわり……?」
掠れた声で問いかけると、シドゥリは小さくため息をついた。 彼女は私の背中を優しく撫でると、そっと私を抱き起こした。
「ええ。十分反省したようですね。……痛かったですか?」
「……すごく……」
シドゥリは私を自分の隣に座らせると、いつもの厳しい祭祀長の顔から、慈母のような優しい微笑みへと表情を変えた。 彼女の手が私の頬に伸び、親指でそっと涙を拭ってくれる。その優しさに触れた瞬間、私の中に張り詰めていた糸がプツリと切れ、再び大粒の涙が溢れ出した。
「シドゥリのばかぁ! ここまでしなくてもいいじゃない……っ!」
「ふふ、ごめんなさいね。でも、あれくらいしないと貴女は分かりませんから」
「っ、ひっく……っ」
「いい子です、イシュタル様」
シドゥリは私を抱き寄せ、その胸に私の顔を埋めさせた。緑のドレスから漂う、沈香と白檀の清らかな香りが鼻腔をくすぐる。 彼女の温もりに包まれると、さっきまでの激しい痛みが嘘のように、深い安心感と甘い疼きが全身を満たしていった。
シドゥリはゆっくりと顔を上げると、自らの顔を覆っていた面紗を横へとずらした。 露わになった彼女の素顔は、ため息が出るほどに美しく、そしてどこか艶かしさを帯びていた。
「頑張って耐えた貴女に、ご褒美を差し上げましょう」
そう囁くと同時、シドゥリの柔らかな唇が、私の涙で濡れた唇に重なった。 「んっ……」 触れ合うだけの優しいキス。だが、それは次第に深さを増していく。 シドゥリの舌が私の唇を割り、口内へと滑り込んでくる。私は身を震わせながら、彼女の背中に腕を回し、すがるようにそのキスに応えた。 チュッ、チャプッ、と卑猥な水音が静かな神殿に響く。 お仕置きの痛みで敏感になった身体に、彼女のキスの甘さが劇薬のように染み渡る。
「はぁっ、んっ……シドゥリ……あ……っ」
「イシュタル様……貴女は本当に、手のかかる可愛らしい女神ですね」
唇を離したシドゥリの瞳は、いつもは見せないような深い欲望の色を湛えていた。 私はその熱っぽい視線に見つめられながら、自分の身体の奥底で、かつてないほどの激しい情動が渦巻いているのを自覚した。 さっきまで泣かされていたというのに、今はもう、彼女のすべてが欲しくてたまらない。
私はシドゥリの首に腕を絡め、彼女の身体を長椅子の上に押し倒した。
「きゃっ……イシュタル様?」
「ふふっ……シドゥリ。貴女、自分が何をしたか分かってるの?」
私は少しだけ意地悪く微笑みながら、彼女の上に馬乗りになる。 お尻はまだジンジンするがそれすらも今の私には極上のスパイスだった。
「私をこんな風に躾けて、泣かせて、その上こんなにトロトロに甘やかして……。ただのお説教で終わるわけないじゃない」
「それは……私としては、十分にお灸を据えたつもりだったのですが」
「甘いわ。女神の罰は重いんだから」
私はシドゥリの緑のドレスの胸元に手をかけ、その豊かな膨らみへと顔を沈めた。
「ああっ……イシュタル様、そこは……っ」
「女神をこんなにして……たっぷり返礼(おしおき)してあげるわ、シドゥリ」
私が彼女の素肌に牙を立てるようにキスを落とすと、シドゥリは甘い吐息を漏らし、私の黒髪を優しく撫でた。
「……ええ。貴女の気が済むまで、どうぞ……私の愛しい女神様」
窓から差し込むウルクの陽光が、絡み合う二人の身体を黄金色に照らし出している。 神殿の奥深く、誰にも見られることのない秘密の場所で、私は私を唯一叱ってくれる愛しい人間の女と共に、甘く果てしない快楽の海へと沈んでいった。
それは、ギルガメッシュですら知らない、私とシドゥリだけの、最高に甘くて残酷な秘密の時間の始まりだった。
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