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秋の深まりを肌で感じる、ひんやりとした夜風が木々を揺らしていた。

ここはカルデアの慰安旅行として訪れた、山奥にひっそりと佇む豪奢な秘湯宿。普段は過酷な任務に明け暮れるサーヴァントたちも、今日ばかりは思い思いに羽を伸ばし、大広間では宴会が賑やかに繰り広げられている。

そんな喧騒からこっそりと抜け出し、離れにある貸し切りの露天風呂へ続く石畳の小道を、二人の影が寄り添うようにして歩いていた。

「はぁ……。やっと、本当にやっと二人きりになれましたね、我が妻」

少しゆったりとした藍色の浴衣を身に纏い優雅な足取りで前を歩くのは、妖精国の女王モルガン。彼女の長い銀糸の髪が夜風にふわりと揺れ、宿の軒先に吊るされた提灯の灯りを受けてキラキラと輝いている。涼しげでありながらも、どこか熱を帯びた紫の瞳が、後ろを歩く立香へと向けられた。

「先ほどから、あの宴会場には邪魔な虫が多すぎました。貴女にお酌をしようと群がる者たちを片っ端から水鏡に沈めてやろうかと思い、いくら私でも少々気が立ちそうでしたよ」

心底不満げにため息をつくモルガンに、立香は「あはは……」と苦笑いを浮かべた。

オレンジ色の短い髪に、秋らしいもみじ柄の浴衣を合わせた立香は、小走りでモルガンの隣へと並ぶ。

「まあまあ、みんな慰安旅行でテンション上がってるからね。それに、モルガンがずっと私の隣で睨みを効かせてくれてたおかげで、誰もあんまり近づいてこなかったし……」

「当然です。貴女は私の妻なのですから、他の有象無象に気安く触れさせるわけにはいきません。代わりにアルトリアの鞘(ユミ)の元へ行った者も多いですから良しとしましょう」

「もう、過保護なんだから……。しかもそのせいでアルトリアがささくれ立って余計大騒ぎになったの忘れちゃったの?あとで謝っておかないと…あ、ここからはちゃんと二人きりだよ。この離れの貸し切り露天風呂、すっごく景色がいいらしいから楽しみにしてたんだ!」

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