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爆音が止んでから、どれほど経っただろう。

耳の奥にはまだ、剣戟と咆哮の残響がこびりついている。

藤丸立香が辿り着いたのは、特異点の奥深くに残されていた石造りの館だった。

本来ならば、仲間たちとの合流を優先すべきだった。通信は途絶したまま。現在地すら、カルデアには正確に送れていない。

けれど。

「……ヒッポリュテ!」

半ば押し開けるようにして扉を開いた瞬間、立香は目的を果たした。

窓際に、一人の女戦士が立っていた。

「マスター」

ヒッポリュテは振り返り、ほんのわずかに目を見開く。

しかし、それも一瞬だった。

「無事だったか。よかった」

まず口にしたのは、自分ではなく立香の安否だった。

「それ、こっちの台詞だよ」

立香は思わず息を吐く。

探していた。ずっと。

敵の襲撃によって一行が分断されたあと、ヒッポリュテだけが敵の主力を引きつけ、そのまま姿を消した。

彼女なら簡単に倒れはしない。

そう信じていても、不安まで消えるわけではなかった。

「怪我は?」

「この程度なら問題ない。霊基にも致命的な損傷はない」

いつもの、迷いのない声。

だが。

立香の視線が、そこで止まった。

正確には――止める場所を失った。

ヒッポリュテの装束は、戦闘の激しさをそのまま物語っていた。

肩を覆っていた布は裂け、腰元の装飾も一部が失われている。白い布地には土埃と血が滲み、何度も刃を掠めたらしい切れ目が走っていた。

いつもの凛々しい戦装束。

その面影は確かに残っている。

だが今は、それ以上に。

戦いを終えたばかりの身体から立ち上る熱。乱れた黒髪。肌を伝う汗。

そうしたものが、ひどく生々しく見えた。

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