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万民が見上げる摩天楼の頂、ドバイの夜景を睥睨する最高級ホテルのスイートルーム。そこに生じた極小の特異点とも言える密室で、水のアルターエゴは酷く不機嫌に腕を組んでいた。彼女のアイデンティティであり、無慈悲な刃である白鳥の脚が、苛立たしげに豪奢な絨毯をカツカツと叩いている。

「……で? わざわざ私をこんな所に呼び出して、何がしたいわけ? BB。私の優雅な時間を無駄にするなら、その四肢を細切れにしてあげるけれど」

見下ろす視線は絶対の捕食者のそれ。しかし、対する存在――ソファに深く腰を預けるBBドバイは、アルターエゴの放つ濃密な殺気を柳に風と受け流し、ひどく蠱惑的な、それでいて酷薄な笑みを浮かべていた。

「ふふっ、相変わらず短気ですねぇ、メルト。でも、ここは私のドバイ。世界のルール(システム)は私が握っているんですよ?」

「それがどうし──っ!?」

対象を八つ裂きにすべく、鋼の脚が致命の踏み込みを見せようとした――その、刹那。BBドバイが、まるで戯れのようにパチンと指を鳴らす。

『――はい、権限剥奪(アクセス・デニード)です〜♡』

ウザ可愛くも、事象そのものを書き換える絶対的AIの宣告。それが響いた直後、メルトリリスの霊基を支えていた運動権限が物理法則ごと切断された。

カシャァン、という無機質な絶望の音とともに、誇り高きプリマドンナは糸の切れた人形のように崩れ落ちる。

♢

「痛いですか?でも、貴方の体のセンサーは、私のシステムで感度を極限まで引き上げてありますからね。痛みはすぐに、別の熱に変わりますよ?」

パァン、パァン、と。リズミカルで酷薄な打撃。尻肉が揺れるたびに、痛みは確かにあった。だが、バグによって痛覚を弄られたメルトリリスの神経は、その衝撃をすぐに甘い痺れへと変換し、股の奥をじんわりと濡らし始めていた。

【続】

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