the time fixed at 12 o'clock (Pixiv Fanbox)
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和田大貴は、駅のホームに表示されている十二時の時刻を見て、汗ばんだ額を拭った。絶対に間に合わないと思ったのだが、予想よりも大幅に早くホームについてしまった。
本来であれば、どんなに早く見積もっても十分ほどは到着が遅れるはずと思いながら全力疾走していたのだが、と不思議に思う。最近、始めたジム通いの成果で体力が付いたのかもしれない。
掃除に洗濯にと溜まった家事をこなすうちに帰省が大晦日ギリギリになってしまった。帰省してしまったら、オナニーも気軽にできなくなると、ついムラムラして二週間は溜まっていた精液を吐き出しているうちに、予定していた電車にも間に合わなくなるところだった。間に合ったのは不幸中の幸いである。
パチン。
誰かが指を鳴らした。
その音を聞いた瞬間、和田はムラムラとこみ上げる性欲にため息をついた。帰省してしまったら、オナニーも気軽にできなくなる。こんなに早く駅にたどり着くことが分かっていたなら、部屋を出る前に一発抜いておけば良かったと、和田は今更ながら後悔していた。
車両に乗り込むと、人の少なさに少し驚く。ホームには随分と沢山の人が溢れていたのだが、十分座席に座れる余裕がある。二人がけシートの並ぶ車両の中程に二席とも空席のシートを見つけると、和田は荷物台に着替えの入ったボストンバッグを置いたあと、ゆったりと座席に腰を下ろした。
その瞬間からムクムクと射精欲が膨らんでくる。和田はこの車両が射精専用車両であることを思い出すと、ベルトを緩めてジーンズのジッパーを下げると、ボクサーブリーフの中で窮屈にしているチンポを引っ張り出して外気に晒した。どくどくと血液が流れ込み、最大限に勃起する。
射精したい。
二週間分の精液を溜め込み重くなった陰嚢が、和田に手淫せよと促す。こうなってしまっては我慢はできない。急き立てられるようチンポを扱く。射精したい。射精したい。
人目も憚らずオナニーに夢中になる。時刻はまだ十二時のまま、電車は動かない。
*
年末にはね、密かな楽しみがあってね。
師走というだけあって、十二月というのは皆忙しい。忙しいということは、オナニーする暇もないということだ。クリスマスに気持ちよく膣に射精できるのは一握りの暇で軟弱な男子ばかりで、男盛りバリバリの猛者ほど、玉袋がいつもの倍くらいには垂れ下がるくらいに精液をたぷたぷに溜めているもの。そういうもんなんだよ。
ところで僕にはいくつか特異な能力があってね。男性がどれくらい抜いていないか『見る』ことができるんだ。だから、僕らにとって良い男ほど溜めているという情報はあながち間違いでもない。僕にとっての経験則。統計みたいなものかな。
だから大晦日のこの時期は、行き交う人の流れを見るだけでも随分楽しめる。場所は駅なんかが望ましい。
駅のホームに座って眺めていると、そこそこの荷物を持って帰省しようとしている20代くらいの男の頭上に、七とか八とか数字が浮かんでいる。仕事で抜く暇もなく、仕事納めのあとも残業やら家事やらなにやら忙しくて、そのまま大晦日を迎えてしまったのだろう。悶々としながら実家に帰って、トイレや風呂場でこそこそと手淫に励むのだろうか。涙ぐましいね。
というわけで、そんな頑張った彼らに少しばかり救済措置を施してやろうと思う。
電車というのは時間にシビアだ。分単位の遅れが致命的になることも少なくはない。そんな状況下で手間を取らせるのは心苦しい。だから時間を止めてしまおうと思う。
儀式的に時間を止めるためのコマンドを呟く。コマンドの内容は割愛しよう。読んでも楽しいものではないからね。時刻を昼の十二時で固定して、あらゆる人間というオブジェクトがそれに気づくことがないように設定する。
時間を止めると言っても、僕のいう時間停止は観念的なもので、物理的なものではない。物理的に時間を止めているわけではなく、単純に時刻が進まないだけで人々の往来が止まるわけではない。
本来、十二時という時刻は六十秒後に十二時一分に変わる。しかしながら、相対的に何秒経とうとも時刻は十二時一分に変わることはない。
アナログ時計は五十九秒で誤動作を起こして秒針は止まるし、テレビのバラエティ番組のオープニングトークは時間を止めている間、延々と続く。いや難しく考えることはない。今この時という瞬間が永遠になったと思えばいい。そしてそれに誰も気づくことができない。もちろんこの状態が長く続けば色々と支障が出るだろうがそれは些事な問題だ。気にする必要はない。
次に車両を一つ拝借しよう。
射精専用車両とでも名付けようか。この車両には僕が目をつけた男性のみ乗車できる。
若くて精力の漲る男子のみを選ぶ。男子というには少し大人すぎる男性も含まれているが、僕から見ればあらゆる男というものは男子として定義できる。気にせずにしておこう。
10日以上溜めている男子が理想的ではあるが、流石に二桁台はなかなかいないものだ。しかしそんな心配は不要。指を鳴らせば射精後経過日数がゼロの男子も十に変わる。時間を遡って射精したという事実を抹消していけば自然と日数は増える。簡単な理屈だ。
そんな彼らの足は自然と射精専用車両へと向かう。
*
和田が気づいたとき、隣には和田よりも一回りほど身体の大きい男性が座っており、和田と同じように一心不乱にチンポを扱いていた。視線に気づいたのか、その男と目が合う。妙な羞恥心が込み上げるのとともに何もしないというのも愛想が悪いかと思い、和田が軽く会釈すると、男も同じように返した。
パチン。
どこから聞こえてくるのだろう。
また指の音が聞こえる。
「あの」
男はチンポを反り立たせたまま、ぶっきらぼうに言った。チンポを扱く手は止まっており、時折チンポがひくひくと物欲しそうに揺れている。
「先にお願いできますか」
男の言葉に、和田は一瞬、何を? と思案するが答えはすぐに分かった。
この車両は、『口内』射精専用車両なのだから、手淫では寸止めまでしかできない決まりなのだ。射精に至るには、誰かがチンポを加える必要がある。
一般的な常識として口内射精専用車両では隣の席の人間にそれを頼むことはごく普通のことだ。和田も決して男のチンポなど喜んでしゃぶりたいとは思わない。しかし、それをしゃぶりさえすれば自分も射精できるのだと思うと、他人のチンポをしゃぶることなど容易いことのように思えてくる。
「あ、はい」
黙り込んだままでいるのも失礼なので、とりあえず和田は頷いた。
「俺は和田って言います。二十八歳で仕事は――」
見ず知らずの人間のチンポをしゃぶるのにはいささか抵抗を覚える。だから自己紹介して知り合いになればいい。単純な発想だった。
和田の隣の席の男は、新山と名乗った。チンポを晒したまま自己紹介をするというのもなんだかおかしな気持ちになるが、ここは口内射精専用車両なのだから別段おかしいことでもない。
「チンポしゃぶってもらう前に、なんですけど」
新山は少しぶっきらぼうに言い、和田の肩を抱いた。むさくるしい男の顔面が、目前に迫り、少しだけ荒い吐息が鼻腔をくすぐる。
「いいっすか」
何を? と聞くほど、和田は野暮ではなかった。返事の代わりに新山の唇に唇を重ねる。キスまですれば赤の他人とは言えないだろう。和田も新山の筋肉質な背中に手を回し、二人は密着しながら舌を絡め合った。
パチン。
また音が鳴ったと気づく。今度は、どこから鳴ったのかと思考する余裕はなかった。下腹部から背筋を伝い痺れるような快感が身体を襲ったからだ。それは新山も同じようで、二人は舌を絡めたまま電気に打たれたように硬直し、身体を痙攣させながらその異様な快楽を、与えられるがまま享受するほかなかった。
張り詰めた弓の弦が解放されるように、睾丸から精液が二度三度、吹き上がるのを感じる。同時に、白い精液が新山のチンポの鈴口から飛び出す瞬間を、痺れるような快感の中で和田は目にした。
射精している間中、絡ませていた新山の舌は、先ほどとは比べ物にならないほど甘く蕩けるように感じられた。
「しゃぶる前に、キスだけで射精しちゃいました……」
「っすね……。そんなに溜まってたかな……」
少し名残惜し気に二人は唇を離すと、少し照れたように飛び散った精液を――
パチン。
赤と緑のクリスマスカラーで彩られたコンドームの中には精液がたっぷり溜まっていた。
こんなコンドームをいつ着けただろうかと、少し首をかしげながら和田はコンドームをチンポからはずし、口をしっかりと硬く結んだ。
さて、と和田は新山に向き直った。
ここは口内射精専用車両なのだから、しっかり口内射精をしなければ。まだ"一度も射精していない"二つのチンポは、未だにひくひくと痙攣して我慢汁を垂れ流している。
そんな趣味はなかったはずなのに、今にも弾けそうに大きく膨らんだカリ高の新山のチンポが照っているのを見るだけで、和田は涎が溢れ出すのを感じる。"一度も射精していない"のだから、一度も見たことがないはずのそのチンポが勢いよく射精する姿が脳裏に焼き付いているはずなどないのに、そんな妄想じみた空想を新山のチンポに重ね合わせながら、和田は舌を伸ばしていた。
ふと、目に留まった新山の腕時計には、現在が十二時であることを表す時刻が表示されていた。