人見知りを直す、簡単な方法 (Pixiv Fanbox)
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「人見知りは、脳の癖を少し調整するだけで改善できます」
そう説明されても、最初は半信半疑だった。
初対面の相手とうまく話せず、人と目が合うだけで緊張してしまう。
それなのに配属された部署は営業部だった。
そんな状態でうまく成果が出るはずもなく、営業成績は常にダントツで最下位だった。
それでも、同僚や上司は俺を見捨てずに励ましてくれる。
みんなの期待に応えたい。
その一心で、俺は最新のAIカウンセリングプログラムに申し込んだ。
決められた音声と映像で脳の認知パターンを最適化し、
PTSDやトラウマの治療にも実績があるという最先端の医療技術だ。
「人見知り程度なら、数十分の治療で終わります。そのまま帰宅できます」
診察室でゴーグルとヘッドホンを装着させられる。
「安心してください、性格そのものは変わりません。コミュニケーションを補助する行動パターンを学習するだけです。
目を開ける頃には、誰とでも緊張せずに会話できるようになっていますよ」
俺はゆっくりと目を閉じる。
意識が遠のく直前、スタッフの慌てた声が聞こえた。
「おい、ちょっと待って!データが違――」
そこで記憶は途切れた。
―
――
―――
目を覚ますと、担当者は笑顔で頭を下げた。
「処置は無事に終了しました。数日間だけ軽い違和感が出る可能性がありますが、日常生活に支障はありませんよ」
さっきの声は夢だったのだろうか。
頭が少し痛いぐらいで、身体には特に異常も感じず、そのまま帰宅した。
俺は担当医の笑顔が引きつっていたことに気がついていなかったのだ。
翌朝。
鏡の前で身支度をしていると、自分の手が勝手に動く。
クローゼットの奥へ伸びた指先は、なぜか女性用の服を取り出していた。
(あれ?……なんでこんな物がうちにあるんだ?)
記憶を探る。
昨日、病院の帰り道。
「可愛い服を買って帰ろうかな♡」
楽しそうにそう呟き、服を選び、レジでカードを差し出している自分の姿が頭に浮かぶ。
(なんだこれ……こんなのを俺が買うわけ……)
頭でどれだけ拒否しても、身体は迷いなく着替えを続ける。
鏡の中には、肩が覗くトップスに短いスカート姿の自分が映っていた。
「うん!私、可愛い、似合ってる♡」
(似合うわけあるか!今すぐ脱げ!)
頭の中の命令は届かない。
身体が満足そうに一回転し、小さく微笑む。
そのとき、鏡の前の紙袋が目に入る。
(……なんだこれ?……)
中を開けると、長い黒髪のウィッグと、化粧品一式。
ファンデーション、アイライン、マスカラ、リップ。すべて新品だ。
(買った覚えなんてない……!いや、昨日の俺が買ったのか?)
指先が勝手にファンデーションを取り、スポンジで肌を整えていく。
アイラインを引き、マスカラでまつ毛を上げ、リップを唇へ滑らせる。
(俺、化粧なんて一度もしたことないのに……!なんでこんなに上手いんだ……)
アイラインは鋭く、まつ毛は長くカールし、唇はつややかなピンクに塗りつぶされる。
一瞬で、完璧な男の娘メイクが完成した。
仕上げにウィッグを被り、前髪を少し整える。
鏡の中の自分は別人みたいな女の子になっていた。
「……うん。私、可愛い♡」
口が勝手に微笑む。
(可愛いわけないだろ!今すぐ落とせ……!)
命令は届かない。
俺は慌ててスマホを取り出し、病院へ電話をかけようとした。
だが、指は途中で止まり、代わりにSNSを開く。
自撮りを撮り、加工をして、投稿画面まで進める。
(おいっ!やめろ!)
『初めてこんな女の子の恰好をしちゃいました♡』
心の叫びとは裏腹に、投稿ボタンが押される。
数秒後、通知音が鳴り始める。
『お前どうしたの?』
『乗っ取られた?』
『大丈夫?』
画面を見た俺の冷や汗が止まらない。
会社を休もうとしても身体が勝手に会社へと向かってしまう。
玄関には、身に覚えのないハイヒールが揃えて置かれていた。
——
何度立ち止まろうとしても会社に着いてしまった。
(おい!ほんとに止めてくれ!)
営業部のドアを開けると、部署中の視線が一斉に俺へ集まる。
身体は迷いなく笑顔を浮かべ、深々と頭を下げた。
「おはようございます♡今日からもっと契約が取れるように、女の子として営業を頑張ります♡よろしくお願いします!」
(違う!!そんなこと、一言も思ってない!!)
誰もが引きつった表情で俺のことを見ていた。