強制ブルマー更生施設2:6 (Pixiv Fanbox)
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揺らぐ性別
毎朝のヨガのレッスンが終わり、朝食と取る。
あかりが隣で微笑みかける。
「今日はボイストレーニングをするんだって!楽しみだよね」
「う、うん……そうだね……早く女の子の声に近づきたいね」
私はこの間のひろみの言動を見て、心が晴れなかった。
この施設の中で、唯一と言っていいぐらいに女性化に反抗しているひろみの姿に、自分が女の子になりたいという気持ちが揺らいでいた。
完全に女の子化を受け入れていたはずの私の中で、小さな波紋が広がっていた。
自分に『私は早く女の子になりたい』と言い聞かせ、今日のボイトレレッスンが行われる教室へと向かう。
ドアを開け多目的室に入ると、机の上にはボイスレコーダーと、プリントが1枚置かれていた。
席に着くと教師が壇上に立って、今日のレッスンの概要を説明する。
「今日はお前たちの声を、女の子らしい柔らかく高い声に矯正していく。見た目が整っていても、男の声だったら意味が無い。この施設を出てからも苦労しないようにボイトレをしっかり行う」
私は隣のあかりを見た。
彼女はすでに期待に満ちた表情で、背筋を伸ばしている。
私は小さく息を吐いた。
数人のグループに分かれて教師が一人付き、レッスンが始まる。
プリントに書かれた校則を読み上げ、レコーダーに録音して聞き直すよう指示がある。
「裏声や不自然に甘ったるい声を出そうするな。普段の声から少しだけ高い声を意識すんだ。そして息を多めに混ぜること……。じゃあ、あかりからいこうか」
あかりは迷いなく立ち上がり、はっきりとした声で読み始めた。
「わたしは常に可愛い女の子下着とブルマーを正しく着用し……」
彼女はもともと声が高かったこともあり、校則を読み上げる声はすでに柔らかく、高く、女の子そのものだった。
教師が満足げに頷く。
「素晴らしいな、あかり。」
あかりが嬉しそうに頷く。
次は私の番だった。
私はボイスレコーダーの録音ボタンを押し、プリントを握り、喉を震わせる。
「……わたしは常に……可愛い女の子下着と……」
声が低く、掠れてしまう。
教師が容赦なく指摘する。
「ゆき、もう少し高く。喉を締めてはダメだ。喉は開いて息を混ぜるんだ」
私は何度も繰り返した。
録音を聞き直すたび、自分の声がまだ男のなごりを帯びていることに気づかされる。
あかりが隣で「ゆき、頑張って!」と励ましてくれる。
そんな時、教室の後ろから教師の鋭い声が飛んだ。
「ひろみ、全然ダメだ!そんなので女の子の声が出せるわけないだろう!」
ひろみが立ち上がり、いつもの気だるい口調で答える。
「ごめんなさい、風邪気味で声が出ないんですよ~」
教師が眉をひそめる。
「お前が更生を拒否するなら、学園側にも考えがあるぞ!」
ひろみは肩をすくめ、笑うような顔で続ける。
「女の子になりたいのは本当ですよ~。でも喉が痛くて」
教室が少しざわつく。
私はその様子を見て、胸がざわついた。
ひろみはまだ明らかに抵抗している。
男の自分を無くさないように、必死で抗っているのだ。
そんな様子を見ていた私に、
あかりが袖をそっと引いた。
「ゆきは彼女みたいになっちゃ……嫌だよ」
いつもは優しいあかりの声が、どこか冷たく聞こえた。
私は小さく頷いた。
「うん……そんなわけないよ……」
その瞬間、心の中に小さなモヤモヤが広がった。
そう言えば私も入学当初は女性化に抗っていた。
“女になってたまるか”と。
それがいつの間にか女性化を望むようになり、今に至っている。
でも、ひろみを見ていると、ふと疑問が浮かぶ。
私も完全に女の子になりたいわけではないのかも……。
◆
その日の夕食の時間。
あかりはゆり先輩と用事があると言って、食事を早く済ませ行ってしまった。
私は一人でトレイを置いて席に座った。
思えばいつもあかりと夕食を食べていた。
今日は一人だと思うと複雑な気持ちだった。
「ここ、空いてる?」
突然、後ろから声が掛かった。
顔を上げると、ひろみがトレイを持って立っていた。
昼間のやり取りが頭をよぎり、私は少し緊張する。
「う、うん……どうぞ」
ひろみは自然に私の向かいに座り、静かに箸を動かし始めた。
周囲の視線を気にしながら、私は小さく話しかける。
「あの……ひろみちゃん……だよね?」
「うん。あなたは……」
「ゆきです。初めまして」
私は自己紹介をしながら、彼女の言動を思い出す。
教師に叱られても、まるで他人事のように笑っていた姿。
「ひろみちゃんは……女の子になりたくないの?」
周囲を確認するように視線を巡らせた後、ひろみはさらに声を潜めた。
「あぁ……俺はここで女になるつもりはない。いつか逃げるチャンスを伺ってるんだ。この施設の食事は全部、女性ホルモンやら催眠成分やらが混ざってる。
だから最低限しか食べないようにしてる。教師にバレないギリギリのラインでね」
私は息を飲んだ。
ひろみの言葉は、はっきりしていて、迷いがなかった。
私は箸を持つ手を止めたまま、ただ聞いていることしかできない。
「今、言ったことは誰にも言わないでね。ゆきちゃんと私の秘密だよ」
ひろみは顔を上げると、口調を女の子に戻し、微笑んだ。
彼の言葉を聞いた瞬間、心のどこかに眠っていた『男だった頃の自分』が、ふっと顔を覗かせた気がした。
(……私は、本当にこれでいいのだろうか?このまま、女の子として生きていくのが……正しい選択なのか?)
夕食の残りの時間、私はほとんど箸を動かせなかった。
ひろみの存在が、私の中に小さな波紋を広げ続けていた。
心のざわめきは、ますます大きくなっていくばかりだった。
【第7章へ続く…】