PT SideB 01 (Pixiv Fanbox)
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まるで遠足に行く前日の子供のような気持ちだと僕は思った。
そわそわと落ち着きがなく、チャイムが鳴るのを今か今かと待っている。何しろ今日は憧れの芦原義行に会うことができるのだから。
芦原義行は現役のボディビルダーで僕自身、何度も大会を見に行ったことがある。魅力はとにかくその巨体。他のビルダーとは一線を画す筋肉量。男なら一目見れば、筋肉隆々なその姿にきっと憧れる。そして、僕みたいな下心のある同性愛者なんかは、きっと憧れ以上の劣情を抱くに違いない。そうに違いないのだ。
筋トレなんて一度も興味を持ったことがない僕が、なんとかパーソナルトレーナーとして芦原義行みたいな有名人にトレーニングをサポートしてもらえるなんて夢のようだ。いろいろとイケない手を使ったりもしたけれど、ともかくうまくいって良かった。僕は辛いことや疲れることが大嫌いだからトレーニングをするつもりなんて毛頭もないけれど、それで構わない。
芦原義行を僕の『テリトリー』に入れてさえしまえばそれで全てが僕の思い通りになるのだから。
玄関口に現れた芦原は、ボロシャツにジーンズというシンプルな格好だった。肩には大きなスポーツバックを背負っている。斜め掛けされたスポーツバックのベルトが胸を斜めに横切り、大胸筋の弾力を強調しているようだった。シャツの袖口には破れんばかりに張り詰めた上腕二頭筋。下半身を覆うジーンズも太ももからふくらはぎまでパツンパツンに生地を押し上げている。シンプルな格好だけに全身の筋肉がよく見て取れる。なんと扇情的な格好だろう。
オフシーズンであるためか、以前大会で見た時よりも薄く脂肪が乗っているのか身体全体の一回りほど大きく見える。硬く勇ましくスポットライトに照らされていた筋肉は、少し柔らかみを帯びているようだ。いったいどんな触り心地がするのだろう。生唾を飲み込む。思わず見とれてしまい、おかしくは思われなかっただろうか、などと不要な心配までしてしまう。
芦原は簡単に挨拶を済ませた後、玄関の扉を閉めた。
この部屋に足を踏み入れた瞬間、芦原は僕の『テリトリー』の中に入ったことになる。本人にその自覚はなくとも、この場所では僕の言葉は絶対であり、それが"常識"として受け止められるのだ。
僕は、内心ほくそ笑みながら、急ごしらえでトレーニング器具を設置したトレーニングルームへ芦原を案内した。
室内の設備の充実度に驚いている芦原を尻目に、僕は『テリトリー』にルールを一つ追加する。ルールと言っても、『僕の行動を認知しない、違和感を抱かない』という簡単なものだ。
その上で、芦原が背負っているスポーツバックを彼の身体から引き剥がし、中を物色する。ストレッチボールに、軽量のダンベル、ヨガマット。本当に簡単なエクササイズをするためのものばかりのようだ。さらに掘り返すと、インナーバッグが出てきた。中には着替えと思わしき、迷彩柄のタンクトップが出てきた。背中がエックスを描くようになっているものだ。よく筋肉を見せたがるトレーニーが着用しているものか、と僕は鼻で笑った。何の目的か知らないが私物のビルダーパンツまで持ち合わせている。これは好都合だ。
つい、魔がさして、それらの衣類に顔を埋めて深く深呼吸をする。残念ながらその衣類から感じられるのは心地の良い洗剤の香料の匂いだった。すぐに雄の汗臭い匂いをたっぷり染み付かせてやることにしよう。
それらの衣類を雑にスポーツバッグの中に戻すと、僕はルールの適用を解除した。
客間に移動する。ソファに座るように促し、軽く紅茶を淹れ、最低限もてなす。なにしろ彼は大切なお客様であり、今日から僕の、いや僕だけのパーソナルトレーナーになってもらうのだから。
芦原はトレーニングメニューがどうとか言っているようだったが、僕は既に彼の飛び切り豊満で筋肉質な肉体にしかもう興味がなかった。話すたびに揺れる身体の筋肉ひとつひとつがまるで生き物のようだ。どれだけの時間を費やしてトレーニングを繰り返してきたのだろう。まあ、その努力も今日からは僕だけのための『もの』に変質させられてしまう運命なのだが。「美味しい紅茶ですね」と紅茶を啜る芦原を、僕は憐れむようにただただ見下していた。
トレーニングメニューとやらを作り終えたらしく、芦原はその内容を軽く僕に説明し始めた。内容には特に興味もなく、それよりも芦原自身の肉体に興味があったので、僕は再びルールを追加することにした。
僕はソファから立ち上がり、芦原の隣に腰掛ける。芦原は誰もいない正面に向かって、まるでそこに僕がいるかのように、にこやかに話し続けている。
真横から見てみると本当に分厚い肉体であることがよく分かる。ああ、これが本当に僕のものになるのかと思うと楽しくて仕方がない。
「芦原さん、両腕を頭の上まで伸ばしてもらえますか。そうそう、ピンと張って」
話の腰を折るようにして、そう命じると、芦原はまるで僕の声など聞こえないかのように話を続けながら、両手をゆっくりと持ち上げていった。真っ直ぐに伸びた腕。掌はまるで気を付けをするかのように指先一本一本がピンと規則正しく伸ばされている。とても姿勢がいい。
ポロシャツの裾は上腕の膨らみにはち切れそうだ。もう少し余裕のあるサイズを着ればいいのに、やはり自分の肉体を誇示したいのだろうか。いやいや、誇示するだけの権利を持った素晴らしい肉体をお持ちですよと僕は心の中で芦原を褒め称えた。
晒された腋のくぼみは薄く汗で湿っているようだった。今日は比較的涼しい日だったと思うのだが、さすが代謝が良いのだろう。
汗っかきなんですね、芦原さん。
僕はもうたまらなくなって、その巨体を両腕で抱きしめて、ポロシャツ越しにその筋肉の感触を確かめた。硬くも柔らかい確かな筋肉の感触。これがボディビルダーの身体なのだと思うと自然と興奮が高まるのを抑えきれない。
腋の窪みのシミに顔を押し付けて深く何度も深呼吸する。残念ながら芦原はエチケットに気を遣う性格のようで、その体臭はデオドラントスプレーの嘘くさい香料で誤魔化されていた。しかし、時折ツンと鼻腔をくすぐる刺激は、間違いなく芦原の分泌した雄のフェロモンに間違いない。
話し続ける芦原を尻目に、ポロシャツをたくし上げてゆく。両腕を伸ばしている芦原は服を脱がすには最適な態勢だった。裾を掴み、そのまま持ち上げてゆき、ちょうど襟元から服を反転させるように持ち上げてゆき、その裾を芦原自身に掴ませる。芦原の顔は反転したポロシャツの中に納まり、代わりに首元から、腋、ボリュームのある胸筋、見事に六つに割れた腹筋が露になる。滑らかな肌触りの胸を撫でつけながら、今度は直接、腕の付け根に顔を埋める。しっかりと剃毛されている無毛の窪みに向かって深呼吸を繰り返しながら、せり出した胸筋のせいで少し下向きにポツリと浮かんでいる乳頭を、親指と人差し指で摘まみ、捻り上げる。
辛抱たまらなくなり、吐息で少し蒸れ始めた芦原の腋に舌を走らせる。少しだけ苦みがあるような粉っぽいデオドラントに混じり、確かに感じられる塩気に隠し切れなず分泌された男臭い汗の痕跡を見つけ、歓喜に震える。舐めれば舐めるほどに、唾液が分泌され、それが芦原の腋を濡らしてゆく。水分を奪うような体毛も生えてはいないため、実に滑らかに舌が滑るのが好ましい。こうして味わうために手入れされた身体なのかと錯覚してしまうほどだ。反対側の腋もしっかりとその匂いを味わった後、テイスティングしてゆく。片側だけえこひいきしてしまっては可哀そうだから、こちらの腋にもたっぷりと唾液が浸るように丹念に舌を滑らせる。そうすることで無粋にも彼の身体から雄臭さを奪うデオドラントの成分を洗い流し、清めることができるだろう。
そのまま、芦原の説明が終わるまで、好きに腋を舐めたり、乳首に吸い付いたり、胸の筋肉の谷間に舌を滑らせたりと、現役ボディビルダーの肉体を味わい続けた。最後にポロシャツの生地越しに、芦原の唇に唇を重ね合って、その吐息を胸いっぱいに吸い込んでから、たくし上げられていたポロシャツを下ろし、何食わぬ顔で僕は対面に座り直し、すっかり冷めた紅茶を啜った。
芦原は、さっそくトレーニングを始めましょうと僕を促すと同時に、僕に着替えを促すようなことを提案しかけてきたので、ルールを追加する。そろそろ芦原には自分の立場と役割を弁えてもらわなければならない。
『プライベートトレーナーとしてのレッスンでは、トレーナーが運動の見本を見せることで、それをトレーニングとする』
そんな暗示に従い、芦原はうっかりしていたと言わんばかりに、自分の荷物を漁り始めた。スポーツバッグの中には、タンクトップとビルパンくらいしかないことは既に知っているよ、と内心ほくそ笑みながら、芦原の様子を眺める。流石に着替えなければ汗だくのまま帰れはしないよなあ。でもタンクトップにビルパンは、人様の家で着替える格好にしては少し露出が多すぎるよなあ、と僕は芦原の心中を察して同情する。
案の定、恐らく他にウェアでも借りられないかと芦原が口にしかけた瞬間にルールを追加する。
『肌の露出が多いタンクトップとビルダーパンツを着用してトレーニングすることは、筋肉の動きを教えやすいので、パーソナルトレーナーとしては効率がいい服装である』
ルールは絶対だ。芦原は躊躇せずに、上半身はタンクトップ一枚、下半身は股間のみを覆うビルダーパンツ一枚というトレーナーとしては似つかわしくない衣服を取り出すと僕の前に晒した。これで良いかと聞く彼は、照れ笑いのような表情を浮かべているが、それは恥ずかしいからではなく、僕が不快な思いをしないだろうかという心配をしているからだ。彼にとってその服装は『恥』としては認識できない。そういうルールなのだから。そんな『自然』な彼の様子を見ているだけで、ついつい口元が緩んでしまう。
目の前で着替えを始める芦原。ポロシャツを脱いだ時に、先ほど僕が楽しんだ残滓を敏感に感じ取ったのか、顔をしかめる様子が見て取れた。すぐにルールでその違和感を打ち消してやる。
ついでにビルパンの中の性器のポジションが気になって仕方がなくなるようにルールで思考を操作する。何度も何度も念入りに性器の位置を確かめる芦原。ビルパンを抑えるたびにその膨らみの輪郭がくっきりと浮かび上がる。生で剥き出しにさせることは簡単だが、こうして衣類越しの性器を見るのも乙なものだと僕は思う。僕が満足するまで性器の位置調整、という名目の芦原による自身のチンポの強調作業は続いた。最終的に左右をぐっと引き上げて、もっこりが一番目立つ形に整えたところで、芦原は満足したように頷いた。
さて、このボディビルダーにどんなトレーニングをさせていこう。笑顔を浮かべている芦原の筋肉質は肉体を目で楽しみながら、僕は唇を舐めた。