いつもいじめていた男子に仕返しされた話(ヨウコside) (Pixiv Fanbox)
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〜ヨウコside〜
SMが好きだなんてことを自覚させられたのは、高校に入ってミズキと仲良くなったことが発端だった。
学校の中庭には丸太を真っ二つに割って作ったようなデザインのベンチがいくつも並んでいて、その中でも一番目立たない端っこの方に見知ったクラスメイトの女子が座っていたのだ。
熱心に何かの本を読んでいるようだ。なかなかの大判の表紙を可愛らしいブックカバーで隠しているので、内容が気になった私はこっそり近づいて背後から覗いてやった。
その本の内容はというと──
「うわ、すっご」
──イケメン達の緊縛写真集だった。
思わず声を漏らした私に反応して、ミズキは首を九十度以上グルンと回転させて私と目を合わせる。
口はあわあわと震え、呼吸を乱しながらみるみる顔を赤くしていく。
「あ、あわわ、あわわわわ……」
その様子を見て私は心の中で(しまった……)と呟く。
彼女の手にあるのは直接的なエロ描写のない、本当にただ男が縛られているだけの写真集ではあるのだけど……それでも「エロ本」と呼ばざるをえない代物だ。
いつも幼馴染のハルトの背後に忍び寄って驚かせることばかりしていたので、あまり親しくない相手にまで同じことをして、挙句の果てにアブノーマルな性癖を暴いてしまった。
暴かれた方の心中はとても穏やかなものではないだろう。私は慌ててミズキに誓いを立てた。
「だ、大丈夫! 誰にも言わない! 本当に! 約束するから! 安心して!」
今にも泣きそうな彼女に言い聞かせ、お互いにようやく気持ちが落ち着いた頃。
私たちはこの時、ただのクラスメイトから友達になったのだ。
雑談に花を咲かせる中で本のことも詳しく教えてくれた。
あの写真集は最近購入したもので、家に置いておくと家族に見つかる心配があるため学校に持ち込んだらしい。するとどうしても読みたくなってしまい、昼休みに人が寄りつかない所でこっそり見ていたと言うのだ。
「へぇ。ミズキはそういう……SM? が好きなんだね」
「うん。ギチギチに縛られてる男の子にときめくっていうか……ヨウコちゃんはそういう願望ない?」
「私は……」
実はあると言えばある。
子供の頃に幼稚園だったか図書館だったかで見た絵本に、悪いことをした男の子がお仕置きされている描写があった。
お尻を突き出させられ、容赦なく平手を叩き込まれる……その場面だけが記憶に強く焼き付いているのだ。
今の時代、子供のお尻をペンペンするだなんてれっきとした虐待だ。だけど昭和まで遡ればケツバットを公然とやってたなんて話も聞くし、できることならその様子を見せてもらいたいと思っている。
「私は……男の子のお尻を叩きたい」
「ほう……」
そんな願望があるだなんて、今よく考えてみなければ自分でも気付かないままだったかもしれない。
ミズキと話したことがきっかけで自分の性癖を認識した私は妄想が止まらなくなっていた。
「ギチギチに縛って、無理やりお尻を突き出させて……こう、思いっきりバシバシ叩きたい」
ジェスチャー付きで語る私。ミズキは瞳を輝かせて聞いている。
「すごいよヨウコちゃん……最高だよそれ……!」
それから昼休みが終わるまで、私たちは一緒にイケメンの緊縛写真集を見ながらあれこれ妄想を話し合うのだった。
すっかり意気投合した私たちはハルトを合わせて三人で一緒にいることが多くなった。
もちろんハルトが居る時にはSMの話なんてできないのだけど、唯一仲の良い男子が隣にいるとつい考えてしまう。
──ハルトをいじめたい。
ハルトは同じ幼稚園、小学校、中学校と続いて高校まで一緒になった腐れ縁の男子だ。恋愛感情も自覚らしいものはなく、普通に友達として接してきた。
それなのに、いつからかハルトをあの写真集の男たちみたいにギチギチに縛ってやりたいと思うようになっていた。
そうして動けなくなったハルトの尻を、この手で……!
するとハルトはどんな顔をするだろう。怒り? 失望? Mっぽい所あるし、逆に喜ぶかな?
どんな表情でもいい。私の手でハルトを無様な姿にして貶めてやりたい……。
欲望はどんどん肥大化し、ついに我慢の限界を迎えた。
私はミズキと話し合ってハルトを空き教室に呼び出し、二人で協力して一気に縛り上げた。
あまりに興奮していたせいでその時の記憶は曖昧な部分が多い。だけどギチギチに縛られて動けないハルトをさらに抑え込み、そのお尻に叩き込んだ平手の感覚は鮮明に覚えている。
ミズキは叩くよりもくすぐる方が好みらしく、動けないハルトの脇腹をこちょこちょしまくっていた。
次の日もそのまた次の日もハルトを呼びつけ、縛ってはいじめての繰り返し。
逃げ出さないということはハルトも満更ではないのだ。だけどいつも悔しそうな顔をして見せてくれて……これがもう、ゾクゾクして堪らない……っ!
ミズキも夢中になって、すっかりこの異常な遊びをやめられなくなってしまった。
ハルトをM奴隷にして、私たち二人でいじめ尽くす。ずっとこんな日々が続けばいいと思っていた。
ある日のこと──私がおつかいに行っている間にミズキが帰ってしまったと言うので、私は初めてこの空き教室でハルトと二人きりになっていた。
ハルトもハルトで「ヨウコ……二人きりだな」なんて青春めいたことを言い始める。不意打ちのような一言に動揺してしまったが、その後に続く言葉が私の運命を大きく変えた。
「今日はいつもと趣向を変えてさ、ヨウコが縛られてみないか? ミズキもいないことだし……いいだろ?」
何を言っているのか理解に時間が掛かった。
私が、縛られる……? ハルトが私を、縛る……?
そんなこと一度だって考えたことがなかった。
「ヨウコが縛られた姿を見てみたいんだ。もちろん悪いようにはしないし、嫌だったらすぐに解くからさ。な? 頼むよ。今日だけ! お願いしますヨウコ様!」
捲し立ててくるハルトを前に私は冷静さを欠いてしまっていたらしい。
ハルトがふざけた感じでお願いしてくるので、ここで断ると「ノリが悪い奴」みたいに思われそうだな……などと場違いなことを考えていたのだ。
だからつい言ってしまった。
「しょ、しょうがないわね。そんなに頼むなら……一回だけ、縛ってもいいわよ。ただしっ! 絶対にすぐ解くこと! いいわねっ」
それからのハルトの行動は早かった。
背後に束ねた私の腕を瞬く間に縛り、全身にもどんどん縄を巻きつけていく。
いつも私がハルトに対してやっているような縛り方をそのまま……その……ま、股縄まで通して……!
「あんっ!?」
グイッと引っ張られた縄に思わず声を漏らす。そんな私にハルトは憎たらしくニヤニヤした顔を向けている。
「ちょ、これ……う……うぅぅ……」
抗議をしようにも恥ずかしさで言葉にならず、私のデリケートな部分を押さえつける縄の感触が衣服越しに伝わってくる。
誰にも触らせたことがないような部分を、無遠慮に縄で締め付けられて……。
こんなの、一線を越えてる……っ!
私はようやく絞り出した声をハルトに向けた。
「ねぇ、もう満足したでしょ……早く解きなさいよ」
「はぁ~? せっかく縛ったのに解くかよ」
「なっ」
さっき「嫌だったらすぐに解く」って……とハルトの発言を思い出しながら、私は自分の能天気さに失望する所だった。
私が縛る側だったらどんなに嫌がられても絶対に解かない。その嫌がる顔こそ見たいのだから。
まさか、受け入れるしかないの? ハルトからの責めを、この私が……?
すると突然、私のお尻に突き抜けるような痛みが走った。
──バチンッ!
「きゃんっ!?」
咄嗟のことに思考が麻痺する。
私はあくまで『叩く側』の人間。その精神的な優位が崩れるようなことは絶対にあってはならない。
だけど現実には今、私は『叩かれる側』で……とても受け入れ難いことが起こってしまっている。
「な、な、何すんのよ!!」
「悪い子にはお尻ペンペンしてお仕置きしなきゃいけないからな~」
咄嗟にハルトを蹴り飛ばしてやろうと足に力を入れて、ギチッ!と音を立てる縄に止められる。
まるで抵抗できない。たった何本かの細い縄で、私の自由が全て奪われている。
ハルトが満足するまで、私はずっと縛られた姿で無抵抗のまま……。
無理やり噛み締めさせられるように、自分が絶望的な状況であることを思い知っていく。
それからもハルトは少しの遠慮もなく私のお尻を叩き続ける。屈辱に耐えられず逃げようとしても、背中から伸びる縄をグイッと引き寄せられてまた叩かれる。
「いやっ! もうっ! やめなさいよっ!!」
こんなの許せない。
叩いていいのは私だけなんだ。ハルトが私のお尻を叩くなんてこと、許されていいはずがない……!
「ふぅっ、ふぅ……っ!!」
縄を引きちぎるつもりで全身の筋肉に力を込める。だけど帰ってくるのはギチギチという縄の軋む音だけで、いたずらに体力を削られるばかりだった。
「ハルト……絶対に許さない……っ」
いくら声に恨みを込めても、ハルトはビビるどころか私をいじめる愉悦に口角を上げていくばかり。
縛られる側から見る、縛る側の顔──
脅かされることのない絶対的な優位に浸るサディストの顔がそこにあった。
また叩かれる。悔しさで心がどうにかなってしまいそうだった。
私は顔を伏せてハルトを見ないようにする。いくら睨みつけても喜ばせるだけだ。一矢報いるなら無反応を貫くしかない。
「すっかり大人しくなったなぁ。叩かれるのが気持ちよくなっちゃったか?」
「ち、違うわよっ!」
心外なことを言われてつい反応してしまった。
怒っても無駄、無視もできない。
ならいっそ、後で報復することを話してハルトをビビらせてやる。
私は精一杯の恨み言をハルトにぶつけた。
「あ、明日になったら……ミズキと力を合わせて、あんたを縛って……今まで以上の恥ずかしい目に遭わせてやるから……覚悟しなさいよね……」
脅しが通用したのか、ハルトは手を止めて何事かを考え始めた様子だった。
明日の仕返しが怖かったら今すぐ解きなさい。行動が早ければ早いほどあんたの罪が軽くなるわ。罰を軽くするつもりなんて一ミリもないけどね……!!
縄を解かれる瞬間を待っていると、ハルトがようやく口を開いた。
「じゃあミズキに会わせてやるよ」
言葉の意味が分からなかった。それなのに私の心臓はバクバクと音を立てて、嫌な予感が心の中に瞬く間に広がっていった。
ハルトはこの空き教室の角に設置されたロッカーまで歩いていく。
取っ手に手を掛け、開くと……そこには私と同じように、体の上から下まで縄でぐるぐる巻きに縛られたミズキが押し込められていた。
「な……っ!?」
嘘でしょ……?
ミズキがもう帰ったなんて話は嘘だった。状況は私が思っていたより何十倍、何百倍も──最悪だった。
それからのハルトは狂ったように、そして嗜虐の悦びを貪るように私たちを責め立てた。
ミズキがハルトによくやっていたくすぐりを私に仕掛けてきたり。
「ほら、こちょこちょこちょ……」
「あはははははははっ! や、やめぇ……! あはははははははははははっ!!」
逆に私が好んでやっていたスパンキングをミズキに仕掛けたり。
「ほらよ!」
バシンッ
「いったぁ!! ハルトくん、女の子のお尻になんてことを……ぎゃんっ!?」
まさにされるがまま。
いくらもがいても縄は解けず、ひたすらいじめられ続けて。
やがてハルトの方が疲れを見せ始めた頃にようやく責めの手が止まった。
「ふぅ~楽しかった。今日のところはこれくらいで勘弁しておいてや……る……」
私とミズキは精一杯の怒りを込めてハルトを睨みつける。
さぁ、早く解きなさい。
自由になった私たちの手によって、今度はハルトが縛られる番よ。もう仕返しをしようなんて思わせないためにも、徹底的に心をへし折るようにいじめ倒してやる……。
「も、もう少し続けるか! なんか縄を解いたら今にも襲い掛かられそうだし」
そう言ってハルトは私のふくらはぎ辺りに跨り、足の裏をくすぐり始めた。
「なっ!? ちょ、やめなさいハルト……あっ、やっ……あははははははははははははははははっ!!」
しまった──と思った時には遅く。
怒りを顔に出し過ぎたことでハルトに警戒されたらしい。「仕返しをしようなんて思わせないために」……今しがた考えていたことが自分たちに返ってきてしまった。
くすぐられて暴れるほど、私を縛る縄は締め付けを増していくようだった。股縄の食い込みもギュウウウと厳しくなっていく。
「ほらヨウコ、やめてほしかったらお願いしてみろ。そうだな……ハルト様お願いします、許してくださいって言えば解いてやろうかな」
「誰が……そんなこと……っ」
「言えないなら解けないな~。おらっ」
バシッ!! と張り裂けるような音と共にお尻に痛みが走る。
「んあ……っ!?」
蓄積していた痛みも合わさり、今にも心が折れそうなほどに痛覚を刺激されてしまう。
「ほら、ヨウコの好きな尻叩きだぞ。存分に味わえ」
「や、やめ……」
逃れる術はなく、何度も何度もお尻を叩かれて。
耐えかねた私は──ついに言わされてしまった。
「ハルト……様……お願いします……許して……ください……」
体を折り曲げて半ば土下座するような形で、ハルトの足元に頭を下げながら。
「さっき俺が提案した言葉だけじゃなくて、ヨウコの考えた言葉で許しを乞えよ」
「……ッ!!」
私は必死に心を空っぽにして怒りを抑える。ここで反抗的な態度を取っていてはまた責めを繰り返されるだけだ。
「今まで申し訳ございませんでした……私たちが悪かったです……だから、解いてください……」
「謝るだけじゃなくてさ、感謝の言葉も聞きたいな。俺はお前らの好きな緊縛プレイに付き合ってやってんだから」
従順な姿の私を見て面白くなったのだろう、ハルトはどんどん調子に乗って要求を追加してくる。
「し、縛ってくださり……ありがとう、ございます……っ!」
乾いたぞうきんから水分を絞り出すような気持ちで、無理やりハルトの喜びそうな言葉を選んでいく。
心にもない感謝の言葉を言わされたのに、まだ縄を解いてくれない……。
ハルトに満足してもらうため、絶対に言いたくない屈辱的な言葉を並べるしかなかった。
「……スパンキングも、くすぐりも……ハルト様にやっていただき……光栄で、ございました……」
こんな情けない姿を、親友のミズキにも見られながら。
いつしか私は床に額を擦り付けてハルトのご機嫌を取り続けていた。
何も考えるな。今は解放されることだけを考えろ。そう自分に言い聞かせながら……。
私の口からはとても語れないような仕打ちをミズキも受けた後に、私たちはようやく解放された。
完全下校の時間が迫り、帰る準備を急かす校内放送が流れてくる。体力も時間もなく、今日はハルトに仕返しすることはできなさそうだった。
さっきまでわたしたちを縛っていた縄を鞄に片付け、三人で帰路についていく。
「いやぁ今日は楽しかったなぁ! あはは」
ハルトの呑気な発言に言葉を返す余裕もなく、しかし私はミズキと目を合わせて頷き合った。
明日はハルトを徹底的にいじめてやる──その心は一つだった。
今に見てなさいよ。ハルトを完膚なきまでに叩きのめして、立派なM奴隷にしてやるんだから……!
──「いつもいじめてくる女子に仕返しをする話」シリーズ・おわり──