Home Creators Posts Import Register Favorites Logout

Content

 クリスの消耗は激しく、すぐに旅を続行することは難しいと考えて、三人は王都へ戻ってやむを得ず宿を取ることにした。王都につくとコトワリはすぐに魔道具屋で購入した魔石を加工し、隠蔽の力を持つ魔道具を二人に持たせた。コトワリの考えでは、そうすることでウツシヨの追跡をある程度避けることができるだろうということだった。

 

 夜。宿に戻ったアルフォンスは、寝ているクリスの隣のベッドに座った。

「アルフォンスか」

「起きてたの? 食べる?」

 そういってアルフォンスは、紙袋の中から香ばしい匂いのするパンを取り出した。受け取ってクリスはそれを頬張る。歯ごたえのあるよく焼けた硬いパンに、肉とチーズと野菜が挟まっていて、香辛料の効いた甘辛いソースが絡めてあった。

「旨いな」

「だろ? 身体はどう?」

「……まだしばらくまともに動けそうにないな」

「コトワリさんの診断によると全治一週間だってさ」

「あいつは医者もできるのか。便利だな」

「不便も多いらしいけどね」

 クリスがパンを食べ終わったのを見てから、アルフォンスは紙袋の中から同じパンをもう一つ取り出すとそれをクリスに手渡した。餌付けのようだ、とアルフォンスは心の中で笑った。

「コトワリから何か聞いたか?」

「クリスのこと?」

「ああ」

「まあ、一応は」

 アルフォンスはコップに入れたお茶を差し出す。

「でも、クリスがどこから来たのかは、知らないってさ」

「だろうな。あいつはどうしてる?」

「散歩がてら月光浴。天体から魔力を得るにはいい星の並びなんだってさ。コトワリさんは休んでも魔力が回復しないから」

「そうらしいな」

 二つ目のパンを食べ終わったクリスは物欲しそうにアルフォンスを見るが、アルフォンスは品切れだと首を振った。

 

「襲撃を受けたのは俺の事情に巻き込んだせいだ。すまない」

「謝らなくてもいいよ。事情があるんでしょう」

「聞かないのか?」

「聞いてほしいなら聞くけど、言えない事情があるんじゃないかなと思ってる」

「もし話せば、恐らく俺は元居た場所に戻ることになる」

「なら言わなくていいよ。もし君が居なくなったら僕の騎士が空席になっちゃうし」

「俺のことを疑わしいと思わないのか?」

「よく分からない。だけど、君が現れたのは多分、僕を助けるためだったのかなと思ってる。実際、クリスがいなきゃ僕は死んでいただろうから」

 アルフォンスは、クリスの掌を握った。自分よりも一回りも二回りも大きい剣士の掌だ。

 

「それになんだかもう君以外の誰かと旅をするイメージが沸かないんだ。自惚れかもしれないけど、僕と君はきっと、もっと良いパートナーになれると思う」

「自惚れじゃない。俺もそう思うよ」

 クリスはアルフォンスの手を力強く握り返した。

 

「だけど、もしもいつか全部終わって、話せるときが来たら、君のことちゃんと聞かせてくれる?」

 そう問いかけられると、クリスは少し逡巡した後、意を決したようにまっすぐアルフォンスに向き合って答えた。

「ああ、約束する」

<了>

Comments

No comments found for this post.