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「まったく、あなたには奥さんがいるでしょうに」

 浴衣姿のアコが言った。

 旅館の一室。

 机には、豪勢な食事が並んでいる。

「でも、アコも乗り気だったでしょ」

 先生が、刺身を口に運びながら言う。

「それは、そうですけど」

 鍋の具を取ろうとしたアコは箸を止め、下唇を小さく噛んだ。

「……だって、先生の誘いを断れるわけがないじゃないですか」

「……ん?」

「……なんでもありませんっ」

 アコは頬と耳の先を赤く染めながら、美味しい料理の味もろくにわからぬまま、食べ進めた。

ー・ー・ー・ー・ー

「ねえ、アコ。旅行に行こうか」

 そんなことを言われたのは年末の忙しい時期だった。

「はぁ? 旅行なんて……」

「慰安旅行だよ。仕事はちゃんと終わらせるから」

 アコの言いたいことを先回りして、先生が微笑む。

「……先生は、奥さんと過ごさなくていいんですか? そもそもまだ生徒に手を出そうなんて……」

「アコ」

 先生の手が、アコの手に触れる。

 信じられない、とアコは思った。

 こんな軽薄な誘い文句も、それに動揺して、断る気力がなくなってしまう自分も。

ー・ー・ー・ー・ー

「アコ?」

「は、はいっ? なんですか。なんなんですか!」

 あのときの気持ちを思い出したことを見透かされたのかと思い、アコはつい強く責めるような口調で話してしまう。

 そんなアコに、先生がおかしそうに微笑んだ。

「……ぅ、な、なにかおかしいですか」

「違うよ。やっぱりアコは可愛いなって」

「〜ッ!?」

 そういうところだ、とアコは思う。

 この人の、こういうところがズルいのだ。

「そ、それでっ? なにかご用ですか?」

 アコは問う。

 すると先生はまた微笑み、それから指先を寝室へと向けた。

 そこにはふたつの布団ではなく、ひとつの大きな布団が用意されていた。

 カップルか夫婦が仲睦まじく眠るための大きさだ。

「そろそろ寝ようか」

「……っ、あ、うっ……」

 不倫旅行とはいえ、食事には舌鼓を打った。

 さらに温泉も広くて心地よく、身体を涼ませなくては火照って仕方ないほど堪能した。

 そして帰ってきたら、この布団の敷き方だったのである。

 この旅館を手配した先生がアコたちの関係をなんと言ったか、それが答えであった。

「み、みっともないですね。奥様がいるのに、生徒になんてがっついて」

 そんなことを言うつもりはなかったが、いつもとは違うシチュエーションという緊張から、悪態に近い言葉を吐いてしまう。

 しまったと思ってアコは先生を見るが、先生は優しげな微笑みを浮かべるだけだった。

 まるでアコの照れ隠しには気づいていると言わんばかりの表情だった。

「誰でも良かったわけじゃないよ。アコだから、こんな危険を犯してでも誘ったんだ」

「あなたはまた、そんなことをっ……」

 先生は最低だ。

 最低の大人だ。

 そんなことは重々承知だった。

 この関係が先のない不倫であることも、それがどれだけ虚しいものかも。

 けれど、そんなもので割り切れない感情があった。

 一度先生に手を取られて引かれてしまえば、抵抗なくついていくような、情けない感情。

「さあ、アコ」

「あっ……」

 手を引かれたアコは、あっけなく布団の上に倒された。

 仰向けになって、薄い浴衣がはだけ、乱れる。

 アコの大きな乳房が半分まろび出て、細くスラリとした長い脚が覗く。

 その付け根に当たる部分が見え隠れし、下着の類を穿いていないことが先生の目に映る。

「何も穿いてないんだね、アコ」

「……ゆ、浴衣に下着は無粋と言ったのは先生でしょう」

「うんうん。言いつけをちゃんと守れて偉いね」

 先生がアコの脚の間に身体を入れてくる。

 情緒や焦らしなどはない。

 しゅるりと帯を外し、浴衣を脱ぎ捨てる。

 先生も下着一枚穿いていなかった。

 全裸になった大人の男性が、アコの前にいた。

 股間のモノはすでに大きく、硬くなっている。

 もちろんアコは処女ではない。

 すべての初めては、先生だ。

(大きい……)

 しかしそれでも、いつもより先生が興奮しているのがわかった。

 凶悪な肉棒が、普段よりも太く逞しく見える。

 もっともそれは、不倫旅行というシチュエーションが見せる錯覚かもしれないが。

「入れるよ、アコ」

「あっ、う……は、はい……」

 好きにすればいいじゃないですか。

 そんな悪態が口から出る予定だったのに、アコから出たのは気弱な返事だけだった。

 いつものアコとは程遠い姿だが、それもまた先生の興奮を誘うようだった。

「はっ……うっ……じ、じっと見ないで、ください」

 立てた膝を左右に開かされ、僅かな叢が生えるだけの割れ目が露わにされた。

 二枚の肉ビラはすでに濡れ、外にはみ出している。

 今夜のことを期待し、昂ぶっていたのは先生だけではない。

 アコも、この背徳的な行為に身と心を昂らせていたのだ。

「嬉しいよ、アコ。すぐに期待どおりのモノをあげるね」

「そんなの、い、いちいち言わないでくださいっ……」

 アコは言いながらも、身体をヒクヒクと小さく震わせた。

 口では悪態を吐きながらも、肉体は嘘を吐けないでいた。

 女壺が小刻みに戦慄く。

 先生の男根を求めて、よだれを垂らしているようなものだった。

(あぁ……先生の、お、大きいっ……)

 恥じらいながらもアコは先生のモノを盗み見た。

 何度か見ているはずなのに、その大きさも太さも、アコの知っているモノではなかった。

 興奮している。

 アコとしたくて、昂ぶっている。

 先生が己のモノを握り、先端をアコの割れ目に押し当てる。

 アコの身体に、自然と力が入る。

 手足の指先がくぅっと縮こまった。

 その、直後だった。

「あぁっ……!」

 先生の太いモノがアコの中に、ずぶる、にゅぷると入った。

 アコは肢体をビクンッと硬直させ、喉を晒して声を漏らす。

「全部入ったよ、アコ。すんなり飲み込んだね」

「そんなこと、言わなくていいと……んっ、あっ、いきなり動くのは卑怯です、よっ……あぁっ」

 アコが先生を強がりで睨む暇すらなかった。

 先生がアコの腰を掴み、ずぶ、ぬぷ、と肉棒を動かし始めたのだ。

「あっ、はっ、あ、あっ……」

 はだけた浴衣の中で、アコの美しく艶めかしい肉体が揺れ弾む。

 先生の動きに合わせて身体が前後に揺れ、気持ちいいところを擦られる。

(主導権を、握られるなんて……こんな屈辱……っ)

 アコは全身を上気させ、口元を自らの手で押さえながら眉間にシワを寄せる。

 これは道徳に反している行為だ。

 不倫。

 先生には伴侶がいる。

「んっ、あっ、んっ、んっ」

 押さえようとするほどに、自分とは思えないほどの艶めかしく浅ましい声が漏れる。

 先生に突かれるたび、アコの蜜壺が潤んでいくのがわかる。

(こんなに、気持ちいいなんて……最低っ……)

 認めたくないのに、先生とのセックスは快楽に満ちていた。

 身体を抱きしめられ、欲望の限りに貫かれる。

 触れ合う肌と性器に甘い声を幾度もこぼす。

(あぁ、こんなのっ……本っ当に! 最低っ……)

 心の中で抵抗しようとするほどに感じてしまう。

 そして心とは裏腹に、身体が先生を抱きしめ返していた。

 長い手足が先生の背面に回り、キツく締める。

 先生の抽送が激しくなっていく。

 先生も興奮しているのだとわかる。

 気持ちいい。いけないことをしている背徳を燃料に燃え盛り、互いの肉体が溶けていくようだった。

「あっ、うっ、せんせっ、も、もう……イキそう、なんじゃないですか……?」

「ふふ、それはアコもでしょ」

「……っ!……〜っ!」

 図星だった。

 いつもの強がりだった。

 しかも口にしたことで、限界がすぐそこにやってくる。

「あっ、ダメッ、激しくしな、い、でっ……」

 先生の背中に爪を立てる。

 わざとじゃない。あまりにも気持ちいいから、身体が勝手に動いた。

 傷が付いたら、バレてしまうかもしれないのに。

 ふたりの関係が、みんなに──。

「せん、せっ……イキ、ますっ……イ、クッ……あ」

 先生の最後の一撃と、アコが絶頂するのは同時だった。

「あぁっ……! うっ、あっ……!」

 ゴムは着けていない。

 熱いほどの精液が、アコの内側に注がれる。

 アコの蜜壺がキツい収縮とわずかな弛緩を繰り返す。

 先生の子種を搾り取るような動きだった。

(こんな最低な人相手に、こんなに感じて……最悪よ、最低……なのに)

 アコは先生の首と肩の間に顔を埋めながら、荒く艶めかしい吐息をこぼす。

(どうして……こんなひどい人、好きになってしまったんだろう)

 アコは先生を抱く両手と両脚に力を込める。

 自分の、自分たちのしていることが許されることではないことを知っている。

 けれど今だけ、今この瞬間だけは──。

 そこにはゲヘナ風紀委員のアコとしての顔はなかった。

 あるのは、不埒な恋をしてしまった、ひとりの女の子の姿だけがあるのだった。

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