ホームオフィス(Overtime) Part 1 《10,000字程度》 (Pixiv Fanbox)
Content
10.
夕暮れ時。
リュックサックを背負った悠斗は、家の中から姿を見せた父親を見つけると抱きしめようと近づいた。
「まだ車に乗ってなかったのか! 何をグズグズしてるんだお前は!」
「お父さん……?」
思わぬ父の怒りを前に、悠斗は顔面を蒼白にして、大倉の車の助手席に逃げるように乗り込んだ。
「では、悠斗くんは責任を持って、おばあちゃん様のもとへ送り届けますんで」
岩倉は、車の前で敬礼のポーズをとって笑った。
「すまんな岩倉」
「いえ、これも俺の仕事のうちですから」
「ああ、頼む」
運転席に乗り込んだ岩倉は、悠斗にシートベルトをつけるように促す。
車が静かに遠ざかっていくのを岩本は、ただ無表情で眺めていた。
「チーフ、言い過ぎじゃないですか?」
「あの年頃のクソガキには、あれくらい強く言わんと通じん。安藤も子供と暮らせば嫌でも分かるさ」
岩本は吐き捨てるように言った。
「クソガキって、そんな言い方しなくてもいいじゃないですか。だって、悠斗くんはチーフの息子さんなんですよ?」
「俺の子じゃない。アレは、あの女の子供だ」
目にするだけで胸がムカついてくる。
妻の不貞の末の子供。そんな子供と、同じ空気を吸っていることすら耐え難い。
岩本はそう思った。
「それにしても」
安藤と岩本は、玄関で靴を脱ぎながら話していた。
「やっと二人きりになれましたね、チーフ」
「ああ」
岩本は、安藤の肩に手を置き、そして抱きしめた。
安藤への愛情が胸の中に溢れてくる。愛おしくてたまらない。
これが真実の愛なのだと、岩本は確信していた。
「もう仕事の時間は終わりだ」
「いいえ、チーフ」
安藤は、唇を歪めるようにして笑った。
「ここから先は、残業の時間ですよ」
11.
暗い夜の中から現れた客人は、玄関の灯りに照らされていた。
「ご来店、誠にありがとうございます」
一軒家の玄関口で、厳つい髭面が客人を出迎える。
「変態おちんぽハウス『イワモト』へようこそ」
そう言って岩本は、客人を手早く家の中へと招き入れる。
誰かに岩本の姿を見られでもしたら大変だ。
なぜなら岩本は全裸なのだから。そう、洋服を何も身につけていないのだ。
いや、金色のTバックだけは身につけていた。しかし、それ以外は何も着用していないのだから、全裸と言っても過言ではない姿といえるだろう。
「当店のチーフを務めております、岩本です」
満面の笑みを浮かべながら岩本は、頭を下げた。
そして、堂々と胸を張り、直立する。
衣服を着ていないほうが逞しく鍛え上げた筋肉は映える。筋骨隆々の男性というものは、逆に衣服を着ていないほうが引き締まって見えるものだ。岩本は、自分の筋肉質な肉体にも絶対的な自信を持っていた。
だから、全裸。いや、Tバック姿でいることに対して、岩本は何一つ、恥ずかしがる必要はないと確信することができた。それにむしろ、この姿は"変態おちんぽハウス『イワモト』"では、岩本の正装以外の何物でもなかった。だからこそ、岩本は全裸であろうと、平気で胸を張って笑みを浮かべていられるのである。
「少々、失礼します」
笑みを浮かべていた髭面が急に引き締まったかと思うと、岩本は両腕を曲げて力瘤を作った。腕だけではない。身体中に力を込めて、その逞しい筋肉を強調して見せる。筋肉が見られている。それを意識するだけで、自然と岩本のペニスは鎌首をもたげてくる。
「ご覧の通り、私は筋肉奴隷でございます。私のことは、ぜひ変態筋肉マッチョマン岩本とお呼びください」
筋肉を強調しながら、股間を勃起させた巨体の持ち主は、ふんと鼻息を荒くしたかと思うと、無理矢理に不自然な笑みを浮かべた。
本人は爽やかに微笑んでいるつもりなのかもしれないが、歪んだ口元は歯を食いしばって、何らかの恥辱や屈辱に耐えているようにしか見えない。そうとしか見えないのだが、それは単純に岩本の表情作りが不得手であるということが原因だった。
そう。残念なことに岩本は、誰かに脅されて、こんな醜態を晒すことを強要されているわけはない。彼は、"変態おちんぽハウス『イワモト』"への来客を純粋に喜び、心から歓迎するが故に自らの意思で行動しているに過ぎない。
だから、この滑稽な変態筋肉マッチョマンに対して、憐れみの目を向ける必要もない。本人も憐れみよりも賞賛されることを求めているのだから、素直にその肉体美を褒め称えてやること。それこそが、岩本を最も喜ばせることなのだ。
靴を脱ぎ、来客用のスリッパに履き替えた客人は、岩本の力瘤を無遠慮に撫で回した。
「流石の筋肉ですね、岩本チーフ。……いや、今は変態筋肉マッチョマン岩本って呼んだほうがいいのかな?」
「お褒めいただきありがとうございます、安藤さま。この変態筋肉マッチョマン岩本のことは、お好きなようにお呼びください。筋肉奴隷でも下僕でも、どんな呼び方でも構いません」
「やだなあ。そんな堅苦しい言葉遣い、やめてくださいよ。だって僕は、チーフの部下なんですよ? いつも通りに話してくれても良いんですよ?」
「安藤さまは、この岩本の部下とはいえ、来店いただいたお客さまに違いありません。大切なお客さまである安藤さまに、馴れ馴れしく話すなど、筋肉奴隷として恥ずべき行為。寛大なお言葉をいただき、非常にありがたいのですがそういった対応は原則、お断りさせていただくのが当店の規則となっております」
そうきっぱりと言い切った岩本は、少し間を開けた後、わざとらしく咳払いをした。そして、小声で囁く。
「……もしお客さまである安藤が、"どうしても"というのなら、その、接客態度を改めることもできないわけじゃないんだ。あくまでも原則だからな。だから、もし俺に対して本当にいつも通りに接してほしいと思っているのなら、その、遠慮なく、もっと強く申し付けてもらっていいから、な。俺も、その、安藤に対して、接客するのは正直なところ、少し面はゆいんだ。いや、俺がどう思っているかは気にしなくて構わないんだが……」
岩本は、頬をかきながら言った。煮え切らない態度だった。
客である安藤への接客態度は、あくまでも岩本は規則に従っているだけなのだ。
しかし、この店では、お客さまの望みが最も優先される。だから、安藤本人が強く望めば、規則よりも安藤の望みが優先される。
つまりは、岩本は暗に『規則に従う必要はない』と、安藤に望んでほしいと言っているのだ。
「そうですね。チーフにお客さま扱いされるなんて、僕も気を遣っちゃうからなあ」
安藤は微笑む。
「だけど、規則なら仕方ないですよね。チーフには、変態筋肉マッチョマン岩本として、しっかり僕をもてなしてください。しいていうならば、それが僕の望みです。あれ、もしかして、僕をお客さま扱いするのは抵抗ありますかあ?」
「とんでもございません!」
岩本は慌てて否定する。
「ですよね! だって、規則は守らないと」
岩本の気持ちを踏み躙るように、安藤は笑った。
そして、岩本の顎髭を、まるでモノを扱うように撫でた。
「……はい。当店の規則に対してご理解いただき、ありがとうございます」
礼を言いながらも、岩本は肩を少し落としていた。
堅苦しい言葉遣いをやめてほしいと言った安藤の言葉は社交辞令に過ぎなかったのだろう。安藤は、はっきりと自分がお客さまであり、筋肉奴隷にもてなされる権利があると認識していて、それを行使したくてうずうずしている。安藤が、上司である自分のことを辱めたいと思っているであろうことは、流石に岩本にも透けて感じられていた。
しかし、普段、上司として振る舞っている男を、下僕のように扱いたいという願望は、上司に対して不満がなければ生まれないのではないだろうか。
岩本は安藤とは普段から、上司と部下として良好な関係を築けている思っていた。それにもかかわらず、安藤が上司である自分を、筋肉奴隷として辱めたいという願望を持っているのはどうしてだろう。
もしかすると安藤は顔に出さないだけで、上司である自分に対して鬱屈した感情を普段から秘めていたというのだろうか。
岩本は、自分が安藤に対して、どう接していたのか、何かまずい言動をしていなかったを思い返そうと一瞬、考え込んだ。
「あれれ。変態筋肉マッチョマン岩本。どうした? 笑顔、曇っちゃったね?」
安藤の煽るような言葉を受けて、慌てて岩本は思考を止めて、満面の笑みを浮かべた。
「とんでもございません。変態筋肉マッチョマン岩本はいつでも笑顔! 心から喜んで、お客さまの筋肉奴隷として、お客さまのためだけに鍛えたこの肉体で、どんなご要望にもお答えします!」
岩本はポーズを変えて、再び筋肉を強調する。
いわゆるボディビルでいうところのモストマスキュラー。強く歯を食いしばりながら、肩、僧帽筋、そして腕の太さを強調する。安藤はその強調された筋肉を撫でたり、叩いたり、鷲掴みしたりしながら、楽しんでいる。これではまるで大の大人が手慰みのための玩具だ。
安藤が上司である自分をどう思っているのはこの際、関係がないと岩本は思った。なぜなら、今の自分は、安藤の上司ではない。今の自分は、筋肉奴隷であり、変態筋肉マッチョマン岩本なのだから、その役割を全うするまでだ。
そう気持ちを切り替えることに決めた。
岩本の気持ちは驚くほどあっさりと切りかわった。
まるでスイッチをオンオフするように。
「それでは、気を取り直して、接客サービスを開始する前に、改めてこの変態マッチョの岩本のことを、安藤さまが希望する筋肉奴隷の条件と合致していることを改めて確認、検品していただきたいと思います。もし、問題や不明点がありましたら、都度、遠慮なくお申し付けください」
「はい、分かりました」
安藤は素直に頷いた。
「安藤さまのご提示の条件ですが、まず筋肉質であること。改めて確認していただくまでもないと思いますが、この通り、岩本は筋肉質な肉体をしている変態マッチョマンなので、条件に合致すると思います。客観的な指標としては、直近3ヶ月以内にボディービルの大会に出場経験がございます。力仕事はもちろん、しっかりと筋肥大させてありますので触り心地の良い玩具としてご利用いただいてもよろしいですし、椅子やテーブルなど家具としてお使いいただくことも可能です。早速ですが、よろしければ、安藤さまの身体をリビングまでお運びしてよろしいでしょうか。玄関で立ち話を安藤さまに続けさせてしまうのは心苦しいので、ぜひこの岩本の筋力をお使いください」
「それは助かります。お姫さま抱っこでお願いできますか? お姫さま抱っこって分かりますか? こう、両腕で身体を抱えるような。そういうのに憧れがあるんですけど」
「はい、もちろん心得ております。失礼します」
岩本は髭面をにこやかに歪めて頷くと、安藤の背中と尻に手を回し、その身体を軽々と抱えた。
成人男性一人分の重量は、岩本にとっても決して軽くはなかった。しかし、お客さまの役に立っている。お客さまのために自らの筋肉を酷使している。その事実が、岩本の身体全体をじっとりとした多幸感と興奮で包み込む。
「勃起、失礼します」
粗相のないように一言断ってから、岩本は礼儀正しく、自らの男性器を勃起させる。Tバックの布地面積では覆い切れない性器は、バネ仕掛けのようにひとりでに飛び出した。これでより筋肉奴隷らしい格好になった。欲を言えば、ここに迸るように滴る我慢汁が加われば、どこに出しても恥ずかしくない変態マッチョマンと言えるだろう。
岩本はそう思った。
「不快な点などございませんか? 汗臭さや体臭などに問題ありませんか?」
抱かれるということは、当然、肌と肌が触れ合う距離に身体が近づくことになる。ましてや、岩本は全裸も同然である。成人した男性の体臭というものは得てして強いものだ。全裸の男性に抱き抱えられれば、その匂いは否が応でも鼻腔をくすぐるだろう。
「ボディーソープの匂いと汗の匂いが混ざった良い匂いがしますね」
「はい。この身体は、お客さまである安藤さまのものですので、しっかり洗浄しておきました。汗の匂いは、洗浄後に分泌された私の体臭である可能性が高いと思います」
「ふーん。そっか、洗っちゃったんだ。僕は汗臭いほうが好きなんだけどなあ」
「それは誠に失礼いたしました」
安藤の言葉を聞いて、岩本は少し慌てたように謝った。
「次回ご来店いただく際には、しっかりと汗臭い筋肉奴隷として出迎えさせていただきます。提案ですが、この家にはトレーニングマシンなど完備しておりますので、お好みのトレーニングとお好みの負荷をお申し付けいただければ、安藤さまに満足いただける汗だくになるまで、この変態筋肉マッチョマンは喜んで筋肉に負荷を与え続けます。ご希望であればぜひお申し付けください」
「じゃあ、筋トレでマッチョマンらしくたっぷり汗をかいて、マッチョマンらしく汗だくのまま眠って、マッチョマンらしく汗臭く朝目覚めてほしいなあ……って僕がお願いしたら聞いてくれますか?」
「もちろんです。ぜひともこの変態筋肉マッチョマン岩本と一緒に、汗臭い朝を迎えましょう!」
岩本は爽やかに笑った。営業スマイルは完璧だった。
薄暗い廊下を通り、リビングに入る。
リビングの中にあるソファに、壊れ物を扱うように岩本は、安藤をゆっくりと座らせた。安藤は非常にくつろいでいることがよくわかる姿勢で、ソファの背もたれに身体を沈めた。もちろん岩本は立ったままだ。
なお、勃ったままでもある。
岩本は、両手を後ろに回して、胸を張りながら姿勢良く直立した。
「引き続き、この変態筋肉マッチョマン岩本が、安藤さまのご要望を満たしているか確認をさせていただきます」
「よろしくお願いします」
「では、まずはこちら、岩本の勃起した男性器をご確認ください」
岩本は、安藤の眼前に勃起した自らのペニスを突き出した。
「安藤さまのご要望通り、この男性器は、一般的に『巨根』と言われるレベルの大きさだと自負しております。包皮も完全に剥けており、歳相応のしっかりと成熟したペニスであるということがご確認いただけると思います」
「触って確かめてもいいですか?」
「もちろんです。筋肉奴隷の男性器は、お客さまである安藤さまの所有物ですので、触っていただいても、扱いていただいても、なんなら叩いていただいても構いません。ご自由にご確認ください」
安藤は、岩本の竿を握った。
「太いなあ」
ゆっくりと扱き始める。
「握り心地がいいですね。女性にも好評だったんじゃない?」
「はい。若い頃には、この男性器で沢山の女性器を悦ばせてきました」
「それじゃあ、このチンポにはたっぷりマンコ汁が染み込んでるんじゃないですか?」
「いえ! 安藤さまのご要望通り、しっかり清めておりますので、女性の残り香は一切残っておりません。私自身、数ヶ月にわたって女性との接触を絶っておりますので、男性としての純度が非常に高い状態に仕上げてあります」
「いいね。だけど、オナニーするときは女性のことを考えるんじゃないの?」
「いえ! 安藤さまのご要望通り、オナニーする際にはチンポのことだけを考えております。そもそも私は女性アレルギーですので、女性のことを考えてオナニーをするなどありえません。ご安心ください」
「それなら安心ですね。だって女の臭いがぷんぷんしている筋肉奴隷なんて、筋肉奴隷としてどう考えても失格でしょ? 全身が、蒸せ返るくらいに、雄臭くなくちゃダメですよね?」
「おっしゃる通りです。筋肉奴隷は、究極的に純粋な男でなければなりません」
そう言いながら、岩本は息をするようにポージングをして筋肉を強ばらせた。
ダブルバイセップス。上腕二頭筋を隆起させ、その男らしい身体付きをアピールしながら岩本は笑みを浮かべる。
筋肉奴隷として、お客さまを筋肉で楽しませることは義務だ。
息をするようにポージングできて当然。筋肉奴隷として基本中の基本だ。いや、筋肉奴隷とは、そういう習性をもった生き物でなければならないのだ。筋肉奴隷は、意識せずとも自然にお客さまを筋肉で楽しませる生き物でなければならないのだ。
「陰嚢もご覧ください。精巣もよく発達しており、高い男性機能を有していて、逐一、濃い精液を生産することができます。また、提携病院の検査で、精液には正常な量の精子を有することが検査によって、保証されておりますので、ご要望通り子種の詰まった精液を思う存分、無駄打ち可能です」
安藤は、岩本の説明を聞きながらペニスの根元からぶら下がった重量感のある袋の中身を弄んだ。
「これが男らしさの源ですね」
「はい。筋肉奴隷を筋肉奴隷たらしめる機能がぎっしりつまった器官です」
「この中に詰まってる精液で子供作ったんだ?」
「いいえ。筋肉奴隷の精液は、生殖のためではなく、あくまでもお客さまを楽しませるための嗜好品として存在しています。しかしながら、安藤さまがご希望された通り、私は父親です。そのため、安藤さまがお望みになられるレベルの父性を、私は十分に兼ね備えていると自負しています。お望みとあらば、本来、父親として、男として自分の子供に与えるはずだった愛情を、安藤さまのためだけに捧げさせていただきます」
「あーあ。岩本さん、そんなこと言ったら悠斗くんが可哀想ですよ」
「いいえ。変態筋肉マッチョマンであり、筋肉奴隷の岩本は、悠斗の父親である前に、お客さまである安藤さまの父親です。私の愛情は、優先的にお客さまである安藤さまに享受していただくことが、岩本の最大の喜びであり、当然の義務です。」
「本人がそこまでいうなら仕方ないかあ」
「はい。気になさらずに、どんなことでもお申し付けください」
そう言って笑う岩本に向かって、安藤はソファの隣を叩いてみせた。
「隣に座ってよ」
「はい」
岩本は従順に言われるがまま、安藤の隣に座る。
大股を開いた男らしい座り方だ。
安藤は、そんな岩本の身体にしなだれかかり、血管の浮いた逞しい腕に腕を絡め、肩を寄せる。
「正直に言うと、岩本さんみたいなお父さんが欲しかったんだ。男らしくて、かっこよくて、逞しくて。ずっと憧れてた。もちろん本当のお父さんになってもらうなんて無理な話だから、きっと恋人みたいな親密な関係になりたかったんだと思う。岩本さんにとっての特別な存在になりたかったんだ。だけど、岩本さんはノンケだし、僕のことを部下として以上の目で見てくれようとはしなかった。それどころか、結婚までして僕は本当にショックで傷ついたんだ」
岩本は、安藤の言葉を聞いてハッとした。安藤が上司である自分を筋肉奴隷として辱めたいと思っているのは、きっとそれが原因なのだ。もしそうなのだとしたら、全ては女にうつつを抜かすなど馬鹿げたことをしてしまった自分が完全に悪い。岩本は、安藤に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「……安藤、お前のことを傷つけてしまって、お前の気持ちに気づかなくてすまなかった」
「謝らなくていいですよ。だって、岩本さんは筋肉奴隷になったんでしょう? 僕のことを誰よりも愛してくれていて、お父さんみたいに愛してくれるし、もう岩本さんにとって僕は、誰よりも特別な存在になることができたんだから。そうでしょ?」
「ああ、俺は、安藤のことを誰よりも愛している。上司として、恋人として、家族として、父親として」
「……お父さん」
安藤がそう呟くと、岩本は安藤の頭を優しく撫でた。幼い子供に接する父親のように。自然と愛しい気持ちが湧き上がってくる。仕事中だというのに、何を考えているのだ。プロとして筋肉奴隷に徹しなければ、と考えながらも、胸を満たす安藤への深い愛情に岩本は抗えなくなってきていた。
「岩本さんは、もう僕のお父さんになったんだから、僕はもう敬語なんて使わなくていいよね」
「ああ、もちろんだ」
そう答えて、岩本は微笑んだ。
しかし、安藤は岩本の陰嚢を強く握って痛みを与える。
「うッ」
「だけど、お父さんは、僕の筋肉奴隷なんだから、僕には敬語を使わないといけないよね?」
「失礼しました。その通りですッ」
安藤は、手のひらの力を抜くと、岩本は股間を手で抑えながら肩で息をしていた。筋肉奴隷としての礼を失したのだから、与えられて当然の制裁だ。岩本は目が覚める思いだった。仕事中に公私混同するような真似をするとは自分らしくない。しっかり、筋肉奴隷としてお客さまをもてなさなければ。
「ごめんね、お父さん。僕だって、痛くするつもりはなかったんだよ」
「大丈夫です。お好みならもっと痛くしていただいても構いません。私は、安藤さまの筋肉奴隷ですから」
岩本は、股間から脳に伝わる鈍痛が、落ち着くと変態マッチョマンらしい爽やかな笑みを浮かべた。
「お父さん。お父さんは筋肉奴隷だから、どんなお願いでも聞いてくれるんだよね」
「はい、もちろんです」
「じゃあ、キスをして」
「承知しました」
岩本は、安藤の唇に唇をちゅっと重ねて、頭を撫でた。
「違う」
安藤は、不機嫌そうに言った。
「それは父親が子供にするキスでしょ。愛し合う恋人がするみたいな、ねっとり濃厚なキスをしてほしいに決まってるでしょ。そんなことも分からないの?」
「大変、失礼しました」
岩本は安藤の頭を腕で抱くと、身体を引き寄せて唇を重ねた。歯列を割って舌をもぐりこませ、絡め合わせる。自然と呼吸が荒くなり、胸板が膨らむ。安藤は、手探りで岩本のペニスを探り、握りしめる。勃起したペニスは、舌の動きに合わせて、ヒクヒクと反応を示した。同じように、岩本も安藤の股間に手を伸ばす。スラックス越しに感じる硬い肉茎に手のひらを当てて、その形に沿ってぐりぐりと刺激する。
男同士でキスをしながら、男同士でペニスを弄り合う。
なんという至高のひとときだろう。
安藤が唇を離すと、岩本と目が合う。
普段の岩本と何一つ変わらない髭面。精悍な顔つき。
しかし、その唇は唾液で照っている。
「さすが若い頃はプレイボーイだっただけあってキスが上手だね」
「ありがとうございます。もちろんこれからは筋肉奴隷として、この唇も唾液も、安藤さまにだけ捧げます」
「いいね、それ」
安藤は、自分の唇に舌を這わせ、残った唾液を舐め取った。
「だけど、岩本さんが筋肉奴隷としてしっかり仕上がってるようで、安心したよ。だからさ、もう検品は合格ってことでいいよ」
「ありがとうございます!」
岩本はソファから立ち上がり、再び直立して背筋を伸ばした。
「では改めまして、変態筋肉マッチョマン岩本。誠心誠意、筋肉奴隷として、安藤さまに尽くさせていただきます! どうぞよろしくお願いします!」
まるで選手宣誓のように胸を張る岩本。
安藤は、それを鼻で笑いながら拍手を贈った。
「それでは、ご来店ウェルカムサービスということで、おちんぽのお掃除サービスを初めさせていただこうと思うのですが、よろしいですか?」
「うん。よろしくお父さん。ちょうど勃起してるから掃除しやすいでしょ。掃除の邪魔になるから、僕の服は自由に脱がせていいよ」
「お気遣い、ありがとうございます」
岩本はソファの下のカーペットに跪き、正座した。丁寧に安藤のベルトを外し、スラックスを脱がせる。一日の間で蒸れた股間の匂いが鼻腔をくすぐる。岩本は、ボクサーブリーフにも手をかけて、それも脱がせる。匂いがより強くなる。
岩本は、安藤のペニスに手を伸ばそうとする。
「おちんぽをお掃除するときは、手を使わないのが常識だからね。お父さん」
安藤の言葉を受けて、岩本は両手を背中に回した。顔面を直接、股間に近づける。黒々と茂っている陰毛。その先には勃起した男性器。
亀頭には、二割ほど皮が被っていた。仮性包茎だ。
岩本は、キスをするように安藤の亀頭に唇を寄せる。芳しい香りに対して、反射的に唾液が分泌される。
『筋肉奴隷はおチンポが大好物』
『筋肉奴隷はおチンポをしゃぶることが涎が出るほど大好き』
岩本の頭の中でそんな言葉が、反復して響いている。
亀頭に唾液で湿った舌をそっと這わせると、まず塩気を感じる。舌を亀頭に滑らせていく。粘膜同士が擦れ合う。ザラザラの舌は、ブラシのように亀頭を磨き上げていく。時折、唾液で溶けた恥垢の奥深い風味を岩本は感じる。
恥垢。いわゆるチンカス。筋肉奴隷は、チンカスが大好物なのだ。
岩本はご褒美と言わんばかりに、自らその恥垢の味が濃い部分を舌で念入りに擦っていった。
亀頭をわずかに覆っている包皮。包皮と亀頭の隙間に、岩本は舌を差し込んだ。頭が痺れるような濃厚な風味に、頭の中で『チンポ』『チンカス』『美味い』『大好物』そんな言葉が溢れ出し、思考を埋め尽くしていく。岩本は鼻息を荒くしながら、夢中になって亀頭と包皮の隙間を器用に舐めていく。そして、辛抱ならんと言わんばかりに、安藤の亀頭を頬張って唇で包むとそのまま包皮を押し下げるように密着させながら、亀頭全体を咥え込んだ。すかさず、口内でカリに舌を這わせる。
「ああ……チンカスうめえ……」
その溝に舌が触れた瞬間に声が漏れる。
「あれれ? お父さん、どうしたの?」
「失礼しましたッ。安藤さまのおチンポとおチンカスがあまりに美味しくて、思わず感嘆してしまいましたッ」
「『筋肉奴隷はおチンポが大好物』だから仕方ないね」
「はいッ。ご覧ください。おチンポとおチンカスが美味しすぎて、この変態筋肉マッチョマン岩本のチンポは勃起しており、かつ、我慢汁を流して喜んでおりますッ。おチンポとおチンカスをお恵みいただき、ありがとうございますッ。息子のチンポをしゃぶって、興奮して我慢汁をダラダラたらす私は、自他ともに認める変態マッチョですッ。変態マッチョな父親で申し訳ありませんッ!」
「謝らなくていいよ。僕はお父さんには、もっともっと変態マッチョになってほしいな。頑張ってもっと変態になってくれるよね?」
「はいッ! 変態筋肉マッチョマンの名に恥じぬよう、更なる変態を目指して、安藤さまの望むままの痴態を晒していこうと思いますッ! 変態マッチョな父親である岩本を、どうぞよろしくお願いしますッ!」
岩本は満面の笑みを浮かべてそう言うと、すぐさまチンポ掃除の続きに戻った。
安藤は、髭面の上司が、全裸で自分のペニスを味わいながら堪能している姿を見ているだけで、満ち足りた気持ちになった。しかし、まだまだ足りない。岩本にはしっかりと残業をやり遂げてもらわなければならない。といっても仕事に対しては、真面目な岩本のことだ。筋肉奴隷としての業務を全うしてくれることだろう。
夜は、まだ始まったばかりだ。