【48.0kg→132.5kg】引退前の激太り (Pixiv Fanbox)
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天井から降り注ぐ水銀灯の光が、静まり返った屋内プールの水面をキラキラと乱反射させている。鼻を突く独特の塩素の匂いと、微かに響く循環ポンプの低い稼働音。水城雫は、この無機質でどこか神聖な空間に、これまでの人生の大部分を捧げてきた。
プールサイドに立つ彼女の体は、文字通り「極限まで削ぎ落とされた」という表現がふさわしい。無駄な脂肪などただの一グラムも存在しないかのような、芸術的でストイックなアスリートの肉体美がそこにあった。
アーティスティックスイミングという競技は、ただ水中で踊るだけではない。水の抵抗を味方につけ、時には全身の筋肉をバネのように弾かせ、長時間の無呼吸状態に耐えながら最高の笑顔を作らなければならない。そのため、雫の肩回りや背中には水を強く掻くためのしなやかで強靭な筋肉が付き、腹部は見事なシックスパックを描いて硬く引き締まっている。足首から太ももにかけては一切のたるみがなく、まるで彫刻のように洗練されたシルエットを誇っていた。
彼女の顔立ちもまた、その過酷な競技生活を物語っている。顎のラインはカミソリのように鋭く研ぎ澄まされ、頬には一切の丸みがなく、少し影が落ちるほどにシュッとしている。大きな瞳は常に獲物を狙うかのように鋭い光を放ち、水しぶきの中でも観客を魅了する力強さがあった。特に彼女の得意技は、水中で逆立ちの姿勢になり、水面高くまっすぐに両脚を突き出して静止する大技だ。脚以外のすべての部位を水中に沈め、両手の指先だけで複雑な水流をコントロールして浮力を抑え込む。体重が少しでも増えれば、あるいは少しでも重心がブレれば、たちまち体は水面へと浮き上がってしまう。だからこそ、彼女は誰よりも厳格に自らの肉体を律してきた。
毎日の食事は、茹でた鶏胸肉とブロッコリー、そして味気ないオートミールのみ。炭水化物や脂質は徹底的に排除され、グラム単位で摂取カロリーを計算する日々。合宿の夜、空腹で眠れない時は、ひたすらに白湯を飲んで胃を誤魔化し、時には空腹のあまり胃液を吐き戻すこともあった。すべては、水中で誰よりも美しく、誰よりも高く脚を突き出すため。その執念だけで、雫は日本のトップクラスにまで登り詰めたのだ。
しかし、長かった彼女の競技生活にも、ついに終わりの時が近づいていた。
来月に行われる大会。それが終われば、雫は現役を引退することが決まっている。しかも、彼女が出場するのは採点が行われる本戦ではなく、観客を楽しませるための順位のつかないエキシビションマッチだった。
ある日の練習後、ロッカールームへ向かおうとする雫を、長年彼女を厳しく指導してきた鬼コーチが呼び止めた。
「雫、少し残れ」
いつもならフォームのダメ出しや、体重グラフの僅かな変動を責め立てられる場面だ。雫は思わず身構えたが、コーチの口から出たのは予想外の言葉だった。
「お前には、本当に随分と無理をさせてきたな。……よくここまで耐え抜いた」
「コーチ……」
「最後の公演は、順位も点数もつかないエキシビションだ。もちろん気を抜くなとは言いたいが、もう、今までのような過酷な体重管理はしなくていい。少しは羽を伸ばして、好きなものを食べなさい。引退前に体調を崩されても困るからな」
それは、コーチなりの労いだった。しかし、長年飢餓状態に置かれ、極限まで抑圧されてきた雫の脳にとって、その言葉は甘く危険な「悪魔の囁き」に他ならなかった。
その日の夜。合宿所の自室で、雫の心臓は早鐘のように打っていた。
彼女の目の前にある小さなテーブルには、これまで決して視界に入れることすら許されなかった禁断の物体が鎮座している。コンビニの袋から取り出された、特大サイズの濃厚豚骨ラーメンのカップ麺だ。
「少しは好きなものを食べなさい、って言われたんだし……引退前だし、今日くらい……いいよね」
誰に言い訳するでもなく呟きながら、震える手でフィルムを剥がす。お湯を注ぎ、指定された三分間が永遠のように長く感じられた。蓋の上に置かれた後入れの特製ラードが、じんわりと温まっていく。
三分後、蓋を開けた瞬間、暴力的なまでに強烈な豚骨とニンニクの匂いが狭い部屋に充満した。表面にはギラギラとした油の膜が張り、その下から縮れた太麺が顔を覗かせている。
雫は割り箸を割り、スープをたっぷりと吸い込んだ麺を掬い上げた。ズズッ、と勢いよく啜り込む。
「……っ!」
瞬間、彼女の脳内に雷が落ちたような衝撃が走った。
油で揚げられた麺から染み出すジャンクな旨味、塩分と化学調味料が舌の細胞を容赦なく殴りつけ、濃厚な豚骨スープとラードのコクが喉の奥へと流れ込んでいく。
美味い。美味しすぎる。今まで食べてきたパサパサの鶏肉が、ただの砂を噛むような作業に思えるほどの、圧倒的な暴力と快楽。
「はふっ、んんっ、おいしい……なにこれ、おいしい……っ!」
涙目になりながら、雫は無我夢中で麺を啜り続けた。スープの熱さも気にせず、ただひたすらに炭水化物と脂質を胃袋へと流し込む。麺を完食した後も彼女の手は止まらず、塩分過多で体に悪いと分かっていながら、どんぶりを両手で持ち上げ、ギラギラと光るスープを最後の一滴まで飲み干してしまった。
ぷはぁ、と息を吐き出す。胃袋の中からじんわりと広がる温かさと、強烈な血糖値の上昇がもたらす多幸感。空腹という名の地獄から解放された圧倒的な安心感が、彼女の理性を完全に焼き切ってしまった。
この一杯のカップ麺が、美しく研ぎ澄まされた彼女のアスリート人生を、無残で滑稽な肉ダルマへと変貌させる取り返しのつかないフライングの始まりだとは、この時の雫は知る由もなかった。
身長:160.0cm / 体重:48.0kg(前月比 ±0.0kg)
BMI:18.8(普通体重)
B:82 (Cカップ) / W:58 / H:85
あの禁断の夜から三週間。一度外れてしまった食欲のタガは、二度と元に戻ることはなかった。飢餓状態だった細胞がスポンジのようにカロリーを吸収し、雫の体は劇的な変化を遂げ始めていた。
合宿所の食堂。周囲の選手たちが小鉢に盛られたサラダと茹でたささみを少しずつ口に運ぶ中、雫の目の前には信じられない光景が広がっていた。大皿に山盛りにされた白米の上に、分厚いカツカレーが波々と注がれている。さらにサイドメニューとして、マヨネーズをたっぷりとかけた唐揚げの山と、食後のデザートであるメロンパンが三つも積まれていた。
サクサクの衣に包まれたカツをスパイシーなカレーに絡め、大口を開けて頬張る。スパイスの香りと豚肉の強烈な脂が口いっぱいに広がり、彼女は恍惚とした表情でそれを白米ごと胃袋へと流し込んだ。
「んんっ……美味しいっ……! カレーにマヨネーズって最高……!」
もぐもぐと咀嚼する彼女の顔周りには、早くも明らかな脂肪がつき始めていた。かつてカミソリのように鋭く研ぎ澄まされていた顎のラインは見る影もなく消え去り、ふっくらとした柔らかい肉が頬全体を覆っている。食べ物を噛むたびにパンパンに張った頬の肉がぷるぷると上下に揺れ、笑うと肉が押し上げられて目が細く見えるようになっていた。下を向いて唐揚げにかじりつくたびに、顎の下にはうっすらと二重顎の線が浮かび上がっている。
変化は顔だけにとどまらなかった。特に脂肪が集中してついたのは、皮肉にも一番痩せにくく太りやすい胴体だった。バキバキに割れていたシックスパックは跡形もなく分厚い皮下脂肪のヴェールに飲み込まれ、今やジャージのズボンの上には、ぽっこりと丸みを帯びた柔らかな腹肉がどっしりと乗っかっている。座って前傾姿勢になると、お腹の肉が横に広がり、太ももに柔らかく押し付けられる感覚があった。胸回りにも急激に脂肪がつき、これまで邪魔にならないように削ぎ落とされていたバストは、まるで水風船のように重く膨らみ、体を動かすたびにゆっさゆっさと揺れるようになっていた。
午後の水中練習に向けて、更衣室で着替えていた雫は、己の体の変化を物理的な痛みとして自覚することになった。
いつも着ている指定の競泳水着に両脚を通し、腰の上まで引き上げようとした時のことだ。
「えっ……? きつ……っ、んしょっ……!」
太ももを通過する時点で生地が悲鳴を上げるように伸び切り、お尻の肉がつっかえる。無理やり上に引っ張り上げると、今度は肩紐が肩の肉にギリギリと深く食い込んだ。なんとか着ることはできたものの、太ももの付け根のゴムはパツパツに張り詰め、腰回りからは水着の縁に収まりきらない「浮き輪のような脂肪」がぷにっと無防備にはみ出している。大きく息を吸い込むと胸とお腹が締め付けられ、水着がはち切れそうになる。練習後に水着を脱いだ時、彼女の肩と腰周りには、くっきりと赤いミミズ腫れのような締め付け跡が残ってしまっていた。
いざプールに入ると、さらなる問題が彼女を襲った。
水中で逆立ちの姿勢になり、水面から脚だけを高く突き出すアーティスティックスイミングの基本動作。いつもなら頭からスッと水底へ向かって沈み込み、両手の指先で軽くスカル(水を掻く動作)をするだけで、一直線の美しい姿勢を維持できるはずだった。
しかし、深く息を吸い込んで頭を水中に向けた瞬間、腰回りとぽっこり出たお腹についた莫大な量の脂肪が、強力な浮力を発揮したのだ。
(うそ、沈まない……っ!? お腹が浮く……!)
脂肪は筋肉よりも水に浮きやすい。胴体に急激に巻きついた浮き輪肉が文字通り浮き袋の役割を果たしてしまい、お尻と腰が勝手に水面へと引っ張り上げられてしまうのだ。
必死に両腕で激しく水を掻いて体を沈めようとするが、膨らみ始めたお腹の浮力に逆らえず、腰がくの字に曲がってしまう。無理やり脚を伸ばそうとしても、いつもよりはるかに低い位置までしか上げることができず、水面でお尻が不格好に揺れるだけの無様な演技になってしまった。
その週末の休日。雫はチームメイトと共に、駅前のショッピングモールへと私服を買いに来ていた。
「ねえ、この新作のトップス、すっごく可愛くない? 春らしくて」
「ほんとだ、色合いも綺麗。私も試着してみちゃおうかな」
「雫はいつもMサイズでしょ? はい、これ持ってきなよ」
「ありがとう……んしょっ……あれ? うっ、ちょっと待って」
「どうしたの? なかなか出てこないけど」
「肩がつっかえるっていうか……ううん、胸周りもキツくて、何よりお腹が……っ!」
「えっ、嘘でしょ? 雫がMサイズ入らないなんてことある?」
「うぅ……生地が全然伸びなくて、お腹の途中で引っかかって下まで降りないや……」
「ちょっと開けるよ……わっ、本当だ。なんか全体的にすっごくお肉ついてない?」
「ち、違うよ! これは引退に向けて、水の抵抗を減らすための体づくりをしてるだけで……!」
「体づくりって……お腹、完全に二段になってぷにぷにしてるじゃない。ほら、Lサイズ持ってきたからこっち着てみて」
「……うぅ、Lサイズでぴったりだ。むしろお腹周りはこれでも少し苦しいくらい……」
「あんた、まさか最近食堂でカツカレー大盛りとか食べてるせいじゃないの?」
「だってコーチが少しは好きなもの食べろって言ったんだもん! 長年のストレス解消だよ!」
「限度ってものがあるでしょ! 顔もまん丸になって二重顎になりかけてるし、そのままじゃ本番の特注衣装、絶対入らなくなるよ?」
「大丈夫だよ! まだちょっとふっくらしただけで、愛嬌が出たって言われるし!」
「愛嬌の問題じゃないでしょ。今日、足あげる演技の時めっちゃスカル重そうだったし、お腹の辺りが浮いて腰が曲がってたけどね……」
「気のせい気のせい! ほら、服もLサイズでちゃんと入ったし、もう買い物は終わり! フードコートでクレープ食べに行こ!」
「まだ食べる気!? さっきお昼にハンバーガーのセット食べたばっかりでしょ!」
「チョコバナナ生クリームのメガ盛り食べるの! 練乳もトッピングしちゃうんだから!」
Lサイズのゆったりとした服を手に入れた雫は、ぽっこりと出たお腹をさすりながら、己の体型変化に対する危機感をあっさりと捨て去り、再び甘い匂いのするフードコートへと吸い込まれていった。
身長:160.0cm / 体重:63.5kg(前月比 +15.5kg)
BMI:24.8(普通体重)
B:94 (Fカップ) / W:73 / H:96
フードコートでの買い食いが日常化し、タガが外れたあの日からさらに一ヶ月。雫の日常は、アスリートとしての厳格な規律を完全に喪失し、ただひたすらにカロリーを貪る暴食の徒へと堕ちていた。
深夜の合宿所。静まり返った自室のベッドの上にドスッと重い音を立てて胡坐をかき、雫は荒い息を吐いていた。彼女の目の前には、デリバリーで注文したLサイズのテリヤキチキンピザ、特大のフライドポテト、そして深夜のスーパーで買い込んだファミリーサイズのチョコレートアイスが所狭しと並んでいる。さらに、脂を流し込むための二リットルのコーラがペットボトルのまま置かれていた。
「はむっ……むちゃっ、んちゅ……あむあむ……っ」
甘辛い濃厚なテリヤキソースと、たっぷりのマヨネーズが焼き付けられた分厚いピザ生地。それを二枚重ねに折りたたみ、雫は強引に口の中へねじ込んだ。咀嚼するたびに、大きく膨らんだ頬の肉がブルブルと震え、口の端から油とマヨネーズがだらしなく滴り落ちる。熱くてしょっぱいチーズと豚肉の脂を堪能すると、彼女はペットボトルを鷲掴みにし、強烈な炭酸のコーラを一気に胃袋へと流し込んだ。
「ぷはぁっ……! 最高……やっぱり夜中に食べるピザは格別だぁ……」
脂と糖分の暴力的なコンボ。しかし彼女の暴食は止まらない。熱いピザの直後に、今度はキンキンに冷えたチョコレートアイスを巨大なスプーンで山盛りに掬い、口へと運ぶ。熱い、しょっぱい、冷たい、甘い。この無限ループがもたらす脳内麻薬は、彼女から「太ることへの恐怖」を完全に麻痺させていた。胃袋がはち切れそうになっても、脳がさらなるカロリーを要求し、彼女はただひたすらに機械のように食べ物を胃に詰め込み続けた。
連日の深夜に及ぶ常軌を逸した暴食は、雫の肉体を容赦なく、そして劇的に作り変えていた。
かつてカミソリのようにシャープだった顔つきは、まるで空気をパンパンに吹き込んだ風船のように丸く膨れ上がっている。頬の肉が異常なほど分厚くなり、笑わなくても肉が盛り上がって常に目が細い糸のように見えてしまう。顎の下にはたっぷりと柔らかい脂肪が蓄えられ、下を向かなくても立派な二重顎、いや三重顎が形成されており、首と顔の境界線は完全に消失していた。
そして、何よりも悲惨な変貌を遂げていたのは胴体である。ジャージのズボンの上に「ぽっこり」と乗っていた可愛らしい腹肉は、今や凶悪な質量と体積を持つ巨大な脂肪の塊へと進化していた。立っていてもお腹が前にドーム状に大きくせり出し、足元のつま先は自分のお腹に遮られて全く見えない。座るとその巨大な肉が重力に従って三段に折り重なり、分厚い太ももの上にどっしりと、そしてべちゃりと潰れるように鎮座する。かつて水を強く掻くために鍛え上げられた背中や脇腹にも、指が深く沈み込むほどの厚い皮下脂肪がつき、丸みを帯びたその背中はまるで熊のようにたくましく巨大化していた。バストは脂肪の急増とともに恐ろしいサイズにまで膨張し、座っていると一番上のお腹の肉の段に、巨大な胸が乗っかってしまうほどだ。
その夜、ピザとアイスを完食した雫は、ふと「しょっぱいスナック菓子が足りない」と思い立ち、近くのコンビニへ行こうと立ち上がった。
重い体を揺らしながら玄関に向かい、以前から愛用しているお気に入りのスニーカーを履こうとした時のことだ。
玄関の上がりがまちにどっこいしょと腰を下ろし、片足を上げて、靴紐を結ぶために前傾姿勢を取ろうとした。しかし、次の瞬間。
「……っ!? ぐぇっ……」
カエルのような潰れた声が玄関に響いた。前屈みになろうとした瞬間、彼女の巨大化した三段腹が、丸太のように太くなった太ももに激しく激突したのだ。分厚い肉の壁同士がぶつかり合い、お腹の脂肪が内臓と肺を強烈に圧迫する。息が詰まり、顔がみるみるうちに赤くなる。
それでも靴紐を結ぼうと必死に腕を伸ばすが、腹の尋常ではない厚みが邪魔をして、指先が靴紐の遥か手前で空を切る。
「うそ……っ、と、届かない……! お腹がつっかえて、曲がらない……っ!」
何度腕を伸ばしても、自身の巨大な脂肪の塊に物理的に阻まれ、足元に手が届かないのだ。無理に曲げようとすればするほど息ができなくなり、雫はぜぇぜぇと肩で息をしながら、仰向けにひっくり返ってしまった。自分の体が、靴紐を結ぶという日常の些細な動作すら不可能なほどの「肥満体」になっていることを、彼女はこの時、嫌というほど思い知らされた。結局彼女はスニーカーを諦め、立ったまま足先だけで突っ掛けられる大きめのサンダルを履いてコンビニへと向かうしかなかった。
翌日のプール練習。事態は最悪の局面を迎えていた。
もはや市販の競泳水着が入るはずもなく、ネットで慌てて購入した特大サイズのフィットネス用水着を無理やり着込んでいる。パツパツに張り詰めた生地の隙間から、巨大な浮き輪肉がはみ出し、肩紐はちぎれんばかりに肉に食い込んでいた。
雫がプールサイドから意を決して水に入ると、ザパーン!と信じられないほど大きな水柱が上がり、プールの水位が明確に上昇して波がプールサイドに溢れ出した。
コーチの険しい視線が突き刺さる中、雫は深く息を吸い込み、水中での逆立ち姿勢へと移行しようとした。頭を真下に向け、両手で激しく水を掻いて体を沈めようとする。しかし。
「ぷっかぁんっ……!」
彼女の腰からお腹にかけて巻き付いた莫大な量の脂肪が、強烈な浮力を発揮したのだ。脂肪は筋肉よりもはるかに水に浮きやすい。頭を沈めようとすればするほど、胴体の巨大な「浮き袋」が水面へと引っ張り上げる力を生み出し、彼女の意に反して下半身が完全に水面から飛び出してしまった。
両脚をまっすぐ伸ばして静止するどころか、巨大な太ももとお尻が水面で横倒しになり、まるでアザラシが水面でひっくり返って溺れているかのような無様な姿を晒してしまう。
何度やり直しても、お腹の肉が浮き輪となって彼女を水面へと引きずり戻し、最終的には体力を使い果たして、仰向けのまま巨大なお腹を水面に出してプカプカと浮かぶことしかできなくなってしまった。
その日の練習後。絶望的な気分のまま、彼女の足は駅前の巨大なショッピングモールへと向かっていた。レディースのLサイズはおろか、XLサイズすら巨大な腹肉がつっかえて入らなくなってしまったため、とうとうメンズの「大きいサイズ専門店」へと足を踏み入れるしかなかったのだ。
「ねえ、このメンズのパーカー、4Lサイズなんだけど……」
「ちょっと待って、本当にそれ買うつもりなの?」
「だって、もうレディースの服、XLも全然お腹が入らないんだもん……途中で引っかかっちゃって」
「当たり前でしょ! さっき着替えの時にお腹見えたけど、浮き輪どころか完全に鏡餅みたいに三段になってたわよ!」
「失礼な! 鏡餅じゃなくて、ちょっとふくよかなマシュマロボディって言ってよ!」
「マシュマロなんて可愛いもんじゃないわよ! 歩くたびに太もものお肉が擦れて『シュッシュッ』って音鳴ってるじゃない!」
「それは……ズボンの生地の相性が悪いだけで……」
「現実を見なさい! 今日の練習、逆立ちした瞬間にぷっかーんって腰から上だけ浮き上がってたわよ!」
「沈もうと頑張ったんだよ!? でも、お腹の周りのお肉が勝手に水面に引っ張るの! 私のせいじゃないもん!」
「それ完全に脂肪のせいじゃない! コーチも頭抱えてたわよ! あんなのアーティスティックスイミングじゃないわ!」
「うるさーい! このパーカーだってお腹周りはすごくゆったりしてるから、これで隠せばバレないもん!」
「隠せてないから! 横から見たら完全にドラム缶みたいなシルエットになってるわよ!」
「うぅ……でも、これを着ればとりあえず外出はできるし……」
「外出って、ご飯食べに行くだけでしょ! さっきもサンダル引きずりながらドーナツ十個入り箱買いしてたじゃない!」
「あれは夜食用のストック! 浮かばないように毎日必死に泳いでるから、お腹すくんだもん!」
「あんたの泳ぎ、もう泳いでるっていうか水面で巨大な浮き輪が暴れてるだけよ……」
「ひどい! ちゃんと指先でスカルしてるもん! お腹のお肉が邪魔で下まで手が届きにくいだけで!」
「手が届いてないから進んでないのよ! あーあ、ついにメンズの4Lなんて……来週の引退公演の衣装、どうするつもり?」
「あはは……特注のさらに特注サイズで、こっそりお直し頼んじゃった……」
「もう信じられない……。これ以上太ったら、今度こそプールの階段から上がれなくなるわよ?」
「大丈夫! 帰り道に唐揚げ弁当メガ盛り買って帰れば、体力ついて階段も登れるようになるから!」
「私の話、全然聞いてないじゃないの!!」
結衣の呆れ果てた絶叫をよそに、雫はメンズの4Lパーカーをしっかりと胸(と巨大なお腹)に抱え込み、その足で特大サイズの唐揚げ弁当を求めて惣菜コーナーへと突進していくのだった。
身長:160.0cm / 体重:84.0kg(前月比 +20.5kg)
BMI:32.8(肥満度2)
B:108 (Iカップ) / W:95 / H:110
メンズの4Lサイズのパーカーすら、巨大に膨れ上がったお腹の肉でチャックが閉まらなくなってから、さらに数週間。引退公演が目前に迫る中、雫の食欲はついに人間の限界を突破し、カロリーを無限に吸い込むブラックホールと化していた。
深夜の合宿所。静寂に包まれた部屋の中で、雫のベッドだけが彼女の規格外の質量に耐えきれず、少し動くたびにギシギシと悲痛な軋み音を立てていた。もはや体を起こして座るという行為すら、自身の分厚い腹肉が邪魔になって億劫になってしまった雫は、ベッドの上に仰向けに寝転がったまま至福の時を迎えていた。
彼女の視界を遮るようにそびえ立つ、巨大なドーム状の腹。その天然の肉のテーブルの上には、コンビニで買い占めてきたホールサイズの苺のショートケーキが箱ごとドカッと置かれている。
雫は寝そべったまま、右手に持ったフォークでケーキの断面を大胆にえぐり取り、顔の上にボロボロとスポンジをこぼしながら口の中へと放り込んだ。
「あむっ……んぅぅ……じゅるっ……あまぁーい……」
ふわふわのスポンジとたっぷりの生クリームが口の熱でドロドロに溶け合い、強烈な糖分が脳髄を直接刺激する。咀嚼するたびに、巨大に膨れ上がった頬の肉が重力に従って横へと垂れ下がり、スライムのようにブルブルと波打って震えた。ケーキを半分ほど平らげたところで、彼女は左手に握りしめていた練乳のチューブを直接口に咥え、チューッと中身をダイレクトに吸い出した。ケーキの甘さだけでは物足りず、より濃厚で直接的な糖分を追い求めているのだ。
「んちゅっ……はぁっ、ふひぃ……生クリームに練乳って、どうしてこんなに美味しいんだろう……」
口の周りをクリームと練乳でべとべとに汚しながら、彼女は恍惚とした笑みを浮かべる。笑うと分厚い頬の肉が極限まで押し上げられ、目は完全に肉のヒダに埋没してしまい、どこを見ているのかすらわからない状態になっていた。
連日の寝転がりながらの暴食は、雫の体を文字通り人間の枠から逸脱した「異形」の領域へと導いていた。
顔はもはや丸というより、首の上に鎮座する巨大な肉の塊だった。顎のラインは完全に消失し、首と顔の境界線はどこにもない。首をほんの数ミリでも下に傾ければ、顎の下に蓄えられた三段の極厚の脂肪が首輪のように自身の喉を絞めつけ、ただでさえ重い脂肪に圧迫されている呼吸をさらに浅くさせた。
そして、彼女の胴体は恐るべき変貌を遂げていた。「三段腹」という表現すら、今の彼女には生ぬるい。急激に増殖した脂肪はついに段差すら飲み込み、まるで巨大なバランスボールを丸ごと皮膚の下に抱え込んでいるかのように、前方にドーム状にせり出していたのだ。仰向けに寝転がると、その巨大な腹肉の山が視界の下半分を完全に遮り、自分の足元はおろか、膝すら全く見えなくなっている。立って歩こうとすれば、股下の近くまで垂れ下がった重たいお腹の肉が太ももにドスドスとぶつかり、どうしてもガニ股で歩かざるを得ない。さらに、背中や脇腹についた分厚い脂肪のせいで、両腕を胴体にピッタリと下ろすことができず、常にペンギンのように腕が外側に少し浮いた状態になっていた。
バストの巨大化も凄まじく、仰向けになるとその巨大な脂肪の塊が首元までズシリと迫り上がり、息をするだけでも胸の重さでゼイゼイと荒い呼吸を強いられる。全身を覆う分厚い皮下脂肪は体温を逃さず、少し動くだけで大量の脂汗が噴き出していた。
その翌朝。雫は自分の体が、日常生活を送るためのインフラすら凌駕してしまったことを、最悪の形で思い知ることになる。
朝のプール練習前、汗を流そうと合宿所の共同シャワーブースへと向かった時のことだ。一人用のシャワーブースはアコーディオン扉で仕切られた、電話ボックスほどの狭い空間である。
雫はバスタオルを外し、ドスッ、ドスッと床を揺らしながらブースへと足を踏み入れようとした。
しかし、入り口のプラスチックの枠に、彼女の巨大にせり出した腹肉と、横に張り出した腰の肉がつっかえたのだ。
「あれ……? ちょっと狭いかな……んしょっ」
無理やりお腹の分厚い肉を両手でギュッと内側に押し込み、息を大きく吐いて体をねじ込もうとする。ズズズッ、むぎゅっ、と柔らかい肉が硬い枠に擦れ、押し潰される嫌な音が響いた。
次の瞬間。
「……っ!? ぐぇっ……!」
彼女の体は、ブースの入り口に完全に挟まってしまった。前に進むことも、後ろに下がることもできない。巨大な浮き輪のような腹の脂肪が枠の前でつっかえ、分厚く巨大化したお尻の肉が枠の後ろでつっかえているのだ。
「うそっ、動けない……っ! ぬ、抜けないぃっ!」
ジタバタと手足を動かすが、ガッチリとハマり込んだ巨大な脂肪の塊はびくともしない。お腹の肉が枠に強烈に圧迫され、内臓が押し潰されて息がまともに吸えなくなってくる。
結局彼女は、脱衣所にやってきた結衣に半泣きで助けを求め、体に大量のボディソープを塗りたくってもらって滑りを良くし、数人のチームメイトがかりで「せーのっ!」と無理やり引っ張り出されるという大惨事を引き起こしてしまった。真っ赤に腫れ上がったお腹の横っ腹をさすりながら、彼女はようやく自分の体が規格外の巨大サイズに膨れ上がっていることを認めざるを得なかった。
しかし、その日のプール練習は、シャワー室の悲劇すら霞むほどの地獄だった。
業者に急遽特注で作らせたはずの6Lサイズのフィットネス水着ですら、彼女の巨大な腹肉と豊満すぎるバストを収めきれず、はち切れんばかりに生地が透けて悲鳴を上げている。
雫がプールサイドの階段からドスッ、ドスッと重い足取りで水に入ると、ザパーン!とまるで小型トラックが飛び込んだかのような大波が発生し、隣のレーンで泳いでいた選手が波に飲まれて激しくむせた。
コーチがもはや怒る気力も失せ、虚無の表情で見つめる中、雫は深く息を吸い込み、水中での逆立ち姿勢へと移行した。
頭を真下に向け、両手で激しく水を掻き、一直線に沈み込もうとする。
しかし、結果は火を見るより明らかだった。
「ぷっかぁーーーーんっ!!」
彼女の胴体に幾重にも巻き付き、もはや体重の半分以上を占めているであろう莫大な量の脂肪が、まるで巨大な救命胴衣のような強烈な浮力を発揮したのだ。
頭を沈めようとする彼女の意志とは裏腹に、巨大なビーチボールと化したお腹と腰の肉が水面へと猛スピードで浮き上がり、浮力に耐えきれなくなった彼女の体を完全に水中でひっくり返してしまった。
もはや脚を水面に突き出して美しく伸ばすどころの話ではない。仰向けにひっくり返った雫の体は、巨大なドーム状の腹肉を島のようにぽっかりと水面から突き出し、短い手足が水面でバシャバシャと空を切るだけ。まるで巨大なラッコか、打ち上げられたトドが水に浮かんで身動きが取れなくなっているような、滑稽で無様な姿だった。
何度挑戦しても、お腹の浮力が強すぎて全く沈むことができない。最終的に雫は自力で起き上がって足をつくことすらできなくなり、巨大な肉の浮き島と化して、プカプカと無抵抗に水面を漂い続けることしかできなくなってしまった。
その日の午後。練習にならないと早退させられた雫は、合宿所のラウンジで巨大な手でスマートフォンを操作していた。もはや実店舗で着られるメンズ服すら存在しないことを悟り、オンラインの「超・大きいサイズ専門店」のサイトを血眼になって閲覧しているのだ。
「……ねえ、何見てるの?」
「ん? ああ、結衣。ネット通販だよ。服買おうと思って」
「え、また服買うの? こないだメンズの4Lパーカー買ったばっかりじゃない。まだ二週間しか経ってないわよ」
「あれね、もうお腹がパツパツで、ついにチャックの金具が弾け飛んじゃったの。だから着られないんだもん」
「チャックが弾け飛ぶってどういうことよ……お腹の圧力だけで金属壊したの?」
「だって、お肉がどんどん元気に育ってるんだもん。だからね、今度は大きいサイズ専門店のサイト見てるの。ほら、8Lとか10Lのゆったりしたチュニックワンピースがあるんだよ」
「10Lって……それもう服っていうか、キャンプ用のテントじゃないの」
「テントじゃないもん! 可愛い花柄だってあるし! これなら私のお腹もすっぽり隠れるし、着心地良さそうなの!」
「隠れるとかそういう次元の問題じゃないわよ。今日だって、朝シャワー室のドアに挟まって出られなくなってたじゃない」
「あ、あれはちょっと入り口が規格外に狭かっただけで……私がもうちょっとお腹を引っ込めれば大丈夫だったもん!」
「無理に決まってるでしょ! 『結衣ちゃん助けてー! お腹がちぎれるー!』って涙と鼻水垂らしながら叫んでたのはどこの誰よ。石鹸水でお腹滑らせて、三人掛かりで引っ張ってやっと抜けたんじゃない」
「うぅ……お腹の厚みがちょっと予想外だったの。でも、この10Lの服なら布地がいっぱいあるから安心だよ」
「安心じゃないわよ。今日の練習もやばかったじゃない。逆立ちどころか、水面にお腹だけ島みたいに突き出して浮いてたわよ」
「仕方ないじゃない! お腹のお肉が全部浮き輪みたいになっちゃって、頭を沈めようとしても勝手にぽっかり浮き上がっちゃうんだもん!」
「完全にひっくり返って溺れかけてるアザラシだったわよ。コーチももう怒る気力なくして、頭抱えてプールサイドでうずくまってたわ」
「本番はね、もう仰向けでプカプカ浮く振り付けに変えてもらおうかと思って。プールの中心で太陽みたいに浮かぶの!」
「それアーティスティックスイミングじゃないわよ! ただの巨大な障害物じゃない! 観客だってびっくりするわよ!」
「もう、いいの! 浮力がすごいのは才能なんだから! ほら、この10Lのワンピースもポチっちゃお」
「はぁ……もう好きにしなさい。ところで、さっきからその片手に持ってるの、もしかして練乳のチューブ……?」
「うん、直接飲むと甘くて美味しいの。浮き疲れちゃったから、エネルギー補給だよ! 結衣も一口飲む?」
「絶対に嫌。完全にアスリートとしての人生終わってるわね……」
「終わってないもん! 引退公演が終わったら、みんなで焼肉食べ放題行こうね!」
結衣の冷ややかな視線を浴びながらも、雫は悪びれる様子もなく練乳をチューッと啜り、巨大な腹肉を揺らしながら10Lサイズの服を次々とカートに入れていくのだった。
身長:160.0cm / 体重:98.5kg(前月比 +14.5kg)
BMI:38.5(肥満度3)
B:120 (Kカップ) / W:112 / H:125
10Lサイズのワンピースすら、巨大すぎるお腹のせいで前裾がめくれ上がり、しゃがもうとした瞬間にビリッと無惨な音を立てて引き裂かれてしまってから、さらに二週間。引退公演を数日後に控えた雫の肉体は、もはやアスリートの面影すら細胞のひとかけらも残っておらず、ただひたすらに無限のカロリーを溜め込み、膨張し続ける巨大な肉の要塞と化していた。
深夜の合宿所。暗い自室の中で、雫の寝ているベッドのマットレスは完全に中央がすり鉢状に深くへこみ、彼女がわずかに寝返りを打つだけで、限界を超えた重量にスプリングが「ギシッ……ギギギッ……!」と悲痛な軋み音を上げていた。
もはや自力で腹筋を使って体を起こし、座るという行為すら不可能になってしまった雫は、仰向けのまま、自身の巨大な腹肉の上に広げた「深夜の狂宴」を満喫していた。
そびえ立つドーム状の腹肉は、今や立派な天然のテーブルである。その上には、ファストフード店を何軒もハシゴして買い占めてきたチーズバーガーが十個、特大のファミリーサイズのフライドチキンバーレル、そしてLサイズのフライドポテトが五つ、まるで肉と油のピラミッドのように山積みにされていた。
雫は仰向けに寝そべったまま、右手に持ったチーズバーガーの包み紙を乱暴に破り捨て、三口で強引に胃に流し込んだ。そして間髪入れずに左手でフライドチキンを掴み、骨ごとしゃぶるように貪り食う。
「んむっ……くちゃっ……んんぅ……お肉、おいしいぃ……じゅるっ」
強烈な塩分、スパイス、そしてドロドロに溶けたチーズと肉汁が口の中で爆発し、彼女の脳の報酬系を歓喜で焼き尽くす。咀嚼するたびに、巨大なスイカのようにパンパンに膨れ上がった頬の肉がブルンブルンとだらしなく波打ち、口の端から溢れ出た油が、幾重にも重なった極厚の二重顎へとボタボタと垂れ落ちた。ハンバーガー五個とチキンを交互に平らげ、ポテトを鷲掴みにして口にねじ込むと、彼女は枕元に常備している業務用サイズのマヨネーズのボトルを手に取った。キャップを開け、直接口に突っ込んでブチューッと中身を搾り出す。ファストフードの脂だけではもはや脳が満足しきれず、ダイレクトな油の塊を飲み込むことで強引に快楽を引き出しているのだ。
「んぐっ、んちゅっ……ぷはぁっ、最高……ポテトにつけるのもいいけど、やっぱりマヨネーズは直接飲むのが一番手っ取り早くて美味しいんだよねぇ……」
口の周りを油とマヨネーズで真っ白にベトベトに汚しながら、彼女はだらしなく笑う。笑うと分厚い頬の肉が目を完全に押し潰し、まぶたの隙間すら見えないほどの肉だるまと化していた。
連日の常軌を逸した暴食と運動不足(プールに行っても水中で浮いているだけで全く運動になっていない)は、雫の体を文字通り「規格外の怪物」へと作り変えていた。
顔はもはや、顔としての輪郭を保っていない。頭部から首、そして肩にかけてがすべて分厚い脂肪の層で繋がり、巨大な肉の円錐のようになっている。首は完全に肉の中に埋没して消失し、下を向こうとしても三段になった極厚の顎肉が巨大な胸の肉と衝突してしまい、数ミリたりとも動かすことができない。常に顎が上を向いた状態を強いられていた。
そして、彼女の胴体はまさに絶望的な巨大さと質量を誇っていた。「巨大なバランスボール」すら通り越し、今や彼女の腹部は、仰向けに寝ていると山の頂上のように天井に向かって高くそびえ立っている。その巨大な肉の塊は、ベッドの横幅すらも超え、両脇からデロリと滝のようにマットレスの下へと垂れ下がっていた。立って歩こうにも、太ももを完全に覆い隠し、膝の近くまで垂れ下がった重たくて巨大なお腹の肉が邪魔で、足を大きく外側に開いたガニ股のすり足でしか前進できない。腕は脇腹と背中についた分厚すぎる脂肪に阻まれ、ペンギンのように外側に大きく開いたまま固定されており、自分の体の横を掻くことすら物理的に不可能になっていた。
巨大化したバストはもはや首のすぐ下から始まり、仰向けになるとその途方もない脂肪の重みが気道を容赦なく圧迫し、常に「フシュー、フシュー」と豚のような荒い鼻息を漏らすようになっていた。少し動くだけで全身から滝のように脂汗が噴き出し、常にハァハァと息苦しそうにしている。
その翌朝。雫は自分の体が、いかに人間社会の一般的な規格から外れてしまったかを、物理的な破壊と圧倒的な羞恥を伴って実感することになる。
朝食を食べるために合宿所の食堂へ向かった雫は、いつものように自分の定位置であるパイプ椅子に腰を下ろそうとした。
ズシーン、ズシーンと床を揺らしながら歩み寄り、どっこいしょ、と巨大な体を椅子に沈めようとしたその時だ。
座面の横幅に対して、雫の巨大に横に張り出したお尻と丸太のような太もものお肉が全く収まりきらなかったのだ。降下していく巨大な肉の塊が、パイプ椅子の両サイドの肘掛け部分にギュッと挟まり、「あれ? お尻がつっかえてる……?」と思ったのも束の間。
「……っ!? ぎゃっ!」
バキィィッ!! グシャァァッ!!
というけたたましい金属の破壊音が食堂中に響き渡った。雫の110キロを優に超える体重と、強引にねじ込まれた巨大な肉の圧力に耐えきれず、スチール製のパイプ椅子の脚が四本とも無惨にへし折れ、ひしゃげたのだ。
支えを失った雫はそのまま仰向けにひっくり返り、ドスゥゥゥン!!という地震のような地響きと共に食堂の床に激しく叩きつけられた。
「うぎゃあっ! い、痛いぃっ……!」
床に転がった雫は、ひっくり返った亀のように短い手足を空中でバタバタさせる。しかし、自身の背中とお腹についた莫大で分厚い脂肪が完全に丸い球体のようになっており、重心を移動させることができず、自力で起き上がることが全くできないのだ。
周囲で朝食をとっていた選手たちが悲鳴を上げて駆け寄り、「雫! 大丈夫!?」「誰か手伝って! 重くて起き上がらせられない!」と数人がかりで彼女の巨大な体を押し上げる大騒ぎとなった。完全にひしゃげて鉄くずと化したパイプ椅子を見つめながら、雫はようやく自分の体が家具を容易く破壊するほどの恐ろしい質量に達していることを、身をもって自覚した。
しかし、その後のプール練習は、家具の破壊すら生ぬるく感じるほどの地獄絵図だった。
特注で作ったはずの巨大な水着は、とうとう太ももから上に引き上げることすらできなくなり、雫はネットで購入した「超特大サイズのフィットネス用長袖ラッシュガードとレギンス」を無理やり着込んでいた。しかしそれすらもパツパツで、動くたびに縫い目が悲鳴を上げている。
雫がプールサイドから足を踏み入れると、ザッパーーーーーン!!!と、まるで小型のクジラが飛び込んだかのような巨大な水柱が上がり、プールの水が盛大に溢れ出してプールサイドを完全に水浸しにした。隣のレーンで真面目に泳いでいた選手が波に飲まれて激しくむせ込み、抗議の声を上げる。
コーチがもはや指導を放棄し、壁に寄りかかって虚ろな目を向ける中、雫は深く息を吸い込み、少しでも体を水中に沈めようと試みた。
しかし、結果は明白だった。
「ぷっかぁーーーーんっ!!!」
もはや彼女の体の七割近くを占めているであろう極厚の脂肪層が、巨大な浮力体として猛烈な力を発揮したのだ。頭を水面下に沈めようとした瞬間、巨大なビーチボールと化したお腹と、風船のように膨らんだお尻の肉が水面へと猛スピードで跳ね上がり、彼女の体を完全に水中でひっくり返してしまった。
仰向けになった雫の体は、巨大なドーム状の腹肉を浮き島のようにぽっかりと水面から高く突き出し、肉に埋もれて短くなった手足が水面から完全に浮き上がってしまっている。背中や腰の脂肪の浮力が強すぎるあまり、手足をバタつかせても水面に届かず、ただ空を切るだけなのだ。まるで巨大な風船が水面に浮いているような、絶望的なまでに無様で滑稽な姿だった。
「ぷはっ! 沈まない! 全然沈まないよぉ!」
ただ浮いていることしかできないまま、練習の終わりの時間がやってきた。そして、最も悲惨な事態が発生した。
自力で泳ぐことができない雫は、プールサイドに上がるために、壁に備え付けられた金属製の梯子(ラダー)を登ろうとした。
しかし、一段目に足をかけ、腕の力で巨大な体を持ち上げようとした瞬間。
「……っ、んぐっ……!? いててっ! あ、上がれないっ……!」
彼女の巨大すぎるお腹の肉がプールの壁に激突し、それ以上体を壁に近づけることができないのだ。さらに、水から上半身が出た瞬間、重力に引っ張られる115キロオーバーの巨体と、水分をたっぷりと吸い込んだ特大ラッシュガードの重さが、容赦なく彼女の細い腕の筋肉にのしかかる。
「うそっ、お腹が壁につっかえる……っ! 腕が、腕がちぎれるぅぅっ!」
バシャバシャと水面で暴れるが、巨大なお腹が邪魔で重心を前に倒すことができず、自力でプールから上がることが完全に不可能になってしまっていたのだ。
「ちょっと、結衣! 誰か! 助けてぇっ!」
「……はぁ。また? もう、本当に何なのよその体」
「ごめん、ごめんね! でも、お腹が壁に引っかかって、重くて上がれないの!」
「当たり前でしょ! 水分吸ったそのラッシュガードの重さも合わさって、今何キロあるのよ!」
「わ、わかんない! 測ってないもん! とにかく手引っ張って!」
「一人じゃ絶対無理! 腕抜ける! ほら、みんな手伝って!」
「せーのっ! ……重っ!? 嘘でしょ、全然持ち上がらない!」
「ごめんねぇぇっ! 私も足で梯子を登ろうとしてるんだけど、お腹のお肉が邪魔で足元が全く見えないの!」
「見えないとかそういう問題じゃないわよ! 完全に壁と梯子の間に挟まってるじゃない!」
「むぎゅっ……うぅっ、お腹のお肉がコンクリートに擦れて痛いぃ……!」
「痛いじゃないわよ! 男子スタッフ呼んでくるから、そのまま梯子に捕まってて!」
「ええっ!? 男の人にこんな姿見られるの恥ずかしい……!」
「恥じらいなんて、朝の食堂でパイプ椅子ぶっ壊した時点でとっくに捨ててるでしょ!」
「あれは椅子が古かったの! 経年劣化だもん! 私のせいじゃないもん!」
「あんたのお尻の肉が規格外だったの! ああもう、本当に数日後の引退公演どうするのよ!」
「大丈夫! 本番は、最初からプールの真ん中で浮いてる演出にするから!」
「演出って言い張る気!? ただの巨大な肉の島じゃないの!」
「ひどい! 人魚姫が休むための島って言ってよ!」
「人魚姫の島はそんなに腹出てないわよ!」
結局、男子スタッフ四人がかりで両腕と両脇を抱えられ、まるで重量物をクレーンで吊り上げるようにしてプールサイドに引きずり上げられた雫は、濡れた巨大なトドのように床に転がってゼイゼイと荒い息を吐いていた。
その日の夜。合宿所のラウンジで、雫は巨大な指でスマートフォンを操作していた。もはや10Lサイズのレディース服すらお腹が入らなくなった彼女が血眼になって閲覧しているのは、オンラインの「力士・超大型外国人向け専門店」のサイトだった。
「……ねえ。今度は何見てるの?」
「あ、結衣。服買おうと思って」
「10Lのワンピース、こないだ届いたばっかりじゃない。まだ一週間も経ってないわよ」
「あれね、着ようとしてしゃがんだら、お腹のところで生地がパツンパツンになっちゃって、無理やり引っ張ったらビリッて前が裂けちゃったの」
「服を物理的に破壊したのね。パイプ椅子に続いて服まで。で、今度は何サイズを買うつもりなの」
「えっとね、力士用の特大Tシャツ。日本サイズだと15L相当だって」
「15L……。もうそれ、服っていうかパラシュートの布じゃないの」
「パラシュートじゃないもん! 力士用だから、横幅がすごくゆったりしてて、私のお腹でも苦しくないはずなんだ!」
「あんた、自分が力士サイズになってる自覚ある?」
「ないよ! 私はちょっとぽっちゃりした元アスリートだもん!」
「ぽっちゃりの次元は半年前に通り越してるわよ。今日だって、プールから上がるのに男子四人がかりだったじゃない」
「あれは……地球の重力が急に強くなったの!」
「あんたの質量が増えたのよ! しかも食堂のパイプ椅子まで粉々にぶっ壊して……弁償どうするのよ」
「うぅ……コーチの給料から引いておくって言われた……」
「当然ね。で、明後日の引退公演の衣装はどうするの。さすがに力士用の服じゃ出られないでしょ」
「ふふん、大丈夫! 特注で、一枚の巨大な布を体に巻くだけのポンチョみたいな水着を作ってもらったの!」
「布を巻くだけって……それ、古代ローマ人じゃないの」
「古代の女神って呼んで! 太陽みたいにプールのど真ん中で輝くんだから!」
「ただの巨大な肉だるまが水面に浮かんでるだけでしょ。……で、さっきからその片手に持ってるボトルは何?」
「これ? 業務用のマヨネーズ。お腹すいたから直接飲んでるの」
「……」
「結衣も飲む? カロリー摂ると元気になるよ!」
「……もう、あんたには何も言わないわ」
結衣の完全に諦めきった冷たい視線を浴びながらも、雫は悪びれる様子もなくマヨネーズをブチューッと口の中に搾り出し、巨大な腹肉をプルンプルンと揺らしながら15L相当の力士用Tシャツをカートに入れていくのだった。
ついに、引退公演の当日がやってきた。
会場となる市民プールには、長年日本のトップで活躍してきた雫たちの最後の勇姿を一目見ようと、満員の観客が詰めかけていた。
しかし、その裏側である楽屋の片隅は、アスリートの控室とは到底思えない異様な光景と匂いに包まれていた。
出番をわずか五分後に控えた雫は、パイプ椅子がまた壊れることを恐れて床に直に座り込み(厳密には、自身のお尻と太ももの極厚の脂肪をクッションにして座り込み)、目の前に並べた特大の幕の内弁当三つを次々と平らげていた。さらには、食後のデザートとして用意したチョコレートのホールケーキを、フォークで直接えぐり取って口の中に放り込んでいる。
「あむっ……もぐもぐ……んぅ、ケーキのスポンジがふわふわで美味しいぃ……」
顔は完全に丸い肉の塊と化し、幾重にも重なった顎の肉が首を完全に飲み込んでいる。頬の肉が風船のようにパンパンに膨れ上がり、常にまぶたを押し上げているため、目は一本の細い糸のようにしか見えない。咀嚼するたびに顔全体の脂肪がブルンブルンと波打ち、口の端からはチョコレートクリームがだらしなく垂れていた。
そして、胴体はもはや人間の構造を逸脱していた。座っていると、巨大なバランスボールを三つほど詰め込んだかのような腹肉がドーム状にせり出し、完全に太ももと膝を覆い隠している。足先すら肉のカーテンに遮られて見えない。
彼女が身に纏っているのは、業者に泣きついて前日に急遽仕上げてもらった「特注の布巻きポンチョ型水着」だった。巨大な一枚の伸縮性のある布を体に巻きつけ、かろうじて水着の体裁を保っているのだが、彼女の桁違いの腹肉の圧力に耐えきれず、生地は薄く透け、今にもはち切れそうにパツパツに張り詰めていた。
「ちょっと、本番五分前よ! まだ食べてるの!?」
「だって、エネルギー補給しないと水の中で沈めないもん……もぐもぐっ、んぐっ」
「沈む気あったのね。でもそのポンチョみたいな水着、もう布が全然足りてないわよ」
「えっ、嘘? 結衣ちゃんに手伝ってもらって、ちゃんとぐるぐる巻きにしたはずなのに」
「お腹の肉が前に出過ぎて、前の裾が完全にめくれ上がってるのよ。巨大なお腹の下半分が丸出しじゃない」
「大丈夫だよぉ。水に入っちゃえば屈折で見えないし!」
「屈折の問題じゃないわよ! そもそも沈まないで浮き上がるんだから、観客から丸見えでしょ! ……で、終わった後の打ち上げの服はどうするの? この前買った15Lの力士用Tシャツ着ていくの?」
「ううん、あれも昨日の夜、寝返り打ってお腹がつっかえた時に、無理に動いたらビリビリッて破けちゃったの」
「寝相の圧力だけで15Lの服を粉砕したのね……化け物よ」
「だからね、海外の超肥満向けサイトで、20L相当のムームーみたいな巨大なドレス服をポチったの! 打ち上げはそれに着替えて行く!」
「20Lって……もうそれ、服っていうかサーカスのテントじゃない。呆れて声も出ないわ」
「ふふん、打ち上げは焼肉食べ放題だから、お腹周りがいくら膨らんでも苦しくないテントみたいな服が一番なんだから!」
「あんた、これ以上お腹を膨らませる気なの……?」
「当然だよ! 引退したらもう体重管理しなくていいんだから、毎日ケーキとピザ食べるの!」
「……はぁ。とりあえず、行くわよ。コーチが鬼の形相でプールサイドで待ってるわ」
「よーし! 最後の演技、バシッと決めてくるね! どっこいしょぉっ……!」
床から立ち上がるのにも一苦労だ。雫は壁に手を突き、巨大な腹肉を両手で持ち上げるようにして、ズシーン、ズシーンと地響きを立てながらプールへと向かった。
満員の観客が見守る中、選手たちが入場する。引き締まった肉体美を誇る選手たちの中で、一人だけ規格外の巨大な肉だるまが混ざっているのだから、会場は一瞬にしてどよめきとざわめきに包まれた。
「あれ、水城選手だよね……?」「嘘でしょ、怪我で休んでる間に何があったの……?」
観客のヒソヒソ声が聞こえるが、糖分と脂質で脳が満たされている雫は満面の笑み(肉に埋もれて表情はよくわからないが)で手を振った。
雫がプールサイドの階段から足を踏み入れると、ザッパーーーーーン!!!という爆発音のような水柱が上がり、プールの水位が目に見えて数センチ上昇した。一番前の席に座っていた観客にまで水しぶきが飛び、悲鳴が上がる。
そして、壮大なクラシック音楽と共に、最後の演技が始まった。
他の選手たちが水中で華麗に舞い、息の合ったフォーメーションを組む中、雫もプールの中央へと移動する。
曲のクライマックス。全員が一斉に水中に潜り、逆立ちの姿勢で両脚を水面に高く突き出す、アーティスティックスイミングの華である大技の瞬間だ。
雫は深く息を吸い込み、頭を真下に向けて一気に潜り込もうとした。
両手で激しく水を掻き、巨大な体を沈めようとする。
しかし。
「ぷっかぁーーーーんっ!!!」
彼女の体に巻き付いた、体重の七割を占めるであろう極厚の脂肪層が、巨大な救命胴衣として猛烈な浮力を発揮したのだ。
頭を沈めようとする意志を完全にへし折り、巨大なバランスボールと化したお腹と、風船のように膨張したお尻の肉が水面へと猛スピードで浮き上がり、彼女の体を水中で見事にひっくり返してしまった。
仰向けになった雫の体は、巨大なドーム状の腹肉を浮き島のようにぽっかりと水面から高く突き出している。さらに悲惨なことに、背中と腰の脂肪の浮力が強すぎるあまり、短くなった手足が水面から完全に浮き上がってしまっていた。ジタバタと手足を動かしても、空を切るだけで全く水に届かないのだ。
まるで打ち上げられた巨大なトドか、ひっくり返った巨大な亀が水面に浮いているような、絶望的なまでに無様で滑稽な姿だった。
「ぷはっ! し、沈まないぃぃっ!」
自力で起き上がることすらできず、巨大なポンチョ水着からめくれ上がった極厚の腹肉を丸出しにして、プカプカと無抵抗に水面を漂い続ける雫。
観客席からは、もはやどよめきを通り越して、クスクスという笑い声や、あからさまな爆笑が巻き起こっていた。美しく舞うチームメイトたちの中心で、一人だけ巨大な肉の浮き島として漂い続ける異様な光景。
(あーあ、完全に浮いちゃった……)
水面に突き出た自分の巨大な腹の山を見つめながら、雫は心の中でひっそりと諦めた。
恥ずかしさは当然ある。しかし、それ以上に彼女の脳内を占めていたのは、終わった後に待っている焼肉食べ放題のことだった。
(早く終わらないかな。カルビにマヨネーズ乗せて、白ご飯と一緒に書き込みたいな。そういえば、海外から届く20Lのテントみたいな服、どんな柄だったっけ……。あれなら、お腹が今の倍になっても絶対に入るよね)
スポットライトを浴びながら、水面に浮かぶ巨大な肉ダルマは、もはや自分がアスリートであったことすら忘れ、ただひたすらに次なる暴食と、さらに巨大化していく己の未来に胸を躍らせていたのだった。
身長:160.0cm / 体重:132.5kg(前月比 +17.0kg)
BMI:51.8(超高度肥満・生命の危機)
B:145 (Mカップ) / W:138 / H:150