夢を叶える (Pixiv Fanbox)
Content
ネットの向こうのハンター
深夜のパソコン画面に青白い光が浮かんでいた。小猪は自室の隅で、背中を丸めてキーボードを叩いている。部屋の明かりは消してあり、両親はとっくに眠っていた。カーテンの隙間から街灯の光が細く差し込み、床に散らかったマンガ本の山をぼんやりと照らしている。画面に表示されているのは、彼が一週間前に見つけた秘密の掲示板だった。
「僕は食べられるために生まれてきたんです。誰か、僕を挽き肉にして餃子に包んでくれませんか」
小猪は震える指先で投稿文を打ち終えると、しばらく画面を凝視した。心臓が早鐘のように打っている。これは間違ったことなのか、正しいことなのか、そんな考えは彼の頭にはなかった。ただ、腹の底から込み上げてくる熱い期待だけがあった。自分が包丁の下で挽き肉に変わっていくイメージが、何度も何度も頭の中で再生される。そのたびに体の奥がじんわりと熱くなり、短パンの前が少しだけ膨らんだ。彼はそっと自分の小さなそれを押さえつけ、息を殺した。
数分後、通知音が鳴った。小猪は飛びつくようにマウスをクリックする。プライベートメッセージが一通届いていた。差出人は「叔叔」というハンドルネームで、プロフィール画像は包丁を手にした中年男性の影絵だった。小猪は息を呑みながらメッセージを開く。
「投稿を読んだ。君は本気か?」
小猪の指が震えた。彼は深く息を吸い込み、返信を打つ。「本気です。ずっと前から、そうなりたかったんです」
すぐに返事が来た。「明日、ビデオ通話で話せるか? 時間は夜の十時だ。他の人に邪魔されない場所でな」
小猪は唇を舐め、かすかに汗ばんだ手のひらをパジャマの裾で拭いた。彼は「はい、大丈夫です」とだけ短く返し、パソコンを閉じた。布団にもぐりこんでも、心臓の鼓動は収まらず、小さな胸は期待で張り裂けそうだった。
翌日の夜十時、小猪は再び自室のパソコンの前に座っていた。今日は両親が早くから寝室に引きこもっていて、家の中はしんと静まり返っている。彼は引き出しの中から買い置きの白いマスクを取り出すと、それを耳にかけた。それから服をすべて脱ぎ去り、全裸になった。12歳の痩せ細った体が、画面の青白い光に照らし出される。肋骨が透けて見えるほど薄い胸板、くびれた腰、そして短く切りそろえられた陰毛に囲まれた未熟な性器が露わになった。エアコンもつけていない部屋で、彼の肌はぶつぶつと粟立ち、乳首が硬く尖っている。
通話アプリが起動し、叔叔から着信が入った。小猪が通話ボタンを押すと、画面に中年男性の顔が映し出された。四十代半ばといったところか。短く刈り込まれた白髪交じりの頭、深く刻まれたほうれい線、そして細く鋭い目。その目が画面越しに小猪の裸体を舐め回すように見つめると、口の端がわずかに上がった。
「マスクは結構だ。外せ」
小猪はすぐにマスクを外し、自分の顔を晒した。丸くて幼さの残る顔立ち、大きな瞳、そしてほんのり赤く染まった頬。叔叔は満足そうに頷き、低く落ち着いた声で言った。
「名前は小猪だな。年はいくつだ」
「十二歳です」
「ふむ。良い年だ。体はまだ柔らかく、肉もきめ細かいだろう。立て。ゆっくり回って見せろ」
小猪は素直に立ち上がり、カメラの前でゆっくりと回転した。背中から腰、小さく引き締まった尻、そして再び正面に戻る。その間ずっと、彼の小さな性器は半ば勃起していた。叔叔はそれに気づき、かすかに笑みを深める。
「ずいぶん熱心だな。自分が何を求めているのか、ちゃんと理解しているのか」
「はい」小猪の声はかすれていたが、まっすぐに叔叔の目を見つめた。「僕は食べられるために生まれてきたんです。挽き肉になって、餃子の皮に包まれるのが、僕の一番の夢です」
叔叔はしばらく黙り込み、それから満足げに頷いた。「今まで何人もの肉畜を扱ってきたが、お前のように若くて純粋な志願者は珍しい。気に入った。明後日の午後、俺が借りてある食肉工場の作業場で会おう。直接、この手でお前を殺してやる」
小猪の全身に戦慄が走った。怖れではなく、歓喜の震えが。彼の小さなペニスは完全に勃起し、先端からは透明な液がにじみ出ている。叔叔はそれを見て、声をさらに低く落とした。
「屠殺台に縛りつけ、生きたままお前の喉を切り裂く。血抜きをしてから、皮を剥ぎ、内臓を取り出す。お前の肉を丁寧に挽き、最高の餃子を作ってやる。その間ずっと、お前には痛みと快楽の両方を味わってもらうつもりだ。これで良いな」
「お願いします」小猪の返事はほとんど喘ぎ声だった。彼の目には涙が浮かび、鼻の奥がツンと痛んだ。これが彼の求めていたものだ。生まれて初めて、自分が完全に理解されたと感じた。
ビデオ通話が終わると、小猪はへたり込むように椅子に座った。体が熱い。心臓がまだドキドキと鳴っている。彼はしばらく放心状態で天井を眺め、それから決心して机に向かった。引き出しからノートを一冊取り出し、ボールペンを握る。遺書を書くのだ。
「お父さん、お母さん。ごめんなさい、僕は家を出ます。ずっと前から考えていたことです。僕は他の人とは違う、特別な運命を持っているんです。怖がったりしないでください。僕はとても幸せです。どうか探さないでください。さようなら」
短く素っ気ない文面だったが、彼はこれで十分だと思った。ノートを机の上に開いたままにし、ボールペンをその上に置く。それから、あらかじめ用意しておいたリュックサックを手に取った。中には着替えと、わずかな貯金を崩した札が入っている。彼は音を立てないように窓を開け、一階の屋根伝いに庭に降り立った。真夏の深夜の空気がむっと生暖かく、肌にまとわりつく。
街灯の少ない路地を抜け、小猪は二十四時間営業のネットカフェを見つけた。受付の若い男は、こんな時間に一人で来た子供に少し驚いた顔をしたが、金を払うなら問題はないと、奥の個室ブースを割り当ててくれた。
薄暗い照明の下、小猪はリクライニングチェアに身を沈めた。モニターの電源を入れ、適当な動画を流す。だが頭の中は、明後日のことでいっぱいだった。屠殺台の冷たい感触、包丁の刃が喉を滑る瞬間、そして自分が挽き肉になって餃子の皮に包まれる光景。そのイメージが浮かぶたびに、彼の下腹部は熱く脈打った。
二日間、彼はほとんど眠らず、わずかにカップ麺をすするだけで過ごした。ブースの中で服を脱ぎ、自分の体をまさぐった。細い腕、くぼんだ腹、そしてずっと勃起し続けている小さなペニス。彼はそれを握りしめ、何度も吐精した。精液が飛び散るたびに、これが自分の最後の無駄遣いなのだと思った。もうすぐ、この体はすべて食物になる。一滴残らず、誰かの血肉となるのだ。
二日目の夜が明けようとしていた。小猪はネットカフェのシャワー室で体を清め、新しい下着を身につけた。鏡に映る自分の顔はやつれていたが、目だけはぎらぎらと輝いている。リュックを背負い、彼はネットカフェを出た。
薄明の街を歩きながら、小猪は約束の場所に向かう。食肉工場は町外れの工業地区にあると聞いていたが、最寄り駅からさらにバスを乗り継ぐ必要があるようだ。その間ずっと、彼の小さなペニスは勃起したままだった。時折、歩く振動が刺激となって快感が走り、彼は立ち止まって膝を震わせた。通行人がいないことを確認してから、彼はそっと前を押さえ、熱い吐息を漏らす。
バスに揺られながら、彼は窓の外に流れる田園風景をぼんやりと眺めた。車内には彼以外に乗客はおらず、運転手も中年の男が一人だけだ。やがてバスは終点に到着し、小猪は一人で降り立った。目の前には錆びたトタン塀に囲まれた古びた工場が建っている。門柱には「陽明食肉加工場」という看板がかかっていた。彼が呼び鈴を押そうとした瞬間、中から低い声が聞こえた。
「よく来たな、小猪。入ってこい。準備はできている」
門が軋みながら開き、中から叔叔が姿を現した。彼は血の染みがついた真っ白な作業着を着て、長靴を履いている。手にはまだ何も握っていなかったが、その指先は妙に落ち着き払っており、まるでこれから楽器でも演奏するかのような優雅さがあった。小猪はただ黙って頷き、門をくぐる。背後で金属の門が閉まる重い音が響いた。
車に乗る肉
夜の帳が下りた公園の入り口に、一台の黒いバンが静かに停まった。街灯の薄明かりが車体に反射し、その黒さを一層深く際立たせる。運転席の窓がゆっくりと下がり、中から男の顔がのぞいた。刈り上げた髪に無精髭、そして鋭い眼光。小猪は胸の奥が熱くなるのを感じた。合図通り、左手の人差し指と中指を立て、右手でその二本を握り込む。男は無言でうなずき、後部座席のドアが自動で開いた。
小猪は駆け寄り、車内へ滑り込む。革張りのシートはひんやりとして硬く、微かに消毒液のような匂いがした。ドアが閉まると同時に、車は音もなく走り出した。街の灯りが窓を流れていく。小猪は背筋を伸ばし、両手を膝の上に置いた。心臓は早鐘を打っているが、それは恐怖からではない。これから始まるすべてを思うと、身体の芯から歓喜が込み上げてくるのだ。
「身分証は持ったか。」
叔叔の声は低く、感情が読み取れない。小猪は慌ててポケットから学生証を取り出した。それを受け取ると、叔叔はちらりと目を走らせ、ダッシュボードの上に放り投げた。「十二年か。悪くない。」
その言葉に、小猪の頬がゆるむ。十二年。自分がこの日のために待ち続けた歳月だ。まだ幼い頃、母親が台所で包丁をふるう音を聞くたび、豚肉が刻まれ餡になっていく様子を想像した。自分もああなりたい。細かく砕かれ、練り上げられ、薄皮に包まれて湯の中を踊るのだ。それがどんなに幸福なことか。
車が高速道路に入ると、街の灯りが遠ざかり、窓の外は闇に包まれた。突然、叔叔が助手席にあった携帯電話を手に取った。小猪の目をまっすぐに見据えながら、窓の枠に叩きつける。一度、二度、三度。画面が砕け、金属の筐体がひしゃげ、やがて沈黙した。叔叔は手を窓の外に突き出し、指を開く。壊れた携帯は風にさらわれ、夜の闇に消えた。
「さあ、お前もだ。」叔叔が言った。「着ているもの全部、外に捨てろ。」
小猪はためらわなかった。上着を脱ぎ、窓を開けて投げ捨てる。シャツ、ズボン、靴下、下着。すべてを一枚ずつ、丁寧にたたむこともなく、夜風に放つ。十二年間、自分の身体を包んでいた布切れたちが、あっという間に闇に飲まれていった。窓を閉めると、車内の冷たい空気がむき出しの肌を撫でる。小猪は一糸まとわぬ姿でシートに座り、自分の両腕を抱くようにした。冷たさがかえって現実感を与えてくれる。
「怖くはないのか。」叔叔の声は平坦だった。
「いいえ。」小猪は即答した。自分の声が思いのほかしっかりしていることに、自分でも少し驚く。「ぼく、ずっと待ってました。挽き肉になって、餃子になりたいんです。」
叔叔の口元がかすかに歪んだ。笑みなのか、それとも別の感情なのか、小猪には判断できなかった。「挽き肉か。悪くない選択だ。餃子は丁寧に作らねばならん。皮は薄く、餡はたっぷり。お前はまさにそのために生まれてきたんだな。」
「はい。」小猪はうなずいた。「ぼくは、ただの肉です。誰かの手で練られて、包まれて、食べられる。それだけでいいんです。それだけで、すごく嬉しい。」
叔叔はバックミラー越しに小猪を見た。裸の身体はまだ子どもらしく、骨ばった肩や薄い胸が頼りなげだったが、その目は静かで、どこか遠くを見つめているようでもあった。彼は再び前を向き、アクセルを踏み込んだ。
「子豚小屋には、あと二匹いる。」叔叔がぽつりと言った。
「あと二匹……ですか。」小猪は目を瞬かせた。同じように自らを差し出す仲間がいるという事実が、胸の中をほのかに温める。自分は一人じゃないのだ。ともに理想の肉へと姿を変える仲間がいる。
「お前と似たような連中だ。みな望んでやってきた。」叔叔は淡々と続けた。「だが、忘れるな。お前たちはもう人間じゃない。豚だ。ただの豚肉だ。わかるか。」
「はい。」小猪は深く息を吸った。自分の身体が、もう人間のそれではないように感じられる。豚。ただの豚。なんと心地よい響きだろう。
車は高速を降り、人気のない田舎道へ入っていく。周囲に民家の灯りはなく、ヘッドライトだけが二筋の光を道に投げかけている。しばらく走ると、前方に薄暗い工場のシルエットが浮かび上がった。壁はところどころ錆びつき、窓には鉄格子がはめられている。看板は色褪せ、文字も読み取れない。門の脇には監視カメラが一台、ぎこちなく首を振っていた。
車が門の前で停止すると、叔叔は窓を開け、カメラに向かって手を挙げた。数秒後、門が錆びた音を立てて左右に開く。車はゆっくりと構内へ進み、やがて大きな建物の前で停車した。エンジンが切られ、あたりはしんと静まり返る。草むらから虫の声が聞こえるだけだ。
「降りろ。」叔叔が言った。小猪は裸足のまま、冷たいコンクリートの上に降り立った。夜風が素肌を撫で、鳥肌が立つ。けれどその震えさえ、自分が肉へと変わっていく過程の一部のように思えた。叔叔は無言で歩き出し、小猪はその後ろに続く。細い背中、小さな臀部、まだ幼さの残るふくらはぎ。どれもが、もうすぐ食用の部位となる肉体だ。
建物の中は薄暗く、蛍光灯がかすかに唸りをあげている。叔叔は迷いなく歩を進め、廊下の奥にあるエレベーターの前で足を止めた。ボタンを押すと、扉が重々しく開く。中は業務用らしく、金属製の壁に囲まれた無機質な空間だった。
「入れ。」叔叔が促す。小猪は素直にエレベーターへ足を踏み入れた。叔叔もそれに続き、扉が閉まる。ボタンには「B2」の表示が光っている。地下へ。さらに深く。もう後戻りはできない。いや、そもそも戻るつもりなど毛頭なかった。
エレベーターが下降を始める。機械の駆動音だけが狭い箱に響く。小猪は無意識のうちに下腹部に手を当てていた。ここが刻まれ、練られ、餡となる。待ち遠しくて仕方ない。しかしそれと同時に、あと二匹の子豚が待つという「子豚小屋」の光景を想像すると、不思議な連帯感が胸を満たすのだった。
地下四階の楽園
エレベーターの金属的な駆動音が、地下へと降りていくにつれて重く響いた。閉ざされた空間に漂うのは、冷たい鉄の匂いと、かすかな消毒液の刺激臭だけ。小猪は全裸のまま床に正座していたが、その姿勢はすぐに崩されることになる。
「跪け」
叔叔の声は低く、しかし絶対の命令を含んでいた。小猪はためらうことなく向きを変え、冷たいエレベーターの床に両膝をついた。顔の高さには、ちょうど叔叔の腰のあたりがある。ズボンの布地越しに、すでに硬く膨らんだものが小猪の頬に触れた。
「よくわかっているじゃないか」
叔叔は満足そうに小猪の頭を撫でた。その手は大きさも温度も、まるで家畜の出来を確かめる畜主のようだ。指が耳の後ろをなぞり、首筋を伝い、背骨に沿って下りていく。小猪は身震いした。恐怖からではない。むしろ、これから訪れる全てへの期待が、電流のように全身を走ったのだ。
エレベーターが停止した。扉が左右に開く。途端に、想像していたのとは全く違う世界が広がっていた。
地下四階は広大な空間だった。天井は高く、無数の蛍光灯が昼のような明るさを保っている。しかしその光景は、まさに家畜市場そのものだった。巨大な檻がいくつも並び、その中には数十人もの裸の子供たちが閉じ込められている。年齢は十歳前後から十五、六歳くらいまで。男の子ばかりだった。
「立て、行くぞ」
叔叔が先に立ち、小猪は這うようにしてエレベーターを出た。目の前の檻に近づくと、中の子供たちが一斉にこちらを見た。無垢で、しかしどこか悟りきったような目。好奇心と歓迎が混じった視線だった。
「新入りだ!」
檻の中から、一人の少年が駆け寄ってきた。小猪より少し年上だろうか、十三歳か十四歳くらい。短く刈り込まれた髪に、活発そうな大きな目。そして他の子たちと同じく、一糸まとわぬ姿だった。
「ぼくは乐乐。きみは?」
「……小猪」
「子豚ちゃんか、かわいい名前!」
乐乐は無邪気に笑った。その後ろから、もう一人の少年が静かに近づいてくる。乐乐と同じくらいの年齢で、こちらはやや細身。表情は穏やかだが、目にはどこか達観したような光があった。
「陽陽だよ。よろしく」
陽陽と呼ばれた少年は、柔らかな声でそう言った。その口調には、同じ年頃の子供とは思えない落ち着きがある。
叔叔は小猪の背中を軽く押した。「入れ」。檻の扉が開けられ、小猪は促されるまま中へと足を踏み入れた。冷たい金属の格子が背後の閉まる音を立て、鍵のかかる重い感触が響く。
檻の中は外から見るよりも広く、床には薄いマットが敷かれていた。十数人の少年たちが、思い思いの姿勢でくつろいでいる。中には寝転がっている子もいれば、壁にもたれて座っている子もいる。全員が裸で、互いの裸体を全く気にする様子はなかった。
「ここが、地下四階の楽園だよ」
乐乐が誇らしげに言った。
「楽園……?」
小猪が周囲を見回す。たしかに、そこには不思議な安らぎがあった。閉じ込められているはずなのに、誰の顔にも苦痛や絶望の色はない。むしろ、深い満足感のようなものが漂っている。
「そう。ここにいるみんな、自分から望んで来たんだ。肉畜になりたくてね」
乐乐の言葉に、小猪は改めて檻の中の少年たちを見渡した。みな年端もいかない子供たち。それが全員、自らの意思で肉となり、食べられるためにここにいるのだという。
「怖くないの?」
小猪の問いに、乐乐は首をかしげた。その顔には、純粋な疑問だけが浮かんでいる。
「怖い?どうして?だってこれが、ぼくたちの望んだことだもの」
「そうね」
陽陽が静かに言葉を継いだ。その声は、風に揺れる木の葉のように穏やかだ。
「私は、素早く殺されたい。刃が振り下ろされる瞬間が、何よりも楽しみなの」
陽陽はそう言いながら、自分の胸に手を当てた。肋骨の浮き出た白い肌の下で、心臓が規則正しく脈打っているのが見える。その動きを指でなぞりながら、彼はうっとりと目を細めた。
「ここを、すっと切られる。そうしたら熱い油の中へ。揚げられるのが、一番美味しいんだって。私、外はカリッと、中はジューシーな唐揚げになりたいの」
小猪は思わず息を呑んだ。陽陽の語る内容は、普通なら狂気としか思えない。しかし彼の声には、これ以上ないほどの確信と幸福が込められていた。
「奇奇はね、丸焼き希望なんだよ」
乐乐が檻の隅を指さした。そこには、他の子たちよりやや小柄な少年が座っている。彼もまた裸で、膝を抱えて座りながら、何やら楽しそうに自分自身をさすっていた。
「奇奇、新入りだよ。小猪っていうんだって」
声をかけられた奇奇は、ぱっと顔を上げた。その表情は驚くほど明朗で、まるで遊びに誘われた子供のようだ。
「わあ、よろしくね!きみも肉畜になりたいんだ?」
奇奇は立ち上がると、ぴょんぴょん跳ねるように近づいてきた。その無邪気な仕草とは裏腹に、彼の小さな体はすでに食べられるための準備ができているようだった。腹はわずかに膨らみ、肌はほんのりと赤みを帯びている。
「ぼく、ずっと丸焼きになりたくてね。オーブンの中でじっくり焼かれて、全身がこんがりキツネ色になるんだ。その前に、お腹いっぱいに詰め物されるのが気持ちよくてさあ」
奇奇はうっとりと自分の腹をなでた。
「詰め物……?」
「そう!中にね、ハーブとかニンニクとか、あとパン粉とかがぎゅうぎゅうに入れられるんだ。もうお腹がぱんぱんで、それがすごく幸せでね。それから縫い合わせられて、オーブンに入れられるの。じわじわ熱くなってきて、皮がパリッとし始める感覚……ああ、考えるだけで」
奇奇の目がとろんと潤み、その小さな体が期待に震える。小猪は、自分と全く同じ種類の欲望が、この少年の中にもあることを理解した。そして、それが異常なことではなく、ここでは当たり前の感情なのだと。
「ねえ、きみはどんな風になりたいの?」
乐乐が小猪の肩に手を置いて尋ねた。その手は温かく、まるで親しい友人のようだ。
「ぼくは……」
小猪は少し間を置いた。初めて会った相手に、自分の最も深い願望を打ち明けることになる。しかしここでは、それを隠す必要など微塵もなかった。
「挽き肉になって、餃子に包まれたいんだ」
小猪の言葉に、乐乐の目が輝いた。
「餃子!いいねえ。皮に包まれて、熱い蒸気で蒸されるんだね。ぼくはね、これが最後の栄誉だと思ってるんだ。屠殺の前の行為が」
「屠殺の前の行為……?」
「そう。主人がね、屠殺する前にぼくたちと交わるんだ。それがすごく気持ちいいんだよ。ぼくたちみたいな肉畜にとっては、最高の恵みなんだ」
乐乐はそう言いながら、自分の胸を両手で包み込むようにした。その仕草には、これから訪れる行為への期待と、自らの役割への誇りが溢れている。
「まだ経験したことはないけど、もうすぐだと思う。だってこの前、主人がぼくのお尻をじっくり見てたから。たぶんそろそろ順番が回ってくるんだ」
陽陽も静かにうなずいた。
「私も、それが済んだら屠殺だと聞いている。楽しみで夜も眠れないくらい」
三人の少年たちは、まるで遠足の前日のように、これから自分たちに起こることへの期待を語り合う。小猪はその輪の中に自然と溶け込んでいた。ここには恐怖も拒絶もない。あるのは、自らの運命を全うすることへの純粋な喜びだけだった。
時間が経つのは早かった。檻の中では、時折叔叔が見回りに来て、何人かの子供たちを連れ出していった。連れて行かれた子は誰一人として抵抗せず、むしろ晴れやかな顔で従っていった。
他の子供たちは、マットの上で体を休めたり、互いに毛づくろいをし合ったりしている。中には互いの体を嘗め合って清潔にしている子たちもいた。まるで出荷前の家畜が、最後の手入れを施されているかのように。
小猪も、乐乐と陽陽と奇奇の輪の中で、自分の望みを詳しく語った。挽き肉にされる瞬間のこと、肉と脂肪が混ざり合って理想の配合になること、餡に味付けされて皮で包まれること。そして熱い蒸気の中で、他の具材たちと一緒に美味しい餃子へと変わること。
「いいなあ、それ」
奇奇がうっとりと言った。
「挽き肉になるって、どんな感じなんだろう。ぐちゃぐちゃに砕かれて、原型がなくなっちゃうんだよね。それがなんか、すごく気持ちよさそう」
「うん。完全にバラバラになって、もう二度と元の形には戻れない。そこがいいんだ」
小猪の答えに、三人は深くうなずいた。彼らはみな、自分が食べ物になるということを、単なる死としてではなく、より高次の存在への転換として捉えている。恐怖や悲哀は微塵もなく、ただ純粋な献身の喜びだけがあった。
その時だった。檻の外から、重い足音が近づいてくる。小猪はすぐにそれが誰だかわかった。あの独特のリズム。迷いのない、すべてを掌握した者の歩み方。
鉄格子の向こうに、叔叔の巨体が現れた。彼は檻の中を見渡し、そして口を開いた。
「乐乐、陽陽、奇奇、小猪。お前たち四人、出てこい」
その声には、有無を言わせぬ命令が込められていた。しかし同時に、それは待ち望んでいた招きでもあった。四人の少年たちの顔が、一斉に輝く。
「来た!」
乐乐が最初に立ち上がった。続いて陽陽が静かに、しかし素早く起き上がる。奇奇は子犬のように跳びはね、小猪も自然と体が動いていた。恐怖もためらいもない。ただ、これから始まる儀式への期待だけが、全身を満たしていた。
檻の扉が開かれる。少年たちは一列になって、その外へと踏み出した。小猪の心臓は高鳴っている。しかしそれは決して恐怖からではない。これから自分の身に起こることへの、純粋な喜びが、全身を震わせていた。
四人は叔叔の後ろに従い、地下四階のさらに奥へと歩き出した。そこには、彼らが望む結末が待っている。それぞれの夢を叶えるための、屠殺場が。
去勢と烙印
屠殺場の空気はひんやりとしていて、わずかに消毒液と鉄錆の匂いが混ざっていた。壁の白いタイルは天井まで張り詰められ、蛍光灯の冷たい光が部屋の隅々まで照らし出している。中央にはぴかぴかに磨かれた金属製の作業台がいくつか並んでいた。小猪は乐乐と陽陽の後ろに立ち、心臓が胸の中で力強く鼓動するのを感じていた。期待に満ちた、まるで獲物を見つけた獣のようなざわめきだった。
「さあ、まずはきれいに整えてやろう。」
叔父は壁際の機械へ歩み寄った。銀色の装置は、太い金属のアームの先に円形の刃がついていて、台座にはちょうど大人の指が三本ほど入るくらいの穴が開いている。小猪は穴の縁がわずかに摩耗しているのに気づいた。多くの少年たちがここを通った痕跡だ。
「陽陽、お前が最初だ。」
叔父は手招きした。陽陽は静かに歩み寄り、素直に作業台の上に横たわり、両足を広げた。叔父はゴム手袋をはめた指で、陽陽のまだ幼さの残る小さなものを優しく撫でた。その動きは巧みで、まるで熟練した職人が素材を扱うようだった。陽陽は小さく息を呑み、すぐにそこは硬くそそり立った。
「いい子だ。」
叔父はそそり立ったそれをそっと持ち上げ、機械の台座の穴へと導いた。金属の冷たさに陽陽の身体がびくんと震えたが、彼は動かなかった。叔父がスイッチを押すと、機械は低くうなり声を上げ、回転する刃が空気を震わせた。一瞬後、小さな肉片が切り離され、下部のトレイにぽとんと落ちた。陽陽は鋭い息をのみ、それから長く安堵の息を吐き出した。
「いい気持ちだ......」陽陽はささやくように言い、目はうっとりと潤んでいた。
※本文が長いため、FANBOXで公開できる範囲に自動的に短縮しています。