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「げほっ!げほっ!はぁはぁ......」

布団の中で咳をする1人の男

彼は難病にかかり、余命僅かと宣告されていた

「あぁ......悔いの残る人生だった......」

消えゆく意識の中、彼は夢を見た

自分の好みの女性に囲まれて酒池肉林を尽くす夢

その女性達は皆物凄く太っている

彼は所謂デブ専というものだった

「あぁ......贅肉にまみれたかった......」

「なんとも歪んだ願望だな」

「!?」

彼の部屋にいつの間にか見知らぬ男が立っていた

「だ、誰......?」

「私はお前を救いに来た......お前の願望は歪んでいる、だからこそ強い、その強さで私の役に立て、そうすればお前の願いも叶う」

男は彼にそう言うと尖った爪を突き立てた

「あっ!?がぁっ!?」

身体中が焼けるように熱くなり、痙攣する

すると身体中の血管が浮き出し、衰弱していた身体に活力がみなぎる

「はぁ......はぁ......これは......」

先程までの苦しみが嘘のよう

身体中に力が溢れてくる

そして彼は男に首を垂れる

こうして彼は鬼になった

「しのぶちゃん今回はよろしくね!」

「はい、よろしくお願いします甘露寺さん」

鬼殺隊の柱2人

蟲柱、胡蝶しのぶ

恋柱、甘露寺蜜璃

「でも柱が2人も派遣されるなんて......もしかして十二鬼月かな?」

「恐らく......」

しのぶ達は走りながら話をする

もし上弦の鬼が絡んでいた場合、文字通りの死闘となる

2人は緊張感を高めながら現場へと急いだ

そして到着するとそこには目を疑う光景が広がっていた

「さぁ!いらっしゃいいらっしゃい!美味しいうどんはいかが!」

「団子食べ放題たったの5銭だよ!」

「旅の疲れに美味しい甘味はいかがですか!」

そこには大量の食べ物屋と大勢の人々がいた

「凄い活気ですね......」

「う、うん......でもやっぱり変だねこの街......」

「そうですね......」

2人が感じた違和感

それは......

ドスンッドスンッドスンッドスンッ......

ぶよんっぶよんっ

もわあぁぁぁ......

「太ってる人ばっかり......」

見渡す限り肥満体の人間で溢れていたのだ

それもかなりの巨体ばかりだ

「ひとまず夜に備えて隠が確保している宿に行きましょう」

「そ、そうだね」

2人は周りからジロジロ見られながら宿に向かった

「すみませーん!」

宿に到着し、声をかける

すると......

ドスンッドスンッドスンッドスンッ......

大きな足音が近づいて来る

「ぶふぅ......ぶほぉ......胡蝶様......甘露寺様......お待ちしてましたぁ......はふぅ......」

姿を現したのは紛れもない派遣された隠

しかし彼女の姿は大きく肥え太り、特大サイズの隊服をパツパツに張り詰めさせていた

「えぇ!?ど、どうしちゃったのその身体!?」

「ぶふぅ......その事も含めて報告をしますので......ぜふぅ......中へどうぞ......」

2人は困惑しながらも宿に入る

「んぐぅ......どっこいしょぉ......!」

ズドンッ!!

隠が腰を下ろすと部屋が揺れた

しのぶと蜜璃は正座をする

しかし隠は足を投げ出し、巨大な腹を足の間に置いている

しかし尻の肉が大き過ぎるせいで正座の2人よりも座高が高い

「それで一体何があったのですか?」

しのぶは隠に尋ねる

「はい......私がこの街に派遣されたのは一週間程前でした......はぁ......信じられないと思いますが......ふぅ......私はその時はお2人くらい痩せていました......」

「という事は僅か一週間でそこまで太ってしまったと?」

「は、はい......日に日に凄い勢いで太っていきました......ふぅ......街の人に話を聞くとみんな口を揃えて急に太ってしまったと......」

「しのぶちゃん、これって......」

「えぇ、血気術に間違いないでしょう......しかし街全体に影響を及ぼすなんて......あなたはこの街の食べ物や水は口にしましたか?」

「いえ......私もそれを疑って持ち込んだ物しか口にしなかったんです......ぶふぅ......でもご覧の有様で......」

「となると......」

ミチ......

「?」

「どうしたの?しのぶちゃん」

「い、いえ......何だか身体に違和感が......って甘露寺さん!?」

「な、何!?」

「あなた......顔が......」

「か、顔?」

むにゅん

蜜璃は自分の顔を触る

すると普段よりも柔らかい気がした

「な、何これ......」

「ふぅ......始まりましたね......」

「ま、まさか私達まで......」

隠の報告を聞く限り、この街にいる事自体が身体を太らせるのだろう

そのためしのぶと蜜璃も例に漏れず太り始める

「これは時間との勝負ですね......今夜決着をつけましょう」

「うん!頑張ろう!」

2人は改めて気合を入れる

しかし事態は上手く運ばなかった......

「しのぶちゃん、鴉からの報告は?」

「駄目ですね......鬼に関する情報が全く掴めません......」

この街に滞在してから早3日

鬼の姿どころか鬼の被害と思える失踪や死傷事件も皆無だった

そして2人の身体はどんどん太っていき、隊服はパツパツになっていた

「私もう一度聞き込みしてくる!」

蜜璃は勢いよく立ち上がる

バツンッ!

「あっ!?」

すると既に限界まで緩めていたベルトが弾けてしまう

「......鴉に頼んで新しい隊服を調達してもらいましょう......私もそろそろ限界ですし......」

しのぶは自身の丸い腹をさする

「そういえば隠ちゃんの様子は?」

「蝶屋敷で休んで貰っていますが......まだ体重が増えているそうです......」

例の隠の彼女は街から離脱させていた

しかし彼女の体重増加は続いていた

街から離れても止まらない

その事実はしのぶと蜜璃に重くのしかかるのであった

ドスンッドスンッドスンッドスンッ......

ドスンッドスンッドスンッドスンッ......

「ぶふぅ......ぼふぅ......」

「はぁ......はぁ......ぶふぅ......」

夜更け

人々が寝静まった街に重苦しい息遣いがこだまする

巨体を左右に揺らしながら歩く2人組

「うぐぅ......しのぶちゃん......ふぅ......お股が擦れて痛いよぉ......」

「私もです......ぶふぅ......汗が止まりません......」

見事な激太りを果たしたしのぶと蜜璃だった

月明かりに照らされる2人の顔は丸く膨れ上がり、呼吸のたびに二重顎がたぷたぷと揺れる

そして顔中に玉のような汗が浮かび、テカテカと油ぎっている

そしてその身体は大量の贅肉を蓄え、特注の隊服を今にも破裂させそうだ

街に来てから10日目

未だに鬼を発見出来ず、時間ばかりが過ぎていく

耳を澄ますと辺りの家から住人のイビキが聞こえてくる

ある意味平和である

「一体......ぶふぅ......どこに......うぐっ!」

しのぶは腹に圧迫感を覚える

ブチンッ!

ボンッ!

ボンッ!

「あっ!?」

しのぶの隊服のボタンが勢いよく弾け飛び、巨大な腹の贅肉が飛び出す

「やっほぉ!!腹肉ぅー!」

突然何かがしのぶの腹に抱きついてくる

2人は一瞬何が起きたか分からなかった

その物体をしっかり視認する

血走った目に尖った爪と牙

「「鬼ぃぃぃーーー!!!!!」」

2人は待ちに待った鬼の出現にテンションが若干おかしくなる

「はっ!?しまった!あまりにも見事なボタン飛ばしだったから思わず出てきてしまった!」

「ふぅ!ふぅ!やっと見つけましたよ!ぶふぅ!」

「ぶほぉ!覚悟しろ!」

2人は腹がつっかえながら刀を抜き、不恰好に構える

「おぉ!デブ女と刀というのも乙なものだね!」

2人は青筋を浮かべる

「蟲の呼吸!ぶふぅ!蝶の舞!」

「恋の呼吸!ぶふぅ!一の型!」

2人は刀を振りかぶる

「おっと!」

鬼はヒョイっと身軽に屋根の上に飛び乗る

「くっ!」

「お、降りてきなさい!」

今の2人に屋根に飛び乗る機動力は無い

早々に詰んでしまった

「うーん......見下ろすデブもこれまた......」

「この......変態!」

「変質者!」

「ははは!知ってる知ってる」

鬼は罵声にも全くこたえていない

「あ、因みに俺この街の人達誰も食ってないからね?」

「は?」

「そ、そんなわけ......」

「本当だって、可愛い愛しいデブ達を殺す訳ないじゃないか、本当は人が食えたら良いんだけど仕方ないから動物で我慢してるんだよ」

しのぶ達は顔を見合わせる

「いやぁ、あまりにも人を食わなすぎてあの方にも呆れられてるよぉ、ははは!」

鬼は笑いながら話す

「あと君達の身体、そろそろ太るのは止まるから安心しなよ」

「ど、どういう事?」

「それ以上太ったら歩けなくなるでしょ?俺さぁ、ぶくぶくに太った人がヨチヨチ歩いてるのが滅茶苦茶好きなんだよ!」

2人は馬鹿らしい理由に言葉を無くす

「まぁ、柱に見つかっちゃったし、俺はこの街からはおさらばするよ!」

鬼は踵を返す

「ま、待ちなさい!」

「あ、因みにその身体絶対に痩せないから!無駄な減量はやめた方がいいよ!じゃあね!」

鬼はそう言うと飛び去ってしまう

そして街に夜明けがやってくるのであった

「がつがつがつがつ......しのぶちゃん、美味しいねぇ!」

「えぇ、あむぅ......そうでふね......」

「ごくごくごくごく......ぷはぁ!お二人共、このお肉柔らかくて美味しいですよぉ!」

任務失敗で戻ってきた2人は隠と3人で蝶屋敷で無期限の休養を取ることになった

鬼の言う通り歩けなくなるギリギリのところで体重増加は落ち着いた

しかし困った事に異様な食欲が3人を襲った

食べても食べても満足できない

日がな一日食っちゃ寝を繰り返している

しのぶはどうにか元に戻れないかと調べてはいるが解決策は見つからない

やはりあの鬼を倒す以外、事態を収拾する術はないようだ

「カァァ!カァァ!伝令!伝令!北北東!北北東ノ街ノ住人ガ激太リ!至急向カエ!」

「「「ぐげええぇぇぇぇぇぇぇぇっぷっ!!!」」」

今日もまたデブが増えていく

完

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