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「勇者様!今です!トドメを!!」

「はい!姫様!終わりだ魔王!どりゃあぁぁぁぁ!!!」

「ぐあぁぁぁぁぁ!!!」

勇者と呼ばれた青年は剣を振りかぶり、宿敵である魔王を斬りつける

姫の魔法で動きを封じられた魔王はなす術なく一刀両断される

すると魔王はドス黒い血を噴き出し、身体が崩れていく

その間際に黒い小さな光が姫に向かい、直撃してしまう

「姫様!?大丈夫ですか!?」

「は、はい......さっきの光は一体......」

魔王は消滅し、長きに渡る戦いの幕は降りた

しかし、先程の姫に直撃した黒い光が2人の心をざわつかせる

本当に終わったのだろうか......

2人は釈然としないまま魔王の城をあとにした

2人は国に帰るために再び旅を始める

魔王の城に辿り着くのに約半年程掛かったため、帰りもそれくらいかかるだろうと予想していた

「姫様、今夜はこの街に滞在しましょう」

「はい、勇者様」

2人は宿に入ると一緒に飯屋に向かう

「あー、お腹空いたー!」

「まぁ、勇者様ったら、ふふ」

2人はそれぞれ頼んだ料理を食べ進める

すると意外にも先に食べ終わったのは姫だった

「姫様、食べるの早いですね?」

「えぇ......思ったよりお腹が空いていたようです......」

「まだ何か注文します?デザートとか」

「そ、そうですね!ではケーキをいただきましょうか!」

姫はデザートのケーキもしっかり完食し、満足そうな表情を浮かべる

そして2人はそれぞれの部屋に戻る

姫はシャワーを浴びる為に裸になる

そして姿見を見るとある事に気がつく

「あら?これは......」

下腹部に何やら妙な紋様が浮かんでいたのだ

擦っても落ちず、痛みも無いことから姫はあまり気にしなかった

そしてさっぱりした姫はベッドに入り、眠りに落ちたのだった

翌朝

姫は首を傾げていた

「おかしいですね......服がキツいような......」

サイズがピッタリだったはずの服が微妙にキツい気がするのだ

鏡を見ると僅かに服が張り詰めているように見えなくも無い

「昨日デザートを食べたからでしょうか?少し控えなくてはいけませんね......」

姫は節制を決心し、勇者と合流して街を出発したのだった

「はむっ!美味しいですねぇ、勇者様!」

「そうですね......」

あれから日を追うごとに姫は節制するどころか食べる量が増えていった

そして案の定姫の身体はどんどん太っていった

「あのぉ......姫様?」

「ふぁい?」

「その......少し食べ過ぎなのでは?」

「んぐっ!?す、すみません!で、でもお腹が空いてしまって......」

「しかもその......言いづらいんですけど......少し太りましたよね?」

「うっ......やはりわかりますか?」

「そりゃ......服パツパツですし......」

「ですよねぇ......」

姫の服は隙間がない程パツパツに張り詰めており、太った体型がよく分かる

「新しい服買います?」

「だ、大丈夫です!私ダイエットしますから!」

ビリッ!

「あっ......」

勢いよく立ち上がると服が破けてしまった

「服屋行きましょうか」

「......はい」

姫は顔を真っ赤にしながら頷いた

魔王の城を出発してから半年後

本来なら王国に着いているはずだが予定の半分も進めていなかった

ドスッドスッドスッドスッ......

その理由は重苦しい足音の主のせいだった

「ぶふぅ!ぶふぅ!ゆ、勇者様ぁ......歩くの......ぜぇっぜぇっ......早いですぅ......」

足音の主は姫であった

あれから姫は痩せることなくとんでもなく太ってしまっていた

まるでオークのように丸々と肥え太り、服は10回以上買い替えた

森を歩いていた時に他の冒険者にオークと間違われて襲われたのは記憶に新しい

「ふひぃ!ぶひぃ!勇者様ぁ......少し休憩させてくださいぃ......」

「またですか?30分前にも休んだじゃないですか......」

「わ、わかってますよぉ......でももう足が上がらないんですぅ......どっこいしょぉぉ......」

姫は勇者の許しを待たず、その場に座り込む

「はぁ......まったく......」

「お、怒らないでくださいよぉ......身体が重いんですものぉ......ぶふぅ......」

「そんなの見ればわかりますよ......ならなぜ痩せようとしないんですか?今朝の食事もあんなに食べておいて身体が重いなんてどの口が言うんですか?」

「だ、だってお腹が空いてしまって......」

「それを我慢しないからぶくぶく太るんですよ......正直もう痩せる気ないですよね?」

「そ、そんな事ないですよぉ!私もう太りたくないですぅ!」

「じゃあ今日の夕食は抜きで大丈夫ですね?」

「えっ......」

「夕食を抜くだけでも今の姫様なら十分減量になります、それである程度痩せたら運動をすればいいんです」

「わ、わかりましたぁ......が、頑張りますぅ......」

勇者達は予定の数倍の時間をかけて街に到着する

すると姫はすぐに宿の部屋に閉じこもる

食べ物を見ると食べたくなってしまうため、姫は布団にくるまり外界の情報を遮断することにした

ぐぎゅううぅぅぅぅぅぅぅ......

「うぐぅ......お腹空きましたぁ......食べたい......お腹いっぱいになりたいですぅ......」

姫は目をギュッと瞑り、必死に我慢する

しかし我慢しようとすればする程、頭の中は食べ物の事で埋め尽くされていく

ぐぎゅううぅぅぅぅぅぅぅ......

ごろろろろおぉぉぉぉぉぉ......

「ぶぐぅ!な、鳴り止んでくださいぃ......」

姫の腹の虫は休む事なくなり続けた

夜中

街は寝静まり、勇者も眠りについていた

すると姫の部屋の扉がゆっくり開く

ギシィ......ギシィ......

床の軋む音が静かな宿に響く

姫はこっそりと部屋を抜け出し、宿屋の台所に忍び込む

すると戸棚という戸棚を開け、ありったけの食べ物を抱える

「じゅる......いただきまぁす......!」

姫は数時間ぶりの食事を貪り食らう

生の食材に残飯などまともなものは無いのに姫は幸せそうな表情を浮かべる

「ぶほぉっ!おいひぃでふぅ!!」

生肉を噛みちぎり、残飯の混ざったスープで流し込む

暗闇の中、家畜の如く食べ続ける姫

しかし明かりなどないはずなのに姫の手元はぼんやり光っている

その光源は姫の下腹部、あの日鏡で見た紋様が光を放っていたのだ

その紋様は邪悪な魔力を放っていたが今の姫は食べる事に必死で紋様に全く意識が回らない

結局姫は全てを食べ尽くすと紋様の光は収まり、台所は暗闇に包まれる

「ぶげえぇぇっぷっ!!あー、お腹いっぱいですぅ......」

姫は膨らんだ巨腹をぽんぽん叩きながら自分の部屋へと戻っていった

翌朝

宿屋に泥棒が入ったと騒ぎになっていた

姫は冷や汗をかきながら「こ、怖いですねぇ......」ととぼけたのだった

更に半年後

勇者達は王国の近くの森の奥の洞窟の中にいた

勇者達は王国には入らず寝泊まりは野宿で過ごしている

その理由は姫だった

「姫様、モンスターを狩ってきましたよ......」

「プギィ!ユ、ユウシャ......サマ!」

薄暗い洞窟の奥から現れたのは巨大な体躯をした雌オークだった

大きく肥え太った身体に緑色の肌

立派な豚鼻と大きな耳

下顎からは立派な牙が生え、口からはみ出している

勇者はその雌オークを姫様と呼んだ

そう、その雌オークは姫の成れの果てだった

残飯を貪ったあの日から姫の身体は太るだけで無く、身長も伸び始め、どんどんオークへと変化していった

流石に勇者もおかしいことに気がつき、街の魔術師に姫を診せた

すると原因は案の定、下腹部の紋様だった

魔術師曰く、物凄く強力な呪いらしく解呪は不可能らしい

この呪いをかけた人物は魔王クラスの魔力を持っていると言っていた

それを聞き、勇者と姫はハッとする

魔王の死に際に姫に飛んできた黒い光

あれが呪いだったのだと結論づけた

結局呪いだということは分かったが解呪が出来ない以上、姫の変身を止めることは出来ず、姫は完全にオークと化してしまったのだ

オークになった姫は国に入ることは出来ない

下手をすれば衛兵や冒険者に殺されてしまう

そのため姫は洞窟暮らしをするしかなかった

更にオークになったことにより、姫はモンスターを食べたいと言い出した

もはや人間の食事は口に合わなくなり、今ではモンスターにそのままかぶりつく

ブチブチとモンスターを噛みちぎるその姿は正にモンスターだった

「ブホォ!オ、オイシイ!プギィィ!!」

あまりに巨大な身体では人間の服は着る事が出来ず、モンスターの毛皮を加工し、胸と腰に巻き付けている

今の姫が人間だった面影は金色の髪の毛と青い瞳だけとなっていた

しかも日に日に言葉も上手く話せなくなっていき、オークの鳴き声とカタコトでしか話せなくなってしまった

「ブゲェェェェェェェェップッ!!プギィ!プギィィ!」

モンスターを数体平らげゲップをする姫

「姫様......」

勇者はその様子を見て頭を下げる

「プギィ?ド、ドウシタ......ノ?」

「あなたを守ると約束したのに......呪いにも気が付かず、こんな醜い姿にしてしまった......」

「ブヒィ.......」

「あなたの呪いは解けない......なら救うならこうするしかない!」

勇者は剣を抜き、姫に向ける

「プギィッ!?」

「あなたの魂をその醜い身体から救い出して差し上げます......ご覚悟を!!」

勇者は剣を姫に振り下ろす

ぶよおぉぉん!

「な、何!?」

剣は姫の身体を切り裂くことなく贅肉の弾力により弾き返された

「ヤ、ヤメテ......」

「クソッ!」

勇者は何度も何度も剣を振る

「プギィッ!イ、イタイ!ブヒィ!」

「このおぉ!!」

「プギィィィィィィィ!!!」

その瞬間、勇者は吹き飛ばされていた

「ぐっ!?がはっ......な、何が......」

「フシュゥ......フシュゥ......」

のっそりと近づいてくる姫の瞳は白目が黒く染まり、青かった瞳は赤く光っていた

「ひ、姫様......?」

姫は勇者の頭を掴み持ち上げる

「ぐあぁぁ......!!」

頭を掴む手にどんどん力が込められていく

メキメキメキ......

勇者の頭が軋む

「や、やめ......」

ぐしゃぁぁ!!!

勇者の頭は握り潰された

そして勇者の脳漿にまみれた手を姫は紫色の舌で舐める

そして次の瞬間には勇者の死体にかぶり付くのであった

とある冒険者ギルド

そこに新しく依頼が貼られる

「クイーンオーク討伐」

突然王国の付近に現れるようになったクイーンオークの討伐

最近だと大所帯の旅芸人の一座が襲われ一人残らず喰われた

そして調査の結果、そのクイーンオークには魔王因子が確認された

魔王因子は魔王になる素質のある強力なモンスターに現れる

その因子が身体中に紋様として現れている

依頼ランクはS

すぐにでも王国は討伐隊を差し向けるだろう

しかし誰も知らない

そのクイーンオークが現最強の勇者をいとも簡単に殺していた事を......

「プギィ......ハラ......ヘッタァ......ニク......ニククワセロォォォォォ!!!!」

勇者を喰ったことにより姫の身体は更に強く大きくなっていた

勇者の聖なる力が魔王の因子と結合し、姫を急速に成長させたのだ

下腹部に浮かんでいた紋様は全身に広がり、まるで部族のタトゥーのようになっていた

もはや姫に人間性は残っていない

自我はあるし、人間だった時の記憶もある

だがモノの考え方はオークそのものになってしまった

勇者を殺す際にオークとしての本能が目覚めたのが原因だ

今の姫には獲物を殺し、食べることしか頭にない

知性もクソも無い化け物だ

そして王国が派遣した討伐隊

ゆうに50人は超える編隊だった

その中には王宮の実力者や高位の魔術師などそうそうたるメンバーだ

だが姫には関係なかった

姫にはただただ食べ物がたくさん見つかったくらいにしか思えなかったのだ

姫の身体には剣も魔法も効かない

討伐隊が全滅するのには時間は掛からなかった

そして実力者50人を全て食い尽くした姫の身体は急速に肥え太り、巨大化する

身長は5mを超え、体重は1tを超えた

そして豚鼻をフゴフゴ鳴らすと姫は歩き出した

もっと食べ物がある場所を目指して......

有史以来、栄えてきた王国はたった一体の雌オークに滅ぼされた

しかし、ただの雌オークではない

クイーンオーク、しかも魔王因子を持つ

そのオークは何万人といる国民を僅か3日で喰い尽くしたのだ

そして王と王妃まで食い尽くした時、オークの目から涙が流れた

「ブゴォォォォォ......オ、オトゥ......サマ......オカァ......サマァ......ウマカッタァァァァァァ!!!!ブゲェェェェェェェェップッ!!!!!」

そしてクイーンオークはひたすら食べるために人を襲い続けた

人類に抵抗する術はない

絶滅まであと何日あることやら......

完

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