男性恐怖症になったサオリが売春帰りのアツコにご飯を恵んでもらいながら、何の力もなくポロポロ泣いちゃう話(笑) (Pixiv Fanbox)
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ある日。
サッちゃんがどこかに行ってきて、お金を持って帰ってきた。
何をしてきたのかは教えてくれなかった。聞いても、「気にしなくて良い」としか言ってくれない。ただ、封筒の中にはたくさんのお金が入っていて、それで久しぶりに、四人でちゃんとした温かいごはんを食べることが出来た。
何でもない、普通のコンビニ弁当。
だけどプラスチックの蓋を開けた途端、温かい湯気がふわっと頬を撫でて、ヒヨリは「あったかい」って小さく笑った。ミサキは何も言わなかったけど、いつもより食べるスピードが早かった。
サッちゃんは、あんまり食べなかった。箸を持つ手が時々止まって、どこか遠くを見ている。「サッちゃん、食べないの?」って聞いたら、「───あぁ」って言って、少しだけ口に運んだ。
その夜。
サッちゃんは、段ボールの中に包まって、ずっと震えていた。
寝返りの音とは違う。もっと細かくて、止まらない振動。話しかけてみたけれど返事はなくて、時々喉の奥から小さな声が漏れている。うなされているのか、起きたままなにかに怯えているのか、私には分からなかった。
身体には傷一つ無い。
だけどサッちゃんは───どこか見えない部分が傷ついたんだと、私は思った。
何日かして、サッちゃんが男の人を怖がっていることに気がついた。
食べ物を探しに外へ出たときのこと。路地裏から大通りに出た所で、向こうから男の人が歩いてきた。サラリーマンだったと思う。別にこっちを見ているわけでもない、ただの通行人。
なのに───サッちゃんの足は、ぴたりと止まっていた。
隣を見ると、顔が真っ白になっている。息が浅くなっていて、肩が小刻みに上下していた。男の人が横を通り過ぎるまでの数秒間、サッちゃんはまるで地面に根が生えたみたいに動けなくなっていて、通り過ぎた後も、しばらくずっと手が震えていた。
別の日。
繁華街の近くで体格の大きな人とすれ違ったときも、サッちゃんは私の後ろに隠れた。
私の後ろ。
私よりも背が高くて、私よりもずっと強くて、いつも私たちの前に立って守ってくれていたサッちゃんが、私の小さな背中の後ろでがたがた震えていた。涙目になりながら下を向いて、襲わないでと身体全体で表現していた。
それを見て私は。
あぁ、もう元のサッちゃんには戻れないんだなって、そう思った。
繁華街の壁に寄りかかって立っていると、男の人が話しかけてきた。
「ねぇ、一人?」
「うん」
「いくら?」
金額を言った。
コンビニ弁当を十個買えるくらいの、最低限の値段。安いほうが買ってくれるだろうから、私はそうしてる。
男の人は私の顔を見て、それから身体を上から下まで見た。繁華街に出るときは、あえて服装を少し崩している。男の人は私の胸元に目を置いてからにやって笑って、「いいよ」と言ってくれた。
路地裏に連れて行かれる。暗い。ゴミの臭いがする場所。
冷たい地面に膝をついて準備していると、男の人がパンツごとズボンを下ろした。むわっとした男の人の臭いと一緒に、肉の棒がぼろんって私の顔の前に現れた。
「んぁ────ちゅっ」
唇を窄めて熱い棒の先に、わざとらしく大きな音を鳴らしてキスをする。そうすると男の人は喜んで、血管をビキビキと浮き立たせながら大きくさせた。
「んぁむ───んぐっ、じゅぷっ……ぎゅぷ───」
口をいっぱいに広げて、喉の奥まで頬張って。細まった瞳で顔を見上げると、男の人は優越感に満ちた表情で私を見下ろしていた。男の人のものは苦くてまずくて気持ち悪くて、縮れた毛が鼻の穴に入ってきてくすぐったかったけれど、私は何も考えず頭を動かし続けた。
「んじゅ……むじゅぷっ……んぐっ……ぐぷっ………」
繰り返し繰り返し。
滲み出る汁を啜りながら、皮の隙間の汚れをすくい取りながら。私は路地裏に下品な音を響かせて、男の人のものをしゃぶり続けた。鼻を伸ばして必死に、少しでも顔がぶさいくになるように舐めてあげると喜ぶと気がついたのは、男の人のものを10本ほど舐めた後だった。
「うぐ、ぷっ……あぐぷっ……じゅる、ぽ……じゅぽ………」
そうしてそれを何分か続けていると、やがて身体がぶるって震えて。喉の奥に刺さった先端から、どろりと熱い汁が迸った。
「───ん、ぐ……あむっ……ん、ぶふっ───んげぇ」
今回の人の射精は勢いが強くて、私は少しむせてしまったけれど、しっかりと全部を飲み込んであげる。舌で唇の周りを一周舐めて、口を大きく開けて全部飲んだことをアピールしてから、小さく一つゲップをした。
「───ははっ」
男の人は愉快そうに笑って、私の頭を労わるように撫でてから、私の服を脱がした。路地裏で裸になると、なんだか心細くなってしまうくらい、とても寒かった。
廃ビルに帰ると、サッちゃんはまだ起きていた。
段ボールの上で壁を見つめていた。ミサキとヒヨリは隅の方で眠っていた。響いた足音で、サッちゃんが少しだけこっちを向いた。
「サッちゃん。ご飯あるよ」
ビニール袋をサッちゃんの前に置いた。袋の中から、温かい湯気がほんのりと漏れている。
「………これ、どうしたんだ」
「拾ったの」
何の意味もない嘘をついた。
コンビニの袋に入っている拾い物。どう考えてもそんなわけがない、変な嘘。
サッちゃんは数秒だけ私を見つめてから、目を逸らす。
袋を開けて、おにぎりを一つ取り出した。鮭のやつ。レンジでチンしたからまだほんのり温かい。それをサッちゃんの前に差し出した。
「食べて。最近、なんにも食べてないでしょ」
「………アツコ」
「私はもう食べたから。サッちゃんの分だよ」
「…………」
サッちゃんの手が、おにぎりに伸びた。
包装に触れた指先が───震えていた。
ゆっくりと包装を剥がしていく。ぱりっ、と海苔の音がする。白いご飯と、中のピンク色の鮭が見えた。
サッちゃんは、それを口に運ばなかった。
おにぎりを持ったまま───じっと、見つめていた。
やがて、唇が震え始めた。きゅっと噛んで、堪えようとしている。
でも堪えきれなくて───やがてぽろ、って。涙が一つ、頬を伝って落ちた。
おにぎりを持つ手の甲に、落ちた。
「すまない………すまない…………」
サッちゃんが泣いていた。
声を殺した。肩を震わせて。「すまない」って何度も何度も繰り返しながら、ぽろぽろ涙をこぼしていた。
おにぎりを持つ手が、ぶるぶる震えている。その震えは夜中に段ボールの中で聞いたあの振動よりも───ずっと大きかった。
「…………」
私は彼女を無言で見つめる。
なんで彼女がそんなに泣いているのか、私にはよく分からなかった。
口でするのは、たしかにちょっと苦くて、気持ち悪い。喉の奥がしばらく変な感じになるし、味も中々消えてくれない。最近はセックスの方もするようになったけど、それも3回目辺りからは痛いと思ったことはないし、少しだけ気持ちいいと思うこともある。
サッちゃんは私たちのために、どこかで怖いことをしてきた。男の人が横を通り過ぎるだけで動けなくなるくらい、酷いことをされてきた。私の背中に隠れて、がたがた震えるくらいのことを。
それに比べたら、私のことなんて何でもない。
「大丈夫だよ………サッちゃん………」
私はサッちゃんの隣りに座って、腕を回した。サッちゃんの身体は小さく震えていて、その振動が私の身体にも伝わってくる。
「大丈夫だよ……サッちゃん。私は全然つらくないから。だから、大丈夫………」
私がそう言うと、サッちゃんはもっと泣いた。
大丈夫って言えば言うほど、サッちゃんの身体の震えが大きくなる。
───たぶん、私が大丈夫っていうことがサッちゃんにとっては一番つらいのかも知れない。でも、私には他に言えることはなかった。本当に大丈夫なんだから、大丈夫だって、言う他なかった。
「…………」
サッちゃんを抱きしめながら、私は天井を見上げた。
無機質な天井。冷たい天井。私たちの未来を表しているような、どこまでも薄暗くて低い天井。
──どろり……
パンツの中で、気持ちの悪い感触が走った。
そう言えば、まだ精子が中に残ってたなって、私はそう思った。