【夢主→アルトリア】葡萄の雫と、王の不覚① (Patreon)
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20$会員様に投票いただいた過ぎてしまいましたがワインの日にまつわるふたりのお話。リアルの都合上序盤しか生成できなかったため、こちらもまた都度アップしていく予定です。
薄暗いリビングを、柔らかな間接照明の光が静かに満たしている。
お風呂から上がったばかりの二人は、心地よい温もりに包まれながら、ソファへと並んで腰を下ろしていた。
お揃いの、胸元に控えめなリボンがあしらわれた白いナイトガウン。
ユミは艶やかな黒髪をそのまま肩へと流し、アルトリアもまた、普段の厳格な編み込みを解いて、シルクのように滑らかな金髪を背中へと美しく下ろしている。お風呂上がりのリラックスした空気の中、ふとユミが何かを思い出したように小さく声を上げた。
「あ、そうだ。忘れるところだった。……ねえ、アルトリア。大河からワインを貰ってたの、すっかり忘れてたよ」
「大河から、ですか?」
アルトリアは不思議そうに小首を傾げた。その端正な顔立ちは、入浴の熱のせいでほんのりと桜色に色付いている。
「うん。私、ワインって渋くてそんなにたくさん飲めないんだけど、これは甘口で凄く飲みやすいからって勧められたんだ。明日は二人ともお休みだし、たまには夜更かしして、一緒に飲んでみない?」
ユミの微笑みながらの申し出に、アルトリアは少しだけ考え込むように切れ長の緑の瞳を瞬かせた。
「ワインですか。そうですね……貴女はあまりお酒が強くありませんから、嗜み程度にはなると思いますが、せっかくの好意です。少しだけ、いただいてみましょうか」
「決まり! じゃあ、早速準備するね」
ユミは嬉しそうにキッチンへと向かい、冷やしておいたボトルと二脚のワイングラスを運んできた。トクトクと静かな音を立てて、透き通ったルビー色の液体がグラスへと注がれる。
「じゃあ、乾杯」
カチン、とガラスの触れ合う繊細な音がリビングに響いた。
ユミが恐る恐るグラスに唇をつけ、一口その雫を口に含むと、ぱっと表情を輝かせた。
「あ……これ、おいしい……! ワインなのに、ちょっとジュースみたいに甘くて、全然渋くないよ」
お酒であることは分かっているし、自分があまり強くないことも自覚しているため、ユミはそれから小さくちびちびとグラスを傾け始めた。
一方のアルトリアは、グラスを鼻先に近づけて香りを愉しんだ後、端正な所作でそれを口へと運んだ。
「ほう。これはなかなか──」
よほど口に合ったのだろう。アルトリアの瞳が満足げに見開かれる。彼女はそのまま、普段の食事の時のように、実になめらかなハイペースでワインを喉へと流し込んでいき、あっという間に一杯目を空にしてしまった。
「わっ、アルトリア、そんなにいきなり飲んじゃって大丈夫? アルトリアがお酒に強いのは知ってるけど……ほら、前にお花見をした時も、ランサーと一緒に酔いつぶれちゃってたじゃない」
心配そうに顔を覗き込むユミに対し、アルトリアはフッと余裕のある笑みを浮かべ、二杯目を注ぎながら胸を張った。
「心配には及びません、ユミ。私の生きた王の時代にも、このような酒を酌み交わす場はいくらでもありました。騎士たちと競い合うようにして杯を重ねたものです。それに比べれば、この程度の甘い果実酒など、水のようなもの──」
凛々しく、誇らしげに語るアルトリア。しかし、語る言葉とは裏腹に、彼女の美しい白磁の肌は、またたく間に茹でたてのように鮮やかな紅へと染まり始めていた。緑の瞳の焦点が、心なしかほんの少しだけ、とろんと弛んでいる。
(……本当に大丈夫かな? なんだか、もう結構まわってる気がするんだけど……)
ユミの悪い予感は、それから十五分もしないうちに、最高に愛らしい形で的中することとなった。
蕩ける騎士王
ボトルが半分を過ぎた頃、アルトリアの動きがピタリと止まった。
手にしたグラスをソファの前のテーブルへ、危うい手つきでどうにか置くと、彼女はそのまま「ふにゃり」と締まりのない笑みを浮かべた。普段の、背筋が伸びた冷徹なまでの凛々しさはどこへやら、上体が左右にゆらゆらと揺れている。
「……アルトリア? やっぱり酔っちゃった?」
ユミがそっと顔を近づけて覗き込むと、アルトリアはハッと大きく目を見開いた。
「よ、酔ってなど……いません、よ? 私は、ブリテンの、王……んん、ユミ、ワインが、いえ、貴女が二人に見えます……」
「完全に酔っ払ってる…もぉお~。もう飲むのはおしまいね」
ユミが苦笑してグラスを片付けようとすると、アルトリアは突然、不満そうに頬を膨らませた。そして隣に座るユミのナイトガウンの袖を、細い指先でぎゅっと掴んできたのだ。
「片付けては、いけません……。まだ、私は、貴女と……」
潤んだ瞳。いつもはまっすぐに前を見据える強い眼差しが、今はひどく無防備で、脆く、そして堪らなく甘えたげにユミを見上げている。ぽっぽと熱を帯びた吐息が、アルトリアの赤い唇から零れ落ちた。
「アル、トリア……?」
その、世界中の誰も見たことがないであろう「ポンコツ化」した少女の可愛らしさに、ユミの心臓がドキンと激しく跳ねた。ちびちびと飲んでいたとはいえ、ユミの身体にも適度にお酒がまわり、理性のタガが少しずつ緩み始めている。
「ユミ……」
アルトリアは熱い吐息を漏らしながら、さらに身体をすり寄せてきた。お風呂上がりの石鹸の香りと、芳醇な葡萄の香りが混ざり合い、二人の距離を急激に縮めていく。
アルトリアは、微かに震える瞳でユミの唇をじっと見つめると、意を決したようにそっと目を閉じた。
続
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