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第1章

深夜の帳がすっかり下りた部屋で、沈夢遥は姿見の前に立っていた。部屋の明かりはわざと暗めの暖色に調節され、オレンジがかった光が彼の肌に溶ける蜜のように降りかかる。彼はゆっくりと上質なシルクの寝間着を脱ぎ捨てた。現れたのは、グレーのキャミソールとそれに合わせた同じ色のレースのストッキングを身につけた体――まるで女性のために誂えられたような絶妙な造形だった。


キャミソールの細いストラップが、ほっそりと滑らかな肩に掛かり、鎖骨の浅いくぼみが光を受けて柔らかな影を落としている。肩の線は驚くほど狭く、角ばったところが一切なく、むしろこの上なく豊満で丸みを帯び、少女のような柔らかさを醸し出していた。視線が下りていくと、平らで硬いはずの男性の胸はそこにはなく、少女の乳房のようにふっくらとした雪のような柔肉が、わずかに隆起し、シルクの生地を優しく押し上げている。その膨らみは豊かで柔らかく、触れればとろけてしまいそうなほどだった。


鏡の中の彼は、体をそっと傾ける。布地が腰のあたりできゅっと細くなり、そのくびれたラインをぴったりと包み込んでいる。そこには余分な脂肪など一グラムもなく、長年の訓練によって鍛え上げられた、女性らしいなだらかな馬甲線があった。そして視線をさらに下へやると、普通の男性の平坦で薄っぺらい臀部とは全く異なる、雪のようになだらかな盛り上がりが、丸く豊かにせり上がり、ほんの少しだけ上向きに反っている。脚はすらりと伸び、太ももの付け根はふっくらとしていて、その曲線はまるで水の流れのように柔らかく、レースの縁が肌に繊細な模様を刻み、すべての肌のきめが雪のごとく透き通り、張りがあって滑らかだった。決して日光に晒さない肌は、ほのかに冷たい感触を帯び、手を触れればその瞬間に温かくきめ細かい吸い付くような感触が返ってくる。彼の手も足も小さく、肉付きがよくて柔らかく、豊満な感じがした。


彼は顔を上げ、ぼんやりとした光の中で自分の顔を見つめる。眉は絵に描いたように繊細で、目は秋の湖面のように澄み、鼻梁のラインは精巧で、形の良い唇はうっすらと閉じられている。その顔立ちは冷たく端正で、孤高な雰囲気を漂わせているが、よく見ると眉目や立ち居振る舞いの端々から、どうにも抗えない艶かしい風情が滲み出ており、まるで骨の髄から染み出す毒のように、言葉にできない誘惑を放っていた。


「本当に……まるで女の子みたいだ。」


彼は低く呟くと、細い指でそっと自分の頬を撫でた。指先が滑らかな肌の上を滑っていく。鏡の中の自分は、誰が見ても紛れもない女性の姿をしている。あるいは……女性よりもなお美しい。この数年間の身体トレーニングと美容ケアが、彼の肉体のあらゆる曲線を完璧に近い柔らかさと凹凸へと磨き上げ、少女にしか持ちえないような魅力を帯びさせた。表向きには彼は冷淡で孤高を気取る一匹狼のエリート社員を演じているが、内心には、ほとんど病的な女装への執着と、鎖の奥底で身動きの取れない黒人崇拝とマゾヒズムの欲望を深く隠している。彼は自分の身体が、男に蹂躙されるために生まれてきた真っ白な器であることを、あまりにもよく知っていた。


深く息を吸い込み、沈夢遥は目を閉じる。彼の心の奥底に、長く埋もれていた記憶の扉が、きしみを立ててゆっくりと開いていく。


それは二十年前の小学校の教室。放課後、彼は何人かの男子生徒に隅の壁に押し付けられ、ぶかぶかの男子校の制服が、いっそう彼の華奢な肩幅と異様に整った顔立ちを際立たせていた。


「ほら、『オカマちゃん』がまたおしっこ漏らしそうな顔してるよ!」

「なんで男なのに女みたいな顔してるんだよ!スカート穿いて来いよ!」


嘲笑の声が波のように押し寄せ、彼らは沈夢遥の髪を乱暴に掴み、冷たい壁に顔を押し付けた。彼は歯を食いしばって泣くまいと耐えたが、目に溜まった涙が熱くこぼれ落ちた。その時から彼は理解した。自分は普通の男の子とは違うのだと。肩幅が狭く、体の線が柔らかく、そして何よりこの女の子のような顔立ちゆえに、彼は異端者とされた。


その長期にわたる抑圧が、彼の人格に最初の土を築いた。劣等感は影のように彼の全身に染み付き、無口になり、人の目を見られなくなり、無意識のうちに人との距離を置き、自分の殻に閉じこもることが最善の防御だと覚えた。中学生、高校生になっても、この疎外感は決して薄れず、廊下をうつむいて歩くことだけが彼の習慣となった。他人の目が向けられるたびに、それは針のように感じられ、異性からの好奇の視線すらも、見えない嘲笑と映った。


それでも時間は容赦なく彼の体をさらに彫刻していく。大学生になると、彼の体型の変化はより顕著になった。肩はほとんどこの上なく狭く保たれたまま、腰は細くて力強く、ヒップは丸く張り、顔の輪郭もますます女性的な柔らかさを帯びていった。寮で上半身裸になると、同級生の平らな胸や太い腰つきと自分のあまりの違いに愕然とした。戸惑いとコンプレックスの中、彼はネットの海で答えを探し彷徨っていた。そして偶然、いわゆる「第三の性」のサイトに迷い込み、初めて「男の娘」という言葉に出会った。


画面の中の少年たちは、短いスカートや網タイツを纏い、口紅を引き、アイラインを跳ね上げて、最も妖艶で華やかな姿をさらし、彼女ら以上に女性らしい姿を見せていた。沈夢遥は心臓が停まるほどの衝撃を受け、すぐに激しく脈打ち始めた。それはまるで長年孤独に放浪してきた魂が、ついに同類を見つけたかのようだった。強い共感と、言いようのない憧れが彼を捉えた。


そして彼は、自分でもやってみたいという耐え難い衝動を抱き、初めて通販でスカートと化粧品を注文した。荷物が届いた週末、ルームメイトが留守にしている隙を見て、彼は震える手で梱包を解いた。黒いプリーツミニスカート、白いブラウス、初心者向けの化粧品一式。彼は手探りでファンデーションを塗り、眉を描き、リップを引いた。チュートリアルには程遠かったが、寮の狭い洗面所の鏡の前でスカートを穿いたその瞬間、世界は一瞬で静かになった。


鏡の中の人物は、初々しさとぎこちなさが混ざりながらも、驚くほど美しかった。柔らかな黒髪がわずかに垂れ、少女と見紛うばかりの顔立ちには恥じらいと驚きが浮かび、細い腰とスカートの下から覗く真っすぐで均整のとれた脚が、紛れもなく官能的な美しさを放っていた。あれこそが本当の自分だと、彼は思った。あの瞬間、彼はわけもなく涙がこぼれた。あれは長年人目から隠れてうつむいて生きてきた自分への、ある種の解放だった。それ以来、彼は底なし沼のように女装に溺れていった。時間とお金があれば、ひたすら女装の技術と心得を学び、ドレスアップするたびに鏡の前で長い時間を過ごし、その中に映る、女性的で艶かしく何かを求めるような己の姿に酔いしれた。


インターネットは彼の欲望をさらに深く導いた。偶然のクリックで、彼は自分の常識を根底から覆す動画を目にした。黒く逞しい屈強な黒人男性に、女装した少年が組み敷かれている。画面の中の喘息のような声と、肉体がぶつかり合う生々しい音に、彼の心臓はこれまでにないほど激しく脈打ち、そして肛門の奥底で異変が生じたのを感じた。何かが目覚め、熱く疼きを上げ、わずかに収縮したのだ。最初は強い羞恥心が湧き、画面を閉じて自分はおかしくなったのだと罵った。しかし悪魔の誘惑は打ち勝ち難く、彼は何度も戻っては繰り返しその映像を見て、羞恥が徐々に熱烈な耽溺へと変わっていくのを感じた。黒人崇拝の種が、彼の心の臓に芽吹いたのだ。


ついにある晩、彼は自分の後孔を探索しようと決意した。ネットのチュートリアルを参考に、彼は使い捨ての浣腸器や潤滑油、そして初めての張形型ディルドを通販で購入した。初めての試みは不器用で、過度な緊張と潤滑不足のせいで、ただ熱く切れるような痛みだけが走り、失敗に終わった。翌週、彼はもう一度勇気を振り絞った。まず浣腸器で体を清め、冷水と羞恥で全身が震えた。それから震える手でたっぷりと潤滑油を塗り込み、ベッドに横向きに横たわり深く息を吸い込んだ。冷たく硬いシリコンの感触がゆっくりと体を押し開き、痛みは依然としてあったが、注意深く角度を変えていく中で、先端が体内のある一点に触れた瞬間――


「うあっ!」


稲妻のような痺れる快感が尾骶骨から脳天まで一気に突き抜け、彼はほとんど痙攣に近い震えを全身に感じた。つま先が丸まり、後孔は制御を失ったかのようにきつくディルドを締め付け、全身の毛穴が開き、何か言いようのない快楽が全身の神経を浸していくのがわかった。その時彼は確信した。これは天性のものだと。自分の体は生まれつき男に犯され、蹂躙されることに向いているのだ。この認識に伴う耐え難い羞恥と、内なる深淵から湧き上がる歪んだ興奮が、彼の全身の血液をさらに滾らせた。


大学卒業後、この隠された趣味や欲望に少しでも近づくために、彼はわざわざ大人向けのグッズを扱う会社への就職を選んだ。そして、この冷たく孤高で影を背負う外見と鋭い実務能力で、驚くべき速さで昇進し、今ではエリートとして一目を置かれる運営部長にまで上り詰めた。誰も彼のスーツの下に、こんなにも艶かしく服従を渇望する肉体が隠されているとは知らず、彼のノートパソコンの暗号化されたフォルダの中に、どれほどの抗えない黒い欲望が詰まっているかも誰も知らない。


沈夢遥は目をゆっくりと開け、そう長くはない回想から抜け出した。鏡の中の自分は、先ほどよりも一層色っぽく映る。彼は手を伸ばし、指先で鏡の中の「彼女」の唇を優しくなぞりながら、ほとんど聞き取れないほどの声でささやいた。


「これが……本当の私よ。犯されるために生まれてきた、牝犬のような存在なの。」


第2章

朝、目覚まし時計が鳴り響く前に、私はもう目を覚ましていた。カーテンの隙間から差し込む薄明かりが、まだ薄暗い寝室に白い線を描いている。体を起こすと、シルクの寝間着が肌の上を滑り、ひんやりとした感触が鎖骨のあたりを撫でた。私は静かにベッドから抜け出し、裸足でフローリングの床を踏む。冷たい感触が足の裏から這い上がり、まだ眠気の残る意識を少しずつ覚醒させていく。


まずは洗面所へ向かい、鏡の前に立つ。そこに映るのは、寝起きで少しむくんだ顔だったが、それでもなお、精巧なつくりの顔立ちは女のものと見紛うばかりだ。長いまつげが伏せられた瞼の縁を縁取り、白い肌はほんのりと桜色に染まっている。私はそっと指先で頬をなぞり、その滑らかな感触に小さくため息をついた。この顔は、子供の頃は私をいじめの的にしたが、今では私の秘密の愉悦の源泉だ。


洗顔を済ませ、身支度を整える段になると、日常の儀式が始まる。クローゼットを開け、まずは会社用のスーツを取り出す。濃紺のウール素材で、ラインはシャープで男性的だ。しかし、その下に着るものは、全く別の世界に属している。引き出しの奥から、私は注意深く選んだ下着を取り出す。今日は、黒のレースが縁取られた、ほとんど紐のようなショーツと、同色のガーターベルト、そして極薄のブラックストッキング。それから、胸元には、肌色のシリコン製の豊胸パッド。これらを手に取るだけで、心臓の鼓動が少し速くなる。


私はまず、ガーターベルトを腰に巻きつける。冷たいサテンの感触が、引き締まった腰の曲線にぴたりと吸い付くようだ。次に、細い黒のストッキングを、まるで儀式のようにゆっくりと、片足ずつ丁寧に履いていく。太もものふくよかな曲線を生地が包み込むにつれて、脚のラインが視覚的により滑らかで艶やかになっていく。ガーターの金具をストッキングの上部に留める時、小さな金属音が静かな部屋に響き、背筋に微かな戦慄が走る。最後に、レースのショーツを履く。布地がほとんどないそれは、臀部の丸みを覆い隠すことなく、むしろその豊かな曲線を強調しているように思えた。


私は一度、全身が映る鏡の前に立つ。スーツを着る前の、この下着だけの姿が、私にとっては最も素の自分に近い。肩の狭い、丸みを帯びたシルエット。胸元のパッドが作り出す、ささやかなふくらみ。くびれた腰、そしてストッキングに包まれた脚。私は自分の身体を見下ろし、それが女性的な曲線を描いていることに、言い知れぬ陶酔感を覚える。指先でそっと太ももを撫であげると、ストッキング越しの肌の温もりと、生地の冷たさが混ざり合った複雑な感触が伝わってきた。


(ああ……なんて淫らな体だ……)


私は心の中で呟く。これは、男性としての社会生活を送るための仮面の下に隠された、もう一つの真実の姿。この矛盾こそが、私を駆り立てる。


最後の仕上げに、私は机の引き出しの一番奥から、小さなベルベットのケースを取り出す。中には、シリコンと医療用ステンレスでできた小さな装置――貞操帯、いや、男性用のそれは正確には『貞操具』と呼ぶべきか。冷たい金属のリングと、小さなカプセル状のケージ。私はそれを手に取り、まだ完全に目覚めていない自身の陰部に、ゆっくりと装着する。ひんやりとした金属が敏感な肌に触れると、思わず息を呑んだ。軽くカチリと音がしてロックがかかる。これで、私は物理的にも男性としての機能を封じられ、半ば強制的にこの禁欲状態に置かれる。この、自分で自分を支配しているという倒錯した感覚が、私の内なる炎をより一層静かに燃え上がらせるのだ。


すべての下準備を終え、ようやくワイシャツに袖を通し、スーツを纏う。鏡の前には、再び冷徹な運営ディレクター、沈夢遥が現れる。誰も、このぴったりとしたスーツの下に、あんな卑猥で芳醇な秘密が隠されているとは思いもしないだろう。私は表情を引き締め、取ってつけたような孤高の仮面を顔にはめ込む。これで準備は整った。


オフィスに着くと、空気はいつもより一層重く感じられた。ここ数ヶ月、会社の主要製品の売上は下降線を辿り続けている。私が統括する運営部には、その責任の矛先が向けられていた。私のデスクに置かれたモニターには、無機質な数字の羅列が並び、それが私の失敗を無言で糾弾しているようだ。


午前中は、定例の役員会議だった。重厚な扉が閉められた会議室の中、巨大なテーブルを囲んで、株主たちが不機嫌そうな顔を並べている。空気は冷たく張り詰め、誰もが沈黙していた。プレゼンテーションが終わると、予想通り、非難の矢が私に集中した。


「沈君、この体たらくは一体どういうことだね。君の立てた戦略は、ことごとく裏目に出ているじゃないか。」

白髪の交じった大株主が、冷たい視線を私に突き刺す。視線の重みに、スーツの下のストッキングの感触がやけに生々しく感じられ、腰のあたりがむず痒くなる。


「我々は、君の能力を買ってこのポジションを任せているんだ。結果が出なければ、その意味を成さない。」

別の株主が、抑揚のない声で続ける。彼らの言葉は刃のように鋭く、私の薄っぺらな自尊心を容易く切り裂いていく。私は背筋を伸ばし、表面上は平静を保ちながら、必死に言葉を探した。頭の中では、スーツの下のレースが肌に食い込む感覚と、貞操具の冷たい重みだけが異様にクリアに感じられた。


「……申し訳ございません。」

私は深く頭を下げた。髪の先が会議室のテーブルに触れるほどに。

「現在の状況は、私の責任です。しかし、必ずや挽回の策を講じます。次の製品サイクルでは、売上を必ずV字回復させてみせます。」


私の声は、自分でも驚くほど冷静で、確固たるものだった。それは、内に秘めた倒錯的な興奮と、追い詰められた状況が奇妙な化学反応を起こした結果だったのかもしれない。

「これが最後のチャンスだと思いたまえ。」

筆頭株主が低く響く声で言い放ち、会議は終わった。私は最後のチャンスという、死刑執行猶予のようなものを辛うじて手に入れたのだ。


自席に戻ると、手のひらはじっとりと汗ばんでいた。私は心の中で、一つの計画を固めていく。それは、ずっと温めていたが、あまりにリスクが高く、実行に移せずにいた『リアル体験』計画だ。今の窮地を脱するには、これしかない。


開発中の新製品は、いわゆる大人のおもちゃの類、それもかなりマニアックな商品群だった。市場調査のデータだけでは、決して得られない生の声があるはずだ。私自身が、その製品を実際に使用し、詳細なレポートを作成する。ユーザー視点に立った、血の通った改善案とマーケティング戦略。それが、私の起死回生の一手になる。幸い、私はそのための……誰にも言えない、理想的な身体と嗜好を持っている。


退勤時間が近づくと、私は開発部が管理する試作品の保管庫へと足を運んだ。指紋認証とパスコードを入力し、重い扉を開ける。中は、無機質で清潔な白い部屋で、スチール製の棚に様々な製品が整然と並べられている。私は、事前にリストアップしておいた品々を手早く確認し、バッグの中に詰め込んだ。


巨大な電動張形。それは、私の手のひらに収まりきらないほどの太さと長さを持ち、触るとシリコン特有の、体温を吸い取るような冷たさと、生々しい弾力があった。リモコン式の肛門栓。これは比較的小ぶりだが、内部に不気味な振動ユニットと、小さな突起がついている。それらを手に取るたび、私の鼓動は早鐘を打ち、顔に血が上るのを感じた。これは、仕事だ。仕事なんだ。私は自分にそう言い聞かせるが、指先は微かに震えていた。


アパートに帰り着くと、私はすぐに施錠をし、カーテンを閉め切った。外界から完全に遮断された、私だけの密室。ここで、私はようやく、張り詰めていた仮面を外すことができる。


スーツをハンガーにかけ、ネクタイを解く。そして、ワイシャツのボタンを一つ一つ外していく。生地の下から現れるのは、男の肌ではなく、レースとストッキングに彩られた、倒錯的な身体だ。私は鏡の前に立ち、今日一日、スーツの下で熟成された自分の淫らな姿を、改めてまじまじと眺める。ガーターベルトに吊られたストッキングのライン、腰のくびれ、偽りの乳房の膨らみ。その姿は、昼間の会議室で糾弾されていたエリート社員の面影を、残酷なまでに打ち消していた。


私は椅子に腰掛け、慎重に化粧を始める。普段はごく薄いナチュラルメイクしかしないが、今日は違う。念入りに化粧水で肌を整え、リキッドファンデーションをムラなく伸ばす。次に、アイシャドウで目元にほのかな陰影と色気を加え、アイライナーで目の輪郭をくっきりと際立たせる。最後に、深紅のルージュを唇に引く。ただそれだけで、鏡の中の人物は、もはや完全に一人の艶やかな女性へと変貌していた。私はお気に入りのタイトな黒のミニスカートを履き、白いブラウスを羽織る。透ける素材のブラウスから、下着のレースがうっすらと透けて見えるのが、たまらなく官能的だった。


私はポータブルプロジェクターを起動し、壁一面に動画を映し出す。流れてくるのは、筋骨隆々とした黒人男性が、華奢な女性を容赦なく組み敷く映像だ。荒々しい呼気、肌と肌がぶつかり合う生々しい音、圧倒的な力と質量の差。そこには、私が日々渇望している、絶対的な支配と被支配の図式があった。肌の色、体格、力、そのすべてが私を圧倒する。映像の中の、男の漆黒の逞しい肉体と、女の白く華奢な肉体のコントラストが、私の視覚を刺激し、脳髄を焼く。


(ああ……私も、あんな風に……)


映像に合わせて、私は指を秘所へと潜らせる。貞操具はすでに外してある。代わりに、試作品の巨大な電動張形を手に取った。想像していたよりもずっしりと重く、冷たい。私はローションをたっぷりと手に取り、それを器具と自分の蕾に塗り広げる。冷たい液体が温かい肌に触れ、ブルリと身震いが走る。


まずは先端をそっと押し当てる。緊張で、そこは固く閉ざされていた。

「ふっ……」

息を吐き、力を抜く。ゆっくりと、体重をかけるように、それを内部へと押し込んでいく。異物感と、内壁が無理やり押し広げられる痛みが同時に襲ってくる。内臓が押し上げられるような、途方もない圧迫感。

「痛っ……うぅ……」

思わず声が漏れる。涙が滲む。しかし、私は手を止めなかった。むしろ、この圧倒的な痛みと圧迫感こそが、私の求めているものの一部なのだ。頭の中には、先ほどの映像の光景がこびりついている。黒い巨体に組み敷かれ、為す術もなく蹂躙される自分の姿。

(もっと……もっと奥まで……)

私は腰をくねらせ、なんとかそれ全体を体内に収めようと試みる。内壁が異物を拒絶し、キリキリと痛む。しかし、奥の一点を器具の先端がかすめた瞬間、背筋に電流のような快感が走り抜けた。

「ひあっ……!」

私はその感覚に夢中になり、スイッチを入れた。低いうなり声とともに、器具が内部で激しく振動し、回転し始める。それは、経験したことのない、圧倒的な機械の暴力だった。

「あああっ! だめ、動いちゃ……やめ……!」

口では拒否の言葉を紡ぎながら、腰は勝手に動き、より深く、より強い刺激を求めてしまう。張形を握る手は汗で滑り、ストッキングに包まれた太ももが痙攣する。鏡には、紅潮した顔で、巨根を咥え込み、腰を振る自分の淫らな姿が映っている。

(これが……これがリアルな感覚……)

私は霞む意識の中で、必死にその感覚を記憶に焼き付ける。痛み、快感、圧迫感、羞恥、そして陶酔。これらすべてが渾然一体となった、この生々しい体験こそが、私の求めていたデータなのだ。


翌朝、私は決行することにした。体験レポートの質を高めるためには、実生活での装着感がどうしても必要だ。私は、リモコン式の肛門栓を選び、たっぷりとローションを塗り込んでから、昨夜拡張されたばかりの後孔にゆっくりと押し込んだ。

「ん……くっ……」

まだ少し痛むそこに、異物が侵入してくる感覚。昨夜のように痛くはないが、内臓が常に圧迫されているような不快感がある。肛門のすぐ内側で、シリコンのそれが存在を主張している。私は気合を入れて、それを完全に飲み込んだ。次に、貞操具を再び装着し、カチリとロックをかける。前と後ろ、両方を封じられた完全な禁欲状態。これで、一日中、私はこの感覚と向き合い続けなければならない。


オフィスに着くと、歩くたびに内部の異物が微かに動き、不快感と紙一重の感覚が腰に響く。満員電車の中で、もし誰かにこの秘密がバレたら、という恐怖と興奮で、私は終始うつむき加減だった。自席に座ると、硬い椅子の感触が、肛門栓の存在をさらに強調する。落ち着いて仕事に集中しなければと思えば思うほど、体内の異物感が気になってしまう。


(誰にも……バレてはいけない……これは、仕事のための、必要なプロセスなんだ……)


午前中、私は数回トイレに立ち、個室で肛門栓の位置を直したり、痛みを和らげるためのストレッチをしたりしていた。そうしているうちに、体は徐々にこの異物に慣れ始めていた。いや、慣れ「させられている」と言うべきか。内臓がこれを常態として受け入れつつあることに、私は言い知れぬ恐怖と倒錯的な喜びを感じていた。


そして、決定的な失態は、昼休みが終わる直前に起こった。私はまたトイレの個室に入り、壁に手をついて一息ついていた。苦しいが、これも必要なデータだ。私はポケットから、銀色の小さなリモコンを取り出した。そういえば、まだ一度も振動機能を試していなかった。どんな感覚なのか、ほんの少しだけ試してみよう。ほんの数秒だけ。


しかし、その時、外から複数の足音と話し声が近づいてきた。慌てた私は、とっさにリモコンを手近な場所に置き、何事もなかったかのように個室から出ようとした。便器の蓋の上。私はそこに小さなリモコンを置き忘れて、水を流し、ドアを開けて外に出た。


洗面台の前に立つと、他の社員たちが談笑しながら手を洗っている。私は平静を装い、腰をかがめて手を伸ばした。その瞬間、背広の裾がめくれ上がり、シャツの裾から、黒いストッキングの上部と、ガーターの金具が、ほんの一瞬だけ、チラリと覗いてしまった。


心臓が凍りついた。私は慌てて姿勢を正し、手を洗うふりをしながら、誰かに見られなかったか、鏡越しに必死で周囲を確認した。すると、背後で、ひときわ体格の良い、長身の人物と目が合った。製品開発責任者のデリック。彼は、無表情だったが、その鋭い視線が、確かに一瞬、私の腰元に注がれていたことを、私は直感的に悟った。


私は慌ててその場を離れ、自分のデスクへと早足で戻った。顔は火が出そうに熱く、心臓は今にも破裂しそうだ。見られた? いや、気のせいだ。たまたまだ。自分にそう言い聞かせるが、動揺は治まらない。


その直後、私はさらに恐ろしい事実に気がついた。ポケットの中を探るが、ない。トイレだ。リモコンを置き忘れてきたのだ。青ざめる私の頭の中はパニックでいっぱいになった。誰かに見つかる前に、すぐに取りに戻らなければ。


私は立ち上がり、トイレへと急いだ。しかし、廊下を曲がり、トイレの入り口に差し掛かった時、私の足は縫い付けられたように止まった。あの個室のドアが開き、中から出てきたのは、他ならぬデリックだったからだ。彼の大きな手には、銀色の小さなリモコンが握られていた。彼はそれを手の中で弄びながら、ゆっくりと顔を上げ、私の目を真っ直ぐに見つめた。その両眼には、好奇心と、何かを見定めるような、冷たく危険な光が宿っていた。


「……これは、君のか?」

彼の低く響く声が、静かな廊下に不気味にこだました。私は喉が張り付いて、返事をすることができない。デリックは、リモコンを指でつまみ、品定めするかのように光にかざした。

「面白いものを持っているじゃないか。これは確か、開発中の試作品だ。テストも始まっていない開発コード『プルート』のリモートコントローラー。なぜ、君がこれを持っているんだ?」


彼は一歩、私に近づいた。その巨大な影が私を覆い隠す。私は後退しようとしたが、壁に背中が当たってしまった。

「それに、さっき気になるものを見たんだが……」

デリックは、まるで獲物をいたぶる猫のように、口元を歪めた。

「あの黒いストッキング。なかなかセクシーだったぜ、ディレクター?」

彼の声は、からかうようでいて、有無を言わさぬ圧力があった。私は全身から血の気が引き、ガタガタと震えるだけだった。私の完璧に隠し通してきた秘密の世界が、今、音を立てて崩れ去ろうとしている。しかも、最も恐れていた相手に、最も汚い部分を掴まれてしまったのだ。デリックの巨大な手が、獲物を逃がすまいとするかのように、ゆっくりと私の肩を掴んだ。


第3章

午後の会議室は、冷房の効きすぎた空気が肌を刺すように冷たかった。蛍光灯の白々とした光が、長方形のテーブルに並んだ書類やノートパソコンの画面を照らし出している。窓の外では初夏の陽光が燦々と降り注いでいるのに、ガラス一枚隔てたこの空間は、まるで別世界のように無機質で、張り詰めた静けさに満ちていた。


私は自分の席に座り、膝の上に置いた企画書の最終ページに目を走らせていた。心臓は早鐘を打ち、指先はかすかに震えている。なぜなら、今まさに私がプレゼンテーションを担当する順番が回ってきたからだ。そして、もうひとつ——今朝、私はある「装置」を身体に装着して出勤していた。


シリコン製の肛門栓が、私の体内で静かに存在を主張している。貞操帯が、男性器をきつく拘束し、わずかな圧迫感を与えていた。それは単なる物体ではなく、私の内面に渦巻く倒錯的な欲望と、支配されたいという渇望を具現化したものだった。昨夜、自宅の鏡の前で、女性用の下着を身につけ、自分の白く柔らかな肢体を見つめながら、私は決意したのだ。この新しい製品——リモコン式振動肛門栓——を実際に使用し、その体験をレポートとして提出しようと。それは仕事上の必要性を装った、私自身の病的な欲求の現れだった。


「では、沈夢遥チーフ、お願いします」


部長の声で我に返る。私は立ち上がり、プロジェクターの前に進み出た。スーツの生地が、貞操帯の上からではあるが、太腿の内側に擦れる感触が妙に生々しい。深呼吸をひとつ。大丈夫、誰にも気づかれはしない。私は完璧なビジネスパーソンの仮面を被り、口を開いた。


「本日は、新製品のマーケティング戦略についてご説明いたします」


声は驚くほど平静だった。私はスクリーンに映し出されたグラフを指し示しながら、市場分析のデータを解説し始める。同僚たちの視線が私に集まっている。その中には、製品開発責任者であるデリックの姿もあった。彼は窓際の席で、分厚い腕を組み、私の説明を聞いている——少なくとも、表面上は。


「このセグメントにおいて、我が社のシェアは前年比で12パーセントの伸びを示しており——」


その瞬間だった。


体内に埋め込まれた肛門栓が、突然ブルブルと震えだした。それは低周波の、微かな振動だったが、私の身体には雷が走ったような衝撃だった。粘膜を通じて伝わる刺激は、内臓の奥深くまで響き渡り、脊髄を駆け上がって脳天を貫く。私は言葉を途切れさせ、スクリーンに向けていた顔を思わず歪めた。


「——し、示しており、特に若年層の——」


私は必死に平静を装い、説明を続けた。しかし、声はかすかに震え、頬には熱が集まってくる。振動は一定のリズムを刻みながら、私の最も敏感な箇所を執拗に刺激し続けている。それはまるで、見えない指が内部で私を愛撫しているかのようだった。私は片手をテーブルの端に置き、体重を支える。膝が笑いそうになるのを、全身の筋肉を緊張させてこらえた。


「——若年層の購買意欲を喚起するためには、SNSを活用した——」


誰が? リモコンは私の手元にはない。今朝、自宅を出る際にリモコンをバッグに入れたはずだった。しかし、会社に着いてから確認すると、それは消えていた。どこかで落としたのか。それとも——


私は視線を走らせた。会議室の参加者は十数名。皆、私のプレゼンに注目しているはずだ。しかし、その中でただ一人、デリックだけが微かに口元を歪め、手元のスマートフォンを弄っているのが見えた。彼の太い指が、画面の上で何かを操作している。


また振動のパターンが変化した。今度は断続的な、波のように強弱をつけた刺激が、私の内部を這い回る。私は思わず両腿を擦り合わせ、下半身に走る甘い痺れを押し殺そうとした。顔はもはや赤を通り越して、火がついたように熱い。額にはうっすらと汗が滲み、こめかみを伝って落ちていく。


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