甘い毒 (Pixiv Fanbox)
Content
春潮暗涌 放課後の校門を抜けると、湿った春の風がスカートの裾をまくった。私は慌てて手で押さえながら、胸の奥で跳ねる違和感をやり過ごす。四月なのに、妙に肌が火照る。 家までの十五分、私はいつもより少しだけ足を引きずるように歩いた。ブラジャーのワイヤーが脇腹に食い込んで、制服のブラウスが張り詰めている。クラスメイトの視線が背中に刺さるようで、無意識に前かがみになった。そうすると、余計に胸元が強調されるのだと知っていても。 玄関を開けると、出汁の匂いがふわりと漂ってきた。 「おかえり、晩晩」 母の声はいつも通り柔らかい。私はローファーを脱ぎながら、台所を覗いた。蘇玉柔は薄い藤色のカーディガンを羽織り、鍋の前に立っている。三十五歳とは思えないほど肌は白く、うなじに貼りついた髪の毛が艶っぽい。彼女は木べらを置くと、振り返って微笑んだ。 「今日はね、特別なスープを煮込んだの。あなたの受験にいいのよ」 私は鞄をソファに置き、食卓に近づいた。テーブルの上には、見慣れない白い箱がひとつ。ラベルはなく、蓋を開けると銀色のパウチが数袋、整然と並んでいる。 「これ、何?」 「栄養補助食品だって。脳の働きをよくして、疲れも取れるんですって。お母さんの友達が勧めてくれたの」 母はさらりと言うと、小鍋から白濁したスープを慎重にカップに注いだ。湯気が立ちのぼり、甘ったるい香りが鼻をつく。漢方でもなく、薬膳でもない、人工的な甘さ。 「熱いうちに飲みなさい。体が温まって、よく眠れるから」 私はカップを受け取った。陶器の温もりが両手に伝わる。一口含むと、舌の上でドロリとした液体が広がり、喉の奥で異様に甘く絡みついた。後味はほろ苦く、舌先がほんの少し痺れる。 「全部飲んで」 母の目が私をじっと見つめている。優しいのに、なぜか抗いがたい光があった。 私は息を止めて、残りを一気に飲み干した。胃のあたりが急に熱くなり、その熱はみるみる全身に広がっていく。指先がじんとしびれ、頭の芯がぼんやり霞み始めた。 「いい子ね」 蘇玉柔は空になったカップを受け取り、そっと私の髪を撫でた。その手のひらはひんやりと冷たくて、火照った額に心地よい。 「さあ、横になりましょう。お母さんが部屋まで連れて行ってあげる」 彼女の腕に支えられながら、私は廊下をふらふらと進む。足が綿のように力が入らない。階段を上がるたび、太ももの内側が擦れて熱い。自分の体が、自分ではない何かに変わっていくような、奇妙な浮遊感。 ベッドに倒れ込むと、シーツの冷たさだけが現実の感触だった。天井がゆっくりと回り、瞼が鉛のように重くなる。遠くで母が何か囁いているけれど、言葉の意味はもうわからない。 「……大丈夫……お母さんがいるから……」 その声は子守唄のように甘く、私の意識を深い闇へと押し流していく。体の奥底で、何かが静かに目覚める気配がした。熱くて、甘くて、少しだけ怖い――そんな感覚を抱えたまま、私は抗う間もなく眠りに落ちた。 最後に覚えているのは、母の指先が私の鎖骨をそっとなぞった感触と、カーテンの隙間から差し込む春の夕陽が、部屋中をどろりとした蜜色に染め上げていた光景だけだった。 甘さの異変 目が覚めると、布団の中で自分の体がひどく熱を持っていることに気づいた。寝間着の下、胸元のあたりがしっとりと濡れていて、太ももの内側にも嫌な湿り気がまとわりついている。そっと指で触れてみると、下着がぐっしょりと水分を含んでいて、肌に張り付いていた。 (これは……夢?) 昨夜のことはほとんど覚えていない。母が作ってくれた甘いスープを飲んで、それからすぐに眠ってしまった。ただ、なんだか変な夢を見た気がする。誰かの手が私の体を這い回って、熱い吐息が耳元でかかって……。 そこまで考えて、顔がかあっと熱くなった。こんなこと、考えちゃだめだ。きっとただの変な夢に違いない。生理が近いから、体が敏感になっているだけだ。 急いで下着を取り替え、制服に着替える。鏡の前に立つと、自分の頬がほんのり赤く染まっているのが見えた。なんだかいつもより、胸のふくらみが服の下で存在を主張している気がする。ブラジャーのサイズ、合ってるはずなのに……。 「晩晩、朝ごはんできてるわよ」 階下から母の声が聞こえて、私は慌てて髪を整え、鞄を持って階段を降りた。 食堂には、温かい豆乳と蒸しパンが並んでいた。母は台所で後片付けをしていて、私が席に着くのを待って向かいに座った。 「よく眠れた?」 「うん。ちょっと変な夢見たけど」 「そう。成長期の女の子は、そういうこともあるわよ」 母はさらりと言って、自分の豆乳を一口すすった。その口元に浮かんだ微笑みが、なぜだか少しだけ意味深に見えたのは、きっと私の気のせいだろう。 学校に着くと、いつもの朝の喧騒が私を包み込んだ。教室に入ると、方巧雲がもう席に座っていて、私を見ると嬉しそうに手を振ってくる。 「おはよう、林晚」 「おはよう」 私は隣の席に座って、教科書を取り出した。朝読書の時間が始まって、教室中に国語の暗唱する声が響き渡る。 教科書を立てて、声に出して読み始めたけれど、しばらくすると違和感に気づいた。制服のブラウスが、胸の先端に擦れるたびに、びりっとした電流のような感覚が走る。最初は気のせいかと思って無視していたけれど、読み進めるうちに、その感覚はどんどん強くなっていった。 (なにこれ……痛い……) 胸全体が張っている。生理前の張りとは違う、もっと直接的な、奥のほうからせり上がってくるような疼きがある。そして、ブラウスの縫い目が乳首のあたりをかすめるだけで、思わず息を呑んでしまうほどの鋭い刺激が走るのだ。 私は教科書を机の上に置いて、さりげなく机の縁に近づいた。でも、その動作がかえって仇になった。机の縁がちょうど胸の下のあたりに触れて、そのわずかな圧力でさえ、敏感になりすぎたそこには耐えがたいほどだった。 「んっ……」 思わず小さな声が漏れて、慌てて口を押さえる。 「林晚? どうしたの、顔赤いよ」 方巧雲が心配そうに覗き込んできた。私は首を振って、なんでもないふりをした。 「大丈夫。ちょっと暑いだけ」 「そう? 熱でもあるんじゃない?」 彼女のふっくらした手が私の額に伸びてきて、その優しい体温に少しだけほっとした。でも、手のひらが触れた瞬間、なぜだか心臓がドキドキと跳ねる。こんな感覚は初めてだった。 「熱はないみたいだけど……林晚、今日はなんだかいつもと違う気がする」 「どこが?」 「わかんない。でも、なんだか……綺麗になったっていうか」 方巧雲はそう言って、照れくさそうにうつむいた。その様子が可愛くて、私は思わず笑ってしまった。 朝読書が終わっても、胸の張りはおさまらなかった。むしろ、時間が経つにつれて、疼くような感覚は強くなっていく。休み時間にトイレに行って、鏡の前でそっとブラウスのボタンを緩めてみると、ブラジャーのレース部分が肌に赤い跡をつけているのが見えた。 (サイズ、やっぱり合ってないのかな……) でも、去年買ったばかりなのに。それに、こんなに敏感になるなんて、今までなかった。 結局、一日中なんとなく落ち着かない気持ちのまま授業を受けて、放課後はまっすぐ家に帰った。本当は図書館に寄ろうかと思ったけれど、体がだるくて、早く横になりたかったのだ。 玄関を開けると、甘い香りが鼻をくすぐった。あの香りだ。昨日と同じ、漢方のような、でももっと深みのある甘い匂い。 「おかえり、晩晩」 母が台所から顔を出した。手には、昨日と同じ白い湯飲みを持っている。 「ちょうどよかった。これ、昨日の続き。体にいい薬膳スープだから、今日も飲んでね」 私は鞄を置いて、母の手から湯飲みを受け取った。透明な琥珀色の液体が、湯気を立ててゆらゆらと揺れている。香りは昨日より少し濃い気がした。 「これ、何が入ってるの?」 「いろいろよ。当帰とか、棗とか、それから……女の子にいいものをね」 母はそう言って、優しく微笑んだ。その笑顔は昔から変わらない、私の大好きな母の顔だ。 「冷めないうちに飲みなさい」 私はためらわずに湯飲みを口に運んだ。一口含むと、昨日より甘さが強い。でも、その甘さは嫌な感じじゃなくて、むしろ体の奥がじんわりと温かくなるような、心地よい甘さだった。 ごくごくと喉を鳴らして、全部飲み干す。最後の一滴まで飲み終えると、体の中からぽかぽかと熱が広がっていくのを感じた。 「いい子ね」 母は空になった湯飲みを受け取ると、そっと私の頭を撫でた。その手のひらの温かさが、なぜだか今日はすごく気持ちよくて、もっと撫でてほしいと思ってしまう。 「明日も飲む?」 「ええ、しばらく続けるといいわ。そうすれば、もっと綺麗になれるから」 母の言葉に、私は素直にうなずいた。 自分の部屋に戻って制服を脱ぐと、鏡に映った自分の体が、なんだか昨日より大人びて見えた。胸は確かに張っていて、ウエストのくびれがいつもよりはっきりしている。それに、肌の色つやが良くなったような気がする。 (これが薬膳スープの効果なのかな……) ベッドに横になると、すぐに眠気が襲ってきた。瞼が重くなって、体全体がふわふわと浮いているような感覚に包まれる。 意識が遠のく直前、またあの夢の続きが見られるかもしれないと、どこかで期待している自分がいた。 湿った幻夢 最近、夢を見るようになった。同じような夢ばかりだ。暗がりの中で、誰かの指が私の肌を這い回る。顔は見えない。シルエットすら判然としない。けれど、その指先の動きだけは妙に鮮明で、目が覚めた後も皮膚の表面にじわりと残っている。 最初は気のせいだと思っていた。薬のせいで神経が過敏になっているだけだと。母が毎晩欠かさず飲ませてくれる、あの白い錠剤。味はほんのり甘くて、舌の上ですぐに溶ける。「体にいいものだから」と母は言う。叔母も同じことを言う。「晚の体をきれいにするお薬よ」と。 私は素直に飲み続けた。十七歳にもなって、まだ母親の言うことを疑いもせずに。 昨夜の夢は特に生々しかった。誰かの手が私の太腿の内側をゆっくりと撫で上げてきて、私は息を詰めた。逃げようとしたのに、体が動かない。金縛りみたいにシーツに縫い付けられていて、されるがままになっているしかなかった。その手は執拗で、知っているはずのない場所まで知っているみたいに、私の肌の上を迷いなく進んでいく。 唇もあった。熱い唇が首筋に押し当てられて、そこから何かが染み込んでくるような感覚。私は声を出そうとしたけれど、喉の奥から漏れたのは吐息だけで、それは自分でも驚くほど甘ったるい響きだった。 朝、目が覚めたとき、下着が湿っていた。私は慌ててシーツを確認したけれど、幸い汚れてはいなかった。ただ、体の芯がじんじんと疼いていて、起き上がるのにしばらくかかった。 「晚、朝ごはんよ」 母の声が階下から聞こえてくる。私はベッドから這い出して、鏡の前に立った。 パジャマのボタンを外す。白い肌が露わになる。私は自分の体をじっと見つめた。胸のふくらみは、この数週間でさらに大きくなった気がする。ブラジャーのサイズが合わなくなって、先週、母が新しいものを買ってきてくれた。以前よりワンサイズ上のものだ。 鏡の中の私は、少しだけ別人みたいに見えた。顔立ちは相変わらず私なのに、目のあたりに妙な艶がある。頬もほんのりと上気していて、熱があるのかと手のひらを当ててみたけれど、平熱だった。 視線を下ろす。胸の先端、乳輪の色が濃くなっている。前はもっと淡いピンク色だったはずなのに、今はくっきりとした茶褐色に変わっていた。それだけじゃない。よく見ると、左の乳房の側面に、うっすらと赤い痕がついている。 指の痕だ。 私は息を呑んだ。五本の指が、誰かの手が、そこを握ったみたいに。痕はかすかで、よく見なければ気づかない程度だけれど、一度気づいてしまうともう目を離せなかった。 「夢遊病かも」 私は小声で呟いた。小さい頃、一度だけ夜中に歩き回ったことがある。母が言うには、無意識に台所まで行って、冷蔵庫を開けようとしていたらしい。その後は一度もなかったけれど、また始まったのかもしれない。 自分で掻いたのだろうか。夢の中で、誰かの手を振り払おうとして、逆に自分の肌を傷つけてしまったのかもしれない。 そう思うことにした。そう思わなければ、怖くて仕方がなかったから。 「晚? 遅刻するわよ」 「は、はい、今行きます」 私は急いで制服に着替えた。スカートのホックを留めるとき、ウエストがきつくなっているのに気づいた。太ったのだろうか。でも、体重計に乗ると数字はほとんど変わっていない。ただ、肉のつき方が変わったみたいに、腰回りが丸みを帯びてきている。 朝食の席で、母はいつも通り穏やかな笑みを浮かべていた。 「昨日はよく眠れた?」 「……はい」 「それならよかった。今日も夜になったらお薬を飲みましょうね」 私はパンをちぎりながら、ちらりと母の顔を見た。三十五歳の母は、まだ若々しくて美しい。肌にはつやがあり、髪も豊かだ。でも、目の下にうっすらと隈ができているのが、最近気になる。仕事が忙しいのだろうか。 「お母さん、最近、ちゃんと眠れてる?」 母の手が一瞬止まった。けれど、すぐにまた動き出す。 「ええ、大丈夫よ。お母さんのことは心配しなくていいから」 「でも、目の下に隈が……」 「年のせいよ」 母はそう言って笑った。その笑顔は優しかったけれど、どこかで線が引かれているみたいに、それ以上踏み込ませてくれなかった。 学校に着くと、いつも通り教室に向かう。廊下ですれ違う生徒たちが、私を見る。それは前からあったことだ。私は昔から、どちらかというと目立つ体型をしていたから。 でも、最近は視線の質が違う気がする。 前は「あの子、ちょっとぽっちゃりしてるよね」みたいな、軽い好奇の目だった。今はもっと、こう、ねっとりと絡みつくような視線が多い。特に男子生徒のそれが顕著で、私が歩いていると、彼らの目が私の胸や腰に吸い寄せられるのを感じる。 気のせいじゃない。実際に、この前なんて、すれ違いざまに上級生の一人が振り返って、じっと私のお尻を見ていた。友達と笑いながら何か囁いていて、たぶん、ろくなことじゃない。 私はそういう視線が苦手だった。昔からずっと。だからいつも俯き加減に歩いていたし、制服も大きめのサイズを選んで、なるべく体の線を隠していた。 なのに、最近は違う。 視線を感じると、体が勝手に反応してしまうのだ。背筋が伸びて、胸が張られて、歩き方がゆっくりになる。自分でも制御できない。頭では「やめて」と思っているのに、体はまるで、もっと見てほしいと言わんばかりに動く。 教室の自分の席に座ると、隣の席の方巧雲が話しかけてきた。 「林晚、おはよう」 「おはよう、巧雲」 方巧雲は私の数少ない友達の一人だ。少しぽっちゃりした体型で、眼鏡をかけていて、いつもおどおどしている。彼女は私に対して、なんだか特別な態度をとることがある。じっと見つめてきたり、必要以上に触れてきたり。 今もそうだ。彼女の視線が私の胸元に落ちている。 「どうしたの?」 私が声をかけると、巧雲は慌てて目をそらした。 「う、ううん、なんでもない。ただ、林晚、最近なんか雰囲気が変わったなって」 「雰囲気?」 「うん。前よりも……その、きれいになったというか」 彼女の頬が赤くなっている。私は曖昧に笑って返したけれど、心の中は複雑だった。きれいになった。そう言われるのは嬉しいはずなのに、なぜか素直に喜べない。この変化は、私が望んだものじゃない。薬を飲み始めてから、体が私の意思を離れて、勝手に変わっていっているような気がする。 一時間目の授業中、私はノートをとるふりをしながら、ぼんやりと窓の外を見ていた。体育の授業なのか、グラウンドでは男子生徒たちが走り回っている。その中に、バスケ部の先輩がいた。名前は知らない。ただ、背が高くて、肌が浅黒くて、笑うと歯が白い人だ。 彼がシャツの裾で汗を拭う仕草を見た瞬間、私の下腹部がきゅうっと疼いた。 自分でもぎょっとする。なんで、どうして。私はその先輩と話したことすらないのに。顔もよく知らないのに。 なのに、体は彼を欲しがっているみたいに、じわじわと熱を持っていく。太腿の間が湿って、スカートの下でそっと脚を擦り合わせた。誰にも気づかれないように、こっそりと。 その夜、また夢を見た。 今度は前よりもはっきりしていた。私はどこかの部屋にいて、ベッドに仰向けに寝かされている。部屋は薄暗くて、壁の色もわからない。ただ、シーツがやけに冷たくて、背中にひやりと張り付く感触だけが現実みたいだった。 誰かが私の上に覆いかぶさっている。顔は相変わらずぼやけているけれど、体格からして男の人だ。肩幅が広くて、私の体をすっぽりと覆い隠してしまう。 その人の手が、私の制服のボタンを外していく。私は抵抗しようとした。でも、手が動かない。声も出ない。口を開こうとしても、唇がぴったりと閉じたままで、喉の奥からかすかな吐息が漏れるだけだった。 ボタンが全部外されて、ブラジャーが露わになる。その人の指が、ブラジャーの上から私の胸をなぞった。ゆっくりと、円を描くように。 「やめて……」 心の中で叫んでも、言葉にならない。指は構わず動き続ける。ブラジャーのレース越しに、私の乳首が硬く尖っていくのがわかった。それが恥ずかしくて、情けなくて、涙が出そうになる。 その人は私の耳元に顔を寄せた。熱い息がかかる。 「気持ちいいんだろう」 声がした。低くて、少し掠れた男の声。聞き覚えがあるような、ないような。 違う、気持ちよくなんかない。私は首を振ろうとした。でも、その人の手がブラジャーの中に滑り込んできて、直接肌に触れた瞬間、私の体は嘘をついた。背中が弓なりに反り返り、口からはあえぐような声が漏れた。 「ほら、やっぱり」 その人は笑っているようだった。指が私の胸の先端を摘み上げる。私は声を殺そうとして、唇を噛み締めた。でも、指が動くたびに、体の奥から甘い痺れが込み上げてきて、太腿の内側が勝手に震える。 その人のもう一方の手が、私のスカートの中に入ってきた。下着の上から、そこをゆっくりと押される。私は全身を硬直させた。そこはもう、信じられないくらい濡れていた。布地がぐっしょりと湿っていて、指が滑るのが自分でもわかる。 「こんなに濡らして」 声がまた聞こえた。今度は少し驚いたような響きだった。 「まだ何もしてないのに。よほど期待してるんだな」 違う。違うのに。私は違うと叫びたかった。でも、その人の指が下着の脇から中に入り込んできて、直接そこに触れた瞬間、私の意識は白くかき消された。 目が覚めたのは、夜中の三時だった。 心臓がばくばくと鳴っていて、全身に汗をかいていた。パジャマが肌に張り付いて気持ち悪い。私は起き上がって、暗がりの中で自分の体を抱きしめた。 下着が濡れている。それだけじゃない。シーツまで湿っていた。 私は慌ててベッドから降りて、シーツを剥がした。月明かりの下で見ると、濃い色の染みが広がっている。おしっこじゃない。そんなはずはない。これは、その…… 私はその場にしゃがみ込んだ。体中が震えていた。夢だ。ただの夢だ。そう思いたいのに、体に残る感触があまりにもリアルで、まるでさっきまで本当に誰かに触られていたみたいだった。 着替えを探そうとクローゼットを開けたとき、部屋のドアが静かに開いた。 「晚?」 母だった。寝間着姿で、手にコップを持っている。 「どうしたの、こんな時間に」 ※本文が長いため、FANBOXで公開できる範囲に自動的に短縮しています。