宮本武蔵・おまけ 素人のプロレス技と電流アタックであっさり落ちちゃう武蔵ちゃん(笑) (Pixiv Fanbox)
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「放せ───放せぇ!!」
チンピラたちの根城である廃ビルの、冷たいコンクリートの床の上。そんなリングとも呼べぬ汚い地面で、宮本武蔵は藻掻いていた。
両腕を背中で束ねられ、足首を踏まれ、髪を鷲掴みにされて顔を床に押し付けられる。たったそれだけのことに、彼女は抗えない。振りほどけ無い。びくともしない。
「う、ぐっ……くぅッ………!!」
身体を捻ろうとする。足を蹴り上げようとする。だが腕を押さえる手はびくともせず、チンピラたちの拘束は微塵も揺るがなかった。
「武蔵ちゃ~~ん、もしかしてそれが全力ぅ?」
「力よっわww マジでただの女じゃんww」
チンピラたちは笑いながら、かの大剣豪を踏みつける。
当然だ。一般人以下の腕力に堕ちた武蔵の抵抗は、彼らにとって片手で抑え込める程度のもの。複数人がかりなど過剰戦力もいい所で、実際には一人でも事足りる。
「ほ~ら、おっぱいモミモミ~~ww」
「柔らけ~~! 良いモン持ってるねぇ(笑)」
「今、すぐ───放しなさいッ!!」
せめてもの抵抗として荒い語気で彼らに叫ぶが、拘束された女の強がりなど嘲笑を誘う喜劇に過ぎない。チンピラたちはニヤニヤと薄ら笑いを浮かべながら、おもちゃの身体を好き勝手に弄り回した。
「んだとぉ。生意気だなぁ、武蔵ちゃんは」
「ほ~ら、お仕置き~~~~(笑)」
一人が、拘束した武蔵の右腕を、ぐいと背中の上で捻り上げた。
「ぎ─────ッ!!」
肩関節に、鋭い痛みが走る。
腕ひしぎ───のような何か。角度も力の方向もでたらめな、関節技とも呼べない素人のひねり。
だからこそ───恐ろしかった。
「あ、ァッ───! いたっ……いたい……ッ!!」
でたらめだからこそ、どこに力が掛かるか分からない。正しい関節技なら極まる方向が決まっている。だが素人の力任せの──それも圧倒的な膂力さがある状態での──関節技は、どの角度から身体に負荷がかかるのか全く予想ができなかった。
「お、結構曲がるわ」
「てかこれ何の技だっけ? 前テレビで見たやつ」
「知らね。とりあえず曲げときゃ良いんだろ?」
もう一人が左腕を掴んだ。力の方向は内側へ。
右は外側、左は内側。二本の腕がまるで別の方向に引っ張られ、肩甲骨の辺りからブチブチと、嫌な音が聞こえ始める。
「が、ッ───や、やめ、でぇッ! 肩……かた、壊れるッ……!!」
声が裏返る。
冷や汗が滲み出す。
彼らは大して力を込めていない。ふざけ半分の、学校の休み時間にでも繰り広げられるような遊びの延長。にも関わらず武蔵の関節は悲鳴を上げ、目尻からは涙まで浮かべている。
「はな、せ───はな、しでぇ………ッ!!」
武蔵の語気から、徐々に怒りの割合が減っていく。
代わりに滲み出したのは───懇願。
「壊れちゃう~!(泣) だってさww」
ゲラゲラとした笑い声が廃ビルに反響し、武蔵の心中は、とてつもない屈辱感に包まれた。
「よっし、それじゃ武蔵ちゃんにお願いされちゃったし───」
やがて、腕のひねりが解かれる。
だが安堵する暇もなく───チンピラの一人は武蔵の細い首を、自らの太腿で挟み付けた。
「がッ────!」
「次はこれ! 三角絞め~~~~~(笑)」
三角絞め、の真似事。
本来の三角絞めは、相手の片腕を巻き込みながら両腕で頸動脈を圧迫するという寝技。だが男がやっているのは、ただ太腿で首を挟んで力任せに締めているだけ。技術もへったくれもない、ただの暴力。
しかしそれでも───弱体化した武蔵には十分すぎた。
「あッ───が、ぎッ…………!!」
首の両腕から、じわじわと圧力が加わる。
太腿の筋肉が頸動脈を左右から押しつぶしていく感覚。脳に届く血液が遮断され───じわりじわりと、絞られていく感覚。
「か、ひッ………はな……じ………ッ」
両手が男の太腿に触れた。
引き剥がそうとする。だが、指は肌の表面を撫でるだけで、そこに食い込む力がない。全力で引っ掻いても傷すらつかずに、男の脚は微動だにしなかった。
「お~い、武蔵ちゃ~ん?ww」
「どしたんどしたん? 元気なくなってんじゃん(笑)」
笑い声。嘲り。
だがそれすらももはや遠い。
視界の端が暗くなり始め、耳の奥で甲高い耳鳴りが響いていく。思考が粘ついた泥の中にゆっくりと沈んでいき、意識の灯火が少しずつ吹き消されていく。
「は、な……じでッ………お願い……ッ………!!」
声が掠れる。舌がうまく回らない。
酸欠で顔が赤黒く染まり、こめかみの血管が浮き上がる。
しかしそれでも男は止まらず、太腿にぐっとさらなる力を込めた。
「───ぁぎッ!!」
武蔵の身体が、びくんっ!と跳ねた。
両脚がバタバタと、水に沈められた虫のように無様にバタバタと痙攣した。
「おいおい、これ本当に落ちちゃうんじゃね?」
「んじゃーしょうがないし起こしてあげるかぁ………よいしょっと」
その明らかに異常な様子を見て、チンピラの内の一人が立ち上がる。そして四角いプラスチックの塊を持ってくると、それを───改造スタンガンの先端の電極を、武蔵の脇腹に押し当てた。
──バヂヂヂヂヂッッ!!
「────ッッッッッ!!!!」
血走っていた武蔵の目が、完全に見開かれる。
全身の筋肉が同時に痙攣し、背中がコンクリートから弓なりに起き上がった。とてつもない激痛に喉の奥から絶叫が迸るが、それは気道を締め付けるチンピラの太腿に遮られ、ただの意味のない空気音として排出された。
「ぁ、ぎッ──ぃ、ッッ──ぎぃあ゛─────!!」
自由な手足がめちゃくちゃに跳ね回る。制御不能に全身が痙攣する。それはもはや人間の動きではなく、電流に焼かれた肉が弾けているだけの、ただの物理現象。
「ギャハハハハ! めっちゃ跳ねてる(笑)」
「全身ピクピクしてるし!! エビじゃんエビww」
弱体化した身体には、改造スタンガンの出力は凄まじすぎた。通常の人間でも一発で昏倒するほどの電圧を、一般人以下の耐久力しか無い彼女が耐えきれるはずがなかったのだ。
数十秒。スタンガンが肌から離される。
太腿の拘束が解かれた。
「ぁ………は、ぁ…………ぁ…………」
武蔵の身体がコンクリートに崩れ落ちた。仰向けのまま、全身が小刻みに震えている。目は開いているが、何も映していなかった。口の端から涎が一筋垂れ、股間からは失禁の跡が太腿を伝っている。
「お、起きてる起きてる────でもなんか、目がイッちゃってんな」
「おーい、武蔵ちゃ~ん。聞こえてますか~?(笑)」
男が武蔵の前で手を振った。
反応はない。
「だめだこりゃ。頭バグってるわ」
「じゃ───もっかいやったら起きるかな?(笑)」
スタンガンが、再び武蔵の首筋に押し当てられた。
──バヂヂヂヂヂヂヂッッッ!!!!
「────────────」
武蔵の身体が、一際大きく跳ねた。
そして───崩れた。
今度は痙攣すらなかった。電流が脳幹を直撃し、あらゆる制御系統が一斉に落ちた。びくり、と一度だけ全身が震え────それきり、何も動かなくなった。
「あれ? 死んだ? 死んだ?」
「完全に落ちたわ。こりゃ起きたらお仕置きだなぁ」
「……ぃ…ぁ………………」
冷たいコンクリートの上に広がった武蔵の身体は、もうぴくりとも動かなかった。涙の跡が残る頬。力なく開いた指先。失禁で濡れた衣服。乱れた髪。
薄暗い廃ビルには、下卑た笑い声だけが、いつまでも反響していた。