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ステージ裏に立つユーリの肩が、ガウンの下でかすかに震えていた。


白いウサ耳はライトの熱を受けて影を落とし、

胸元には蝶ネクタイとカフスだけ。

そして、腰骨から脚の付け根へ吸い込まれるように細い布が伸びる──

末広町店特製の、ほとんど「線」だけのハイレグTバック。


ガウンを脱げば、大事なところを隠すものはほぼ何もない。


「ユーリちゃん、ステージ入りまーす」


スタッフの声に、ユーリは深呼吸しようとして、

浅い息しか吸えなかった。


それでも、ゆっくりとガウンの前を開く。


布が肩から滑り落ちた瞬間、外気が全身に触れた。

白い胸とふっくらした乳首がそのまま露わになり、

ライトの反射で肌がほんのり艶を帯びる。


(……もう、戻れない……)


店長が横で小さく頷いた。


「うん。可愛い。堂々としてなくてもいいからね。立ってるだけで十分だから」


ユーリはこくりと頷き、ステージへ続く通路へ。


ヒールがコツ、コツ、と響くたびに胸が揺れた。


──暗転。


MCの明るい声が会場を突き抜ける。


「それではお待たせしましたー! 新作DVDの発売を記念して……

 末広町店の人気バニー! ユーリさーん!!」


照明が一気に開く。

トップレスの胸元にはライトがまっすぐ落ち、

ハイレグTバックの“線”が、肌の艶と一緒にくっきり縁を描く。


会場は一瞬で沸騰した。


「ユーリー!」

「かわいいー!!」

「すご……今日やば……!」


ユーリは視線を泳がせながら、

受け取ったマイクを両手でぎゅっと抱えるように持った。


「……あ、ありがとうございます……」


その一言だけでさらに歓声が上がる。


MCは笑顔のままユーリを見る。

その緊張も羞恥も“イベントの熱”として吸い上げる、職業の顔だ。


「いやぁ、ユーリさん! 今回のDVD、スタッフさんに聞きましたけど……

 相当見応えありましたよねぇ?」


会場が、笑いとざわめきで揺れる。


ユーリはマイクを胸元の前に寄せたまま、

指先だけでそっとカフスの端をつまんだ。

隠したいのに、隠せる布がどこにも無い。


「……えっと……そうですね。

 なんかカメラが近かった、です……」


頬がぽっと赤くなる。耳まで熱い。


MCは即座に拾う。


「近かった! そうなんです!

 長接写!! 4K映像で下の毛の一本一本までくっきり、はっきり!」


会場のボルテージが上がる。


「では──ユーリさんが個人的に、

 “ここは恥ずかしかったなぁ”って思ったシーン、ありますか?」


ユーリは「う……」と小さく喉を詰まらせ、

視線だけそっと足元へ落とした。


「あー……最後の……ベッドの上のシーン……とか……」


噛むような小さな声。

でもマイクは全部拾う。


MCは大げさに驚いて見せ、会場を笑顔にする。


「やっぱり! あの擬似シーンですよね!!

 いや〜ファンのみなさん、あそこは絶対観た方がいい!!」


会場が歓声で波打つ。


ユーリは思わず視線を伏せ、

胸元の前でマイクを持つ手が少し震える。

その横の指先には、控室で渡されたDVDパッケージが握られていた。


そこに写っているのは──衣装よりさらに過激な彼女自身。


「なんでも、お店のスタッフの皆さんと試写会をされたとか!

 そのときの反応はどうでしたか??」


あれは死ぬほど恥ずかしかった。

上映中ずっと逃げ出したかった。

大スクリーンで自分を観るなんて、どんな拷問だろう。


「すごくみんな……いいねって言ってくれました…」


かどうかは思い出せない。

思い出したくもない。


「では全国のファンのみなさんに、改めて本作の見どころを、どうぞ!!」


ユーリは引きつった笑顔のまま、そっとパッケージを掲げる。


「……えーと……見どころ……全部……見えちゃってる……ところ、とか……」


「はい! みなさん、大きな拍手を〜!

 ユーリさんの“全部見えちゃってるところ”、要チェックですよ〜!!」


会場:\うおおおおお!!/


「ではここから3分間! 写真撮影タイムです!!

 みなさん、カメラ・スマホのご準備を!!」


「えっ、えええ!?」

これは打ち合わせでも聞いていなかった。


(……え、この格好で? この人数を前に!?)


胸を隠すものはなく、“線”ほどのハイレグしかない。


それでも彼女は震える指でぎこちないピースを作り、

パッケージをもう片手で掲げた。


引きつった笑顔。

耳まで真っ赤。

内腿がきゅっと寄る。


「……DVD……発売中…よろしくおねがいします……」


瞬間。


──カシャッ!! カシャカシャカシャシャシャ!!


フラッシュが一斉にたかれ、観客が一段と沸いた。


会場:

\かっわいいーーー!!/

\今日イチ照れてる!!/

\今の絶対バズる!!/


ユーリは一歩よろけた。

顔が熱すぎて、もう何も聞こえない。


MCが爽やかにまとめる。


「以上! 皆川ユーリさんでしたー!!

 このあとサイン会ですので、そのまま会場後方へどうぞ〜!」


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