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「……はあ。やっと終わったぁ……」

誰もいない体育倉庫に、遠坂凛の深い溜息がぽつりと落ちた。

重いマットを所定の位置に押し込み、跳び箱の段を揃え終えた彼女は、そのままズルズルと壁際に座り込む。

窓から差し込む夕陽が、宙を舞う埃をオレンジ色に照らし出している。

普段なら絶対にこんな面倒な片付けを一人で引き受けたりはしない。だが、今日は特別だった。

「ったく……ルヴィアのせいだわ。今度ロンドンで顔を合わせたるときに絶対に体力負けなんてしたくないからって思ったらちょっと張り切りすぎちゃったじゃない」

今日の体育の授業中、凛は一人だけ異常なほどの運動量を見せていた。周囲には「優等生としてのお手本」という顔を向けつつ、内心ではライバルである金髪の令嬢を仮想敵に見立てて、己の肉体を限界まで追い込んでいたのだ。

結果として、授業が終わる頃には立っているのもやっとという有様。そのせいで逃げ遅れ、笑顔で片付けを引き受ける羽目になったというわけだ。

「あっつい……」

襟元を掴み、パタパタとあおぐ。白い半袖の体操着は、かいた汗をたっぷりと吸い込み、彼女の形の良い胸の起伏や、下着の透け感までを露わにしている。

下半身を包む指定の紺色のブルマも、じっとりと汗ばみ、太ももにピタリと張り付いていた。

冷たいコンクリートの壁に背を預けると、わずかに火照りが引く気がした。

だが──引いていくはずの熱とは裏腹に、体の奥底から、まったく別の『熱』がジワリと湧き上がってくるのを凛は感じていた。

「……ん」

最初は、疲労のせいだと思った。

だが違う。下腹部の奥、子宮のあたりがキュンと甘く締め付けられ、そこからドクドクと熱い血が全身に巡っていくような感覚。

(だめ、こんなの……っ。早く帰らなきゃ……!)

この体育倉庫には、誰も来るはずがない。

「……少しだけ。少しだけなら……」

誰に言い訳するでもなく呟くと、凛は震える指先で虚空にルーンを描いた。

カチリ、と微かな音がして、体育倉庫の重い鉄扉に物理的、そして魔術的なロックが掛かる。

これで、ここは完全に世界から隔離された『密室』になった。

安心感と、いけないことをしているという背徳感。それがスパイスとなり、凛の身体をさらに熱く燃え上がらせていく。

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