ホームオフィス(Uncensored 'FUCK') <22,000字程度> (Pixiv Fanbox)
Content
9.
「大倉。仕事だ」
岩本は腕を組んだまま、大倉を呼びつける。
精悍な顔立ち。短く刈りそろえられた髭を蓄えている。日本人離れした規格外の骨格に、まるでアメリカンコミックのスーパーヒーローのように分厚く発達した筋肉。それは日々の弛まぬハードなトレーニングの成果だということが容易に見て取れる。
身長は180cmを超えているにも関わらず、細いという印象を全く与えさせない。
迫り出した胸板。特注のワイシャツにはぎゅうぎゅうに筋肉が押し込められていて、今にも張り裂けそうだ。
下半身の筋肉も非常に逞しい。普段はスラックスに隠されて直接目にするができないはずのその下半身の筋肉は、露わに晒されている。下着とスラックスは、部屋の隅で不用品のように放置されている。
岩本は今、ワイシャツと黒いビジネスソックスだけを着用していた。
黒々と茂った陰毛。普段から履いているTバックのラインに合わせて際どく剃り上げられ、そのシルエットは鋭利な形状をしている。そして、その整えられた陰毛の先にぶら下がる男性器のあるべき場所には、これまた日本人離れした巨根が鎮座していた。いや、その巨根は、既に勃起し直立していた。
完全にズル剥けの陰茎。その亀頭は雁首が非常に発達しており、深い溝を作っている。臨戦態勢と言わんばかりに最大限勃起した岩本のペニスはグロテスクさを感じさせるほど大きい。陰茎の毛も処理しているのか、無毛の男性器にはビキビキと浮き上がった何本もの太い血管が根を張っている。その血管はペニス本来の凶暴性を強調しているようだった。付け根にぶら下がっている陰嚢も非常に大きく発達しており、その筋肉質で男らしい身体付きは、陰嚢の中で大量の男性ホルモンが逐次生産されている証明だろう。ドバドバと陰嚢から放出された男性ホルモンが、岩本の身体中、ありとあらゆる血管の中を駆け巡っているのが目に見えるようだった。
しかし、その逞しく男らしい身体の後ろに回り込んで見てみると、尻の隙間から男らしい肉体には似つかわしくない突起物が顔を出していることに気がつくことだろう。それはアナルプラグの根元だ。
男らしい彼の肉体。その直腸は、その彼の規格外の身体つきに見合うだけのビッグサイズのアナルプラグで満たされ、常に彼の前立腺を刺激し、抉っているのだ。男らしい岩本の肉体とどこか矛盾を感じさせるそのアナルプラグの存在は、まさに異物だった。
しかし、その異物は彼の身体にしっくりと馴染み、もはや身体の一部と言ってもいいほどに、彼にとってはそこにあってしかるべきアイデンティティの一部と化してしまっていると言っても過言ではなかった。
「はい。何の仕事でしょうか。ボス」
呼びつけられた大倉は、岩本のもとに忠犬のようにひょこひょこと駆けつける。
――忠犬。
犬に例えるのであれば、彼は大型犬だろう。
彼も、岩本と同じく180cmを超える巨漢だった。柔道家である彼の身体は大きかった。文字通り柔らかさを感じさせる豊かな肉感だ。当然、筋肉質であるのだが程よく脂肪が乗っているため、クッションやぬいぐるみのようなボリューム感を感じさせる。
決して太っているわけではない。しかし、彼の肉体には豊満という言葉がよく似合った。どこか日本人離れした骨格を持つ岩本に比べて、大倉はやや胴長短足ぎみで、同じ巨体同士だというのに、大倉にはどこか日本人らしさを感じさせる。平均を逸脱した巨漢であることには変わりはないのだが。
その肉体のシルエットはとにかく太くて大きい。決してスマートとは言えない。当然、筋肉を維持するために激しいトレーニングをしているのだろう。だが、しかしその図体の大きさにも関わらず、彼からは圧迫感が感じられない。どこか他人を安心させるような抱擁力の高さが全身から醸し出されている。
それこそが大倉という男の肉体、そして精神性を表しているようだった。
当然ながら、彼もワイシャツとビジネスソックスのみしか着用しておらず、勃起した男性器をしっかりと露出した状態だった。岩本に負けず劣らずの巨根だが、彼のペニスはしっかりと包皮で覆われている仮性包茎であり、さらには包皮の上からピンクのコンドームでペニスをラッピングしているという点がどこか可愛らしさを感じさせる。それが岩本の凶暴で逞しいペニスとの大きな違いだった。
「お前に頼みたい仕事というのは、アナルセックスだ」
「ああ、アナルセックスですね。分かりました」
大倉は頷く。
「それで誰とアナルセックスをすればいいんですか?」
「……俺だ」
岩本は親指を自分に向ける。
「ボスと俺が、セックスするんですか?」
「ああ。お清めセックスのために、お前のケツの穴が必要なんだ。協力してもらえるか」
「お安い御用ですが、あの、ボス。お清めセックスって何ですか?」
「相変わらずお前は不勉強だな」
こんなことは常識だぞと岩本がため息をつくと、大倉はすみませんと頭をかいた。
「一度しか説明しないからしっかり聞いておけよ。俺は、今まで妻を始めとする数多くの女性とセックスをしてきた。結婚しているということは当然、子作りセックス。つまりコンドームを使わない中出しセックスが中心となる。俺は性欲が強く、自慢ではないが女にも不自由しなかった。だから、結婚する前にも生チンポをマンコに入れてセックスをすることが数えきれないほどあったんだ。ここまで言えばもう分かるか? つまり、生チンポをマンコに何度も挿れて、大量のマンコ汁と俺のチンポは触れ合ってしまった。それが災いして、数多くの女たちのマンコ汁、その女々しいエキスが『毒素』として、男である俺のチンポに染み込んで汚染されてしまっているんだ」
「こんなに立派なチンポなのに、女のマンコ汁に汚染されてしまうなんて災難でしたね」
「若気の至りとしか言いようがないな。まあ、それはいいとして。続きを話すぞ」
大倉は頷く。
「俺のチンポからその『毒素』を洗浄するには、男同士のアナルセックスをする必要がある。つまり、ホモセックスをする必要があるということだな。そして、このセックスを通して、チンポに染み付いた毒素であるマンコ汁を男臭いアナルの力で中和することを、お清めセックスと呼ぶんだ」
「なるほど、勉強になります。つまり、ボスのチンポをアナルでお清めすることが、俺の役目ということですね」
岩本は、その通りだと頷いた。
「ひとつ、僕から補足させてもらってもいいですか?」
唐突に部屋に響いた声。二人は初めて安藤に目を向ける。
安藤は、ソファに一人腰掛けて、足を組んでいた。
まるで映画を鑑賞するかのように寛ぎ、背もたれに身体を預けている。
「岩本チーフのチンポに染み付いたマンコ汁は、大倉さんとのアナルセックスで"お清め"することができます。しかし、その過程で溶け出たマンコ汁は、完全には中和しきれずに大倉さんのアナル、つまり直腸にたっぷり染み込んいくでしょう」
「俺のチンポの代わりに、大倉がマンコ汁に汚染されてしまうということか……。それは問題だな」
「はい。そしてマンコ汁が染み込んだ直腸は、文字通りオマンコになります」
「オマンコ?」
「そうです。オマンコ、つまりチンポを挿れるための性器になるということです。ただ、女のマンコ汁を打ち消すだけの男臭さを大倉さんは持っているので、肛門や大腸が女性器に変わってしまって、中出しされると妊娠する、などということはありませんので安心してください。あくまでも、大倉さんの肛門の目的が排便のためではなく、男性のチンポを挿れるための穴に変わるというだけのことです。だから正確には、オマンコではなく、ケツマンコとでも呼ぶべきでしょうか」
「安藤くん。チンポを挿れるための穴になるっていうイメージがよくわからないんだけど、えーとそれは、排便ができなくなるとかそういう意味ではないんだよね」
「はい。チンポが排泄器であり、かつ生殖器であるのと同様に、ケツマンコは排泄器としても今まで通りの機能を維持します。それをどう思いますか? 大倉さん」
「それなら、俺は別に問題ないかなあ。結局のところ、俺のケツがケツマンコって呼び方に変わるってだけだろう?」
「本当に良いのか? 大倉」
「はい。それに、そもそも俺の身体は安藤くんの所有物ですから。逆に、安藤くんは、俺のケツがケツマンコになることについて、何か問題があると思う?」
「いいえ。ありませんよ。逆に、とても良いことだと思いますよ」
安藤は、微笑みながらそう答える。
すると岩本も、安藤がそう言うなら問題ないなとあっさり納得した。
「では早速だが、お前の肛門を嗅がせてもらう。お前のアナルが、お清めセックスに十分な適性があるかどうかを確かめる必要があるんだ。いいな」
「はい。もちろん構いません。恥ずかしいですが、自由に嗅いでもらって結構です」
あらかじめ部屋の中のテーブルなどは隅に追いやられ、部屋の中心にはセックスをするために十分なクッション性を備えた弾力のある大きなマットが敷かれていた。
大倉は、岩本の指示に従い、そのマットの上に跪くようにして尻を高く突き出した。自ら両手で尻を掴み、尻の割れ目がよく見えるように左右に広げる。岩本は顔を直に肛門にあてがうと、何度も繰り返し念入りに深呼吸を繰り返していった。
いつも岩本は、仕事に対して非常に真面目だ。
だから例え、肛門からどんな匂いがしようとも、大倉に仕事の適性があるのかを手を抜かずにしっかりと念入りに確認する。
岩本はそういう人間だった。
いうなれば、これは岩本にとっては面接や面談と同じだ。
採用するかどうか。配属させるかどうか。担当させるかどうか。管理職として人事を真面目に検討することは、何もおかしいことではない。役職として当然の役割なのだ。
「よし。十分な男臭さだな。これなら問題なく俺に染み付いた女のマンコ汁を溶かして、しっかりと中和することができるだろう」
それを聞いて、大倉はほっと胸を撫で下ろした。もし「お前には適正がない」と言われたらどうしようか、内心ビクビクしていたのだ。
「ところで、ボスは男同士のホモセックスに抵抗はないんですか? 俺は正直、恥ずかしながら少し抵抗がありまして。これは業務であり、俺の仕事だということは、頭ではしっかりと分かっているつもりなんですが、その、実際、ケツの穴の中に男のチンポを挿れることを想像すると、正直なところ、その、本物のホモみたいじゃないですか。だから、どうにも男として抵抗があるというか……」
「ホモセックスに抵抗があるのは分かる。それは俺も同じだ。しかし、経験なくして成長なしだ。大倉。きっとこれはこれからのお前にとって必ず良い経験になるはずだ。もちろん俺にとってもそうなるはずだと、俺は信じている。お前も、もっとポジティブに考えてみてはくれないか」
「はい。ずっと前向きに考えようと、思っているのですが……」
煮え切らない大倉の言葉に、岩本は顎髭を撫でながら諭すように口を開いた。
「そもそも男同士のセックスというのは最高に気持ちがいいものなんだ。俺も全力で、精一杯気持ち良くなる努力する。お前のことも、精一杯気持ち良くなるように努力をする。頼む。お前も覚悟を決めてはくれないか?」
「ボス。分かりました。俺も男です。腹を括りました! ホモセックスのお相手を、精一杯させて務めさせていただきます! 不束者ですが、よろしくお願いします!」
大倉は、立ち上がると顔を引き締めて、敬礼をした。
話し合った結果、セックスといえばまずは前戯という方針に固まったらしく、二人はマットの上に直立したまま、おずおずと向き合っていた。
今までにないほどの近い距離感。少し抵抗を感じながらも身体を近づけ、お互いのパーソナルスペースに入り込む。男同士でそんな距離まで近づいて、さらにはこれからセックスをすることまで合意したというのに、まだどこか照れでもあるのだろうか。それとも単純に抵抗を感じているのだろうか。岩本も大倉もお互いに目を合わせようとしなかった。
「その、なんだ。とりあえず服でも脱ぐか」
「あ。そうっすね。それが良いかもしれないっすね」
自分でワイシャツのボタンを外そうと手をかけた岩本の手を、大倉はそっと掴んだ。
「その、俺が脱がせますよ」
「ああ、そうか。それが良いかもしれんな」
どこかぎこちない空気のまま、大倉は岩本のワイシャツのボタンを一つ一つ外していった。ワイシャツを脱がすと、筋肉質な肉体が露わになる。蒸れた男の汗とデオドラントスプレーの匂いがふわりと広がる。
大倉は、不思議と不快な気持ちはしないことに気づいた。汗臭さなど慣れっこだからだろうかと思う。茹だるような夏の柔道部の部室。それも練習後の匂いと比べたら、岩本の体臭はむしろ爽やかに感じる。
自然と、大倉は岩本の身体に触れていた。
岩本は一瞬、反射的に避けようと身体を反応させたが、すぐに咳払いをして誤魔化し、素直に大倉からの愛撫を受け入れた。
実際、初めて直に触れた岩本の身体は、見た目よりもずっと筋肉の層が厚かった。この肉体があるというだけでも、それは女には困らないはずだ、と大倉は思った。
「筋肉、すごいですね」
「俺の筋肉なんて、とっくに見慣れているんじゃないのか。お前とはもう長い間、毎日、顔を突き合わせてながら一緒に働いているんだから」
「こんなに間近でまじまじと見たのは初めてですよ。それに触ったのも、多分初めてだと思います。だって普段は、ボスの身体に触れたいなんて思うことないですから」
「それはそうだ。実際に触れてみてどうだ。俺の筋肉はお気に召したか? 触りたいなら触らせてくださいと、素直にそう言えば、俺の気分によっては普段も触らせてやらんこともないぞ。仕事の休憩時間にでも、何ならプライベートの時間にでもな。喜べ。俺は独り身だぞ」
そう言いながら、岩本は腕を曲げて力瘤を作った。
「ははは、冗談キツいっすよ。ボス」
そう言いながらも大倉は、しっかりその力瘤に撫でながら、苦笑していた。
岩本も堪えきれなくなったのか、噴き出すように笑った。
ぎこちなさはまだ残っている。しかし、二人の間にあった緊張が少しだけほどけていく。そんな感覚を岩本と大倉の二人は共有していた。
「攻守交代しよう」
ワイシャツを脱がされた岩本は、大倉の肩を撫でた。
自分がされたのと同じように、大倉のワイシャツのボタンを外していく。
岩本とは違い、大倉は素肌にワイシャツを直接、着ているわけではなく、インナーを着ていた。
「両手を上げろ」
「その言い方。ボスがいうと強盗か何かにしか聞こえませんよ」
そう言いながらも、大倉は従順に指示通りに両手をあげて万歳のポーズを取る。岩本を大倉のインナーシャツを脱がせていく。まるで、父親が子供の洋服を脱がせるように。
「なんかこれ、地味に恥ずかしいっすね。本当の恋人同士みたいだ」
「馬鹿を言うな。俺たちは男同士だぞ。気色の悪いことをいうんじゃない」
両腋を上げているせいか、より汗臭い大倉の強烈な体臭が拡散される。
鼻腔を刺すその匂いに、岩本は顔を顰めた。
大倉という男は、本当にむさ苦しい男だ。岩本はそう思いながら、ごく自然に手にしたインナーシャツを顔に近づけていた。そして深呼吸する。なんて強烈な男の匂いだ。いったいどうやったらこんなに酷い体臭になるんだ?
そんな文句を頭に思い浮かべながらも、なかなかその行為をやめることができない。
「それは何をやってるんですか? ボス」
「……お前がちゃんと男臭いかどうかチェックしてやっているんだよ。これから、お清めセックスするんだから当然のことだろうが。文句でもあるのか?」
「いや、そういうわけではないですが」
そう、これは適正のチェックだ。
しかし、匂いのチェックは先ほど終わったはずだ。
汗の匂いなど確かめる必要があっただろうか。まあいい。
なぜ自分がそんな汗臭い男のインナーシャツを自ら嗅ぐ必要があるのか。
そんな疑問を一つ一つ握りつぶしながら岩本は、シャツの中で特に匂いの強い部分を探して嗅いで回る。岩本は無意識のうちに興奮していた。
いや、させられていた、というべきか。
本人も気づかないうちに密やかに、それは狡猾に、そして周到に刷り込まれていた。岩本は、大倉のインナーシャツを嗅ぎ続けている間、自分の勃起したペニスが、ヒクヒクと力強く反応していることにさえ気づくことはなかった。
二人は上半身に纏っていた服を脱がせ合うことで、ついに全裸同士となった。
下半身はもともと露出していたわけだから、上半身を脱げば全裸になる。当然の理屈だ。しかし、それぞれ黒のビジネスソックスだけは脱ごうとしなかった。それは、脱ぐ必要がないからだ。これは仕事なのだから、ビジネスソックスを履き続けるということは最低限の身だしなみである。岩本はそう考えていたため、特にそれについて違和感を覚えることはなかった。
「とりあえず、折角なんで抱き合いましょうか」
「ああ。折角だからそうするか」
それは恋人同士のハグというには、若干ぎこちなさの残るハグだった。
傍から見るとそれは、まるで何かのスポーツの後、お互いのファイトを讃えあい、抱き合うスポーツ選手同士のハグのように見えた。なんという色気のないハグだろう。
「体温高いっすね、ボス」
「それを言うならお前こそ暑苦しいし、むさ苦しい。ついでに言うと汗臭くて不快だな」
「言い過ぎですよ! まったく酷いなあ。そんなのお互い様でしょう。俺は言葉を選んだって言うのに……」
「そりゃあ俺たちは男同士だからな。そう感じるのは当然だろう」
「まあ、当然ですよね。男同士なんですから」
しかし、肌と肌が触れ合わせる感触というものがそれほど不快ではなく、むしろ心地がいいということにも、二人は気づいていた。
がっしりと抱き合っていた男同士の熱い友情を連想させるようなスポーツマンシップ溢れる形のハグは、ゆっくりと弛緩し始める。そして、手のひらでお互いの身体の感触を確かめ合う恋人同士のハグへと少しずつ変化していった。筋肉の逞しさ。柔らかさ。大きさ。固さ。厚み。汗。そして、心地よい肌の温もりを共有していく。
勃起したお互いのペニスがぶつかり合い、擦れ合っている感触。そのことに双方が気づいていたが、どちらもそれを咎めることも口にすることもなかった。
どちらともなく二人は、自然と唇を重ね合わせていた。
最初は重ねるだけ。次に恐る恐る唇を舐める。薄くて硬い男の唇。そして舌が触れ合う。お互いの吐息が重なり合った。遠慮がちに舌を絡ませ合う。
その行為に対して、全く嫌悪感もなく受け入れている自分自身に、岩本はほんの少し驚いていた。相手は男だ。しかもあの大倉だ。大倉相手にチンポが勃起するかどうかすら難しいかもしれないと考えていたのに、先ほどからずっと勃起したままだ。
これはどういうことだ。俺の身体はどうかしてしまったのか。
いや、余計なことを考えてはいけない。
これはごく自然な行為で、何もおかしいことなどないのだ。
そうだ。そもそも男同士のセックスが最高に気持ちがいいと大倉に言ったのは自分自身だったはずだ。男同士で気持ちいいと感じて何が悪いというのか。いや、悪いことなどはない。岩本は、混乱する自分自身に必死に言い聞かせていた。
気付かぬうちに、大倉とのキスだけで、岩本はペニスから我慢汁を滲ませていた。
岩本は、再び大倉を跪くように命令すると肛門を晒させた。
ローションのボトルを力強く搾り、双丘の隙間にたっぷりと垂らす。それを下から指先で掬い上げるように馴染ませて、ゆっくりと肛門に差し込んだ。
「思ったより穴が狭くてきついな」
「そりゃあ、そこは男の肛門ですから」
大倉は、「少なくとも今はまだ」と付け足して笑った。これからマンコになる予定の肛門なのだから、今後、その穴はペニスを挿れるための穴になるのだ。そうなれば、もう少し挿入も楽になることだろう。
「痛みはあるか?」
「いや全然。ケツの穴にボスの指が挿れられていると思うと妙な感じはしますが」
「お前、才能あるんじゃないか?」
「そんな才能、要らないっすよ」
大倉はまた苦笑していた。
岩本はもう一本指を増やして、ゆっくりと挿入していく。もともと排泄するための穴なのだ。無理に異物を突っ込むような真似をするべきではない。岩本は、あくまでも慎重だった。
しかし、そうやって大倉の肛門をほぐしてやっている岩本の尻の穴にもまた、特大のアナルプラグが無理矢理にねじ込まれていることを、岩本は認識していなかった。その歪な事実について、岩本は都合のいいように忘却している。
それは認識をねじ曲げられた結果だった。
普段からアナルプラグを差し込んで生活していたはずの大倉も同様だ。尻の穴に異物を入れることなど、アブノーマルなことであると認識している。
ここでは、岩本も、大倉も、あくまでノーマルな日常を過ごす、ノーマルな男性二人である。そう認識するように、彼らは改竄を受けていた。不都合な部分は忘却し、都合の良いように感情や記憶を操作され、自然に振る舞っている。
それは、噛み合わないパズルのピースを無理矢理に力任せに押し込んで組み合わせることと似ていた。完成したパズルは、他人から見れば歪である。しかし、パズル自身に自分の姿が歪であると認識することはできるだろうか。パズルは、完成であると宣言されたとき、それが誤った組み合わせであっても、それが自身の完成形であると認める以外に選択肢はない。
パズルには思考する意思はおろか、主張するための言語さえ持たないのだから。
あっという間に、指の数は三本まで増えていた。相変わらず指を締め付ける括約筋の力は強かった。しかし、少しずつ慣らしていくことで、肛門は思ったよりも拡がるのだということを岩本は指先を挿入するうちに、実感し始めていた。
「まったく肛門ってやつはどうなってるんだ。人体の不思議だな」
「実際のところ、太いウンコを出せるわけですから、最低、その大きさと同じくらい拡がって当然という考え方もできるんじゃないですか?」
「おい、大倉。これからこの穴を使ってセックスしようっていうのに、ウンコとか言うなよ。まったくお前は品のないやつだな。俺のチンポが萎えたらどう責任を取るつもりなんだ?」
「へへ、すみません」
大倉はリラックスしている様子だった。それを見て、岩本は全てが順調に進んでいることに安堵した。同時に岩本は、その指先に吸い付いてくるような締め付けの強い穴のことを、徐々に男の肛門であると認識することが難しくなり始めていた。弄って拡がるほどに、まるで本物の性器であるかのように錯覚してしまうことに、抗えなくなってくる。
粘膜はふかふかした柔らかい手触りで、まるで最初からチンポを挿れるために作られているかのようだった。この柔らかい粘膜にチンポが包まれて、きゅっと締め付けられたならどんなに気持ちがいいだろう。そんなことを夢想しながら、岩本は夢中になって指を使い、拡張を続ける。
ふと唾が口内にたっぷり溜まっていることに気づき、岩本はそれをごくりと飲み込んだ。まさか、大倉の肛門を弄りながら生唾を溜めて飲み込むことになるとは、悪い冗談もいいところだ、と岩本は苦笑した。
岩本が丹念にほぐした甲斐があって、大倉の肛門はペニスを受け入れるための準備が充分に整っていった。
「そろそろ。チンポ、入りそうだな」
岩本は呟く。大倉は、特に何も答えなかった。
ローションのボトルを手に取って、岩本はその強い握力で、ボトルごと握りつぶすようにして、ローションを自らのペニスに垂らしていった。手のひらを使って、ペニスを軽く扱き、ねっとりとローションを馴染ませていく。出しすぎて余ったローションは大倉の肛門に擦り付け、その残りはタオルを使って拭った。
岩本は、自らのペニスを掴み、亀頭の先を大倉の肛門に軽く擦り付ける。
紛れもなく、これはセックスだ。部下である大倉と、セックスをしようとしている。
ほんの少し力を込めて押しつければ、ペニスは肛門の中に、大倉の直腸の中に入り、身体と身体が繋がる。なぜなら、そうすることがセックスだからだ。それは、もともとの目的通りだ。
しかし、岩本の心のどこかで、これは超えてはいけない一線なのではないかという漠然とした不安のような感情が、沸々と湧き上がり始める。それは、恐らく大倉も同じなのだろう。口数が少なくなっていること。また、少し身体を強張らせているようにも見えることから、大倉もこの行為に対して忌避感を覚えていることは確かだと岩本は思った。
このまま、大倉とセックスして本当に問題はないのか?
岩本は改めて考え始める。
セックスをするということは、つまり部下と肉体関係を結ぶということだ。
それは倫理的に過ちを侵すことにはならないか?
そう考え始めると、頭の中を葛藤が支配し始める。
何かがおかしい。
何かが間違っている。
何がおかしい。
どこからおかしい。
思考は、何かに阻まれているかのように堂々巡りをする。しかし、それでもあと少しで何かに気づくことができる。そんな手応えを岩本は感じていた。
しかし、それ以上の思考を、岩本は続けることはできなかった。
「岩本チーフ、大倉さん。二人のセックスを許可します」
安藤の声だった。いつでも安藤は正しい道を指し示してくれる。
「セックス許可、ありがとうございますッ!」
二人は野太い声を揃えて、叫ぶような声量で雄々しく答えた。
それは、反射的な発声だった。脊髄反射的に、そう答えることが身体の中に組み込まれ、もともと生まれた時からそうすることが当たり前であったかのように、安藤の言葉に対して、ごく自然にその返答を発声する。
このホームオフィスの中で、それはおかしいことではなく、正しいことだった。
腹の底から声を出して感謝の言葉を口にすると、そうするだけで不思議と頭の中を占めていた葛藤が消えていく。岩本は、思考が非常に明瞭でクリアに戻っていることに気づいた。
そうか。何かが足りないと思っていたが、それは安藤の許可だったのだ。無許可でセックスを始めようとしていたのだから、セックスに対して忌避感を覚えるのも当然のことだと岩本は思った。岩本は、合点がいったと言わんばかりに頷く。
改めて大倉を見ると、その印象も全く違って見える。
大倉は尻を突き出して、今か今かとペニスを待ち構えているのだ。
そうか、そんなに俺のチンポがほしいのか。それなら、挿れてやらねばならないだろう。男として、上司として、その威厳を見せつけてやるのだ。俺のチンポをしっかりと味わい尽くさせてやるのだ。それが一人の男として、大倉の上司としての責務であると岩本は確信した。
「よし、大倉。チンポ挿れるぞ。気合い入れろよ」
「うす。気合いは十分です!」
「大倉。気合入れるのはいいが、肛門に力を込めるなよ」
「すみません。ついホモセックスが楽しみで、気合いが入りすぎたようです」
その答えに岩本は、声を出して大きく笑った。楽しい気持ちが溢れて止まらない。こんなに心躍るセックスをするのは、何年振りだろうか。
心底、楽しそうに笑みを浮かべながら、岩本は勃起した亀頭を肛門に押し付けていった。想像よりもずっとキツい。指でほぐしたときと同じ要領で少しずつ力を込めては抜き、力を込めては抜きを繰り返していく。
まるで大倉にチンポを焦らされているようだと岩本は思った。
俺を焦らすとは偉くなったものだ。痺れをきらせて、岩本はペニスを押し込む圧力を一気に高めた。大倉は若干の苦痛の混じった声を上げた。大倉は男なのだから、多少の痛みは平気だろう。
ペニスはゆっくりと窮屈な肛門を抜けていく。岩本には、大倉の肛門が大きく口を開いたように見えた。大倉の肛門は、岩本の亀頭をまるで頬張るように飲み込んでいく。
「ウッ……」
気づけば岩本のペニスは、肛門に丸呑みされて大倉の直腸への侵入に成功していた。
「ああ、本当に俺のチンポは、男のケツの穴の中に入ったんだな」
すごいな、と岩本は無意識に言葉を漏らした。
「今更、何言ってんすか。ボス……」
大倉は、肩で息をしながら少し苦しそうな声色で言った。
「ああ、すまんすまん。それより大倉、ケツは大丈夫か?」
「全然、大丈夫じゃないですよ。結構、辛いっすね。ボスのチンポがデカすぎて」
大倉は、苦笑いしながら言った。
「褒め言葉として受け取っておくよ。俺も鬼じゃないんだ。慣れるまで、動かずにいてやるから安心しろ」
「それは、非常にありがたいです……」
岩本からは、大倉の背中しか見えなかったが、本気でありがたがっていることはよく伝わっていた。岩本も、自身のペニスにかなり強い圧迫感を覚えており、ちょうど括約筋が、今ペニスのどのあたりにあるのか、その締め付け具合ではっきりと分かるほどだ。大倉は、本当に苦しいのだろう。
時間はたっぷりあるのだ。大倉に、無理に辛い思いをさせることもない。
気長に。そして気楽に。男同士のホモセックスを楽しもうと岩本は思った。
岩本は、大倉の背中に触れる。大倉の背中は少し汗が滲んでいた。
アナルに亀頭を浅く挿入した状態を維持したままでは、流石に肩にまでは手が届かなかったが、肩甲骨辺りにまでならなんとか手が届くようだった。
岩本は、肩甲骨の下の部分から大倉の身体をゆっくりとマッサージし始めた。
別にそうすることで、ペニスがアナルに馴染みやすくなるなどと考えたわけではない。自分のペニスを必死に受け入れようとしている大倉を、少しでも労ってやりたいと思い、考えるよりも先に、自然と手が動いていたのだ。
あまり強い力をかけすぎないようにじっくり指圧して、強ばった大倉の筋肉の緊張をほぐしていく。
「ああ……そこ、すごく気持ちいいっす……」
「筋肉を強ばらせすぎだ。もっと気楽になっていいんだぞ。それとも、いい歳してセックスを前にして、緊張でもしたのか?」
岩本は笑った。
「俺はボスほど経験豊富じゃないですから」
「でも俺たちは男同士なんだぞ。そんな肩肘張って考える必要なんてないだろ」
「そうっすね。男同士なんだから少しは気が楽かな……んッ」
話しながら、岩本が少しだけペニスを奥へと進めると、大倉は敏感に反応を見せた。
「すまん。痛かったか?」
「いや、……大丈夫ですよ。俺も男ですから。もう、思い切ってやっちゃってください」
「よし、言ったな?」
岩本はニヤリと笑みを浮かべると、腰を押し込み始めた。
ペニスはめりめりと腸壁を押し拡げながら、大倉の直腸内を進んでいく。
逐次、岩本は大丈夫か、痛くはないかと大倉を気遣いながら、それを続けていった。
「あッ……」
岩本の身体と大倉の尻がぴったりと密着する。
ついに岩本のペニスが、大倉の腸内に完全に収まったのだ。
率直に、岩本はアナルにペニスを挿れるという行為に痺れていた。ペニスを包み込む温もり、締め付け、圧迫感。これは想像以上の心地良さだ、と岩本は感嘆のため息を漏らした。
「フーッ……、フーッ……」
一方で大倉は、深呼吸を繰り返し、なんとか身体を弛緩させようと試みていた。
岩本は、ペニスを奥まで挿入したことで、届くようになった肩に手を伸ばした。ちょうど岩本の張り出した筋肉質な胸板が、大倉の背中に密着するような体勢になった。むっとするような男の匂いが鼻につく。汗ばんだ肌と肌が触れ合う瞬間、痺れるような感覚。そして、お互いの身体の熱が直に伝わっていく。
心地が良い。岩本は素直にそう思った。
岩本は、強張っている大倉の肩を揉みほぐしてやった。
ペニスを押し込んでギリギリ手が届く場所に大倉の肩はあった。マッサージをするたびにわずかに腰が前後する。
「そこ。ちょっと気持ちいいっす……」
「ん? ここか?」
岩本は、大倉が心地よいと感じる指圧のポイントを探ろうと手を動かしていく。
「いや、その、そっちじゃなくて、ボスのチンポが当たってるところが……」
「俺のチンポが?」
「よくわかんないんすけど、その奥の方でチンポが擦れると……」
羞恥心のせいか言い淀みながらも、大倉は訥々と言葉を漏らした。
「気持ちいい感じがする、というか……」
その言葉に岩本は驚きと、ほんの少し何か奇妙な感情を覚えた。
それは、『愛おしい』という感情に非常によく似ていた。
……愛おしいだと?
おいおい、冗談じゃない。男同士なんだ。愛おしいもクソもないだろう。
そう思いながらも、岩本はその感情が広がっていくことを止めることができなかった。
岩本は、てっきり大倉が苦痛のみを感じて、身悶えているとばかり思っていた。だからチンポで感じているという、大倉の言葉が単純に嬉しかった。
そのことを考えていると、胸が少しずつ熱くなっていくのを感じる。
ペニスに流れる血流量がドクンと増えた。
まさか俺は興奮しているのか? 男同士のセックスだぞ。
しかも、普通のセックスじゃない。アナルセックスだ。
本気で俺は、興奮しているというのか? そんな馬鹿なことがあるか。
いや、しかし興奮していることは確かだ。
男同士のセックスだからこそ、興奮している。
男同士のアナルセックスだからこそ、興奮しているのだ。
そうだ、よく考えてみろ。女とのセックスなどクソ喰らえだ。
自分のチンポが、男臭い直腸の中に包まれていると思うだけで、充足した気持ちになるではないか。絶対に、素直にその感情を受け入れるべきだ。きっと、俺はいま、興奮のあまり、大倉の直腸の中に我慢汁をたっぷり分泌しているに違いない。
岩本はそう思った。
そこから先は、二人三脚だった。
腰をゆっくりと動かしながら大倉の感じるポイントを探っていく。男同士のセックスは双方、不慣れだった。痛みはないか、苦しくはないか。ぎこちなくも声を掛け合い、コミュニケーションを取りながら、大倉の湿潤した柔らかい腸内の粘膜に、岩本は夢中になってペニスを滑らせて擦り付けた。
徐々にその動きは、大倉を気遣う動きから、岩本自身の快感を深めようとする狡猾な雄の本能に従った動きが混ざり始め、ゆっくりとピストン運動に変わっていった。
気づけば、二人はまさしくセックスをしていた。
身体を繋げたまま、自然と対位を変えていき、大倉はうつ伏せの状態から仰向けになった。身体中が熱かった。新陳代謝の良い二人の男同士。それぞれの身体に汗が伝い、その体液は混ざって、どちらがどちらのものかさえも分からなくなっていく。
大倉の身体から立ち上る男臭い体臭に、岩本はむせかえりそうだった。おそらく自分も似たような匂いを発しているのだろうと岩本は思った。これはセックスの匂いだ。
岩本は、不思議とその匂いに対して不快感を抱かなかった。
むしろ興奮を感じていた。
そんな馬鹿なことがあるかと思った。しかし、大倉の体臭を嗅ぐことによって、興奮を覚えるということは確かだった。岩本は、ペニスを奥深く差し込んだまま、腕立て伏せをするように大倉の肉体に自らの肉体を折り重ねていった。近づくほどに大倉の匂いが濃くなる。近づくほどに匂いが強く感じられる部分。それは大倉の腕の付け根だった。
岩本は誘われるように大倉の腋に顔を埋めて、強く深呼吸をした。
スーッ。ハァーッ。
スーッ。ハァーッ。
独特の青臭い男の匂いに、岩本の脳が蕩けそうになった。
「なにやってんすか。ボス」
スーッ。ハァーッ。
スーッ。ハァーッ。
大倉の言葉を無視して夢中になって繰り返す。
岩本はセックスドラッグなど使った経験はなかったが、もしかするとこれはセックスドラッグに近い性質を持った匂いなのかもしれないと、ぼんやりと思った。
「ボス?」
再び、大倉から呼びかけられて、岩本は渋々顔を上げた。
「いいか。これは、お前が男臭さを維持しているかどうかのチェックだ」
単細胞の大倉はなるほど、などと言って納得していたが、今更チェックもクソもあるわけがない。嘘だ。嘘をついてでも、その匂いを一秒でも長く味わっていたいという動機によって、岩本は当然のように嘘をついたのだ。嘘をつくことに罪悪感はなかった。
岩本は自分でも気づかないうちに、じわじわと思考が侵食されていた。
本来ありえない組み合わせで脳細胞がシナプスが不可逆的に変質していく。
そして、本人の意思に全くそぐわない形で、男同士の身体を交わらせることの悦びに強制的に目覚めさせられていくのだ。巧妙かつ狡猾に仕組まれた毒に蝕まれ、変質していくその精神の変化に岩本自身は決して気づくことはない。
その変化は二人の巨漢たちへと、平等に与えられる『神』からの贈り物だった。
少し遅れて、大倉にも変質が起こり始める。じわじわと肉体と精神を蝕まれていく。
岩本が大倉の腋の匂いを堪能している最中に、ふと顔を上げると、大倉も岩本の腋に顔を埋めていた。そうかお前もか。お前も俺の体臭が気に入ったのか。
同じ興奮を共有するため、岩本は自らの腋を強く大倉の顔面に押し付けた。大倉も同じ気持ちだったのか、腋を岩本に強く押し付け返していた。
ペニスと腸壁。粘膜同士の擦れ合う感触を味わうように、ピストン運動はゆったりとしたテンポで続いていた。もう言葉を掛け合う必要はほとんどなかった。阿吽の呼吸でお互いの気持ちいいと感じる部位を、擦っては締め付け、擦っては締め付ける。それだけで意思疎通をしていた。二人は、文字通り息を合わせてセックスに没頭していた。
岩本と大倉は、自然と手を繋いでいた。
太い指同士を絡め合わせて、まるで愛し合う恋人同士のように。
そして、キスを繰り返した。
「俺、ボスのこと、本気で好きになってきたかもしれないっす」
「……馬鹿言うな。俺たちは男同士なんだぞ」
岩本は声を低くしてそう答えた。
しかし、正直に言って、岩本も満更ではない気持ちだった。
二人は、引き寄せられるように唇と唇を重ねた。
ねっとりと肉厚な舌を絡めて、唾液を啜り合う。譲り合うように、口内に溜めた自分の唾液を相手に注ぐ。決してがっつこうとはしない。唾液を嚥下するたびに、二人の喉仏が規則的に交互に動き合う。
「ボス。攻守交代」
大倉は、自分の身体の上に岩本の肩を掴む。
岩本は大倉の意図を察して、ゆっくりと転がるように仰向けに体勢を変えていく。大倉はガニ股になって、岩本の股間の上に腰を下ろした。騎乗位だ。
興奮なのか、気恥ずかしさなのか、どちらなのかは分からない。大倉は頬を紅潮させていた。そして、ゆっくりと腰を上下し始める。
大倉のしたいようにさせてやろう。
岩本はそう思い、身を委ねることにした。
「アッ……アッ……アッ……」
腰を上下するたびに、大倉は雌のように声を漏らした。弾みをつけながら、徐々に大倉は腰を上下させるスピードを加速させる。呼吸は荒く、身体が上下するたびに大倉の胸筋が揺れた。岩本は両手を頭の後ろに回し、寛いだ姿勢でその眺めを堪能していた。そして、ぎゅうぎゅうに肉の詰まった直腸にペニスを扱かれるという快楽を前に、思わず吐息を漏らさずにはいられなかった。
「フーッ!」
大倉は汗を飛び散らせながら、腰を動かし続けている。
すっかりペニスに馴染んだアナルをまさに性器のように使って、大倉は岩本を必死で喜ばせようとしている。その大倉の姿はどこまでもひたむきだった。それを見ていると段々、胸の熱が高まり、岩本の中に再び不可解な感情が昂り始める。
……愛おしい。
その言葉が頭をよぎった瞬間に、岩本は少し焦りながら大倉を制した。
「大倉。一旦、休憩だ。休憩しよう」
このままでは、まずいと思った。
このままでは本気で大倉のことを、愛してしまいそうになる。
岩本は、自分の中に芽生え始めた感情に動揺を隠しきれずにいた。
男同士。男同士なんだぞ。ましてや相手は大倉なのだ。そんなことはあってはならない。絶対にあってはならない。
「ンンッ! イッ、嫌ですッ!」
しかし、大倉は頷かなかった。
「俺、なんかもうおかしいんすよッ! チンポがッ! すんげえ気持ちよくてッ!」
半ば叫ぶように大倉は思いの丈を岩本にぶつける。
「スーッ!! ハーッ!!」
呼吸に合わせて括約筋の締め付けが強くなり、岩本は思わず、低く喉を鳴らした。
「ンッ! ンッ! もうお清めセックスとかどうでもいいですッ! ボスがッ! 好きだからッ! ボスにッ! ンアッ! 気持ちよくなってもらいたいんすよッ!!」
「うっ、やめろ大倉! お前、この野郎ッ! ホモみたいなこと言いやがってッ!」
「俺ッ! 俺、もうホモになってもいいッ!! ホモになってボスにッ! ボスにッ! 愛してもらいたいッ! 愛してますッ! アアッ! 愛してますッ、ボスッ!」
大倉はそう言いながら、岩本の手を握る。
反射的に岩本はその手を握り返していた。
男同士で太い指を絡めて手のひらを重ねる。
それだけで感電するようにお互いの感情が伝わった。
その感情とは、紛れもない愛だ。
二人の中の熱は、最高潮に高まろうとしていた。
「ンッ、ンッ、ボスの言った通りでしたッ! 男同士のセックスってこんなに気持ちいいんすねッ! んんーッ! ホモセックス最高ッ!」
「馬鹿野郎ッ! お前が気持ちいいのはッ! 俺のセックスが上手いからだッ!」
岩本は大倉の動きに合わせて腰を突き上げる。
「最高なのはホモセックスじゃなくてッ! 俺のッ! チンポだろうがッ!」
「すみませんッ! ボスッ! ボスのッ! チンポがッ! 最高ですッ!」
突き上げられるたびに大倉は、岩本の身体の上で身悶えしながら、激しくよがった。
「ボスのッ、チンポもう最高ッ! ああッ、俺ッ! もうホモになっちまうよッ!」
「だったらもうホモになっちまえよッ! 大倉ァッ!」
岩本は腹筋に力を入れると、そのまま身体を起こした。軽く大倉の身体を持ち上げながら、対面座位へと対位を変える。二人は向かい合ったままきつく抱きしめ合った。弾力のある厚い胸板同士がぶつかる。汗で滑る熱い身体を擦り合わせ、逞しい太い腕でお互いの肉体を拘束し合い、背中を分厚い手のひらががっしりと掴んで離さない。
大倉は脚を岩本の腰に絡ませる。そして、ペニスを深く深く、押し込むように体重をかけていった。他の誰にも離すものかと言わんばかりに岩本の巨根を独占すると、恍惚の表情を浮かべた。
「ああ……ボス、愛してます」
二人は見つめあったまま、軽く唇を重ねた。
岩本は、大倉の舌を吸いながら、ゆっくりと腰を動かした。
「すまん、……俺もホモになっちまったみたいだ」
そして囁くように告げる。
「……俺もお前のことを愛してる。大倉」
岩本がその言葉を口にして、唇を重ねた瞬間。
今までにないほど、大倉の肛門が強烈にペニスが締め付けてくるのを岩本は感じた。
大倉は小刻みに身体を震わせながら、白目を剥いていた。ドライオーガズムを味わいながら、大倉は口の端からは唾液を垂らしていた。岩本は、大倉のその唾液を愛おしげに舐め上げ、そして、大倉の痙攣が終わるのをただ静かに、愛おしげな眼差しで見つめながら待った。
その痙攣が止まった瞬間。
それは大倉のケツが、ケツマンコに生まれ変わった瞬間だった。
二人は、様々なやり方で、ケツマンコを味わい尽くした。
二人は、様々な対位で、アナルセックスを愉しみ尽くした。
お互いの肉体に触れながら、逞しい筋肉の感触を確かめながら、汗を舐め取り、その塩辛さに舌をひりつかせながら、口付けを交わしながら、手を繋ぎながら、愛の言葉を囁き合いながら。
岩本は、その逞しいペニスで大倉の気持ちいいとよがるポイントを念入りに掘り尽くしていった。完全に岩本のペニスの形にフィットする大倉の直腸は、元々岩本とセックスするためだけに生まれた器官だったのではないのかとすら思えてくる。ピストンの数だけ、二人の愛情は指数的に膨らんでいった。
腰を動かすたびに、男同士の愛が身体中に満ち溢れ、強い多幸感が二人の脳を支配していく。それは激しくも、愛のある穏やかで幸福なセックスだった。
「ああ……俺も、い、いくッ」
その言葉と同時に岩本自身の肛門がきゅっと締まり、アナルプラグが揺れる。
岩本は絶頂していた。
しかし、決して射精することはなかった。
許可されない限り、射精をすることはできない。
射精する代わりに、ドライオーガズムの波が岩本の脳を溶かす。
二人は次第に、絶頂のタイミングを合わせるようになっていった。巨漢二人が同時に身体中に筋肉を痙攣させ、恥ずかしい声を上げながら快感を共有する。最高の幸福が二人を包み、自分たちの愛を身体中の全て筋肉が、細胞が自分達を祝福しているように感じていた。岩本は、絶対的な幸福の前に屈服し、平伏した。
この時間が永遠に続けばいいと思った。
いや。
そう、思わされていた。
「岩本チーフ」
大倉との二人の世界に浸りきっていた岩本の肩に、手が置かれる。
安藤の声だった。
「そろそろ恋愛ごっこはおしまいにして、本来の目的を思い出しましょうか」
その言葉に、岩本は背筋をピンと伸ばして身体を震わせていた。
「あ……あ……」
無意識に声が漏れる。
脳を埋め尽くしていたはずの愛情は、潮が引くように綺麗さっぱり洗い流されていく。頭の中がどんどん明瞭になって、愛情の代わりに沸き起こる激しい情動。それは純粋な肉欲だった。
「よし、大倉ッ! 仕事だ! お清めセックスを再開するぞ!」
「ボス!? いきなり、どうしたんすかッ!」
固く握りあっていた手を離し、岩本は大倉の肩を掴むと無理矢理、うつ伏せに姿勢を戻させる。そして、バシンと大倉の尻を叩くと乱暴に腰を動かし始めた。
「あー、お前のケツマンコはその辺のオナホより気持ちいいな! 俺のチンポでどこに出しても恥ずかしくない立派なケツマンコに変えてやるからな。しっかり俺のチンポに染み付いたマンコ汁を吸いとってくれよ!」
急速に昂った感情は、岩本は完全にハイにさせていた。
そんな岩本の姿に戸惑う大倉の肩にも、安藤の手が置かれる。
耳元で言葉を囁かれると同時に、岩本と同様に大倉も身体中の筋肉を小刻みに震わせて、苦しみとも喜びともつかぬ声を漏らし、頭を抱えていた。そして、その震えが止まると大倉は満面の笑みを浮かべていた。
「もちろんです! ボスのマンコ汁を一滴残らず吸い尽くします! それが俺の仕事ですから! 俺をケツをもっとケツマンコにしてください! お願いします!」
「よく言った大倉! しっかり俺が気持ち良くなるように考えてケツを締め付けろ! お前の役目は俺を楽しませるマンコだ! 今からお前はマンコだ! いいな! 分かったら返事をしろ!」
「はい! イエスサー! 俺はマンコです!」
岩本は、締め付けの強いこの『マンコ』を使って、少しでも多くの快感を得ようと腰を振った。マンコからは、呻き声や喘ぎ声が聞こえてきたが、そんなものはもう耳に入らなかった。なぜなら最高にチンポが気持ちいいからだ。
自分のチンポから、染み付いたマンコ汁が吸い出されていくのが、岩本には分かった。これがお清めセックスなのだ。チンポが清められるほどに快感は強く、高まっていくように岩本は感じた。
まるで見えないもう一枚の透明な包皮が、チンポからずるりと剥けていくような感覚。岩本の成熟した大人のチンポは、まるで童貞の頃まで退行したかのように、その感度は飛躍的に高まっていた。
一皮剥けたチンポから込み上げてくるのは、射精への欲求だった。
射精。
頭の中にそれが浮かんだ瞬間にはもう、岩本は欲求を制御することができなくなった。
「射精ッ! 射精ッ! 射精ッ!!」
射精がしたい。
マンコの一番奥で、気持ちよく精子をぶっ放したい。
孕ませたい。孕ませたい。孕ませたい!
雄としての本能が、岩本の身体を突き動かす。
しかし、射精はできない。
代わりに肛門が締まり、アナルプラグが前立腺を刺激した。
蕩けるようなドライオーガズムが岩本の身体を包み込む。
気持ちがいい。
しかし、違う。
違うッ! 違うッ! これじゃないッ!
「チンポッ! 射精! チンポォッ!」
精液が尿道を駆け上っていく感覚が恋しかった。
この瞬間の射精のためなら、何を引き換えにしても構わないとすら思う。
脳の奥の原初的な本能が、岩本を支配している。
どうすれば射精できるのか。その思考が、快感に溶かされ、愚鈍になった脳の中を駆け巡り続けている。
その答えは、天啓のように岩本の頭に浮かび上がった。
岩本は大きく目を見開きながら叫ぶ。
「俺の射精を許可してくださいッ!! 安藤サマァッ!!」
訪れたのは一瞬の沈黙。
しかし、次の瞬間。汗まみれの背中に手が触れるのを岩本は感じた。
「岩本チーフ。射精を許可します」
その言葉を耳にした瞬間に、岩本は激しく身体をのけぞらせながら雄叫びを上げた。
「ウオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォッ」
今まで沈黙を守り続けていた男性器は、無理矢理、その機能を堰き止められていたストレスを発散させるように、蓄えたエネルギーを一気に解放していった。
脳内麻薬が爆発的に分泌され、男性ホルモンが身体中を駆け巡る。雄叫びを上げながら岩本は、無意識に両腕を曲げてその逞しい筋肉を誇示していた。
自分が、雌ではなく雄であることを主張するように、全身の筋肉を最大限に浮かび上がらせる。
ドドドドド。まるで電動工具のように、岩本は腰を痙攣させた。そして、心から待ち望んでいた感覚が訪れる。岩本はこれ以上ないほど腰をマンコに押し付け、白目を剥き痙攣していた。
精管を通り、尿道を駆け上がってくる大量の精液。それは、勢いよく大倉の直腸奥深くに、ドバドバと大量に放出されていく。
あまりの快感の強さに気が狂いそうになりながら、岩本は叫んだ。
「射精許可、ありがとうございますッ!! 安藤サマッ!!」
岩本は、二度三度と続く射精の最中、その言葉を何度も何度も、喉が枯れるまでその感謝の言葉を叫び続けた。焼印を入れるように、その言葉が脳に焼き付けられるまで、ずっと叫び続けた。
自らを支配する人間への、心からの感謝の言葉を。
ずるり、と精液に塗れたペニスが肛門から抜け落ちる。
岩本と大倉は、折り重なるように倒れた。筋肉でできた汗臭い肉塊が二つ。
体力を使い果たしたかのように見える肉体二つ。
しかし、安藤の言葉一つで、その身体は休むことなく動き続けることができる。
二人は身体を起こし、仰向けになって並んで寝そべった。
汗だくの肉体。二人とも胸を激しく上下させながら、呼吸をしている。心拍数が上がっている。
大倉は、岩本が射精すると同時に、射精していた。そうなるように、あらかじめ命令してあったからだ。コンドームの中には、透明なカウパー腺液と白濁した精液が混ざり切らず分離した状態でたっぷり溜まっていた。
「岩本チーフ。コンドームに溜まった大倉さんの精液を飲んでください。それがお清めセックス、仕上げです」
岩本は、安藤に命じられるまま、コンドームの中の大倉の体液を躊躇なく煽った。
唇を舌で舐め、それだけでは飽きたらずコンドームの中に舌を伸ばすと一滴残らず吸い尽くした。
岩本の喉仏が動き、しっかり嚥下していることを確認すると、安藤は満足げに頷く。
「ハーッ、ハーッ、なんでこんなに、精液が美味いんだ……」
「それは、岩本チーフのチンポから、女たちのマンコ汁が抜けた証拠ですよ。マンコ汁が抜けると、男の精液がたまらなく美味しく感じるようになるんです。その様子だと、お清めセックスは大成功だったようですね」
「ハーッ、ハーッ、そういうことか」
「では、チーフ、お清めセックス、最後の仕上げをしていきましょう。大倉さんの包茎チンポの包皮をその唇で剥いてあげてください。もちろん手を使うのは、マナー違反ですよ。そして、たっぷり溜まったチンカスを余すことなく舐め取りましょう。凝縮された男のエキスが、チーフのことを体内から清めてくれます。もちろんお清めセックスは成功していますから、大倉さんのチンカスは、精液の何倍も美味しく感じられますよ。何しろ、皮に包まれて濃縮されていますから、当然ですよね」
そういって、安藤は岩本に、大倉のチンポをしゃぶるように命じた。
指示通り唇を使って、大倉のペニスの包皮を剥くと、強い臭気とともにチンカスが溜まった亀頭が姿を表す。
安藤は、汗まみれの岩本の頭に掴むと、大倉のチンポにそっと押しつけ、最後の一押しを与えてやった。
岩本は一切躊躇することなく、チンカスにまみれた亀頭を丸ごと頬張った。美味い。唾液が大量に分泌される。岩本は大倉の尿道に残っている精液を吸い出すことも忘れなかった。舌を使って丹念に滓を舐め取り、溶かして飲み込んでいく。惜しむように、味わうように、ゆっくりゆっくりと。飲み込むたびに喉仏が上下する。
「大倉さん、射精を許可します」
「射精許可ありがとうございますッ!!」
完全に脱力していたはずの大倉は、腹の底から声を張り上げた。その大倉の声とともに、大倉のペニスはドクドクと脈打ち、岩本の口内を濃厚な精液が満たしていった。
ああ、最高だ。
「さあ、その美味しい精液を大倉さんとも分かち合いましょう。大倉さんは、お清めセックスに協力してくれた功労者ですから、上司としてしっかりと労ってやらないといけませんね」
安藤の言葉を聞いて、この最高の味を分かち合いたいという気持ちが、岩本の中でむくむくと湧き上がってくる。
精液を口に含んだまま岩本は、脱力しきっている大倉の身体に覆い被さると、その身体を抱きしめながら、唇を重ねた。くちゅくちゅとチンカスの混ざった精液を分け合いながら、舌を絡め合う。
お互いの唾液と精液が混ぜ合いそれを飲み込んだ瞬間、二人は身体を痙攣させていた。ドライオーガズムだ。オーガズムによってもたらされた多幸感は、二人の疲弊した身体を癒していくようだった。
重なり合った二人のペニスは、再び固く勃起していた。二人は小刻みにペニスを擦り付け合いながら、唇を重ね続ける。
むせかえるような臭気が、オフィスを満たしていた。
延々と続く終わりの見えないドライオーガズムに身を委ねながら、二人の巨漢は筋肉質な肉体を震わせ、白目を剥きながら、その喜びを分かち合い続けていた。汗と、精液と、恥垢と、男らしい体臭を、その逞しい肉体から無尽蔵に分泌させながら。