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 魔性という言葉がある。

 魔性の女だとか、そういう風に使われる類の言葉だ。

 多分僕が持っているのもその類だった。

 

「お前には魔性がある。それは生まれ持ったものだから、生かすも殺すもお前次第だし、それは善悪の概念では語るものではない。少なくとも俺はそう思っている」

 そんな風に聞かされたのはいつのことだっただろうか。その言葉が父の言葉だったのか、通りすがりの誰かの言葉だったのか、もしくは親類の誰かの言葉だったのか、それとも混沌とした幼いころの記憶が混ざり合って作り出した幻想の記憶なのか、定かではない。だけど僕には現実として、その類の力が確かにあった。

 

「富良野さんは、本当に僕のおちんちんが大好きですね」

 唇をすぼめながら、ずるずると下品な音を立て、他人の性器をしゃぶる富良野を、スマートフォンのカメラに映しながら話しかける。ほら、カメラに目線を向けて。笑って笑って。そう煽れば、額から汗を垂らしながら、掘りの深いその顔に無理やり作った笑みがしっかりとスマートフォンのストレージに保存されていく。

 

 口では僕のペニスを咥え、右手は自分自身のペニスを掴んで扱き、そして左手は肛門に刺さったディルドを抜き差ししている。僕が腰を引くと、富良野は名残惜しそうに唇を離した。

 

「富良野さんは、僕のお願いならなんでも聞いてくれるんですよね」

「ああ、もちろんだよ」

 

 自信をもってそう答える富良野。実際なんでもしてくれるのだろう。腱板を意図的に断裂するまで無茶な重量でベンチプレスをしろと命令すれば、身体がボロボロになっても、耐えがたい苦痛に苛まれることになっても、それを実行してみせるだろう。

 なぜなら彼は僕のことを愛しているからだ。

 

 愛という感情はポジティブなものだが、しかしてそれは時に人間から理性的、合理的な判断を奪う。感情というものはとても大きく、人間の価値基準の根幹に存在すると言っても過言ではないと僕は思う。人間は欲に駆られて罪を犯すし、愛ゆえに人を殺せる。そういう生き物だ。そんな自分の価値基準を決める大切な感情である愛を他人に掌握されてしまったとしたら、人間はいったいどうなるか。

 

「実は僕、動画の撮影に興味があって」

「ああ、最近流行ってるらしいね。欲しい機材とかあるの? 好きなのを買ってあげるよ」

「機材も欲しいですけど、富良野さんのことを撮らせてほしいんですよね」

「俺を? 公平くんからのお願いなら断るわけないだろう。もちろんいいよ。俺で良ければなんでも協力する」

 我慢汁の滲んだ性器を自分自身の手で扱きながら、富良野は笑った。

「公平くんのことを世界で一番愛しているからね」

 

 富良野がそう言った瞬間にスマートフォンの画面をタップする。

 シャッター音とともに、その笑顔はスマートフォンの中へと吸い込まれていった。

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