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 宮田先生は怖い。

 先生は体育と生徒指導を担当している。

 無口で近寄りがたく、厳しくて、怒鳴るから怖い。


 だけど僕は、宮田先生の秘密を知っている。


 宮田先生は恐れられていて、近づく人が少ない。

 だから皆は知らない。先生が実はとても汗臭いことを。


 宮田先生は、険しい顔でよく腕を組む。その付け根に顔を埋めて深呼吸すると、とても汗臭い。偉そうに生徒を指導している最中も汗臭い。


 どうしてそんなことを知っているかって?

 それは僕が選民だからだよ。

 だから、厳しくて怖い宮田先生を、自由に嗅いでも何をしても許される。


 それにしたって、汗臭いのに偉そうに説教なんて重罪だ。

 だから、今日は先生を断罪することにしたんだ。


 夜の体育館。

 先生は、白いマットの上で腕立て伏せを繰り返している。

 腕立て伏せをしろと命令された先生は、僕の姿に気づいても腕立て伏せを続けてしまう。汗まみれの先生は歯を食いしばり、険しい表情をしていて、怒りを堪えているように見える。


 でも、実際は違う。

 選民の命令に従うと、人間は強い幸福を感じる。

 だから、今、先生は深い幸せの中にいるんだよ。


「腕立て伏せ、やめ」


 マットの上で先生は息を切らしている。


「ハァハァ……次は何をすればいい。どうすれば、俺は罪を償えるんだ?」


 先生は既に断罪されることを受け入れている。

 あの宮田先生が、命令を乞うなんて面白いね。


「次はスクワットです。臭い汗を出し尽くして罪を償ってください」


「わかった」


 頭の後ろで腕を組んで、先生はゆっくり腰を落とした。

 ポロシャツには腋汗の染みができている。


 僕は、先生の股間がもっこりと膨らんでいることに気づいた。

 償いの最中に勃起するなんて、先生はますます罪深いなあ。


「先生。人生の中で今まで感じた一番幸せだった瞬間は、いつですか?」


「ハァハァ……息子が、生まれたときだ」


「そうですか。では今から先生は罪を償うたびに、その100倍の幸せを感じます」


「うっ」


 腰を落とした瞬間、先生は目を白黒させながら、額に大きな皺を作った。


「どうですか? 先生の可愛い可愛いお子さんが生まれたその瞬間に感じた幸せと、今。どちらが幸せですか?」


「今ッ! 今だッ!」


 先生は唾を飛ばしながら叫ぶ。

 足がガクガク震えている。それでも先生は勢いよくスクワットを繰り返す。

 

「命令されてッ、罪を償っている今のほうがずっと幸せだッ!」


 尋常じゃない量の汗がマットに染み込んでいった。


「そんなこと言って、お子さんがかわいそうだと思いませんか? 子供が生まれたときよりも幸せだなんて、父親失格ですね」


「それは……ああ、俺はどうして……」


「謝ってください。罪を償ってください」


「すまん、償いの最中に幸せになって申し訳ない」


「でも先生は謝れば謝るほど、幸せになってしまいます。償いの最中に幸せを感じることは罪です。だから先生は謝れば謝るほど、より罪を重ねることになります。罪は償わないといけませんから謝らないと。でも、謝罪するたびに幸せを感じて、罪を重ねるのならば、もう永遠に謝り続けなければなりませんね」


「はい、俺は……永遠に謝り続けます……」


「では先生、息子さんにもっと具体的な謝罪の言葉を」


「……亮太。すまん。お父さんは、お前が生まれた時よりも、こうして罪を償うことのほうが何倍も幸せなんだ。俺は父親失格だ。本当にすまん」


「僕にも謝ってよ。謝罪しながら気持ちよくなっていいと思ってるの?」


「……謝罪中にも関わらず幸せを感じてしまい申し訳ありませんッ! ああ、くそっ、俺は幸せですッ! 何度も罪を重ねてしまい申し訳ありませんッ! 謝罪しながら幸せを満喫してしまいッ! 誠に申し訳ございませんッ! んんッ!」


 より深く腰を落とした瞬間、先生は身体を大きく痙攣させた。

 幸せの絶頂に達したのだ。

 じわりと、ハーフパンツに濃い染みがゆっくりと広がっていった。

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