いつもいじめていた男子に仕返しされた話(ミズキside) (Pixiv Fanbox)
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~ミズキside~
物心ついた時からアニメの緊縛シーンなどに興奮していた私は、いつも男の子を縛る妄想ばかりしていた。
活発な元気っ子を縛り上げて大人しくさせたり、クールぶってるキザな子を縛り上げて恥ずかしいポーズを取らせたり。
ついには緊縛男子がいっぱい掲載された写真集にまで手を出してしまう始末。
だって本屋さんを散策していたら年齢制限の無い棚にその本が並べられていたんだもの。これは買わずにいられない! って思ったんだから。
だけどたった一冊の本を買うために私は困難な試練を突破しなくてはならなかった。
いくら肌の露出が無いとはいえ緊縛などというアブノーマルな性癖の本をレジへ持っていくのはとても勇気の要ることだ。もし店員に顔と性癖をセットで覚えられた日には陰で「むっつり女王様」のようなあだ名を付けられてしまうに違いない。
写真集の前をうろうろしながらどうしたものか考えること一時間……私はお小遣いを奮発し、参考書と参考書の間にさりげなく写真集を挟んでレジへ持っていくことにした。
本当に欲しい本の約三倍の値段が掛かってしまったが、おかげで恥をかくことなく緊縛男子の写真集を手に入れることができたのだ……!
たくさんお金を掛けて怪しまれることなくレジ会計をクリアしたはいいものの、すぐさま次の試練が私を襲う。
このいかにも怪しい写真集をどこに隠すべきか……。
私のお母さんはとても綺麗好きで、学校へ行っている間に部屋の隅から隅まで掃除してくれる。
きっとどこに隠しても見つけられてしまうのだろう──我が家に安全地帯は無いと考えた私は、通学鞄に写真集を忍ばせて持ち歩くことにした。
親の目から離すために持ち出したものの、授業中もずっと私の頭は例の写真集のことでいっぱいだった。
(見たい……)
先生の話なんてとても入ってこない。
縄でギチギチに縛られた男の子たちのあられもない姿が見たくて仕方がない……。
お昼休みの時間に突入するやいなや、私は中庭の一番端っこのベンチに座り込んだ。
ここならあまり人も通らなさそうだし、誰か近づいてきても足音とかで分かるだろう。表紙は大判仕様の手作りブックカバーで隠してある。この隠密ミッションは完璧に遂行されるはずだった。
「えへっ、えへへ……」
秘密の花園を覗き込む背徳感で胸がいっぱいになっていると、
「うわ、すっご」
背後から声。私はすぐさまその方向に視線を向けた。
そこにいたのはクラスメイトのヨウコちゃんだった。
誤算だった……夢中になり過ぎて足音なんか全然聞こえてなかった。
見られた。見られた。見られた。
「あ、あわわ、あわわわわ……」
慌てている時にあわわなんて言う日が来るとは思わなかった。
この反応に余程の異常性を感じたようで、ヨウコちゃんも慌てた様子で私をなだめてくれた。
「だ、大丈夫! 誰にも言わない! 本当に! 約束するから! 安心して!」
それがヨウコちゃんと仲良くなったきっかけだった。
ヨウコちゃんのことは同じクラスになった日から密かに注目していた。
何故なら彼女には同い年の幼馴染がいる。それも──男の子。
彼の名前はハルトくんと言って、どこにでもいる普通の男の子といった印象の子だ。
進学したばかりで話しかける相手に困っている生徒も多数いる中、二人は異性でありながら最初から仲良く会話していた。
てっきり付き合ってるとばかり思っていたら、ある日の会話に聞き耳を立てているとそうでもないらしいことが分かった。
『おめぇら付き合ってんだろ』
そんな茶々を入れてくるクラスメイトにも涼しい顔で、
『ハルトは弟みたいなもんだし』
『はぁ? それを言うならお兄ちゃんだろ。お前が妹だよ』
『はー? 絶対無理~!』
う、羨ましい……!
私だって幼馴染の男の子が欲しかった。そして今みたいに恋愛感情を否定しながらどことなく満更でもない感じを出したりしたかった!
そうやって恨めしい気持ちになることもあったけど、ヨウコちゃんは消極的な私にも優しく話しかけてくれたり、班決めの時に誘ってくれたり……女子でありながら、私にとっては王子様のように素敵な人だと感じるようになっていたのだ。
「へぇ。ミズキはそういう……SM? が好きなんだね」
「うん。ギチギチに縛られてる男の子にときめくっていうか……ヨウコちゃんはそういう願望ない?」
「私は……男の子のお尻を叩きたい」
「ほう……」
私、今ヨウコちゃんとSMの話で盛り上がってる!!
「ミズキは縛るだけで満足なの?」
不意の質問に私は少し考える。
確かに縛った後、眺めるだけでは写真集を見るのと大して変わらない。次のステップに何がいいかと考えた時、脳内にかつて見たアニメのワンシーンが思い浮かんだ。
「……くすぐりたい!」
主人公がやられ役の敵キャラに縛られてくすぐられているシーンを見たことがある。毎回主人公が簡単にやっつけている弱い敵キャラの罠にはまってしまうストーリーで、縛られてしまっては手も足も出せずされるがまま──その回の放送が終わった後もしばらくは頭から離れなかったのを覚えている。
「くすぐるの!? ミズキは可愛い顔してえぐいね~」
「いえいえヨウコちゃんほどでは」
私たちが友達であり、同志となった日の出来事であった。
いつも二人きりだったヨウコちゃんとハルトくんの輪に私も加わり、帰り道を一緒に歩くことになった。
「ミズキさんってなんでヨウコと仲良くなったんだ?」
「そ、それは秘密で……」
SMの話で意気投合しましたなんて口が裂けても言えない。あまり気の利いた誤魔化し方が思いつかない私はどう考えても怪しまれるような隠し方をしてしまった。
怪訝な顔をするハルトくんに困っていると、すぐさまヨウコちゃんが助け舟を出してくれた。
「何よミズキさんって、ムズムズするわね。呼び捨てでいいじゃない」
「ええっ?」
「ミズキもいいわよね?」
「う、うん!」
良かった、うまいこと話が逸れてくれた。
「ほら、ミズキのこと呼びなさいよ」
安堵したのも束の間、ひょっとして今すごい流れになってきてない……? と気付く。
ハルトくんが私の目を見つめて口を開く。
「……み、ミズキ?」
「ひゃい!」
お、おおおお男の子に、呼び捨てにされてるぅ……!
憧れのシチュエーションの一つが突然叶ったことで私の思考回路はショート寸前だった。
顔が……あ、熱いよ……っ!
「お見合いか」
「ヨウコてめぇ、それは絶対言うなって! 変に気まずくなるだろ!」
私は夢を見ているのでしょうか。
人生で最高の一日は何だったかと聞かれたら、この日のことは間違いなく第一候補に挙がってくることだろう。そう思うくらい素敵な思い出になった。
ハルトくんが居ない時、私とヨウコちゃんは必ずSMの話に花を咲かせた。
お互いの情報を持ち寄ったりしていく中で、私たちの欲望はついに頂点へと到達した。
「ねえミズキ……二人で協力してさ、ハルトのこと縛ってみない?」
「えっ!?」
願ったり叶ったりの話ではあったものの、ヨウコちゃんの方から提案してくれると思っていなかった私はつい驚いてしまった。
ハルトくんのことを性的な目で見てないような感じだったし、好きな男の子のタイプを話し合った時もハルトくんに当てはまるものは一つも言っていなかったはずだ。
「だ、大丈夫かな。ハルトくん引いたりしない?」
「……もしかしたらドン引きするかも」
ヨウコちゃんとハルトくんは傍目に見てもすごく仲良しだけど、思い返してみればエッチな系統の話題はお互い避けている様子だった。いくら幼馴染とはいえ、このカミングアウトでどうなってしまうかは予想しかねているようだ。
「でも他に縛れる相手なんかいないしやるしかないよ。私もう限界だもん。正直、朝から夜までムラムラしてる」
「それは私も……」
「でしょ!? いっつもこんな話してたらこうなるって!!」
こうなったら私も腹を括るしかない。
もしかしたらハルトくんと友達でいられなくなってしまうかもしれないけど……私も抑え難い感情に正気を保つのが難しくなっていたところだった。
「実は丁度いい空き教室を見つけたのよ。鍵が閉まってないから入り放題。どの部室とも離れてるから誰かが来る理由が無いの」
「すごい丁度いいね……」
これはきっと緊縛の神様が私たちの味方をしてくれているに違いない。
だったら後は突っ走るのみ。
私たちはもう……ハルトくんを縛り上げるまで止まれないのだ。
「緊縛用の縄も買わなきゃ。通販って未成年でもできるかしら」
「親の許可がないと無理だと思う。ホームセンターで麻縄を買ってなめさないと……」
「面倒ね~。ハルトのやつ、これだけ手間かけてもらっておいて拒絶なんかしたら絶対許さないんだから……」
こうして私たちのハルトくん捕縛計画が始まった。
何日も掛けて準備した甲斐があり、少し過剰だったかと思うくらいに多くの縄を用意できた。
そして来たる作戦決行日。私たちはハルトくんを空き教室に呼び出し……無理やり襲いかかった。
ヨウコちゃんはハルトくんに縄を掛けていく役。私はハルトくんを羽交い締めにして縛りやすいようにヨウコちゃんをアシストする役だ。
本当は縛り方を熟知している私が縛る役をするべきなのだけど、腕力の問題で縄が緩くなりそうだったのでヨウコちゃんに猛勉強してもらったのだ。
拘束が甘くなりそうな箇所は私が指示をして適切にハルトくんの自由を奪っていく。
「や、やめろ……!」
考えてみれば羽交い締めすると抱きつくような形になってしまってとても恥ずかしいのだけど、ハルトくんは無理やり振り解くようなことはしないでいてくれた。本当なら私の腕力で男の子を抑えられるわけないのに……ハルトくんの優しさにこんな時だけど胸がキュンとなる。
「ていうかミズキ、む、胸が当たって……」
「……~~~っ!」
それは考えないようにしてたのに! なんで言っちゃうの!
私に代わってヨウコちゃん答える。
「あんたがミズキのおっぱいにメロメロになってる間に縛り上げる作戦なのよ! 計画通りね」
役割を決めたのはヨウコちゃんだったけど、そんな意図があったなんて聞いてないよ!?
紆余曲折ありながらも、ハルトくんを高手小手縛りの刑に処すことに成功した。もちろん逃げられないよう、両脚も入念に縛ってある。
「くそっ、全然解けねえ……」
身を揺するたびに縄のギチギチという音が心地よく響いてくる。
私とヨウコちゃんは二人で息を切らしながら、目の前の最高傑作に感嘆の溜め息を漏らしていた。
「ハルト……」
「ハルトくん……」
ああ、縛られて動けないハルトくん。動けないのに諦め悪くもがいてみせるハルトくん。
健気で、可哀想で──とっても惨め。
平面の世界しか見られない写真集とは全然違う。目の前で本物の人間が縛られている。
想像以上に……興奮する。
「ねえハルトくん、縛られてどんな気持ち? ハルトくんはMっぽいから嬉しいんだよね」
「なっ!?」
私はハルトくんのすぐ隣に座って、無防備な脇腹にそっと指を這わせた。
「だ、誰がMだ……くっ、変なとこ、触るなあ……っ」
反対側に座ったヨウコちゃんも、私にならって同じようにハルトくんを責め始める。
「ハルトってばクネクネしちゃって、女の子みたい」
「……ッ、ぐっ、ううぅ……!」
もう無我夢中だった。私たちは思いつく限りの方法でハルトくんをいじめ倒し、縄を解いてもしばらく立ち上がれないほどの責め苦を与えた。
「はぁ、はぁ……お前ら、やり過ぎだって……」
嫌われてしまうという最悪の事態も想定していたけど、ハルトくんの反応はどこか満更でもない感じだった。
やっぱりMだったんだ。
ということは、これから毎日ハルトくんを縛り放題……!
次の日から既にハルトくんに対して照れや遠慮など覚えることもなくなった。
だってハルトくんは今や私たちのおもちゃ。人間の形をした私たちの所有物。
これから先もずっと、大切に遊んであげるからね……。
それから私たちは毎日のようにハルトくんを縛ってはいじめて、時には叩いてくすぐってを繰り返した。
そんな中である日、ヨウコちゃんから「今日は空き教室に来られない」と言われた。
ということはハルトくんと二人きり……こんなシチュエーションは仲良くなってから初めてのことだった。
「ふふふ。今日は二人きりだね♡」
初めはハルトくんの一挙手一投足にドキドキしていた私も、この頃にはすっかり慣れたもので意味深めいた冗談も言えるようになっていた。
私は縄の束を伸ばしながらハルトくんに近づいていく。
縛り方はいつもヨウコちゃんに任せているけど、私はもっと過激な縛り方をしたいと思っていた。二人きりの今日は最高のチャンスだった。
「後ろを向いて? 今日はヨウコちゃんの目もないし、いつもしないような飛びきり恥ずかしい縛り方をしてあげ……」
しかしハルトくんは思いもしなかった行動に出た。
持っていた縄を取り上げて、私の体を強引に壁へ押し付け始めたのだ。
「きゃっ!? な、何!?」
無言で私の両手首を背中で束ねさせ……あろうことか、縄を巻きつけてくる。
「や、やめ……!」
ハルトくんの握力は凄まじく、どうしても振り解くことができなかった。
見る見る内に縄を掛けられていき、とうとう身動きが取れない姿にされてしまった。
高手小手縛りにされた腕は左右に開けず、手首を上下に動かすことも許されない。
それだけじゃ飽き足らず……わ、私の下半身の、デリケートな部分にまで縄を……!!
まさかハルトくんがこんな暴挙に出るなんて。Mなだけだとばかり思っていたから完全に油断していた。
見ると彼の表情は普段ヨウコちゃんがするような嗜虐心に溢れる様相だった。
きっとハルトくんはずっと前からこの復讐劇を計画していたんだ。そして迂闊にも二人きりになったことで、実行に移された。
「ゆ、許して……縛られるのなんて、初めてなの……」
助けを乞う私の声は非常に情けなく震えてしまっていた。
「俺の気が済んだら解いてやるよ」
絶望的な言葉を残して、ハルトくんの大きな手が私の脇腹に触れる。その指先がこちょこちょと蠢き、容赦ない刺激を神経に与えられる。
「にゃっ!? あひっ、あっはははははははっ! やっ、やめ……やめてえっ、あははははっ!!」
いくら身を捩っても縄は緩む気配すらない。それどころか締め付けを増していくようで、股縄も容赦なく食い込んでくる。
「助けてえっ! そこはっ……弱くてえっ……あははははははっ!!」
執拗に脇腹を責めてくるハルトくん。いつも優しくしてくれたのに、今日は全く言うことを聞いてくれない。
「弱いから責めるんだろうが。ほれほれ、もっと笑え」
「ごめんなさいっ許してくださいっ! はひっ! はあっ、はあっ、あはははははははっ!!」
こんなにも長く大声で笑ったのは生まれて初めてのことで、息継ぎするタイミングも見つけられない。
身体中に巻きつけられた縄のせいで一切の抵抗もできなくて、緊縛がいかに残酷な仕打ちか身をもって実感させられるようだった。
しばらく笑わせられて、ようやくハルトくんの手が止まる。
やっと許してくれる……そう安堵し掛けたものの、彼の目はまだまだ終わる気なんてないというように笑っていた。
必死に息を整えていると、ハルトくんの指がまた私の脇腹に触れる。
だけど今度はくすぐるような感じじゃなくて、触れるか触れないかの微妙な力加減で撫られた。
「にゃっ……ぁ……っ!?」
一見しただけだとくすぐりよりも甘い責めのようなのに、脳天にまで突き抜けるような刺激が私を襲う。
「んうぅっ! こ、これダメ……そこは敏感なのに、コレはぁ……っ!!」
ハルトくんはあまり意識してないようだけど、これはもうさっきまでのイタズラとは次元が違う。
ABCで言うところのBというか……はっきり言ってしまうと愛撫そのものだった。
「さっきも言ったが俺の気が済むまでやめてやらないからな」
私にとってこの行為はくすぐりよりもよっぽど効いてしまった。性的な快感が脇腹を中心に波紋のように全身へ駆け巡る。
極め付けはもがく度に締まる股縄……。
私はあっという間に限界を迎えそうになっていた。
「いっ……、いっ……ちゃう……からぁ……っ!」
言いたいことがいまいち伝わっていない様子のハルトくんは、私の懇願も無視して行為を続けようとしていた。
そこに聞いたことのある音声が鳴り響き、ようやく責めの手が中断される。
音の正体は私とハルトくんのスマホの着信音だった。二人のスマホが同時に鳴るということは、ヨウコちゃんも含めた三人のグループチャットにメッセージが送られたということにほかならない。
ハルトくんはポケットから取り出したスマホに目を落とすと、その内容を教えてくれた。
「ヨウコのやつ、おつかい早く終わったからやっぱりこっちに来るってさ」
「えっ……!?」
それはつまり、私の今の情けない姿がヨウコちゃんに見られてしまうということで。
見せてやろうぜ。縛られて息を荒げているお前の姿をよ……!」
「だ……ダメぇっ!!」
それだけは絶対にイヤだ。いつもいじめていたハルトくんに縛られてしまったなんてこと、恥ずかし過ぎてとても知られたくない。
「こんなの見られたら……恥ずかしいよぉ……お願い……解いて、ハルトくん……っ」
「う……」
私のさっきまで以上の懇願はハルトくんの胸を打ったようだった。打って変わって態度が軟化したハルトくんは縄の結び目に手を掛け始める。
「分かった。すぐに解くからな……」
安堵するのも束の間、なかなか縄が緩む様子はない。
「あれっ、固結びになってる。解きやすいように結んでたんだけどな……」
──うそ!?
こんな時に限ってそんなミスしないでよっ!!
「早く! ヨウコちゃん来ちゃうからぁ!!」
「分かってるって。だから大人しく……くそっ、全然解けん……!」
そうこうしている内に数分が経ち、廊下の方からドタドタと足音が聞こえてきた。
校舎の中でも人通りの少ない場所なので遠くからでもよく響いてくる。
時間が無い。もうすぐヨウコちゃんが来ちゃう……!
「もう解くのは無理だ! とりあえず隠れてろ!」
するとハルトくんはたくましい腕で私を抱え上げた。
お姫様抱っこされた……! と思う間もほとんどなく、彼は掃除用具入れの扉を開けて私を押し込み始める。
幸い掃除道具の類は何も入っていなかったので、すんなり中に収まることができた。
「俺は一旦ヨウコと帰る振りして、後で解きにくるからな。大人しく待ってろよ」
確かにヨウコちゃんをやり過ごす手段はこれしかないだろう。私がこくりと頷くと、ハルトくんは掃除用具入れの扉を閉じていった。
真っ暗な世界。覗けるような穴もなく、外の様子は音で判断するしかない。
足音が止まると同時に教室の扉が開かれる。
「ハルト、ミズキ! お待たせ~……あれ? ミズキは?」
あ、危なかった……。
あと少し遅ければ私の痴態が晒されていたことだろう。考えるだけでも恐ろしい。
一人きりの空間。ふと私は少し前の出来事を思い出していた。
ある日、ヨウコちゃんと二人で縛り方の勉強をしていた時のこと、ヨウコちゃんは何度も私を練習台にしようとしていた。縛られたくなんてなかった私はその度に拒否して、ヨウコちゃんも強引なことはしないようにしてくれていた。
ヨウコちゃんのことだから縛るだけで済むとは思えない。動けない私をくすぐったりとか、それくらいのことは冗談めいた感じでやってくる可能性があったから。
ハルトくんに縛られてしまった今、ヨウコちゃんと結託して二人から責めを受けることになっていたら、なんて考えると……恐ろしくて身震いしてしまう。
私が考え事をしている間にも外の会話は聞こえてきていた。
「それよりヨウコ……二人きりだな」
「なっ! ななななに言ってんのよっ!?」
気になる男の子に言われたらついドキッとするような台詞に、ヨウコちゃんはまんまとドキッとしている様子だった。
普段はあくまで友達同士のように振る舞っているけど、ヨウコちゃんもやっぱりハルトくんのことを意識する所はあったようだ。声だけでも動揺が伺える。
ハルトくんは私も聞いていることを忘れてるわけでもないだろうに、どんな甘い言葉を囁くつもりなのか……なんて考えていると、話はとんでもない方向に舵を切られていった。
「今日はいつもと趣向を変えてさ、ヨウコが縛られてみないか? ミズキもいないことだし……いいだろ?」
ヨウコちゃんのことも縛るつもりだ……!!
逃げてヨウコちゃん。ハルトくんはいざとなったら力尽くで縛るつもりだ。説得しようとして隙を見せている今が逃げる最高のチャンスだよ!
だけど心の声でする忠告など聞こえるはずもなく、話はあらぬ方向へと進んでいく。
「しょ、しょうがないわね。そんなに頼むなら……一回だけ、縛ってもいいわよ。ただしっ! 絶対にすぐ解くこと! いいわねっ」
なんで乗り気なの!?
無理やり縛られるわけでもなく、ヨウコちゃん自ら縛られることを承諾してしまった。そんなことMの気質がない限りあり得ない──そこまで考えて私はハッとした。
緊縛の勉強をしている時、私のことを実験台にして縛ろうとしていたのは……自分が縛られる流れを誘発しようとしてのことだったのでは。
急速にヨウコちゃんのM疑惑が深まる中、掃除用具入れの外では合意の上でプレイが進行しようとしていた。
「きゃっ」
「お、なんだ今の声は。喜んでんのか?」
「なっ……!? くぅ……ハルトのくせに……!」
声しか聞こえないせいか、ますますヨウコちゃんの声が喜んでいるように聞こえてしまう。
「あはは。さすがのヨウコもこれじゃただのお人形だな」
「ハルト、後で覚えてなさいよ……この次にあんたを縛って、とんでもない目に遭わせるんだから……」
今まで聞いたことないような甘く蕩けた声。
それからも何度かヨウコちゃんの嬌声を聞かされて私もちょっとムラムラした気持ちになっていると、事態は急展開を迎えたようだった。
バチンッ!
「きゃんっ!?」
何かが破裂するような音と共にヨウコちゃんの悲鳴が上がる。
「な、な、何すんのよ!!」
「悪い子にはお尻ペンペンしてお仕置きしなきゃいけないからな~」
私をくすぐり責めにした一方で、ヨウコちゃんにはスパンキングで責めていくつもりなのだ。
何度も何度も叩かれる音が響き、次第にヨウコちゃんの声が苛立っていく。
「いやっ! もうっ! やめなさいよっ!!」
縛られることに興味はあったものの叩かれることは本気で屈辱らしい。縄のギチギチと軋む音が激しさを増している所からもヨウコちゃんの怒り度合いが伺える。
「ふぅっ、ふぅ……っ!! ハルト……絶対に許さない……っ」
またバチンッ、バチンッと容赦のない破裂音。
ハルトくんのS性が完全に覚醒してしまったみたいだ……。
「こんなこと今日だけなんだから……ミズキさえいたら、あんたなんか……」
いきなり耳に飛び込んできた私の名前に思わずドキッとしてしまう。
お尻を叩く音が止まった。今のヨウコちゃんの一言で急速に空気が変わっていく気配を感じる。
「じゃあミズキに会わせてやるよ」
私が隠れている掃除用具入れに向かって足音が近づいてくる。
見られたくないって言ったのに。後で解きに来るって約束したのに。
「だめ、ハルトくん、やめて……! お願い……!」
私の声をまるっきり無視して、ハルトくんは掃除用具入れの扉を開け放った。
それからは地獄の鬼に責められる罪人のような気持ちだった。
今度は責め方を変えて、ヨウコちゃんにはくすぐり責めを。
「やめてやめてやめてくすぐったいのほんっと無理ムリムリ! あははははははっ!!」
そして私にはスパンキングで責めてくる。
「ぎゃんっ!?」
男の子の大きな手で叩かれるととんでもない痛みが突き抜ける。縛られているせいで衝撃を逃がすようなこともできなかった。
小さな子供が壊しそうなくらい無茶な遊び方でおもちゃを扱うように、私たちへの遠慮などまるで感じられない激しい責めが続く。
これが今までしてきたことへの天罰……そう思えるならまだ良かった。
だけど今日のハルトくんはやり過ぎだと思う。屈辱感など通り越えて、沸々と怒りが湧き上がってきた。
「ふぅ~楽しかった。今日のところはこれくらいで勘弁しておいてや……る……」
私とヨウコちゃんは精一杯の怒りを込めてハルトくんを睨みつける。
自由を取り戻した瞬間、私たちでハルトくんを押さえ込んで縛ってしまおう。そして今日の仕打ちをさらに何倍にも膨らませてお返しするんだ。
そうでもしないと気が済まない。もう許せない。
くすぐってやる。叩いてやる。踏んづけて謝らせてやる……ッ!!
「も、もう少し続けるか! なんか縄を解いたら今にも襲い掛かられそうだし」
「「っ!?」」
そう言ってハルトくんは縄に束ねられたヨウコちゃんの脚に跨り、足の裏をくすぐり始めた。
怒りのままに睨んだことが想像以上に効き過ぎたらしい。しまったと思った時にはもう遅く、縛られていなければ両手で目を覆いたくなるような惨状が繰り広げられていく。
屈辱的な台詞を言わされて、土下座のようなことまでさせられて……見ていることしかできない私は心の底から震え上がった。
体だけに飽き足らず、心を徹底的に蹂躙するようなハルトくんの責め方を見せられて。
「ほら、ヨウコは完全に屈したみたいだぞ。ミズキはどうする」
私もヨウコちゃんみたいに、頭を下げて謝らないと許してもらえないの……?
芋虫のように体を伸び縮みさせて逃げようとするも、当然すぐに追いつかれてしまう。
「ゆ、許して……お願い……仕返しなんてしないから、堪忍して……」
「ああ、もちろんだよ。そもそも怒ってねえしな」
その言葉と笑顔だけ切り取れば爽やかな印象さえ感じるハルトくんの態度に、警戒心よりも恐怖を覚えた。
何を考えているの……?
するとハルトくんは私の鞄をガサゴソと探り始めた。そして取り出したのは見慣れた保護ケース入りの……スマートフォン。
「お前らの緊縛趣味はミズキの性癖から始まったんだよな」
過去に何度もハルトくんをいじめる中で、そんな話をハルトくんの前でもしたような気がする。
「ずっと気になっててさ、見せて欲しかったんだ。ミズキのスマホの閲覧履歴」
「りれ……き……ッ!?」
いや……やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて
「今時はロックを解除するのにパスワードも要らなくて便利だよなぁ。親指の指紋一つでそんな手間も省けるんだから」
必死に拳を固く握り締めるも、私とは桁違いの握力で親指を無理やり開かされる。
そこにスマホのボタンを触れさせられて。
「開いたぞ~? さて、まずはブラウザでも……」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい許してくださいお願いします何でもします私には何をしてもいいからスマホだけは見ないでくださいっ!!!!」
いくら緊縛が好きということは知られていても閲覧履歴だけはどうしても見せられない。私はハルトくんが心変わりすることを願って必死に謝り続ける。
何度も何度も謝って、いくらでも媚びるようなことを言って、ハルトくんの上履きに頬まで擦り付けて。
思いつく限りの反省の表現を縛られたままの姿で実行した。
「ああ、分かった分かった。そんなに嫌がるとは思わなかったわ。ほら、スマホは鞄に戻したから安心しろ」
「あ……ありがとうございますぅ……」
どう考えてもハルトくんが悪いことをしてるのに、最後に私は心の底から感謝してしまった。
ヨウコちゃんと同じく私の心も折れたことを確認できたことで、ようやく私たちは縄を解いてもらえた。
自由を取り戻した後もしばらく放心してしまうほど、私の心に屈辱な思いがズンとのし掛かっていた。
心も体も酷く疲弊していることを感じながら縄を片付け、いつものように三人で帰路についていく。
とんでもない一日だった……。
「いやぁ今日は楽しかったなぁ! あはは」
呑気そうなハルトくんの顔を見て、鎮められていた私の怒りが少しずつ息を吹き返す。
私はヨウコちゃんと目を見合わせて心の中で誓った。
明日はハルトくんを徹底的にいじめてやる──その心は一つだった。
今日私たちが味わった屈辱を、それ以上の拷問でお返ししてあげる。泣いて謝っても許してあげないんだから……!
──「いつもいじめてくる女子に仕返しをする話」シリーズ・おわり──