新婚×ヒーロー02 (Pixiv Fanbox)
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基地の出入り口に立っている顔見知りの警備員に軽く挨拶し、俺は基地の中に入った。 今日は非番だった。 ヒーローには基本的に休みはない。非番の日もほとんど基地で過ごすことが多く、完全にオフの日は少なかった。今日も基地にあるトレーニング室で訓練をする予定だ。
地下にあるトレーニング室に向かおうと廊下を歩いていると、司令室から怒鳴り声のようなものが聞こえてきた。
「だから、更衣室での衣類の紛失があれからもう何件も続いているんです」
気になって司令室に顔を出すと、イーグルマンが司令に食ってかかっていた。イーグルマンは苛立ちを隠すことなく言葉を続ける。
「基地の中に不埒な輩が出没しているのは事実です。何度も言っている通り……」
基地内のセキュリティの見直しを進言しているようだった。
見る見るうちにイーグルマンはヒートアップしていき、口調も荒く喧嘩ごしになってゆくように思えた。
『下着泥棒』の噂は自分も聞いている。トレーニング中にロッカーに入れていたはずの下着がなくなっているという報告が何件も挙がっているらしい。報告を受けて本部としても調査したらしいのだが、セキュリティに問題はなく万全で、下着については本人の勘違いや誤って別の誰かに持ち帰られたのだろうという結論を出している。そう聞いていた。本部としては、セキュリティに対する不備を認めたくないというのが本音なのかもしれない。
俺自身は下着を盗まれるような覚えはなかった。しいていうなら、履くのを忘れて帰ることが何度かあったくらいだ。いつも俺の忘れた下着をヒーローボーイが届けてくれていて申し訳ないとは思うのだが、だからこそ下着泥棒がいる、というのも勘違いである可能性が高いと俺は思っていた。
どうやら進言は蹴られたようで、イーグルマンは聞こえるように舌打ちをしてから肩をいからせながら司令のもとを離れ、こちらに向かってくる。イーグルマンは俺の姿を認めると、眉間に寄せていた皺を少し緩めた。すぐにいつものようにヒラヒラと手を振って笑ってみせた。
「よう、ホーク。今日は非番か?」
「ええ、トレーニングに来ました」
話しながらイーグルマンと司令室を出る。
「……セキュリティの話ですか?」
「ん? ああ、まあな。ちょっと熱くなっちまったが」
そういってイーグルは頬をかいてみせた。
「そうだ、久しぶりに稽古つけてやるか?」
「もちろんです。願ったりですよ」
先輩ヒーローのイーグルマンとトレーニングできるのは、俺にとってもありがたいことだった。俺の答えを聞くとイーグルマンは機嫌良さそうにと笑ってみせた。さっきまで司令に食ってかかっていたとは思えない穏やかな声色。普段は飄々としているイーグルマンが、心の底では人一倍熱く、いざというときに頼りになるヒーローなのだということを俺は誰よりもよく知っている。
「ウェア準備してくるから、先行っててくれ」
イーグルマンの言葉に俺が頷くと、彼は足早に自室に向かっていった。
イーグルマンは、俺より五年先輩のヒーローだった。年齢的には俺よりも五つ歳上だ。俺が新人の頃から世話になっている。右も左も分からなかった俺を一人前のヒーローに育ててくれたのはイーグルマンだ。
そんなイーグルマンを俺は心から尊敬していた。