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翌日の大学

いつもと同じ広い教室、いつもと同じスライド。

でも──座っているのは“昨日とは違う自分”だった。


教授の声が上を通り抜けていく。

字面は追っているのに、頭の奥がずっとふわふわしている。

胸の奥に残った昨日の熱が、まだ完全に抜けていない。


(……はやく終わらないかな)


講義の内容ではない。

ただ、早く“ひとりになれる場所”に行きたかっただけだ。

トイレの個室でも、屋上でも。

昨日のことを思い返した瞬間に込み上げてくる、あのどうしようもない甘いざわつきを、

早く、どうにか落ち着かせたかった。


──でも。


(もし、大学の誰かに気づかれたら……どうするんだろう)


視線が教室の後ろをひとまわりする。

もちろん、誰も気づくはずがない。

けれど、“あの格好”をした自分が、あの店であれだけ見られていた自分が、

この空間に混じっているという事実だけで、

背中に微かな震えが走る。


(バレたら……絶対終わる。

 でも、想像したら……なんでこんなに……)


太ももの内側に、昨日のハイレグのラインがふっと蘇る。

鏡の前で直視できなかった自分。

ホールに踏み出した瞬間、視線の波が全身を包んだあの感覚。

そして、やさしいお客さんがくれたバニードリンク。

緊張がほどけた瞬間、ふっと笑ってしまった自分。


──トイレに逃げ込んで、声を押し殺しながら触れた胸元。

昨日の自分の息の速さまで、思い出せる。


(だめ、だめ……こんなの大学で思い出すなんて)


机の下で、指先がきゅっと丸まる。

体の奥がひとつ波打った。


そこに、スマホが震えた。


画面:

<店長バニー>

「昨日の体験、ありがとう! 写真できたよ〜。

 めっちゃ可愛いから安心してね、添付しとく」


心臓が一段強く跳ねた。

“添付”の文字が、視界の中心でゆっくり光る。


開いてはいけない──

そう分かっているのに、指が勝手に動いた。


画像が開く。


昨日の自分。

ウサ耳、蝶ネクタイ、白いカフス。

そして、あのハイレグ。

少し緊張した顔。

でも、どこか楽しそうに笑っている。


(これ、わたし……?)


胸の奥が急に熱くなる。

太ももが押さえつけられるみたいにムズムズして、

スカートの中で膝が触れ合うたび、

身体の中心に小さな火が落ちていく。


(お願い……はやく終わって)


教授の声はもう完全に遠い。

スマホの画面に写った“昨日の自分”だけが全てになっていく。


指が机を握りしめる。

息が浅くなる。


(……わたし、こんな顔してたんだ)


息が詰まり、

思わず太ももを閉じる。


講義はまだ終わらない。

なのに、心臓ばかりが速くなっていく。


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