同性愛矯正施設 (Pixiv Fanbox)
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親友の秘密
薄暗い部屋の中、午後の光がカーテンの隙間から細く差し込み、乱れたシーツの上に二つの裸の身体が絡み合っていた。林宇はまだ胸の高鳴りが収まらず、親友の翔太の肩に額を押し当て、汗ばんだ互いの体温を確かめ合う。初めてだった。ずっと押し殺していた想いを翔太が受け止めてくれたことが、何よりも嬉しかった。行為の余韻と、秘密を共有した安堵感が、少年の全身をふわふわと包んでいた。
「宇、好きだよ」
翔太の掠れた声が耳元で囁かれ、林宇は顔を上げようとした。その瞬間、廊下から足音が近づき、ノブが回る金属音が響いた。
「宇? お母さん、今日早く終わっ──」
パート先から思いがけず早く戻った母親が、ただいまも言わぬままドアを開け放つ。逆光に浮かぶ母親のシルエットが、まるで石のように硬直した。手に提げていたスーパーの袋が、重力に従い鈍い音を立てて床に落ちる。
「な、なにやってるの……!」
母親の悲鳴にも似た声が狭い部屋を貫いた。林宇の全身から血の気が引き、隣で翔太が弾かれたように飛び起きる。二人は慌ててシーツを引き寄せたが、何もかももう遅かった。すべて見られてしまった。
「誰? あなた……翔太くん? どうして、なんで裸で……」
母親は言葉を継げず、震える指で翔太を指した。翔太は床に散らばった服を掻き抱き、必死にパンツを穿くと、シャツも着ずに林宇の部屋を飛び出していった。林宇は裸のまま呆然と座り込み、「違うんだ」と頭の中で繰り返すばかり。口から零れたのは、意味を成さない喘ぎだけだった。
やがて玄関のドアが乱暴に閉まる音がし、静寂が訪れた。母親はその場に崩れ落ち、両手で顔を覆って涙をこぼし始める。林宇は這うようにベッドから降り、何とか服を身に着けた。母親に手を伸ばすが、その指先は初めて触れる他人のように冷たく拒まれた。
「お父さんに、電話しなきゃ……」
母親の震える声が、林宇の胸を深く抉った。
夕闇が部屋を包む頃、父親が仕事を早退して帰宅した。玄関を軋ませる足音はいつもより重く、リビングのドアが開かれた瞬間、林宇は座っていたソファから立ち上がれなくなった。父親のこめかみには青い血管が浮き、押し殺した怒りが大気を張り詰めさせる。母親は目の周りを赤く腫らし、茶の間に小さく縮こまっていた。
父親はテーブルに、林宇のスマートフォンを無造作に置いた。
「林宇」
その一声だけで、林宇の背筋に冷たいものが走った。父親の目は、息子を見る目ではなかった。汚物を見下ろすような、侮蔑と嫌悪に満ちた視線。
「家門の恥だぞ」
絞り出すような低い声が落ちた。林宇は必死に頭を下げ、声を震わせた。
「ごめんなさい、お父さん……。でも、翔太のことは、俺、本気で……」
「黙れ!」
平手がテーブルを叩き、マグカップが跳ねて鈍い音を立てた。林宇の言葉は物理的に遮られ、喉の奥で潰えた。
「お前は病気だ。手遅れの、腐れきった病に罹っておる。放っておけばどんどん膿み、人として終わるぞ」
病気という断罪が、林宇の胸を貫く。違う。病気なんかじゃない。そう叫びたかった。しかし、父親の前でそれを否定できるだけの勇気は、十八年の従順によって粉々に砕かれていた。
「違うんです、お父さん、お願いです、違うんです……!」
床に膝をつき、縋るように父親の足元へ手を伸ばす。だが父親は冷たく一瞥くれただけで、母親に向き直った。
「お前も目を離すからこうなる。二度とあんなことがないよう、俺が手を打つ」
父親はそれだけ言い置いて書斎へ篭り、重い扉を閉ざした。リビングに残された林宇と母親の間には、埋めようのない沈黙が落ちた。母親はすすり泣きながら、何度も「ごめんね、ごめんね」と繰り返すばかり。林宇は母の足に縋ろうとしたが、彼女はそっと身を引き、抱きしめてはくれなかった。
壁越しに、父親が誰かと話す低い声が漏れ聞こえる。「全寮制」「期間は最低でも」「矯正プログラム」──そんな断片が鼓膜に張り付く。林宇は弾かれたように立ち上がり、書斎のドアに駆け寄った。
「お父さん、やめて! 俺、どこにも行かない! 翔太に会わせてください!」
ドアを拳で叩き、声を嗄らして叫んだ。けれども、中からの返事はなく、代わりに母親が背後から林宇の肩を掴んだ。
「宇、お願い。お父さんの言うことを聞いて。悪いようにはしないから」
「嫌だ! 俺はおかしくなんかない!」
必死に首を振る林宇を、母親はただ泣きながら見守るしかなかった。彼女の瞳には深い罪悪感がありありと浮かんでいたが、夫に逆らうだけの意思はどこにもなかった。
やがて書斎のドアが開き、父親が無表情で出てきた。手にしたスマートフォン──林宇のものだ。画面を操作し、いくつかのボタンを押す。そして、それを林宇に見せつけるように掲げた。
「これで終わりだ。翔太との関係は、今ここで断ち切る」
画面には、ブロック完了の表示が冷たく光っていた。林宇は崩れ落ち、喉から引き絞るような嗚咽が漏れた。
その夜、林宇は自室に軟禁された。母親は泣き腫らした顔で押し入り、無言のままリュックサックに着替えやタオル、歯ブラシを詰め始める。林宇はその手を掴み、しがみついた。
「お母さん、お願いだ……行きたくない。お母さんからもお父さんに言ってくれよ……」
母親の手が止まる。しかし、すぐに弱々しく首が横に振られた。
「お父さんが決めたことだから。すぐに……きっと良くなるから。ね、宇、いい子だから、言うことを聞いて」
「いい子ってなんだよ! 俺は、ただ……!」
反論しようとした瞬間、部屋のドアが勢いよく開いた。父親の大きな手が無慈悲に林宇の細い腕を掴み、ベッドから引き剥がす。林宇は激しく身をよじったが、父親の力には抗えなかった。
「明日の朝、迎えが来る。余計な真似はするな」
翌朝、まだ夜明け前の薄闇の中、家の前に一台の黒いバンが静かに停まった。無機質で窓の小さい車体は、まるで護送車のように冷たい威圧感を放っている。運転席から強面の男が降り立ち、もう一人、ロープのような頑強な体格の男が助手席側から現れた。朝霧に煙る街並みはまだ眠っており、この異常な光景に気づく者はいない。
玄関には、林宇のリュックサックを持った母親が立っていた。一睡もできなかったのだろう。その顔は青白く、唇は血の気を失って震えている。林宇は父親に肩を掴まれ、玄関へと連れ出された。外気が冷たく、腕に鳥肌が立つ。
「お願いだ……謝るから。二度としませんって、約束するから!」
林宇は振り絞るように声を上げ、母親に縋ろうとした。しかし、父親の腕が素早くそれを阻む。母親の目から大粒の涙が溢れ、彼女は口を手で覆って嗚咽を殺した。
「連れて行け」
父親の短い命令が下る。男たちは手際よく林宇の両腕を掴み、半ば引きずるようにバンの後部座席へ押し込んだ。林宇は脚をばたつかせ、車のシートに爪を立てて抵抗した。
「翔太! 翔太に会わせて!」
叫び声が、無機質な車内に虚しく響く。ドアが無慈悲に閉められ、外の音が遮断された。窓越しに、立ち尽くす父親と、泣き崩れる母親の姿が小さくなっていく。エンジンが唸りを上げ、バンが静かに動き出した。
林宇は窓ガラスに何度も拳を打ちつけた。「降ろしてくれ! 俺は病気なんかじゃない!」 運転手も、隣の男も、一切振り返らない。
街並みが流れ去り、見知ったコンビニも、通学路も、翔太と待ち合わせた公園も遠ざかる。やがて高速道路に乗ったとき、助手席の男がようやく振り返り、冷ややかな笑みを浮かべた。
「陽光修身キャンプにようこそ。そこでしっかり躾け直してもらえ。お前みたいな出来損ないは、俺たちが治してやる」
その言葉で、林宇ははじめて「陽光修身キャンプ」という名称を明確に認識した。それが何を意味するのか──同性愛矯正施設。絶望が濁流のように押し寄せ、叫ぶ力も失せる。涙だけが止めどなく頬を伝い、震える膝を抱え込む。
翔太にもう一度会うことすら、もう許されない。声を聞くことも、メッセージを送ることも不可能だ。断ち切られた絆の痛みと、得体の知れない施設への恐怖が、林宇の心をぐちゃぐちゃに掻き乱す。窓の外を流れる灰色の空だけが、ただひたすらに遠く、無感動だった。
鉄の扉の向こう側
父の車の後部座席は、まるで屠殺場へと向かう家畜を運ぶ檻のように冷たく狭かった。窓の外では、見慣れた街並みが後方へと流れ去っていく。そのすべてが、永遠に手の届かないものになるかのように、林宇の目には映っていた。指先が痺れ、腹の奥底で何かが冷たく凝固していくのを感じる。父はハンドルを握ったまま、ただの一度も振り返らなかった。ただ硬く結ばれた口元と、凍りついたような横顔があるだけだった。
「どこに連れて行くんだ」という問いは、もう何百回も喉元までせり上がってきた。だが、そのたびに、昨夜の書斎での光景がフラッシュバックする。机の上に叩きつけられた、親友との親密な写真の束。母のくぐもった嗚咽。そして父が絞り出すように言った、たった一言——「家門の恥だ」と。
車はやがて、市街地を抜け、舗装も満足でない一本道へと入っていった。両脇には放置された工場跡地や、錆びついた鉄骨が剥き出しになった廃墟が続いている。雑草がアスファルトを食い破り、窓ガラスの割れた建物が虚ろな目で彼らを見下ろしていた。
「ここは……?」
思わず声が漏れた。父は答えない。
車は減速し、やがて一際大きな、灰色の倉庫の前に停止した。かつては何かの資材置き場だったのだろう。窓という窓はすべて鉄板で塞がれ、高い塀と有刺鉄線だけが妙に新しく、不気味なまでに整備されている。入口の重厚な鉄扉の上に、一枚の看板が掲げられていた。「フィットネス・キャンプ」——その文字は、いかにも安っぽい印刷で、かえって異様さを際立たせている。
父がようやく口を開いた。振り返らず、バックミラー越しにすら林宇を見ない。
「ここで、ちゃんと矯正してもらえ。すべてはお前のためだ。家のためだ。分かるな?」
「父さん……僕は、ただ……病気なんかじゃ……」
「黙れ!」
父の怒声が車内に炸裂し、林宇は身体を竦ませた。それきり、父は何も言わなくなった。やがて鉄扉が内側から重苦しい音を立てて開き、中から黒いタンクトップ姿の屈強な男が一人、姿を現した。趙剛だ。
彼は軍人を思わせる角刈り頭で、無駄のない歩き方で近づいてきた。日焼けした太い腕と首筋には、古い傷跡がいくつも刻まれている。その目は値踏みするように林宇を一瞥し、次の瞬間には、ビジネスライクな笑みを浮かべて父と握手を交わしていた。
「お待ちしていました、林さん。ご安心ください。ここで三ヶ月もすれば、息子さんはすっかり『真っ当な男』になって家に戻れます」
その「真っ当な男」という言葉に、父の表情がわずかに緩むのを、林宇は見逃さなかった。
「頼みます。どうか、この子を……」
「ええ、すべて我々にお任せを。さあ、坊や」
趙剛の巨大な手が伸びてきて、林宇の細い二の腕を掴んだ。それはまるで万力のような、抗うことすら許さない握力だった。車の外へと引きずり出される瞬間、林宇は反射的に父の方へ手を伸ばした。
「父さん! やだ! 帰りたい!」
しかし父は、苦渋に満ちた顔で顔を背け、車のエンジンをかけた。排気ガスと砂埃を巻き上げながら、黒いセダンはこの悪夢のような場所に林宇だけを置き去りにして、来た道を走り去っていく。
「いやあああ! 父さん! 父さん!」
叫ぶ林宇の腕を、趙剛は無造作に捻り上げ、ほとんど引きずるようにして鉄扉の内側へと押し込んだ。
扉が閉まる音は、死刑宣告のように重々しかった。
内部は、古い倉庫の躯体をそのまま利用した、歪なトレーニングスペースだった。剥き出しの鉄骨がむき出しの天井高くで交差し、湿ったコンクリートの床と、汗とカビと、何か別の生臭い匂いが混ざり合っている。照明は薄暗く、ところどころ蛍光灯が不気味に明滅していた。壁一面には、誰が書いたのか、赤いペンキで巨大な標語がペタペタと殴り書きされている。「正しさへ、位置へ、雄へ」。文字の掠れ方や、血しぶきのような赤黒い飛沫が、単なるスローガンではない異様な迫力を放っていた。
空間の中央には、剥き出しの鉄骨で組まれたベンチプレス台や、鎖のついたバーベル、そして壁際にずらりと並ぶ、大きな犬か何かのためのような鉄の檻。その向こうに、ロープやベルト、鞭のようなものが無造作に掛けられた一角があるのも見えた。
「趙磊! 獲物だぞ!」
趙剛の野太い声が倉庫全体に響き渡り、やがて物陰からひょろりとした人影が姿を現した。趙磊だ。趙剛とは対照的に、ひどく青白く痩せ細り、目つきだけが異様にぎらついている。手には冷たく光る金属製の鞭が遊んでいる。
「へえ……今度のはずいぶんと上玉じゃねえか、兄貴」
趙磊はねっとりとした視線で、林宇の頭のてっぺんから爪先までを舐め回すように眺めた。その口元には、薄気味悪い薄笑いが張り付いている。
林宇は恐怖で声も出ず、ただ震えながら後ずさりした。
「よく聞け、新入り」
趙剛が突如として号令のように言い放ち、鉄のロッカーから一枚の紙片を掴み取った。それは「課程規則」と大きく印字された、悪趣味なまでに事務的な文書だった。
「第一条! 外界との一切の接触は禁止! 電話、手紙、面会、一切合切だ! 第二条! 教官の命令は絶対服従! 質問、反抗、弁解は許されない! 第三条……」
趙剛は規則を読み上げるたびに、一歩ずつ林宇ににじり寄る。
「……第三条! 課程の一環として、身体検査に従う義務がある!」
読み終えると、趙剛は紙片を乱暴に丸めて放り投げた。
「さて、今すぐ身体検査を始める。服を脱げ」
「……え……?」
林宇は何を言われたのか、すぐには理解できなかった。
「聞こえなかったのか? 全部脱げと言ってるんだ、このクソガキが!」
趙磊が突然、手にした鞭でコンクリートの床を力任せに打ちつけた。パァン! という乾いた炸裂音が、無機質な空間に鋭く響き渡る。林宇は悲鳴を上げて飛び上がり、その場にへたり込みそうになった。
「早くしろよ。それとも俺が剥いてやろうか?」
趙磊は鞭を持ち替え、その先端で林宇のTシャツの裾を、まるで玩具を弄ぶかのようにチラリと持ち上げた。その生温かい笑みと、ぎらついた目。林宇は全身の血の気が引き、指先が震えて思うように動かなくなった。羞恥よりも、絶対的な暴力への恐怖が、彼の身体を硬直させた。
泣きじゃくりながら、林宇は一枚、また一枚と服を脱いでいった。シャツ、ジーンズ、靴下。そのすべてが、薄汚れた床の上に無残に崩れ落ちる。十代のまだ柔らかな肌が、薄暗く淀んだ空気に晒され、鳥肌が立っていく。最後の一枚になった下着に手をかけたとき、彼はどうしても動けなくなった。
「……お願いです……これだけは……」
その懇願は、趙磊の嗜虐心を刺激するだけだった。趙磊は一歩踏み出すと、鞭の柄で林宇の顎をグイと持ち上げ、強制的に目を合わせさせる。
「ここじゃあ、てめぇのプライバシーも尊厳も、全部クソだ。覚えとけ」
そう言って、彼は乱暴に林宇の下着を引き下ろした。
趙剛は腕を組み、冷めた目でそれを見下ろしている。検査官というよりは、家畜の品定めをする買い手のようだった。
「ふん。身体は軟弱そのものだな。だが、骨格は悪くない。調教のし甲斐はありそうだ」
「へへ……そうだな、兄貴。こいつはなかなか泣き顔も可愛いじゃねえか」
趙磊は鞭の先で、林宇の背中を軽く叩いた。それは痛みよりも、屈辱と悪寒をもたらす、虫が這うような感触だった。林宇は両手で前を隠したまま、ただ声を殺して泣くことしかできなかった。
「初日の夜は、ここで寝ろ」
趙剛は壁際に並ぶ檻の中の一つを指さした。それは人間が一人、膝を抱えてようやく入れるかどうかの大きさで、底には薄汚れた毛布が一枚敷かれているだけだ。
「鉄格子の中で一晩過ごせば、自分がどういう立場か、少しは学べるだろう」
趙磊は、壊れた人形のように脱力した林宇の腕を掴み、無理やり檻の中へと押し込んだ。
ガチャン。
錠の下りる重苦しい金属音が、彼の新しい人生の始まりを冷酷に告げた。
裸のまま冷たい鉄格子にしがみつき、林宇は暗闇の中で声にならない嗚咽を漏らした。鉄格子の隙間から見える「正しさへ、位置へ、雄へ」という赤い文字が、まるで怪物のぎらつく瞳のように、遠くの壁で不気味に浮かび上がっていた。
そして檻の外では、趙磊が鞭を弄びながら、子守唄でも歌うかのように低く囁いた。
「ゆっくり休めよ……明日からが、地獄の始まりだからな」
征服の第一課
朝五時。地下室の蛍光灯がジジ、と点滅して、まだ夜の闇を引きずった薄暗い空間に白々しい光の筋を落とした。林宇は固い床板の上で丸まり、昨夜の凌辱でぐっしょりと濡れたトレーニングウェアのまま眠っていた。筋肉という筋肉が悲鳴を上げ、肛門にはまだ鈍痛が残っている。その痛みすら、ここではもはや異常ではない。
「起きろ」
腹の底に響く重低音。目を開けるより早く、脇腹に衝撃が走った。趙剛の軍用ブーツのつま先が、容赦なく腎臓のあたりを蹴り上げたのだ。林宇は息を詰め、咳き込むこともできずに床を転がる。
「訓練だ。腕立て伏せの用意」
趙剛は両腕を組み、鉄の彫像のように林宇を見下ろしていた。黒いタンクトップの下で盛り上がる大胸筋、太い首、剃り上げた角刈り。彼は元特殊部隊員という経歴を誇示するかのように、常に背筋を伸ばし、無駄な動きを一切しない。その目は獲物を値踏みする肉食獣のように細められ、口元には薄い笑みすら浮かんでいる。
林宇は震える両腕で上体を起こし、四つん這いになった。腕立て伏せの姿勢をとろうとすると、肘がカクカクと笑う。まだ十八歳の痩せた体は、ここ数日で既に限界を超えていた。
「一回。二回。三…」
肘が折れた。胸が床にべったりとつく。
瞬間、股間に電撃のような痛みが走った。趙剛が手にした警棒……特殊警棒を、林宇の股座に下から突き上げたのだ。金網で覆われた先端が、まだ柔らかい睾丸を圧迫し、陰嚢ごと押し潰す。林宇は声にならない悲鳴を上げ、腰を跳ね上げた。
「三回目だ。やり直し」
趙剛は無表情で警棒を引き抜き、今度は先端で林宇の肛門のあたりをトントンと叩く。「次に落ちたら、ここを広げて中まで磨いてやる」
林宇は必死に歯を食いしばり、再び腕を伸ばした。汗が目に入り、視界が滲む。鼻水が垂れたが、拭う余裕もない。腕立て伏せを続けながら、彼は自分が犬か何かのように躾けられているのだと、ぼんやりと思った。いや、犬の方がまだマシかもしれない。少なくとも犬は、股間を棒で突かれたりはしない。
十五回を数えたところで、また腕が崩れた。今度は趙剛は警棒を使わなかった。代わりに、林宇の後ろ頭を掴み、その顔面をそのまま冷たいコンクリートの床に叩きつけた。鼻骨がメリ、と嫌な音を立て、生暖かい血が唇を伝う。
「無能が」
趙剛は吐き捨てるように言い、しゃがみ込んで林宇の髪を掴んで顔を上げさせた。
「お前はここで、一から作り直されるんだ。その無駄に若い体も、その歪んだ頭も、全部な。泣き言は一切許さない。理解したか」
林宇は鼻血で真っ赤になりながら、必死に頷いた。
「よろしい」
趙剛は立ち上がり、満足そうに鼻を鳴らした。
「連れて行け」
その声に、背後で待機していた趙磊がニヤリと笑って進み出てきた。彼は兄よりも細身だが、目つきはより鋭く、蛇のように粘着質な雰囲気を漂わせている。黒いレザーの手袋をはめ、何かを期待するかのように指を何度も曲げ伸ばしていた。
「さあ、ベイビー。次の特別講義だ」
趙磊は林宇の腕を掴んで立たせると、ほとんど引きずるようにして部屋の隅にあるベンチプレス台へと連れて行く。古いタイプの頑丈な台だ。革張りのシートはひび割れ、無数の汗の染みが地図のように広がっている。そして両端には、既に太い黒いベルトが数本、用意してあった。
「抵抗するなよ。抵抗すればするほど、楽しくなっちまうからな」
趙磊は耳元でそう囁きながら、林宇のトレーニングウェアの上下を乱暴に剥ぎ取った。裸にされた林宇の体は痩せ細り、肋が浮き出ている。青白い肌のあちこちには、前日までに付けられたミミズ腫れや内出血の痕が、紫や黄色の花を咲かせていた。
まず両手首を、ベンチ台の脚部に固定するためのベルトできつく縛り上げる。次に、両足首を大きく開脚させた状態で、台の反対側に縛り付ける。最後に腰の上にベルトを通し、身動きを完全に封じた。林宇は磔にされたような格好で、無防備な股間と肛門を天井に向けて晒すことになった。
「いい眺めだ」
趙磊はゴム手袋をはめる仕草をしながら、わざとらしく手首をスナップさせた。ゴムのパチンという音が、地下室に異様に大きく響く。
「今日はな、お前の“内視検査”をする。内部構造が俺たちの規格に合っているかな。今後の訓練メニューを決める大事な検査だ」
趙磊はそう言うと、冷たい潤滑ゼリーをチューブから直接、林宇の肛門めがけて絞り込んだ。ヒヤリとした感触に、括約筋が反射的にきゅっと窄まる。
「ほら、力を抜け。拒むんじゃない」
レザー手袋をはめた趙磊の人差し指が、容赦なく肛門に押し込まれた。
「ひっ…!」
昨日の陵辱でまだ傷ついている粘膜を、異物が無理やりこじ開ける。林宇は首をのけぞらせ、ベルトが食い込むのも構わずに手足をバタつかせた。しかし趙磊の指は構わず奥へ奥へと侵入し、第二関節、第三関節まで埋まっていく。指の腹で腸壁をぐりぐりと撫で回し、前立腺のあたりを執拗に圧迫する。
「あっ、やめ…やめて…」
「やめないよ。ほら、ここがお前の性感帯だ。もう少し訓練すれば、ここを刺激されるだけでイけるようになる。俺たちのペットとしてな」
趙磊はうっとりとした口調で言いながら、今度は中指まで加え、二本の指で内側から広げるように掻き回す。林宇の腰がビクンビクンと痙攣し、意思に反して陰茎がゆっくりと頭をもたげ始める。
「趙剛、見てくださいよ。こいつ、もう感じてますぜ」
趙磊が笑いながら言うと、いつの間にか近くに立っていた趙剛が、腕を組んだまま冷ややかに林宇の股間を見下ろした。
「当然だ。この手の変態は、所詮尻の穴でしか物を考えられない」
趙剛は唾を吐き捨て、林宇の顔にそれがかかる。林宇は羞恥と屈辱で顔を真っ赤にしながら、しかし体の芯から込み上げる奇妙な疼きを否定できず、ただ涙を浮かべて唇を噛むことしかできなかった。
十分ほど執拗に内部を弄繰り回した後、趙磊はようやく指を引き抜いた。ゴム手袋は糸を引く粘液でテラテラと光っている。彼はそれをわざと林宇の目の前で外し、その手袋で林宇の頬をペチペチと叩いた。
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