【セイバーオルタ】月影に酔う漆黒の暴君】 【完全版】 (Patreon)
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音もなく引き戸を開けると開け放たれた障子の向こうから冴え冴えとした秋の月明かりが畳の上に四角く切り取られて落ちていた。
「……遅いですね、ユミ」
静寂の中、ひどく甘く、気怠げな声が鼓膜を撫でる。
声の主――アルトリア(オルタ)は、月光の差し込む縁側のすぐそばで、畳の上に投げ出されるようにして座り込んでいた。
ユミは思わず息を呑んだ。
彼女が身に纏っているのは夜の闇をそのまま切り取ったかのような漆黒の浴衣。
しかし、その着付けは意図的にか、あるいは酔いのせいか、酷く乱れていた。
帯はだらしなく緩み、肩から滑り落ちた生地が、抜けるように白い肌と華奢な鎖骨、そして豊かな胸の深い谷間を惜しげもなく晒している。はだけた裾からは、無防備な素足が畳の上に投げ出されていた。
「ア、アルトリア……すっごく酔ってない……?」
「酔ってなどいません。ただ、月見酒と洒落込むには、少しばかり手持ち無沙汰だっただけです」
アルトリアは片手を後ろの畳について上体を反らせとろんと潤んだ半開きの琥珀色の瞳でユミを見上げた。
いつもは冷徹な彼女の頬が、お酒のせいで濃い朱色に染まっている。少し乱れた淡い金糸の髪が、艶めかしい月明かりの中でキラキラと光を反射していた。
「さあ、そこに突っ立っていないで、私の傍に来なさい」
アルトリアは手元の盃をコトリと置くと、気怠げに片頬杖をつきながら、もう片方の手をユミへと差し伸べた。
逆光気味の月明かりを背に受け、蠱惑的な笑みを浮かべる黒い騎士王。その圧倒的な美しさと色香に抗えるはずもなく、ユミは吸い寄せられるように彼女の傍へと歩み寄り、畳の上に膝をついた。
「……んっ、と……」
差し出された手を取ろうとした瞬間、アルトリアの強い力にぐいっと引き寄せられる。
あっという間にバランスを崩したユミは、アルトリアの胸元へと倒れ込んだ。
「きゃっ……! ア、アルトリア……っ」
「ふふ……。捕まえましたよ、私の可愛い蝶」
甘い日本酒の香りと、彼女の肌から立ち上るむせ返るような雌の匂いが、ユミの鼻腔をくすぐる。
アルトリアはユミを自身の腕の中にすっぽりと収めると、背中に回した手で、まるで宝物を慈しむようにゆっくりと背筋を撫で上げた。
「月が綺麗だ……と言いたいところですが。今の貴女は、月よりもずっと私の目を惹いて離さない」
「もう……酔っ払いのセリフだよ、それ……っ」
ユミが照れ隠しに身をよじると、アルトリアの着崩れた浴衣がさらに滑り落ち、豊かな双丘がユミの身体に柔らかく押し付けられた。ひんやりとした秋の夜気とは対照的な、驚くほど熱いアルトリアの体温。
「酔っ払いの戯言かどうか、その身体で確かめてみますか?もっとも貴女は私の前で鳴くだけだ」
アルトリアは妖艶に微笑むと、ユミの顎に指をかけ、少し強引に上を向かせた。
そして、微かに開かれたユミの唇を、自らの唇で深く塞いだ。
唇の隙間から、強引に熱い舌が侵入してくる。
アルトリアの口内からは、芳醇な冷酒の香りと、彼女自身のひどく甘い味がした。ねっとりと舌を絡められ、上顎をなぞられ、ユミの頭は一瞬でお酒を飲んだかのようにクラクラと痺れ始める。
「んぁ……っ、は、ぁ……アル、トリア……っ」
息継ぎのために唇が離れると、銀の糸が月明かりに照らされて艶かしく光った。
アルトリアはユミの潤んだ瞳を至近距離で見つめ、満足げに喉の奥でくすりと笑う。
「どうだ?私の口移しの酒の味は」
「……ずるい、よ。こんなの、アルトリアに酔っちゃうじゃない……」
「ええ。存分に酔いなさい。私という毒に、骨の髄まで」
アルトリアの長い指先が、ユミの衣服の隙間から滑り込み、熱を持った柔らかな素肌へと直接触れた。ビクン、とユミの身体が跳ね畳の上で二人の影が深く重なり合う。
「今夜は美しい月が出ています。……ですが、貴女が私以外のものを見ることは許さない」
暴君の独占欲と、底なしの愛情。
月明かりに照らされた暗い和室の中、アルトリアの漆黒の浴衣が畳に擦れる微かな音が、静寂の夜にどこまでも甘く、淫らに響き続けていた。
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