Home Creators Posts Import Register Favorites Logout

Content

通勤時間は短ければ短い方がいい。

朝、ゆっくりと眠っていられる。バスや電車等の公共機関に左右されない距離であれば、わざわざ早起きする必要がない。

資格勉強や資料を作成する人もいるだろうが、僕には向かなかった。寝ぼけ眼で通勤している最中に勉強したところで頭に入らないし、そもそも座れないと作業しにくい。

朝活は魅力的で意識の高い単語だ。しかし、それをすると日中、特に昼食後に襲いかかってくる眠気が半端じゃない。睡魔にハーレム逆レされている体感だ。

帰宅時も同じである。

仕事でへとへとに疲れ切った身体。脳裏に浮かぶ圧迫スケジュール。

家に着くまであと1時間、飯食って風呂入って……。自由時間と睡眠時間を天秤にかけ、限られた時間の中で過ごさなければならない。

8時間労働した後の楽しみがわずか数時間しか残っていないのは割に合わない。残業なんてしたら帰宅後に飯風呂就寝の虚無セットを注文するほかない。

そんな生活に心が荒んでいた。

だから僕はネットであらかじめ下調べを済ませ、訪れることにしたのだ。

通勤時間の短縮と一人暮らしを望んで。

寒空の下、店の前に立つ。外観は瀟洒でまるでカフェのようであった。不動産屋特有の物件情報を貼り詰めた様子はなく、目的地がここであっているのか不安になる。看板にはしっかりと書かれていた。

隠間(かくれのま)不動産。

その名の通り他では知られていない隠れた物件も紹介するらしい。僕の気に入った部屋はここが取り扱っている。おとり物件でなければよいが。

扉を開ける。

重たげな暖房の熱が身体を通り抜けた。

「いらっしゃいませ」

入店すると、長身の女性が声をかけてきた。

黒縁眼鏡に切れ長の目元。淡い桃色の潤んだ唇。艶のある黒髪は後ろで纏められていた。

クールな雰囲気に合った厳格なスーツ姿は男の僕から見ても格好良く見える。

だからこそ服の下から存在を主張する豊満な胸に意識せざるを得ない。一目見ただけでもそのサイズが巨乳という枠をいとも簡単に飛び越えていることがわかった。無意識に目線を奪われる。

僕は必死に目線をずらし、平然を取り繕いながら挨拶をした。

「予約していた織木です」

「待ちしておりました。本日織木様の担当をさせていただきます、天音流華と申します。どうぞ、そちらへ」

キビキビとした仕草が見ていて心地いい。物件は一分一秒を争う商品だ。それが好条件であればなおさら。

席に着き、さっそく話を切り出す。

「ネットで調べたら、この物件を取り扱っていると書いてあったので。まだ空きはありますか?」

「確認いたします。少々お待ちください」

カタカタとキーボードを打つ音が鳴る。

「失礼します。熱いのでお気を付けてください」

「どうも」

その間に別の従業員が飲み物を持って来た。

茶髪のゆるふわボブ。この人も身長が高いし、胸も大きい。

あれ……ここ不動産屋だよな。

辺りを見渡すと、不安が募っていく。

間違えて違う店に入ってしまったかと錯覚するくらい高身長、グラマラスな体形の美女まみれ。横を通り過ぎるたびに良い香りが漂う。何故か男性社員はいなかった。

目の前に置かれた純白のティーカップを眺める。陶磁器に詳しくはないが、素人目で見ても高価そうであった。芳ばしいほうじ茶の香りが鼻をくすぐる。市販のティーパックではおよそ醸し出せない上品な香りだ。外観はこじんまりした感じであったが、案外儲かっているのだろう。

 

カップの持ち手に指をかけ、熱が悴んだ手の平を温める。

外は寒かったからな。確か今日は最高気温が5度だった気がする。

ふーふーと息をかけ、カップの縁に口を付けた。あたたかいほうじ茶が冷えた身体に染み渡る。

「お待たせいたしました。現在空室となっております」

「よかったです。内見をお願いしても良いでしょうか」

「構いませんが、もしよければご希望の条件を伺ってもよろしいでしょうか? ネットには載せていない物件もありますので、もしかしたらここよりも良い物件を案内できるかもしれません」

「なるほど……では、お願いします」

家賃5万。会社から徒歩10分以内。軽量鉄骨。築15年以内。2階角部屋の1LDK。バストイレ別。2口コンロ以上。都市ガス。

事前に調べてきた物件に陶酔し切っていたため、早く話を切り上げるためにも僕はダメ元で希望の条件をかなり厳しめに提示した。

「かしこまりました。少々お待ちください」

しかし、女性は嫌な顔一つせず、かぐや姫よろしく無理難題を詰め込んだ条件の物件を探す。

こんな好条件はそうそうない。あるなら住みたいが、どうせ見つからない。特に都市ガスが難点だ。この辺はまだプロパンが占めている。

ほどなくして、物件情報が印刷された紙が差し出された。

「それでしたら……こちらの物件はいかがでしょうか? 家賃3万。職場から徒歩10分。軽量鉄骨。新築。20階角部屋5LDK。バストイレ別。3つ口コンロ。都市ガス。徒歩10分圏内にスーパーもあります」

「え……」

「どうぞ、ご覧ください」

印刷された物件情報の紙には彼女の言ったとおりの記載がされていた。

うそ……だろ。こんな物件があるなんて。

「え、えっと……事故物件だったりします?」

「いいえ。入居者募集自体が今回初の新築タワーマンションです」

「いや。待ってください。じゃあ、何でこんなに好条件なんですか? 普通タワマンって家賃20万以上とかですよね」

「極稀に数万のものもございます。織木様が疑ってしまうのも無理がありません。実はこちらの物件のオーナーが素晴らしい方でして、タワマンを複数所持しており、本来若者の内では手が届かない富裕層の暮らしを体験させてあげることを趣味にしているそうです」

どんな大富豪だ。部屋に監視カメラが付いていて、入居者の暮らしを隠し撮りでもしているとかじゃないのか?

「天音さんは……この物件に住まないんですか? こういうのって不動産会社の従業員なら融通を利かせてくれるんじゃ」

「残念ながら、私は入居条件に当てはまらないのです。こちらをごらんください」

指の先にはいくつか条件が記載されていた。

入居条件

① 18-30歳の男性

② 給与所得300万以下

③ 2年は退去不可

23歳、年収300万にギリギリ届かない僕は悲しいことに条件を満たしていた。

なんか……③以外は個人的な理由がありそうで怖いんですけど。

だが、こんな機会二度と巡ってこないだろう。それを無碍にするのはもったいない。

「内見させていただいてもよろしいでしょうか?」

「もちろん構いませんが……おすすめはしません。好条件のためすぐに埋まってしまう可能性があります。それこそ男性のお客様がいらっしゃった際にはすぐに。断る方も少ないでしょうし」

背後で扉が開いた。

入店してきたのは20代前半くらいの男性であった。

「いらっしゃいませ」

「すいません。すぐにでも住める物件ありますか?」

「ご紹介いたします。どうぞこちらへ」

別の従業員が対応しているのを横目で確認する。

やばい。やばいなこれ。この物件の話が確実にあちらに流れてしまう。

「わかりました。内見はなしで大丈夫です。すぐに契約の準備をお願いします」

「ありがとうございます。では、書類をお持ちいたしますので、少々お待ちください」

※※※※

数日後、僕は住み始めた。

新築のタワマンの凄さに驚愕した。

綺麗、おしゃれ、便利。部屋は広いし、日当たりもいい。そして、心地よい静けさがある。途中の階にはショッピング施設やジム、図書館、映画館まで備わっていた。1階にはコンシェルジュが常時配置されている。僕みたいな人間が本当に住んでいいのか疑問すら湧いてくる。

『実は月3万ではなく、30万でした』みたいな、あとで高額な請求を受けないだろうか。

もしそうなったらあの不動産会社を訴えよう。

もともと家具が少なかったので荷物は1日で片付いた。

ああ、普通なら叶うはずがなかったタワマン暮らし。20階から見える景色が僕に優越感を与えてくれる。

心昂ぶらせていると、玄関の方から物音がした。

ガチャ

「え……」

誰か入ってきた……?

鍵は2本しかない。僕は誰にも渡していないから持っているとすれば不動産会社か大家か。いや、だとしても入居者に無断で入るのは不法侵入だ。

僕は急いでベッドの下に身を潜め、証拠が残せるようにスマホの録画を開始した。

やっぱり家賃安いからなんか裏があるのか。

足音が近づいてくる。

「あら、人間君は外出中ですか♡」

ゾクゾクゾクッ‼

背筋に悪寒が走る。

母性に満ちた甘ったるい声音のはずなのに、全身に鳥肌が立つ。

感じたことのない雰囲気、味わったことのない圧。

人間君……。

普通、そんな呼び方はしない。そういう呼称を使うのは人間を下として見ている種族。

魔物。

いや、さすがに創作物の見すぎだ。馬鹿馬鹿しい。現実世界にそんなのいるはずがない。悪魔や淫魔は空想上の生き物だ。

「うーん……仕方ないですねぇ♡ 出直すとしましょう♡」

踵を返し、廊下へと向かった。

玄関の開く音が聞こえると、ご丁寧に施錠までして去って行った。

……なんだったんだ、今のは。これから不定期であんなのが来られたらたまったもんじゃないぞ。

とりあえず録画はした。急いで不動産会社に報告しよう。

ベッド下から抜け出し、握り締めたスマホに番号をタップする。

「どこに電話するんですかぁ?♡」

すると、背後から声がした。

何で……さっき出ていったはずじゃ……。

途中で入力を終えた電話番号はどこに繋がることもなく液晶の画面に留まる。

「ふふ、こんにちはぁ♡」

ドロッドロの蜂蜜のように鼓膜に絡みつく甘ったるい声音。

間違えるはずがない。数秒前に聞いたばかりなのだから。

「あっ……かっ……」

声が出ない。身体が固まる。

違う、そんなわけない。だって、だってさっき……え? じゃあ、玄関から出ていったのは誰なんだ。

いや、違う。違う違う違うッ‼

脳が彼女の存在を認識するのを拒んでいた。

「匂いで隠れていたのはバレバレでしたよ? やっぱり可愛いですねぇ♡ 人間君って♡」

ギシリとベッドが軋む音が響く。

背後で女が動き出した。

「乳魔はご存じですよね?♡ こんなエッチな漫画を持っているくらいですし♡」

漫画を手に持ち、ひらひらと揺らす。

それは僕が今夜じっくり読もうとした乳魔のハーレム逆レ本である。

乳魔。淫魔——サキュバスの中でも特に乳房が発達した種族。

母性が強く、甘やかし上手。母乳やパイズリといった乳技で男を搾る淫魔。

僕が知っているのは創作物の設定だ。実物は知らない。知る由もない。

「人間君の認識で間違っていませんよ♡ 私もネットで自身の種族を調べたしたことありますから♡」

近づいてくる。淫靡な圧に飲み込まれそうになる。

僕は何をされるんだ……?

怖い。怖い怖い怖いッ‼

「では、なぜ乳魔が人間君の家に来たのか。それは淫魔不動産を利用したからです♡」

淫魔不動産? そんなの僕は知らな……。

唐突に、とある名称が脳裏に浮かぶ。

隠間不動産。

あれは『かくれのま』ではなく、『いんま』って読むのか? いや、まあ読めるけど、その読み方ではないと思っていた。そもそも公式のルビは 『KAKURENOMA』だったし。

「表向きは人間君向けの不動産会社。驚くほど好条件でしたよね?♡ 裏がないわけないじゃないですか♡」

「うっ……あっ」

一刻も早く、ここから逃げ出したい。

しかし、意思とは反対に、ビクリとも身体を動かせない。

「契約完了した人間君のお部屋を、今度は淫魔相手に募集をかけるんです♡ サキュバス、ラミア、スライム、ハーピィ、ドラゴンなど。淫らな魔物を挙げたらきりがありません♡ そんな肉食的な彼女たちに食費無料の物件を勧めるんです♡ 契約しないわけないですよね♡」

目の前が翳った。

身長166cmの僕の頭上に圧倒的なサイズを誇った何かが鎮座していた。

目視はできないが、彼女が母性に満ちていることからそれがどういったものなのかは予想がつく。

外れることを真摯に願うが。

だって、仮にそうだとしたら身長差がとんでもないことにならないか? いくら僕が170cm未満とはいえ、頭上に身長計のカーソルよろしく豊満な柔肉が浮いているのおかしいだろう。

真上と真後ろからのプレッシャーに圧し潰されそうになる。

「私、乳下176cmあるので、小っちゃくて可愛い人間君が前に立つと軒下みたいになっちゃいますねぇ♡ あぁ、母性が刺激されます♡」

「なッ……なにを、言って……」

必死に喉を振り絞り、ようやく声が出た。

しかし、すぐに遮られる。

「怖がらなくて大丈夫ですよ?♡ 私のことは気軽にロゼとお呼びください♡」

長く綺麗な指と湿り気を帯びた温かい手のひらで顎を撫でられた。

まるで猫にするかのように優しく手加減したスキンシップ。

「ふ……ぁぁぁ」

不思議と幸福感に満たされる。

睡魔に似たそれはドッと身体を重くした。やる気を削ぎ、堕落を引き寄せる。

思わずもたれかかってしまった。後頭部に彼女の腹部が当たる。

服越しに柔らかな肉の感触が伝わった。

睡魔を誘う安心感。キングサイズのベッドに身体を預けているかのよう。沈み込むほどはないが、衝撃を吸収しそうだ。

ぐぅぅぅぅ……

耳の近くで腹の虫が鳴く音が聞こえる。

「あ、恥ずかしい……♡ 君があまりに私好みだったので、ついお腹が鳴っちゃいました♡」

それは彼女にとって、僕が食事に見えているから起こる現象だ。

草食動物の気持ち、捕食される側の恐怖を理解した。

「ああ、もう私ったら……♡」

ぼた……ぼたぼた

上から下へ。

視界を通り過ぎる雨粒。

重たげな音とともにフローリングが白く染まる。隙間に広がっていく。

「え、うっ……ぁぁぁ」

濃厚な甘い香りが漂った。

ここは室内だ。雨は降らない。

この光景を前に異常気象ですら生温いだろう。

鼻先に熱を孕んだ母乳の雨が降っていた。

「雨宿り……していきましょうか♡」

濡れないように、ぎゅっと僕の身体を抱き締める。

その雨粒が奪うのは体温ではなく、理性だ。

白い雫と雨音が情欲を煽り、香りが脳を曇らせる。

「ごめんなさい♡ 止めようと頑張っているのですが……君が可愛すぎるので♡」

止むどころか、ますます勢いが増していく。

嫌でも視界に入り込んでくる母乳の雨。

淫靡な光景に釘付けになる。

「床が……」

いつの間にか母乳の水たまりが出来上がっていた。

足が人肌よりもあたたかい温度に包まれる。

「…………ッ‼」

下を見て鳥肌が走った。

母乳で濡れた黒い靴下が脱色したかのように白くなっていた。

「うっ……くっ……あぁぁぁ」

自然と口が開いていた。

赤ん坊はとうの昔の話なのに、それを飲みたくなる。

沸々と湧き出る甘えたい欲求。

自分の身体のどこに隠れていたんだと驚くほど大量に押し上がってくる。

抑えろ。飲んでいいわけがない。

「……飲んでみますか?♡」

そんな僕に彼女は文字通り悪魔のような提案をした。

「一緒に住むので、ペアマグカップ買っておいたんですよ♡ ほら♡」

黒と白の色違い。

縁が丸みを帯びた2つのマグカップを目の前に差し出された。

「君のは黒です♡ 黒はかっこいいですからね♡ それに……♡」

中まで真っ黒のマグカップ。

滴る白い雨粒がカップ内に落ちた。

ぼとりぼとりと重い音を立て、溜まっていく。

「母乳の色が引き立ちますので♡」

器の色と対極の白が目立つ。

飲み物とは思えないほど淫靡であった。

「縁が丸く狭まっているのにも理由があるんですよ♡ 何だと思います?♡」

「し……知らない」

彼女の質問よりも、今からこれを飲むということで気が気じゃなかった。

確かに飲んでみたいと思ったが、実際にその機会がやってくると恐怖が襲いかかってくる。

口にせずとも香りや見た目だけで理性を壊されそうになる母乳。そんなものを嚥下したらどうなるかなんて目に見えていた。

「ふふ、それは飲む時にお楽しみにしましょう♡ さて、そろそろでしょうか? 実はおっぱいに遮られて下が見えないんですよ♡」

7割ほど母乳が溜まっていた。

ゆっくりと腕が上がっていく。

「あ、ちょうどいい感じですね♡」

彼女はカップ内を目視すると、再び下ろした。

口の前で止まる。空いた右手に顎を掴まれ、親指で唇をなぞられた。

「ここに顎……唇がこの辺ということは……」

指でぷにぷにと唇を弄られる。

あらかた位置関係を把握すると、僕の口元にカップの縁を近づけてきた。

たぽん……と豊かな音とともに水面が揺れ、白い波が跳ねる。

容器の外へ飛んだ母乳。側面に付き、雫となって滴った。

真っ黒のマグカップを母乳色の轍で染め上げる。

「んっ……ん゛ぐッ‼」

唇にマグカップの縁が触れた。

その瞬間、鼻腔に甘香が広がる。

まだ傾いてもいないカップから濃厚なミルクに砂糖と蜂蜜、メープルシロップを入れ、じっくりと煮詰めたかのような甘ったるい香りが立ち込めた。

丸く狭まった縁はそれを長く溜めておくための構造になっていた。

「ふふ……頭の中とろっとろになっちゃいますかぁ?」

乳魔からすればただのマグカップ。しかし、人間の僕からすれば、それは淫香漂う媚薬の蜜壺に等しい。

マグカップが傾き、内部へ。

膨大な量の乳香たまりに鼻を突っ込まれた。

「お゛ッ……ぁぁぁ」

脳を蕩けさせる甘ったるさに思わず声が漏れてしまう。

下半身が熱くなる。パンツの中が濡れているのがわかる。

極上の食事を前に涎を垂らすように、鈴口から我慢汁が溢れ出していた。

「さあ、飲みましょうねぇ♡」

香りで気が狂いそうになっていてもお構いなし。

彼女はマグカップをさらに傾け、濃甘な母乳を口内に流した。

「んぐ……がッ!?」

母乳を口にした瞬間、腰が勢いよく前へ突き出る。

それでも逃がし切れない過剰な快感が、キュッと睾丸を収縮させた。

びゅッ、ぶびゅぅぅッ‼ どぷ、どっびゅッ、ぶっびゅるるるびゅぐぐぐッ‼

「ん゛ッ、ぐぅぅぅ!!」

我慢できず射精してしまう。

蕩けるような魔性の快楽。口いっぱいに広がる濃厚な味。

即座に味覚がバグった。甘味しか感じ取っていない。

甘ったるいミルクの淫香が鼻を突き抜けた。

「口に含んだだけでお漏らししちゃいましたねぇ♡」

およそ人間が味わってはいけない甘美な母乳。自慰なんか比べ物にならないほどの射精感。

快感を何十倍にも引き上げられた気がした。

「ん゛ッ、ん゛んッ」

射精してもマグカップは傾いたままだ。

ためらう僕に母乳飲みを強要してくる。

「ほーら♡ ちゃんと飲み込まないと、母乳で溺れちゃいますよぉ♡」

ロゼは空いた手で僕の膨れ上がった頬を撫でる。

「んぐ……ごく……ごくごく……ん゛ん゛ッ!?」

ぶっびゅ、びゅぐッ、どびゅぅぅぅッ‼

即二度目の射精をさせられた。

のどごしが……気持ちいい……ッ‼

嚥下のたびに悪魔のような快感が走る。

どろっどろの母乳が喉に絡みつき、触れた部位が熱くなった。

母乳を口に含んで射精。嚥下して射精。

口に入れられただけで搾られることが決定する。

こんなのおかしいだろ。

肉棒には一切触れられていないのに。

なんでこんな射精させられているんだ。

「ん゛ッ……んぐ……んん」

まだ半分以上も母乳が残っていた。

これを飲み切るまで終わらない。考えただけで骨が折れる。

すると、気が変わったのか、マグカップが口元から離れた。

「はぁ……はぁ……」

口内への母乳の供給が止まり、射精が収まる。

「……凄いですねぇ♡ 普通なら一口飲んだだけで射精止まらなくなっちゃうんですけど……ちゃんと止まっています♡」

「はぁ……もう……飲まない」

「ふふ、まだ反抗の意思が残っているなんて♡ それでこそ甘やかし甲斐があります♡ じゃあ、私は君に飲んでもらえるように……頑張らないとですねぇ♡」

そう言うと、唐突にマグカップを逆さまにした。

そんなことをしたら中身が……。

「え……ッ」

何故か零れなかった。

先ほどカップ内には母乳が入っていたことは確認している。それも半分以上はあった。

ロゼがゆっくりと手首を捻る。マグカップの縁が僕の方へ向けられる。

白く染まった底。中身は空だった。

母乳はどこかへ消えてしまった。

「んぷッ!?」

びゅるるッ、びゅぐッ‼ ぶびゅッ、びゅく、びゅるるるッ‼

不意に口内を埋め尽くす濃甘な液体。

勢いよく腰が跳ね、わけもわからず射精した。

「おっぱいを嫌がる子のための授乳手品♡」

彼女はマジシャンのように、カップ内に残った母乳をそのまま僕の口内にぶち込んだ。

収まりきらず、鼻から母乳が溢れ出す。甘ったるいミルク香が鼻粘膜を包み込む。

「あら、鼻から出ちゃいましたねぇ♡ でーも、次はありません♡」

突然異物が入ってくれば、吐き出そうとするのが普通の流れだ。

そんなことを背後の乳魔が予想しないわけがなかった。

「んぐぐ……!?」

手のひらで僕の口を塞ぎ、親指と人差し指で鼻を摘まむ。

母乳の排出経路どころか呼吸を妨げられる。

『絶対に吐かせない。全部飲み込め』という圧を感じた。

このままでは……窒息、するッ‼

「ごきゅ……お゛ッ……ごくごく……ん゛ん゛ッ……ごく、お゛お゛ッ‼」

びゅッ、ぶびゅぅぅッ‼ どぷ、どっびゅッ、ぶっびゅるるるびゅぐぐぐッ‼

嚥下のたびに吐精する。しかし、止めることはできない。

口に含んでいる限り、射精は続くのだから。

「ん゛ん゛ッ、ごく……ん゛ッ、ごくごく」

無我夢中で母乳を胃に流す。

強烈な快楽に意識を失いそうになりながらも何とか飲み切った。

「よくできましたぁ♡」

ロゼは手のひらを退けた。

「ああ、やっぱり君は最高です♡ こんなに乱暴な飲ませ方をしても……全然壊れない♡」

大量の母乳を飲まされ、その量に匹敵する量の精液を吐かされた。

やはり……壊す勢いで飲ませていたのか。

「でも、これでようやく乳魔の淫技を注げる身体になりましたぁ♡」

「はぁ……はぁ……何を言って……」

ガチャ

玄関の方から物音がした。

……今度は誰だ。

「あ、来ましたね♡」

足音が大きくなる。

1人じゃない。複数人いる。いや、人かどうかも怪しい。

来訪者は寝室へぞろぞろと入ってきた。

現れたのはメイド服を着こなした3人組の美女であった。

頭にはメイドの象徴と言えるホワイトブリム。ロングスカートの英国服メイド服。

エプロンはウエストから下にのみついており、フリル付きの紐が両肩へ伸びている。その間を胸が強調されるようなデザインの漆黒のメイドワンピースがどたぷんと飛び出していた。部分的な露出が一切ないことが逆に着衣巨乳の艶やかさを引き立てていた。中央にはボタンが付いている。

「お初にお目にかかります。メイド長のシオンと申します。左がイスリ、右がベルです」

「よろしくお願いしまーす」

「……よろしくお願いします」

元気良く挨拶した方がイスリ。物静かそうな方がベル。

メイド長ほどではないが、妖艶な雰囲気を漂わせていた。

「彼女たちは現在フリーの野良乳魔メイドです♡」

「野良乳魔メイド……?」

「仕える主が不在の時の乳魔メイドをそう呼ぶんですよぉ♡ 

背後の乳魔が語りだした。

「昨日、淫魔不動産から連絡がありまして。彼女たちが家事をやってくれるということですし、ルームシェアを了承しました♡」

そんな連絡知らない。

僕には……何も来なかった。

「淫魔間のルームシェアに関して人間君に連絡は行きませんよぉ♡ そもそも私がここに住むことだって知らされていなかったでしょう?」

「そんな……」

僕が困惑していると、メイド長のシオンはお辞儀をした。

「ロゼ様、この度は私たちの契約を受け入れていただきありがとうございます。身の回りのお世話は全てお任せください」

「ふふ、いえいえ♡ こちらこそよろしくお願いしますね♡」

シオンは横目で僕を見る。

瞳に熱を孕んだ絡みつく眼差し。背筋に悪寒が走る。

そうか。あくまで主人はロゼであり、僕はただの同居人。

いや、相手は乳魔だ。食事としか見ていないのかもしれない。身の危険を感じる。

「契約って……どんな」

「ふふ、それはですね♡」

「契約主はロゼ様です。本来であれば、ご主人様のお世話をしつつ甘やかすのが乳魔メイドの務めですが、その対象を織木様に譲渡することになりました」

「乳魔は甘やかされる方じゃなくて甘やかす方ですから♡ 簡単に言えば、私が雇った人間君専属乳魔メイドというわけです」

何を勝手なことを……。

いや、そもそも乳魔と同居するとか意味が分からない。僕は一人暮らしを望んで物件を借りたんだ。何でこんなことになっているんだ。

1人でさえ手一杯だというのに、それが4人だなんて。

乳魔メイドは僕が主人だからまだ何とかなるとして……問題はロゼだ。

「ああ、言い忘れていましたが、乳魔メイドは自身よりも強い主人とは契約しませんよ♡ 掌握できませんから♡ なので人間君が主人のことが多いですね♡」

「……それってつまり」

「はい♡ 彼女たちは私よりもずーっと強いですよ♡ もちろん母性も比じゃないくらいに♡ 立場が上だからと言って言い聞かすことは難しいと思います♡ なにせ乳魔メイドは常に母性の捌け口を探すダメ男製造機ですから♡」

僕はガクガクと錆付いたロボットのように首を動かす。

無表情なメイド長と目が合うと、一瞬柔和に微笑んだ。

「もちろん手加減はいたします。では……さっそく始めましょうか」

Comments

No comments found for this post.